七つ屋志のぶの宝石匣

石の気を見るという特殊能力を持った質屋の娘は、質入れに持ち込まれる宝石の鑑定に愛情をもって臨む。また、理由あって質屋に預けられて育った名家の跡取り息子は、一族離散に伴って失った宝石を探すため、宝石店の外商として様々な名家を訪問する。失った家族を取り戻すため奔走する男性と、宝石と心を通わせる女子高生の質屋物語。「Kiss」2014年1月号から連載の作品。

正式名称
七つ屋志のぶの宝石匣
作者
ジャンル
推理・ミステリー
レーベル
KC KISS(講談社)
関連商品
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概要・あらすじ

ある夜、東京の下町にある老舗の質屋「倉田屋」に、子供を連れた女性が質入れにやって来る。彼女が質に入れようとしたのは、まだ幼い男の子である北上顕定だった。彼は名家「北上家」の嫡男であり、正式な跡取りとして育てられた子供。それを証明する家系図も持参していた。3年という期限を設け、期限を過ぎた暁には、孫娘の倉田志のぶと婚約させることを条件に、質屋の主人は顕定の質入れを申し受けることになる。

結果的に顕定は質流れとなり、志のぶの婚約者として、質屋の仕事を学びながら倉田家で育てられた。やがて倉田屋の主人が亡くなったことを機に、顕定は志のぶに倉田屋を任せ、老舗高級ジュエリー店「デュガリー」に就職して外商となる。その目的は、離散し行方知れずとなった北上家の一族につながるであろう宝石の行方を探すこと。

顕定は幼い頃の記憶だけを頼りに、幸せをもたらすという「幸運の赤い石」を探し出そうと、赤い石を持つと噂される名家を訪れては、ひそかに確認作業を行っていくのだった。一方で高校2年生の志のぶは、若いながらも祖父の遺した倉田屋の店先に立ち、石を見るだけでその石が持つ「気」を見ることができる、という天賦の才で、大好きな宝石を鑑定する毎日を送っていた。

そんななか、顕定が自分に内緒で何かをしようとしていることを察し、どうにかして首を突っ込もうと四苦八苦する。

登場人物・キャラクター

倉田 志のぶ (クラタ シノブ)

高校2年の女子生徒。自由奔放でちょっと変わり者。母親の倉田百合江の実家である老舗の質屋、倉田屋の12代目主人だった倉田の孫にあたる。現在は倉田屋の店頭で主に宝石の鑑定を行っている。石や宝石が大好きで、宝石を見ただけで、その石が持つ「気」を見ることができるという特殊な能力を持っている。しかし、北上顕定からは気持ち悪がられている。 その能力により、その人自身の感情や、その人に降りかかることが漠然とわかる。

北上 顕定 (キタガミ アキサダ)

倉田志のぶの婚約者の男性。フランスの老舗高級ジュエリー店「デュガリー」の従業員。日本支店では主に外商として、様々な名家に出入りし、営業販売を行っている。公家から武家になって活躍した歴史に残る名家、北上家の嫡男であり、正式な跡取りとして生まれ育った。しかしまだ幼い頃、とある事情により一族が離散。祖母に連れられて倉田屋を訪れ、3年を期日に質入れされることになる。 その後、期日の3年を過ぎても引き取られることはなく、倉田家で育ち、現在は倉田屋の裏手にあるアパートで、一人暮らしをしている。外面は良く、優しい語り口と、整った顔立ち、柔らかい物腰で、多くの女性客を虜にしており、商店街を利用する女性にもファンが多い。彼が倉田屋の店先に出たことで、1日で1か月分の売り上げを記録したこともある。 しかし実際は口が悪く、特に志のぶに対しては何かと厳しくなりがち。ロンドンで知り合った久世鷹臣とともに、北上家の一族に伝わる「幸運の赤い石」を探している。

倉田 (クラタ)

