暁の息子

暁の息子

タイ・ミャンマー・ラオスの「黄金の三角地帯」を舞台に、戦闘を生業とする少数部族・カラトラ族に拾われ、育てられた若き戦士・柊成(シャン・パ・ルー)と、柊成を探しに来た日本人のいとこ・草乃実が織りなすドラマチックなアクション作品。作者の樹なつみは単行本のあとがきで、構想自体はデビュー当時からあったが、少女マンガでは無理な設定だったので、長い間、寝かせていたと語っている。初めは舞台にトルコを考えていたが、作品発表時の世界情勢からミャンマーに変えた。複雑な話のため、全5回の連載にしたが、それでも「構想のプロローグ部分しか描けていない。機会があれば続編を描きたい」とも語っている。しかし、実現はしていない(2017年現在)。「月刊アフタヌーン」誌上で、1999年10月号から2000年2月号まで連載された。

正式名称
暁の息子
ふりがな
あかつきのむすこ
作者
ジャンル
アクション
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概要・あらすじ

20世紀末。タイ・ミャンマー・ラオスの国境近くで、10年前に6歳で行方不明になった甥の柊成を探すため、日本人ジャーナリストの是枝は密林地帯に入ろうとしていた。そこは、政権の不安定さと麻薬シンジケートの暗躍のため、危険きわまりない地域だった。しかも、タイに置いてきたはずの娘・草乃実(そのみ)が、こっそりついてきていた。

密林の中で戦闘に巻き込まれる草乃実。危ないところを、ミャンマーの少数部族・カラトラ族の若き戦士に助けられるが、それが是枝の甥、草乃実にとってはいとこの柊成だった。日本での記憶もなく、すっかり戦士・シャン・パ・ルーになりきっている柊成を、なんとか平和な日本に連れ帰りたいと思う是枝と草乃実。

だが、2人は知らないうちに華僑の権力闘争に巻き込まれ、二人に対する殺害命令が出されてしまう。しかも、カラトラ族の長は、柊成(シャン・パ・ルー)に殺害を実行しろという。

登場人物・キャラクター

柊成 (しゅうせい)

ミャンマーの密林地帯に住む、若く優秀な戦士。16歳。もともとは日本人だが、6歳のときにジャーナリストの父親につれられ、ミャンマー入り。戦闘に巻き込まれ、ひん死の父親とともに少数民族・カラトラ族に拾われる。父親は1年後になくなり、そこで生き延びるために、戦士になることを自分に誓う。シャン・パ・ルーという名前は、「暁の子ども」という意味で、「いつかこの地に暁をもたらす子どもである」と長老の占いに出たためにつけられた。

草乃実 (そのみ)

柊成(シャン・パ・ルー)のいとこ。日本人で、高校2年生の女の子。色白でかわいいが、元気で気が強い。深く考えずに行動しては周囲に迷惑をかけるタイプ。ブルセラで下着を売ったというぬれぎぬを着せられて停学になるが、その間に父・是枝が柊成を探しにミャンマーに行くと聞いて、父には内緒でこっそりついていく。カラトラ族の戦士になりきっている柊成に、正面からぶつかっていく。

是枝 (これえだ)

柊成(シャン・パ・ルー)の叔父。日本人ジャーナリスト。草乃実(そのみ)の父。10年前、タイ・ミャンマー・ラオスの国境付近で消息不明になった、兄と甥の柊成を探し続ける。7年後、少数民族・カラトラ族がその時期に子供を拾ったという情報を得る。そこから3年かけて入国の機会をうかがい、新聞社をスポンサーにつけて現地入りする。 1人で生きていくために、大人にならざるをえなかった柊成を思いやり、日本に連れて帰って子供らしい時間を取り戻してやりたいと願う。

タイ・ミ・ラン (たいみらん)

柊成(シャン・パ・ルー)の仲間。カラトラ族の若き戦士のひとり。名前は、「夜の長い髪」という意味で、その名の通り、長い黒髪を持つ。妹のノゥ・ミァンは柊成の婚約者。柊成に目をかけて可愛がっていたが、柊成が命令に背いて是枝と草乃実(そのみ)を助けようとした行為を裏切りと感じ、柊成に決闘を申しこむが、敗れて命を落とす。 最後まで妹のことを気にかける。

ソン・ツー (そんつー)

柊成(シャン・パ・ルー)の仲間。カラトラ族の若き戦士のひとり。名前は、「走る水牛」という意味で、その名の通り、大きな体の持ち主。頭がよく、常に冷静で、正しい状況判断ができる。暗殺命令が下された後も、自らの判断で是枝を助ける。

ノゥ・ミァン (のぅみぁん)

カラトラ族の若い女の子。タイ・ミ・ランの妹で、柊成(シャン・パ・ルー)の婚約者。とてもかわいい容姿を持つが、カラトラ族では肌の白さが尊重される上、いとこ同士の結婚が最良とされているため、柊成のいとこで色白な草乃実(そのみ)に複雑な思いを抱く。長老から柊成に出された暗殺命令を立ち聞いてしまい、柊成のためを思い、命をかけて草乃実たちを逃がす。

ト・カンパ (とかんぱ)

カラトラ族の族長で、長老の息子。ラングーンの大学を出たインテリで、英語とビルマ語が堪能。放浪の民であり続けたカラトラ族にも定住の地が必要だという考えの持ち主で、そのために華僑から政治的な取引を持ちかけられ、一族のおきてを破って是枝たちの暗殺命令を出す。

集団・組織

カラトラ族 (からとらぞく)

少数民族。定住地を持たない流浪の民で、兵力を売って生計を立てる、いわゆる傭兵の一族とされる。部族の男子全員が戦士となり、かつては村同士の戦争に一役かっていたが、今では、少数民族軍の傭兵として活動している。精霊のお告げにより住みかを替えるため、幻の民族ともいわれる。暮らしぶりは貧しいが、非常に誇り高い部族で、血族と掟を何より大切にする。 ちなみに、草乃実が柊成(シャン・パ・ルー)を呼ぶときに「柊ちゃん」というが、「シュウチャン」とはカラトラ族の言葉では「臆病者」を意味し、最大級の侮辱となる。

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