拳奴死闘伝セスタス

拳奴死闘伝セスタス

1世紀のローマ帝国を舞台に、命がけの拳闘で勝ち抜かなければ生きていけない少年・セスタスの、過酷な闘争の日々を描く格闘漫画。技来静也の代表作『拳闘暗黒伝セスタス』の直接的な続編として語られる物語で、皇帝ネロの勅命により、皇帝主催の闘技大会予選に出場するところから始まる。具体的な歴史考証や拳闘の技術解説も本作の魅力。

正式名称
拳奴死闘伝セスタス
ふりがな
けんどしとうでんせすたす
作者
ジャンル
アクション
レーベル
ヤングアニマルコミックス(白泉社)
巻数
既刊11巻
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概要・あらすじ

物心ついた頃から闘技場で拳闘を行う奴隷、拳奴として育てられてきたセスタス。15歳で拳闘士として出場して以来2年、数々の修羅場をくぐり抜け、明日への命をからくも繋いできた。そんな彼にローマ皇帝ネロの勅命が届く。それは、皇帝主催の闘技大会・コンコルディア闘技祭の拳闘部門に出場せよというものだった。

過去の戦いで着実に鍛えられていたセスタスは、地域予選で体格に勝る対戦相手を連破。決勝こそ苦戦したものの、新たに会得した圧縮打法で、本戦へと駒を進め、本戦の舞台となるシチリア島の街・シラクサに赴いた。そこで各地の予選を突破した猛者たちを見て、セスタスは思わず気後れしそうになる。だが、2年ぶりの苦い再会を果たしたルスカ・アッティクス・デミトリアスの「大会を辞退しろ」という言葉が頭によぎり、意地でも戦い抜く覚悟を決めるのだった。

登場人物・キャラクター

セスタス

ドリスコ拳闘団に所属する、17歳の拳奴(闘技場で拳闘をする奴隷)。戦士としては小柄だが、俊敏な動きと師・ザファルから伝授された拳闘術で、数々の死闘をくぐり抜けてきた。純粋無垢で、本来は戦いを好まぬ心優しい少年だが、敗北が死に直結する拳奴の世界では、戦って勝つ以外に生き残る術はなく、いつか自由を勝ち得るために拳闘の修行を続けている。 『拳奴死闘伝セスタス』では、ローマ皇帝ネロ主催の闘技大会予選に出場するところから物語が始まる。予選では、拳闘士となって2年間戦い続けてきた経験と日々の鍛練により、体格で勝る対戦相手を次々と撃破。それらの戦いを通じて、新たに圧縮打法を会得したセスタスは、予選決勝の相手フェリックスの曲射打法に苦しめられながらも、圧縮打法による腎臓打ちでKOし、本戦出場を決めた。 シチリア島で開催された本戦では、予選とは段違いの強豪揃いのなかで戦うことになる。初戦の相手はザファルの師であるデモクリトスの弟子・イオタ。 独自の間合いを保つ、掴みどころのない強敵だったが、予選での経験を活かして勝利し、二回戦へと駒を進めた。

ザファル

セスタスに様々な拳闘技術を教える師匠であると同時に、身寄りのないセスタスにとっては父親的存在でもある。かつては神速の剛拳・ヌミディアの拳狼などの異名を誇る伝説的拳闘士だった。しかし、ルスカの父・デミトリアスとの試合で、相手の右目を潰したものの、自らも左膝を損傷。 以後、実戦の舞台から去り、セスタスらの育成に力を入れることとなる。その拳闘技術はいまだ健在で、彼が極めた究極の打法「無間」は、拳を密着させた状態で木材を粉々に粉砕するほどの破壊力がある。

ペドロ

セスタスと同じドリスコ拳闘団に所属する。捻くれた性格をしていたため、団員たちからイジケ虫と呼ばれていた。エルナンド、ゲティと共にザファルから拳闘術を学ぶ、セスタスの良き修行仲間。セスタスと似たような体格で、速さと手数を重視した訓練を受けている。

エルナンド

セスタスと同じドリスコ拳闘団に所属する。セスタスと同年齢だが、上背がありヒョロという渾名で呼ばれている。ペドロ、ゲティと共に、ザファルから拳闘術を学ぶ、セスタスの良き修行仲間。長身とリーチを活かした訓練を受けている。

ゲティ

セスタスと同じドリスコ拳闘団に所属する。気弱で要領が悪いため「ドン亀」と呼ばれている。ペドロ、エルナンドと共に、ザファルから拳闘術を学ぶ、セスタスの良き修行仲間。背は低いがガッシリとした体つきをしているため、接近戦を挑むスタイルの訓練を受けている。