2年前に他界した倉田志のぶの祖父。東京の下町にある老舗の質屋倉田屋の12代目主人。宝石が好きで、店の利益を考えるよりも、個人的な趣味で買い取りを行いがちだった。ある日、まだ幼かった北上顕定を質入れしたいと、突然の申し出がある。通常は受けられない内容だったが、学生時代に憧れていた女性からの申し出だったため、条件付きで質入れを受け入れた。 引き取りまでに3年以内という期限を設け、期限が切れた後は、孫娘の志のぶと婚約させるという条件を提示。こうして、女性が持参した名家の家系図に孫娘の名を残す、という欲望を果たそうとする。

倉田 百合江 (クラタ ユリエ)

倉田志のぶの母親。お金持ちの家に嫁いだが、離婚し、1年前に実家である倉田屋に、志のぶとともに戻ってきた。嫁ぎ先で身に付いた贅沢が抜けていないため、少々わがままなところがある。ブランド品を見る目を買われ、倉田屋では主に買い取りを担っているが、買い取ったブランド品を勝手に自分のものにしてしまうなど、問題行動も多い。

倉田 保 (クラタ タモツ)

倉田百合江の兄で、倉田志のぶの伯父。現在は独立し、ブランドショップ「ディープインパクト」を経営している。倉田屋の在庫処分を任されているが、経営状態の悪い倉田屋を潰して、土地を売った方が良いのではと考えている。父親の倉田が引き取った北上顕定が、倉田屋ではなく外部に就職したことを良く思っていない。

秋元夫人 (アキモトフジン)

資産家の妻。娘の秋元貴子の誕生日会で北上顕定と知り合い、宝石の鑑定を依頼して彼の実力を試す。もともと「デュガリー」の宝石を愛用していたが、フランス本店を利用していた。顕定に秋元家への出入りを許したことで、日本支店の顧客となる。それにより、娘たちの宝石に対する本当の姿を目の当たりにすることになる。

大鳥 (オオトリ)

秋元貴子の友人の女性。「デュガリー」の外商として自宅に来ていた北上顕定に、家宝である宝石の話が出た際、「見てみたい」と言われた。それがきっかけで、その宝石を母親に内緒で持ち出し、顕定に見せるため店舗に訪れた。また、貴子が大鳥の家に来ていた顕定を見て一目惚れしたため、貴子の誕生日会に彼に会わせ、プレゼントとした。

秋元 貴子 (アキモト タカコ)

資産家の娘。秋元摂子の姉。大鳥の自宅に外商に訪れていた北上顕定に一目惚れした。大鳥のことを嫌っていたが、その後、自分の誕生日会に顕定を連れてきたことでその間柄は守られた。派手好きで、少々気が強いため、母親のペンダントが失くなった際、一番最初に疑われることになる。

秋元 摂子 (アキモト セツコ)

資産家の娘。秋元貴子の妹。地味で真面目な印象だが、実は宝石に興味があり、子供の頃から憧れていた母親のペンダントを黙って持ち出した。クラスメイトの倉田志のぶや、密かに想いを寄せていた北上顕定との会食で、捕らわれていた様々な想いから解放され、宝石を返すことを決意する。

久世 鷹臣 (クゼ タカオミ)

宝石店「HULALU」のオーナーで、ジュエリーデザイナーも務める男性。北上顕定とはロンドンにいる時に知り合った宝石好き仲間。特にアンティークジュエリーが好き。悪い「気」を持っている宝石も、彼が触れると悪い「気」を浄化する特殊な能力があるらしい。しかし、倉田志のぶ以外に分かる者はおらず、本人にも自覚はない。 ロンドンでは有名なキュースポーツ「スヌーカー」のプロ選手だった。

しょーちん (ショーチン)

警視庁刑事部捜査第三課の刑事を務める男性。倉田百合江の幼なじみ。倉田家とは、特に質屋に流される恐れのある盗品や、犯罪に関わる品物などの情報のやり取り、犯罪者の検挙のために関わることが多い。いつも笑顔でノリは軽い。百合江に想いを寄せており、どうにかしたいと思っていはいるが、何をしてもいつも相手にされておらず、気持ち悪がられている。

有馬 満津子 (アリマ ミツコ)

北上顕定が、秋元夫人にお願いして、紹介してもらった女性。代々政治家を多く輩出してきた名家、有馬家の当主「有馬一雄」の妻で63歳。温和な人柄だが、宝石をすべて売って家計の足しにしたい、という長女の意向には賛同できず、子供たちのために残しておきたい宝石がある、と対立してしまう。

