概要・あらすじ
愛する森村靖彦とついに結ばれ、かわいい一人息子の森村真青を授かった森村麻衣は、家族に支えられて仕事と育児を何とか両立し、忙しくも充実した毎日を送っていた。そんなある日、仕事で薬剤の副作用報告に疑問を感じた麻衣は、上司である辰巳に詳細な説明を求めるが、曖昧な返事しかもらえずに終わってしまう。その後、麻衣が勤めるオーネスト製薬の薬剤「ミドキシン」を娘が服用しているという野口と公園で偶然出会い、彼女から娘の治療に関する深刻な話を聞かされる。
自社の製品が市場でどんな役目を果たしているかという一例を知った麻衣は、これを受けて白黒をはっきりつけようと決意し、副作用報告についての説明を求めて辰巳に詰め寄るのだった。
登場人物・キャラクター
森村 麻衣 (もりむら まい)
オーネスト製薬に医薬情報担当者(MR)として勤務する30代の女性。中学時代からずっと片想いをしていた憧れの先輩である森村靖彦と長年の交際期間を経て結婚し、息子の森村真青を授かった。産後は退職して主婦業に専念していたが、真青が1歳になったのを機に職場復帰を果たした。負けず嫌いで不屈の精神は学生時代からずっと変わっておらず、会社員と母親を両立させながら日々奮闘している。 惚れた弱みからか結婚前までは靖彦に従順なところが多かったが、母親となったいまでは強気な態度を取ることも多い。
森村 靖彦 (もりむら やすひこ)
泰西商事に勤務し、課長を務める男性。中学時代は坂本りおに惹かれていたことがあり、坂本遼太郎とは恋のライバル同士だったが、長年に渡って自分を支え続けてくれた森村麻衣とついに結婚、数年後には息子の森村真青が誕生した。もともとは獣医を目指し大学も獣医学部に所属していたが、麻衣の両親に交際を反対されてやむなく進路を変更したという過去がある。 学生時代の旧友である縞統也と、同じく後輩だった歌手の杉田聖子からステイゴールド教育基金の設立に誘われ、人生における分岐点に立つことになる。
森村 真青 (もりむら まお)
森村麻衣と森村靖彦の間に生まれた好奇心旺盛な男の子。言葉はまだつたないが、麻衣と靖彦だけでなく多くの大人たちと関わりながらすくすくと成長中。日中は麻衣が仕事で不在のため、麻衣の実家である浜田家に預けられ、祖父と祖母とともに過ごしている。幼いながらも状況判断能力に優れており、時々麻衣と靖彦の肝を冷やすような言葉を発することもある。 普段からたくさんのおもちゃに囲まれているが、麻衣が子供の頃にかわいがっていたトラのぬいぐるみが一番のお気に入り。
坂本 りお (さかもと りお)
森村麻衣の幼なじみで親友の女性。過去に流産を経験し、夫の坂本遼太郎とは一度離婚したこともあったが、現在は遼太郎と再婚し、再び妊娠している。海外での生活が長かったせいか変わった味覚をしており、作った料理は親友の麻衣ですらも敬遠してしまうほど。学生時代にバスケットボール部で体を鍛えていたこともあり、妊娠中の今も元気に動き回っている。 麻衣とはこれまでほとんどケンカもしたことがなかったが、ある時、麻衣の意外な行動に呆れて苦言を呈し、いさかいを起こしてしまう。
坂本 遼太郎 (さかもと りょうたろう)
坂本りおの夫で、森村靖彦と森村麻衣の学生時代からの友人。NBAのバスケットボール選手で、かつてケガで引退を余儀なくされたものの、見事に復帰を果たした。一度はりおと離婚をしたこともあったが、現在は再婚して郊外に家を購入し、幸せに暮らしている。靖彦とはかつて、りおを巡る恋のライバル関係にあった。だが現在は友人として交流が続いており、夫婦の両者を知る者として、靖彦の家庭の事情を何かと相談される時もある。
辰巳 (たつみ)
オーネスト製薬の部長を務める男性で、森村麻衣の上司。浮気をした元キャビンアテンダントの妻と離婚した過去があり、娘の辰巳結花と息子の辰巳真之介のうち、真之介を引き取って育てている。たとえどんな時でも冷静で取り乱すことはなく、妻の浮気を知った時にもさほど感情は動かなかった。公私に渡って麻衣の良き相談相手であるが、麻衣に対しては部下以上の感情を持っている。
辰巳 結花 (たつみ ゆいか)
