概要・あらすじ
江戸時代の日本のような架空世界。ある宿場町で、身寄りのない少年・蟻助は、幼い頃から旅人の荷物運びをして暮らしていた。また、町に急病人が出ると、病人を担いで、小高い丘の屋敷に運ぶのも蟻助の役目だった。屋敷には、不思議な力を持つ、ゆゆ子という少女が住んでいた。ゆゆ子は、手から光を放ち、病人を治す能力を持っていたのだ。
蟻助はいつの間にか、ゆゆ子に恋心を抱き、町で買ったザクロのかんざしをゆゆ子に手渡す。そしてザクロを知らないというゆゆ子に、いつかザクロの林に案内してやると約束するのだった。それから一か月。丘の上の屋敷の門が開かれることはなかった。ゆゆ子の不思議な光が途切れたのだという。心配になって、蟻助が様子を見に行くと、そこには口からたくさんの虫を吐き出しながら、床に伏せるゆゆ子がいた。
隣の部屋で、ゆゆ子の母が、彼女を殺して埋めようと話しているのを聞き、蟻助はゆゆ子を背負ってその場を逃げ出した。やがて「人喰いの森」と呼ばれる場所に着いた二人は、そこで巨大なウツボカズラのような植物に囚われる。このまま溶けて一緒になりたい、二人は心を通わせるが、ゆゆ子は微笑みを残して力尽きる。
泣き叫ぶ蟻助の前に、カラスの妖(あやかし)が現れた。カラスは「帝」と呼ばれるものに雇われており、ゆゆ子を連れて去っていく。残された蟻助は、ゆゆ子が残したかんざしを額に突き刺した。脳に木の枝が刺さって、不死身のようになった旅人の話を思い出したのだ。蟻助は植物を突き破って外に出ることができた。
しかし彼は自分の名前も、ゆゆ子のことも、何も覚えていなかった。