若い女子の成長物語
田舎で暮らし、ごく普通の人生を送るはずだった千帆子は、上京して下北沢に住むことになる。本家の伯母からの命令で、芸能事務所の養成コースに通うために上京するイトコの真夜と同居することになったのだ。都会でブラブラしているのは良くないということで、アートスクールに通うことになるが、入学金を振り込んだ後に学校は倒産してしまう。途方に暮れる千帆子は、小山三千(ミチ)という謎の多い美女に救われ、別のアートスクールに通えることになる。半年で田舎に帰る予定だったが、アルバイトや恋愛をしながら、千帆子は次第に下北沢に根ざした生活を送るようになる。本作は、若い女の子を主人公に、友だちや周囲の状況を通して自分自身を発見していく過程を描いた成長物語である。
田舎の彼氏と都会の恋人
千帆子には高志という彼氏がいる。中学の時から交際していて、お互いになんとなく結婚するのではと思っている仲である。アートスクールで半年間しっかり勉強した後、田舎に帰るという約束で上京した千帆子だが、わがままなプレイボーイで俳優の卵である樋口盾一と肉体関係を持ってしまう。医者の家に生まれた盾一は、医師になることを期待されるも挫折し、親に認めてほしい一心で俳優の仕事をしている美青年である。千帆子は、田舎に残した高志との約束を守らなければと思いつつ、盾一に惹かれていく自分の気持ちを抑えきれなくなっていく。
下北沢に住む人々の人生を描いた群像劇
下北沢に来て2日目、夜中に道に迷っていたところをミチに助けられ、千帆子は、BAR「トカゲ」を訪れる。それが縁で、千帆子はマスターのマサトや常連の町田輝(マチルダ)と懇意になる。複数のバイトを掛け持ちしてお金を稼いでいるミチは、少しぶっきらぼうで謎めいた美女。彼女は幼い頃から壮絶な人生を歩んでおり、その生い立ちは物語中盤から次第に明らかになっていく。また、千帆子に新しいアートスクールを紹介してくれたマチルダとマスターのマサトにも悲劇的な過去がある。本作は、千帆子の成長を軸に下北沢に住む人々の人生を描いた群像劇である。
登場人物・キャラクター
恩田 千帆子 (おんだ ちほこ)
ショートカットが特徴の22歳の女性。故郷で事務の仕事をしていたが、本家のイトコ、真夜の付き添いで上京。下北沢のマンションで真夜と同居していたが、真夜のわがままに付き合えずに部屋を出て、滝之湯という銭湯のおばあさんが大家をしているアパート「滝川荘」に引っ越す。アートスクールに通いながらカフェでアルバイトをしている。故郷に彼氏がいながら、俳優の盾一と出会い恋に落ちる。
小山 三千 (こやま みち)
モデルのような体型をした美女。夜中に道に迷っていた千帆子を助け、BAR「トカゲ」に連れていく。母親に恨みを持っているらしく、母に似た女優のポスターをナイフで切り刻んでいる。新聞配達と宅配のバイトを掛け持ちしており、月に2、3日しか休まない。稼いだお金を何に使っているかは不明。ある日、アパートの老朽化で追い出されることになり、千帆子の紹介で「滝川荘」に入居する。
書誌情報
東北沢5号 全3巻 集英社〈りぼんマスコットコミックス〉
第1巻
(2011-03-15発行、978-4088671147)
第2巻
(2011-09-15発行、978-4088671437)
第3巻
(2012-04-13発行、978-4088671994)