有馬 富子 (アリマ トミコ)

代々政治家を多く輩出してきた名家、有馬家の長女。現在は母親有馬満津子と、古い屋敷で二人暮らしをしている。しかし生活は苦しくなる一方で、一等地に建つ豪邸や、母の思い出の宝石を全て売ろうと提案する。政治がらみによる婚約者の裏切りに遭い、すべてに投げやりになっている。

有馬 一征 (アリマ カズユキ)

代々政治家を多く輩出してきた名家、有馬家の長男で33歳。家宝である「幸運の遺志」を持ち出し、海外に留学したまま音信不通になっていた。イギリスではキュースポーツ「スヌーカー」のプロ選手で、チャンピオンになったこともある。久世鷹臣とは幼なじみ。彼を留学に誘ったのも、「スヌーカー」を教えたのも、プロになることを勧めたのも、有馬一征だった。

浜口 マリナ (ハマグチ マリナ)

北上顕定の同級生の女性。離婚するからと、倉田屋にダイアモンドのエンゲージリングを売りに来た。わがままを言い、学生時代の弱みを引き合いに出し、顕定の家に泊めてもらうことになる。大手出版会社で旅行雑誌の編集を務めていた夫の変化に、不満がを持っている。

金井 祐也 (カナイ ユウヤ)

金井家の跡取り息子。もとは老舗の質店だったブランドショップ「スペシャルウィーク」を経営する。しかし仕事ができないことで有名。江戸時代に帯に着けるために使われた留め具「根付」が好きで、別の質屋の孫娘と、将来独立して、2人でアンティークショップを開こうと話している。

池上 (イケガミ)

倉田屋の常連客。倉田屋の近所にある喫茶店「フレンド」のオーナーの奥さん。喫茶店の経営が苦しく、亡くなった姑からお守りにともらった大切なエメラルドの指輪を、別の質店に預けてお金を借りた。しかしうっかり期日が過ぎてしまったため質に流してしまい、その指輪を探して欲しいと倉田屋にやって来る。

伊崎 信子 (イサキ ノブコ)

倉田屋の近所にある「伊崎不動産」のおばあちゃん。宝石が大好き。夫が亡くなった際、2人の娘が遺産の相続をめぐって争いになったことを理由に、自分の財産は残すまいと心に決めた。終活の一環として、宝石を倉田屋に売りに来た。その半年後急逝。残した宝石は3種類のトルマリンだけだった。

坂口 愛子 (サカグチ アイコ)

伊崎信子の長女。伊崎つぐ美の姉で60歳。夫は貿易商を務めている。お金に困った時しか実家には寄り付かなかった。母親が亡くなり、伊崎明子の遺産が、3人の中で一番価値の高いトルマリンリングであることに腹を立て、葬儀の席で相続争いを始める。母親から自分に与えられたジュエリーは赤いトルマリンリングで、約20万円の価値があるものだった。

伊崎 つぐ美 (イサキ ツグミ)

伊崎信子の次女。坂口愛子の妹で57歳独身。お金に困った時しか実家には寄り付かなかった。母親が亡くなり、伊崎明子の遺産が、3人の中で一番価値の高いトルマリンリングであることに腹を立て、葬儀の席で相続争いを始める。母親から自分に与えられたジュエリーは、バイカラー(2色)のトルマリンネックレスで、約10万円の価値があるものだった。

伊崎 明子 (イサキ アキコ)

伊崎家の長男の嫁。温和で控えめな人柄ではあるが、日頃の働きを知っている町内の人からは慕われている。義母である伊崎信子とも良好な関係を築いていた。義父が他界した際、遺産相続をめぐり姉妹で争うことになったため、義母には遺産は残さずすべて使うように進言した。最終的に3種類のトルマリンのジュエリーに関して、思い出を含む詳しい分配を、遺言として義母から聞いていた。 義母から与えられたジュエリーは、希少価値の高い「パライバトルマリン」のリングで、約100万円の価値があるものだった。

