漱石と倫敦ミイラ殺人事件

漱石と倫敦ミイラ殺人事件

島田荘司の小説『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』のコミカライズ作品。ロンドン留学中の夏目漱石が、シャーロック・ホームズと共に怪事件に挑む姿を描いたミステリー。夏目の手記「倫敦覚書」と、ホームズの友人であるジョン・ワトスンの手記「プライオリィ・ロードのミイラ事件」が交互に登場する形で一つの事件が描かれており、夏目の視点とワトスンの視点ではホームズの人物像が大きく異なる。「チャンピオンRED」2019年7月号から掲載の作品。

正式名称
漱石と倫敦ミイラ殺人事件
ふりがな
そうせきとろんどんみいらさつじんじけん
原作者
島田 荘司
漫画
ジャンル
推理・ミステリー
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あらすじ

倫敦覚書

明治33(1900)年10月、夏目漱石は日本からの留学生としてイギリスに派遣された。ロンドンに到着した夏目は、周囲が背の高い西洋人ばかりであることに自尊心を傷つけられ、孤独を感じていた。さらに、夏目は下宿先で毎晩聞こえる不審な物音のせいで不眠症になってしまう。ついには亡霊の姿が見えると訴え始めた夏目に対し、師のクレイグは心配してある人物を紹介する。それは、風変わりな事件を専門に研究しているという男性、シャーロック・ホームズだった。夏目は、半信半疑でホームズのもとを訪れるが、対面したホームズは的はずれな推理を得意げに語るうえ、まちがいを指摘されると激怒するという手の付けられない変人だった。それでも、夏目の依頼はホームズによってみごとに解決されるのだった。

プライオリィ・ロードのミイラ事件

裕福な未亡人のメアリー・リンキイが、シャーロック・ホームズジョン・ワトスンを訪問してくる。彼女は、東洋帰りの弟であるキングスレイ・ホプキンスの様子がおかしくなっていると訴える。その数日後、ホームズとワトスンのもとに、レストレイド警部から急報が届く。メアリーの屋敷で、奇怪な事件が起きたというのだ。ホームズとワトスンが現地に向かったところ、メアリーは事件のショックで精神に異常をきたしていた。そしてホームズたちは、全身から水分が失われ、ミイラのようになったキングスレイの異様な死体を目の当たりにする。その喉には、日本の文字のようなものが書かれた謎の紙片が入っていた。前日の夜、キングスレイは自ら部屋の扉に釘を打ちつけており、現場は密室だった。事件発生当時は火災が発生しており、現場には奇妙な仏像などの骨董品が散乱していた。中国の呪いが事件の謎を解く鍵だったこともあり、ホームズたちは同じ東洋人である夏目漱石に助力を乞う。

関連作品

小説

本作『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』は、島田荘司の小説『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』を原作としている。原作小説版は光文社文庫から刊行されている。

登場人物・キャラクター

夏目 漱石 (なつめ そうせき)

英語教育法を学ぶため、イギリスに留学している壮年の男性。本名は「夏目金之助」。ロンドンでは自分一人だけが、小柄な東洋人であることに劣等感を抱いている。ロンドンの下宿に滞在中、毎晩のように聞こえる奇妙な物音に悩まされ、神経を衰弱させる。ついには夜中に亡霊が見えると言い始めたため、師のクレイグの紹介でシャーロック・ホームズのもとに相談に訪れた。初めてホームズに会った際にはその変人ぶりに驚くが、亡霊が見えるという悩みはあっさりと解決される。その後、メアリー・リンキイがホームズのもとに持ち込んだ怪事件に際し、ホームズから助力を請われた。実在の人物、夏目漱石がモデル。

シャーロック・ホームズ

ベイカー街に住む探偵で、壮年の男性。夏目漱石には、的はずれな推理を得意げに披露する一方、誤りを指摘すると激怒して狂乱するという変人ぶりを発揮している。180センチを超える長身にもかかわらず、不自然な女装をして通りを堂々と歩いたりするなど、夏目を困惑させることが多い。ジョン・ワトスンには、理知的で筋の通った推理をすると評価されているが、一方で初対面の夏目が小柄であることをからかうなど、有能だが無神経なところがある。下宿に亡霊が現れると訴える夏目の相談をみごとに解決したあと、メアリー・リンキイが持ち込んだ奇怪なミイラ事件の捜査にあたる。その際、事件には中国の呪いがかかわっていたことから、東洋人である夏目に助力を乞う。