ドリスコ

セスタスが所属するドリスコ拳闘団の団長で、各地を巡回し、拳闘を見世物として金を稼いでいる。飲んだくれで銭に汚いろくでなしだが、商売の話となると途端にしたたかになる抜け目ない男。また、働きに応じてきっちりと報酬を出すなど、身内に対してけじめをわきまえているほか、所属拳奴たちを家族のように大事に思っている節もある。 そのため、拳奴たちからの評判は悪くない。

ルスカ・アッティクス・デミトリアス

ローマ帝国徒手格闘兵団衛帝隊の一員で、総合格闘技パンクラティオンの使い手である。天性の格闘センスを有し、若輩ながらもほぼ完成された技量を備えている。見事な金髪と甘いマスクの持ち主でもあり黄金のルスカ、ローマの若獅子と呼ばれるほど、市民からの人気も高い。セスタスとは彼が拳闘士デビューしたときに知り合い、親しい友人関係が続いていたが、ある事件をきっかけに大きな溝が生じてしまった。 また、衛帝隊を束ね、ザファルの左膝を破壊した格闘王・デミトリアスを父に持ち、その才能は父親譲り。が、家族を蔑ろにし続けた父に強い反感を抱いており、いつか復讐しようと考えている。

ロクサーネ

ローマ帝国徒手格闘兵団衛帝隊の一員で、穏やかな物腰と艶やかになびく黒髪が特徴の長身美女だが、衛帝隊二等衛士という格闘の実力者でもある。窮地にあっても他者をいたわるセスタスの魂に感動し、ローマ在留時代に何かと彼の世話を焼いていた。セスタスがローマから離れるとき、彼女が手渡した赤いリボンは、その後のセスタスの心の支えとなり、重要な試合では「お守り」として常に身に付けている。

アドニス

ローマ帝国徒手格闘兵団衛帝隊の一員で、総合格闘技が主流の衛帝隊のなかでは数少ない拳闘士。皇帝主催の闘技大会本戦に推薦出場することになったが、予選を免除されたことが気に入らないガルロから試合を申し込まれる。濡れた床に足を取られる危ない場面があったものの、顎先への一撃でガルロを倒し、有資格者であることを証明した。 生来のお調子者だが、短気で好戦的な一面も。戦闘スタイルは、神速の住人と呼ばれる衛帝隊随一の拳速・俊足を活かしたもので、カウンター忘却(レデ)の昇弾、7つの急所をほぼ同時に打ち抜く昴(プレアデス)などの決め技を持つ。

フェリックス

闘技大会地域予選の決勝でセスタスが対戦した職業拳闘士。赤い暴風の異名をもち、オープンスタンスからの左右のフック連打で相手を壁際に追い込む戦法を得意とする。視界の外側から刈り込むように曲射されるそのフックは、肩の入れ方で射程が変化するというもので、セスタスの目測を狂わせ、回避を身上とする彼にかなりの苦戦を強いた。 が、暴風の弱点を見抜かれ、その後の執拗な腹打ちで呼吸を乱された隙に、腎臓打ちを喰らって敗北する。

イオタ

マケドニア出身の解放拳奴で、闘技大会本戦にてセスタスと戦った。長い四肢を活用し、徹底的にヒットアンドアウェイを繰り返して打ち合わないことから触れ得ざる亡霊の異名を持つ。また、異様なスタミナの持ち主で、正午から夕刻まで戦っても息を乱さないほど。反面、肋が浮くほどの痩身ゆえに攻撃力や耐久力は低く、自分のペースを保てなくなると弱い。 ザファルの師・デモクリトスの弟子のひとり。

エムデン

かつてセスタスと戦ったことがあるポンペイ最強の拳闘士。鉄壁の防御で圧倒し、相手のペースが乱れたところに必殺の一撃を加えるのが主戦法である。セスタスに敗れて連勝記録が途絶えた後、鉱山送りになっていたが、再起を賭けて闘技大会に出場。本戦一回戦では、アブダットのマレクを破り、二回戦進出を果たした。

ロキ

闘技大会本戦に出場した北方ガリア人。最北のロキと呼ばれる。北方人特有の並外れた巨漢で、デミトリアスよりも大柄だとされる。その巨体が備える攻撃力と防御力は凄まじく、第一試合でハミルカルの猛攻を難なく凌いだ後、張り手一発でKOした。

ガルロ

鍛錬のし過ぎで体調を崩し、予選を欠席してしまった闘士。骨折を理由に予選を免除されたアドニスが、推薦枠で本戦出場できることに納得できず、果し合いを申し入れる。「猛牛」の異名を持つ強打者で、拳闘技術も申し分ない実力者だったが、顎先へのピンポイント・ブローを喰らい敗れた。

書誌情報

拳奴死闘伝セスタス 11巻 白泉社〈ヤングアニマルコミックス〉

第11巻

(2023-05-29発行、 978-4592163138)

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