概要・あらすじ
時は明治12年。地獄の奥深くで一人の妖狐が目を覚ました。その名は九尾狐。900年前、天狐によって妖力の元である八尾(八本の尻尾)を奪われ、封印されていた大妖魔である。九尾狐を起こしたのは天狐だった。敵意を剥き出しにする九尾狐を無視して、天狐は九尾狐を現世へと送り出す。現世はまさに文明開化の真っ只中で、すっかり様相が変わっていた。しかも、誰にも九尾狐の姿が見えておらず、また九尾狐も人間に触れることもできなかった。そこかしこにいるはずの物ノ怪の気配すらないことに違和感を覚える九尾狐。そこに一人の男が現れ、九尾狐に声をかける。彼の名は川路利良。帝都「東京」に設置された警視庁の大警視(警視総監)で、物ノ怪の類が見える男だった。川路はガス灯を次々に破壊している犯人を追っていた。彼によると、犯人はこの世の変化を厭い、存在意義を失った物ノ怪の成れの果て「ニゴリモノ」だという。そこに黒くおぞましい姿をしたニゴリモノが現れた。九尾狐は川路から受け取った刀で、ニゴリモノを打ち払う。するとニゴリモノは、物ノ怪のふらり火に変わった。ガス灯が闇を照らすようになってから、誰も自分に気づいてくれないことを恨んでいるうちに、ニゴリモノになってしまったらしい。ふらり火は九尾狐に礼を言うと、地獄へと強制送還されていく。ふらり火と入れ替わるように現れたのは天狐だった。天狐は川路とがっちり握手を交わし、九尾狐を警視庁ニゴリモノ対策課の邏卒隊(妖狐邏卒隊)に任命する。天狐は川路と通じており、東京を脅かすニゴリモノ対策のために、九尾狐を900年の眠りから目覚めさせたのだった。
登場人物・キャラクター
九尾狐 (きゅうびこ)
狐の耳、しっぽ、牙などが特徴の白毛の妖狐。元は、平安時代に世に災いをもたらしていた大妖魔で、高い霊力を持つ天狐により、妖力の元である八尾(八本の尻尾)を奪われ、900年間地獄で封印されていた。明治時代になり、天狐によって封印を解かれてから、少年のような姿になった。また、妖力もかつてほどではない。世の中の脅威となっている「ニゴリモノ」対策に協力すれば、八尾を返すと天狐に持ちかけられ、引き受ける。失った八尾は、天狐によって妖狐に変化しており、彼らを率いて「妖狐邏卒隊」として活動する。"元"九尾狐と呼ばれることを嫌い、自ら「白(ビャク)」と名乗る。いなり寿司が大好物。
天狐 (てんこ)
高い霊力を持つ妖狐。グラマラスな女性の姿をしており、狐の耳、しっぽ、牙などが特徴。狐の平安時代、世の中を荒らす九尾狐と戦い、彼の八尾(八本の尻尾)を奪い、地獄の奥深くに封印する。「ニゴリモノ」と呼ばれる物ノ怪の成れの果てが跋扈(ばっこ)するようになった明治時代、九尾狐の封印を解く。人間である大警視の川路利良と手を組み、九尾狐を警視庁ニゴリモノ対策課の邏卒隊(妖狐邏卒隊)に任命する。九尾狐から奪った八尾を変化させ、九尾狐の部下となる妖狐を生み出す。
川路 利良 (かわじ よしとし)
警視庁の大警視で、口ひげが特徴の中年男性。物ノ怪などが見える霊感の持ち主。東京で頻発する怪事件の犯人が「ニゴリモノ」と呼ばれる存在であることを知っており、公の活動とは別に、ニゴリモノ対策に乗り出す。天狐の提案に従い、九尾狐を警視庁ニゴリモノ対策課の邏卒隊(妖狐邏卒隊)に任命する。「日本警察の父」といわれる同名の実在人物、川路利良がモデル。
キン
九尾狐率いる妖狐邏卒隊の一員。九尾狐の八尾(八本の尻尾)の一つから生まれた妖狐の少年。金毛が特徴。ギンとペアで行動することが多い。「金烏の眼(キンウノマナコ)」を持ち、その目に映った者の動きを完璧に写し取り動くことができる。
ギン
九尾狐率いる妖狐邏卒隊の一員。九尾狐の八尾(八本の尻尾)の一つから生まれた妖狐の少年。銀毛が特徴。キンとペアで行動することが多い。「玉兎の眼(ギョクトノマナコ)」を持ち、相手と目を合わせることで幻を見せる。
赤 (しゃく)
九尾狐の八尾(八本の尻尾)の一つから生まれた妖狐の少女。赤毛が特徴で、天狐の元で、妖狐邏卒隊のお世話をしている。言葉は理解できるが、話すことはできない。
緑 (ろく)
九尾狐率いる妖狐邏卒隊の一員。九尾狐の八尾(八本の尻尾)の一つから生まれた妖狐の少年。毛なみは緑で、陽気で明るい性格。黄(コウ)の助手でもある。草木を自在にあやつることができる「祖茅ノ手(オヤカヤノテ)」を持つ。
黄 (こう)
九尾狐率いる妖狐邏卒隊の一員。九尾狐の八尾(八本の尻尾)の一つから生まれた妖狐の少年。毛なみは黄色で、丸メガネが特徴。「万象呑ノ舌(バンショウテンノシタ)」を持ち、その舌で味わったあらゆる物質の、成り立ちや仕組みをすべて理解することができる。学者肌で、研究や実験が大好き。
書誌情報
明治ココノコ 5巻 小学館〈ゲッサン少年サンデーコミックス〉
第1巻
(2021-01-12発行、 978-4098504428)
第2巻
(2021-07-12発行、 978-4098506170)
第3巻
(2022-04-12発行、 978-4098510160)
第4巻
(2023-01-12発行、 978-4098515226)
第5巻
(2023-08-09発行、 978-4098527755)