辰巳の娘で小学生の女の子。弟想いのしっかり者だが、後先を考えずに大胆な行動を起こしてしまうこともある。両親の離婚後は母親と暮らしていたが、母親が海外で仕事をすることになったため、辰巳に引き取られることとなった。森村麻衣の厚意により、麻衣の実家である浜田家に預けられる日もある。その際も完璧な挨拶と立ち居振る舞いを見せ、麻衣の厳格な両親を思わず唸らせた。
辰巳 真之介 (たつみ しんのすけ)
辰巳の息子でとても利発な小学生の男の子。父一人子一人で暮らしているが、辰巳が仕事で育児が困難な時は森村麻衣の厚意によってしばしば麻衣の実家に預けられている。そのため、森村真青と一緒に遊んで面倒をよく見ている。幼い頃から辰巳を困らせることはほとんどなく、真っ直ぐ素直に育った。
縞 統也 (しま とうや)
世界で活躍する人気ロック歌手の男性。「タビィ」の愛称で音楽活動を行っている。坂本遼太郎の同級生で、かつてともに多感な高校時代を過ごした。世界的なミュージシャンのジョージ・ヴァレー、歌手の杉田聖子とともにステイゴールド教育基金を設立する。森村靖彦の職務経歴に期待し、基金設立のための協力を願い出る。
三島 (みしま)
かつて泰西商事に勤務していた中年の男性。入社時から目をかけていた森村靖彦に、社内の方針によってリストラを言い渡されてしまう。これが原因で家庭までもが崩壊してしまい、とうとう追い込まれ靖彦を逆恨みして森村真青を誘拐しようとする。
野口 (のぐち)
病気の娘を育てながら、シングルマザーとして家計を支えている女性。ミドキシンが娘の病気に有効な作用を示し、他に治療法がないこともあって頼りにしていた。だが、オーネスト製薬のライバル会社である安心製薬と癒着した医師が、不適格な市販後調査結果を報告したことで、ミドキシンの販売が危ぶまれるようになり、娘の命を左右されるほどの事態に見舞われてしまう。
山本 (やまもと)
森村家の隣に住む、お節介で口うるさい中年の女性。夫の浮気が発覚してから人が変わったようになってしまい、娘の山本冬美に対して過干渉になる。助産師の資格を持っているため医療現場に精通しており、冬美には医師を目指してほしいと熱望するも、思い通りにはいかずにいる。
山本 冬美 (やまもと ふゆみ)
森村家の隣に住む高校1年生の女の子。学校ではバスケットボール部に所属している。森村真青をとてもかわいがっており、真青からも懐かれている。教育熱心な母親の山本によって過剰な期待をかけられて窮屈な生活を強いられており、家庭内では反抗的な態度を取る。同じバスケットボール部の部長に片想い中だが、気持ちを打ち明けられずにいる。
菊池 (きくち)
ステイゴールド教育基金の事務局に携わっている女性。かつては食堂を営んでいたが、震災によって夫を失い、現在は弁当屋の仕事をしながら女手一つで息子の菊池あさひを育てている。さまざまな苦労を経験したことから人間不信に陥ってずっと心を閉ざしていたが、森村靖彦との出会いによって人生の転換期を迎えることとなる。
菊池 あさひ (きくち あさひ)
菊池の息子で母親思いの優しい小学生の男の子。とても真面目な性格で、亡き父親の代わりに自分が母親を守ろうとしており、働きづめの母親のためにいつも何かできることはないかと考えている。絵がとても上手で、家族との仲睦まじい姿を描いた作品は森村靖彦の心に強い感銘を与えた。
集団・組織
ステイゴールド教育基金 (すていごーるどきょういくききん)
世界的なミュージシャンであるジョージ・ヴァレーの慈善基金団体によって設立された基金、及びその運用団体。東北の震災によって被災した子供たちの勉学から起業までをサポートすることが主な目的である。東北地方に学校を設立することが決まっており、ジョージのビジョンに共感した多くの有名ミュージシャンたちが支援に参加している。
その他キーワード
ミドキシン
森村麻衣が勤めるオーネスト製薬が製造・販売をしている薬剤。特定の難病に苦しむ患者たちに有効性を示す治療薬として、大きな支持を得ている。しかし大江戸大学病院において、他の合併症との因果関係を否定できないまま患者が死亡したことから、担当医師が使用を渋り始めてしまう。