概要・あらすじ
興信所の所長を務める森山のもとに、ある中年女性が息子の捜索を依頼するためにやって来たが、森山はその依頼を断る。たまたま彼女とすれ違った高須が、森山に依頼を断った理由を尋ねたところ、森山は警察や業界大手筋でも手に負えなかった内容だからだと答えるのだった。そんな森山に対し、女性が持ち込んだ行方不明の息子の写真を目にした後、高須は本題である「一成会明野組が殺し屋を雇ったらしい」とのユスリのネタを切り出す。
森山は危険な依頼はお断りだと追い返すが、後日高須は何食わぬ顔をして、あるツテから入手したものだと一枚の写真を再度森山のもとに持ち込む。それは先日彼が話題にした殺し屋の写真で、森山が捜索依頼を断った行方不明の息子と同じ位置にほくろがあった。
高須はその共通点と自身の直感から、殺し屋の青年・宇部八雲の素性をネタに、暴力団「一成会明野組」の組長代行補佐を務める城ノ内美孝に取引を持ちかける。
登場人物・キャラクター
宇部 八雲 (うべ やくも)
まだ少年めいた雰囲気を持つ青年。茶色く脱色した癖っ毛が特徴。暴力団「一成会明野組」の組長代行補佐である城ノ内美孝に殺し屋として請われ、中東から日本にやって来た。仕事の後に同性の雇い主に対して性的な報酬を要求するが、殺し屋として腕は確かで命令にも忠実。ある過去の出来事が原因で、水と魚を苦手としており、雨を極度に嫌っている。
高須 (たかす)
黒髪で長身の青年。落ち着いた雰囲気の男性で、あまり表情を変えることがない。もともとは、東洋チャンピオンになったこともあるボクサーだった。独自のルートで危険なネタを仕入れては、その情報を高く売りつける「ユスリ屋」をしており、親しくしている森山からの度重なる忠告にも従わず、危険な仕事に深入りしがち。一度手をつけた仕事は危険なものでも最後までやり遂げないと気が済まない頑固さを持っている。
森山 (もりやま)
口ひげを蓄えた中年男性。表情豊かで感情がすぐ顔に出てしまう。小さな興信所の所長を務めており、ユスリ屋をしている高須と親しい。高須が危うい仕事を扱うことを心配しており、何度も故郷に帰れと忠告している。
城ノ内 美孝 (じょうのうち よしたか)
眼鏡をかけ、髪をぴったり後ろに流した堅い外見の30代くらいの男性。暴力団「一成会明野組」の組長代行補佐。内縁の妻と「渚」という幼い娘がいるが、いざとなれば彼女らを見殺しにするのもためらわない冷酷さを持つ。殺し屋として雇い入れた宇部八雲に対し、珍しく損得勘定以外の興味を僅かに抱いている。
岸 玄季 (きし げんき)
ぼさぼさの黒髪で無精ひげを生やした男性。暴力団「辺山組」に属する組員だったが、現在は「一成会」に吸収され、その中の派閥の1つ「宝珠会」の傘下の実働部隊「泰山党」の党首を務めている。ユスリ屋の高須に、「明野組」が雇い入れた殺し屋の宇部八雲の写真を送って情報を提供した。かつての「辺山組」の今は亡き組長が、ボクサー時代の高須のファンだったため、高須のことを買っており、城ノ内美孝を排除する目的で高須に情報を提供して自身も機を窺っている。
城ノ内美孝の妻 (じょうのうちよしたかのつま)
黒いショートヘアの30代くらいの女性。城ノ内美孝の内縁の妻で、「渚」というまだ幼い娘がいる。落ち着いた雰囲気の服をまとい、穏やかな立ち振る舞いをする。しかし、城ノ内を脅す目的で近づいた高須に交渉の余地を与えず、夫に害が及ぶくらいなら娘ともども死ぬ覚悟を見せるなど、したたかで芯の強い一面を持つ。