ジョン・ワトスン

シャーロック・ホームズの友人である壮年の男性で、医師を務めている。ジョン・ワトスン自身は、ホームズに対してはよけいな口出しをせず、あくまで彼を補佐する役割に徹している。ただし夏目漱石には、持ち込まれた怪事件を、変人であるホームズの手綱をあやつりながら的確に処理している切れ者と見られている。

クレイグ

シェイクスピア研究者である高齢の男性。アイルランド出身。ロンドンに留学してきた夏目漱石の師として、個人授業を行っている。奇怪な音や亡霊が原因で不眠症になり、講義中の集中力をなくしていた夏目を叱責。その際、夏目が怪奇現象に悩まされていることを知り、シャーロック・ホームズを紹介した。『ハムレット』の講義のために甲冑の衣装を着てくるなど、ホームズ同様かなりの変人。

メアリー・リンキイ

裕福な未亡人で、年齢は40歳。旧姓は「ホプキンス」。貧しい階級の出身だったが、高齢の資産家のもとに嫁いだ。子供がいないまま夫を亡くしたあとは、執事夫婦と共に屋敷で暮らしている。夫の死後、子供の頃に生き別れになった弟のキングスレイ・ホプキンスを捜し出し、再会を果たす。そして弟を屋敷に招き、同居するようになる。しかし、やがてキングスレイは異常な言動を取るようになり、かつて滞在していた中国で呪いをかけられたと、奇怪なことを話すようになる。そのため弟の様子を心配し、シャーロック・ホームズのもとに相談に訪れた。その直後、キングスレイが怪死を遂げたことによって精神に異常をきたす。

キングスレイ・ホプキンス

メアリー・リンキイの弟で、年齢は34歳。幼い頃に姉と生き別れになって中国に渡っていたが、未亡人となったメアリーが人を使って消息を調べたことで、再会を果たす。その後、メアリーの屋敷に同居することになり、東洋で買い求めた大量の骨董品を運び込む。中国時代は後ろ暗い商売をしていたらしく、過去のことはあまり語りたがらない。やがて、何かにおびえたように部屋に閉じこもり、食事もろくに取らなくなってしまう。ついには自室で自傷行為に至り、メアリーに奇怪なことを話し始める。その内容は、中国にいた時に恐ろしい事件に巻き込まれ、キングスレイ・ホプキンス自身も呪い殺されるというものだった。メアリーがシャーロック・ホームズのもとに相談に訪れた直後、一夜にしてミイラのようになって謎めいた死を遂げる。

ジョニー・ブリッグストン

尋ね人捜しを生業とする年配の男性。メアリー・リンキイが、生き別れになった弟のキングスレイ・ホプキンスの消息を捜すために出した新聞広告を見て、メアリーのもとを訪ねてきた。メアリーからキングスレイの情報を聞き出すと、1か月後にキングスレイを見つけ出すことに成功し、両者を引き合わせた。

レストレイド

ロンドン警視庁の警部である壮年の男性で、眼鏡を掛けている。皮肉な言い回しを好んで使う。シャーロック・ホームズやジョン・ワトスンとは共に捜査に携わった経験がある。メアリー・リンキイの屋敷で、キングスレイ・ホプキンスが怪死を遂げた際、現場に駆け付けた。その後、事件が警察の手にあまると判断し、ホームズに助けを求める電報を打った。

ベインズ

メアリー・リンキイの屋敷で執事を務める高齢の男性。妻と共に屋敷で暮らしており、メアリーの夫が健在の時から屋敷に仕えていた。キングスレイ・ホプキンスが死んだ夜、彼の部屋で火災が発生しているのを発見。密室となっていた部屋の扉を壊し、キングスレイの死体が発見されるきっかけをつくった。その後は火災を消し止め、妻と共にレストレイド警部やシャーロック・ホームズに事件のあらましを証言する。

クレジット

原作

島田 荘司

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