坂口 エリカ (サカグチ エリカ)

坂口愛子の娘。お金に困った時、何度となく祖母のたんす預金を引き抜きに来ていた。亡くなった祖母伊崎信子には隠し財産があるはずと、お通夜中、密かに家探しをしていた。膨らんだ銀行の封筒を押し入れから見つけ、嬉々として母親の前に持ってくる。

古河 憲政 (コガ ノリマサ)

「古河商事」の御曹司。倉田志のぶの石好き友達。幼い頃から石に興味があり、ジュエリーとしてよりも、鉱物としての石が好き。秋元貴子に想いを寄せている。ところが、彼女は石よりもジュエリーが好きなため、自分に自信がないことも手伝って、なかなか想いを伝えられずにいる。

長尾 弘 (ナガオ ヒロシ)

老舗デパート「講談デパート」の外商で、60歳の男性。長年、古河家を担当している。新築の古河家別邸にある家具類は、すべて彼が選んだもの。古河家の人々からは大変な信頼を受けて慕われており、もうすぐ定年を迎える彼のために、サプライズパーティーを開いてもらった。自分のためとは知らず、そのパーティーの準備も彼自身が最高のものを用意した。 「伝説の外商」と呼ばれている。

江口 雄介 (エグチ ユウスケ)

老舗デパート「講談デパート」の外商も男性。長年古河家を担当してきた長尾弘が定年退職するにあたり、その後継として古河家を担当することになった。就職10年、長尾のもとで学んできたことが実を結び、今月は売上№1を達成した。しかし、客の気持ちを置き去りにして、売り上げを考えるフシがあり、言葉や態度に驕りが見えている。北上顕定とは同じジュエリースクールに通っていた同期で、彼をライバル視している。

古河 千里子 (コガ チリコ)

古河憲政の母親。年齢は50歳。「古河グループ」創業者の嫁であるが、資産家であることを鼻にかけることなく、自分自身の好きなことをして暮らしている。子供のような朗らかな人柄で、猫とホームセンターとDIYをこよなく愛する。現在は土地を買い、自力で別荘を建築中。

水島 雄太 (ミズシマ ユウタ)

以前倉田屋と同じ銀座9丁目商店街で「カトウ貴金属店」を営んでいた主人の32歳の孫息子。祖父の入院を機に貴金属店を閉店、改装し、新しくカフェバーをオープンさせた。服の通販サイトも運営している。店のメニューや、店内の装飾品、販売している服のタイプに至るまで、その方向性は一貫しておらず、多岐にわたっている。

横井 (ヨコイ)

買い取り業者「バクシン王」の店長を務める男性。倉田屋と同じ銀座9丁目商店街に、いきなりオープンした。水島雄太の祖父が営んでいた貴金属店の在庫を買い取るために、カフェバーを訪問する。勉強不足から、古い品物に価値を見出そうとせず、口汚く文句を言っては、安い値段を付けようとする。

坂本 万太郎 (サカモト マンタロウ)

ネット・テレビ専門宝石通販会社の名物社長の男性で54歳。自社制作番組に、若い妻とともに出演し、宝石を販売している。北上一族が突然姿を消すことになる前に、当時まだ無名だった坂本万太郎が、北上家と接点を持っていたことが判明。「幸運の赤い石」を手に入れて幸せをつかんだ、と豪語している。

場所

倉田屋 (クラタヤ)

東京の下町、銀座9丁目商店街にある老舗の質屋。倉田志のぶの自宅。客の持参した品物を担保としてお金を貸す「質預かり」と、客の持参した品物を相場に基づいて査定し、現金で支払う「買い取り」の2つを行っている。在庫の処分は、独立して自分の質店を持つ志のぶの伯父に任されている。12代目の主人倉田が亡くなってからは、志のぶと、母親の倉田百合江によって経営されているが、経営状態は良くない。 公家から武家になって活躍した歴史に残る名家、北上家とは、江戸時代より深い繋がりがあったと伝えられている。なお、江戸時代には質屋は「しち=なな」という読み方から、隠語で「七つ屋」と呼ばれており、本作『七つ屋志のぶの宝石匣』のタイトルはそこから来ている。

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