あらすじ
第1巻
宇宙世紀0079年1月、ジオン公国と地球連邦のあいだに戦争が勃発。開戦当初はジオン公国側が優勢に戦いを進めていたが、徐々に地球連邦に押し返され、12月24日には宇宙要塞ソロモンを放棄するまで劣勢に追い込まれる。ジオン公国軍は残存部隊をア・バオア・クーなどに集めて地球連邦軍を迎撃することを決定。ソロモン守備隊所属のニルス・テオレルも、ヘクトが艦長を務める戦艦ムサイでア・バオア・クーを目指していたが、地球連邦軍の追撃を受ける。モビルスーツ隊隊長のジルド、同僚のミヒャエルと出撃するものの、ムサイは撃沈されてジルドとミヒャエルも撃墜されてしまう。生き残ったニルスは、ジルドの最後の言葉に従ってムサイを脱出した整備士、マリー・シーンとともに敵を振り切り、救助に来てくれたイリアスの戦艦、チェーホフにたどり着く。
第2巻
戦艦チェーホフに乗って無事に宇宙要塞ソロモンからア・バオア・クーまで逃げ切ったニルス・テオレルは、チェーホフ所属のモビルスーツパイロットとして新しい任務に就く。地球連邦軍を迎え撃つ準備を進める中、ニルスは整備士のマリー・シーンが重傷となったことを聞き、搭乗機での待機命令が出ているにも関わらず医務室に直行する。ニルスはマリーのことを心配して出撃せずにいようとしたが、マリーからはっぱをかけられて出撃することを決意する。モビルスーツデッキでザクⅠの出撃準備を急ピッチで進めていると、別の場所で地球連邦軍の兵士に奪われたジオン公国軍のモビルスーツが強襲。アーサーがザク・マインレイヤーに乗って強襲して来たモビルスーツをア・バオア・クーの外に出そうとするが、取っ組み合いの末に2機はア・バオア・クーの居住ブロックの方へ行ってしまう。居住ブロックにはマリーのいる医務室もいるため、ニルスは出撃準備を途中で切り上げて出撃するのだった。
登場人物・キャラクター
ニルス・テオレル (にるすておれる)
ジオン公国軍の少年パイロット。階級は軍曹で、年齢は17歳。ザクⅠに搭乗している。回避行動に関しては天才的な能力を持ち、「紙一重ニルス」という異名がある。一方で生来の気の優しさから敵に対して非情になれず、撃墜数は0。そのため「役立たず」、「弾除け」といった陰口を叩かれることもある。ソロモン守備隊に所属して2回目の実戦でソロモンが陥落し、撤退戦で乗艦のムサイが撃沈されてほとんどの仲間を失う。 唯一ムサイから脱出したマリー・シーンと合流してイリアスの戦艦、チェーホフに助けてもらう。以後はチェーホフ所属のモビルスーツパイロットとなる。いつも「自分は敵を倒して、人殺しをしてでも生き残る価値のある人間なのか」と自問自答していたが、マリーが自分のことを心配してくれることに気づき、マリーを守るために戦おうと決意する。
マリー・シーン (まりーしーん)
ジオン公国軍の戦艦ムサイでモビルスーツの整備をする少女。年齢は17歳。父親が宇宙工作機械の整備工場を経営していて、そこで見よう見まねで機械の整備技術を学ぶ。ニルス・テオレルの姉的存在で、いつもニルスのことを心配しながらはっぱをかけている。宇宙要塞ソロモンから撤退する際に、ムサイの撃沈直前に脱出し、ニルスと合流してイリアスの戦艦、チェーホフに助けてもらう。 以降はチェーホフ所属となってザクⅠの整備を担当する。
ジルド
ジオン公国軍の男性軍人。階級は少尉。宇宙要塞ソロモンの守備隊に所属しており、ニルス・テオレルがいる小隊の隊長を務める。戦果を挙げないニルスのことを部下が見下している中で、ジルドはニルスの能力を認めて今後の成長に期待している。ソロモンの撤退戦で、ニルスとマリー・シーンを身を挺して守って死亡する。
イリアス
ジオン公国軍の男性軍人。チベ級重巡洋艦「チェーホフ」を艦長を務める。ソロモンから撤退した残存兵をア・バオア・クーに運ぶ任務を受けており、救難信号を受けて急行したところ、ニルス・テオレルとマリー・シーンを救助する。その後、追撃する地球連邦軍の足止めをするために、ザク・マインレイヤーに乗って機雷を設置する作業中に敵に襲われる。 戦闘中に恋人のアンジェリーナを救うために、地球連邦軍の戦艦に激突して身動きが取れなくなる。敵を殲滅するために自分のモビルスーツごと撃つように命令し、ニルスの弾を受けて死亡する。
アンジェリーナ
ジオン公国軍の女性軍人。階級は少尉で、チベ級重巡洋艦「チェーホフ」のモビルスーツパイロットを務める。艦長のイリアスとは恋人関係にある。父親は、務めていた会社が地球連邦から経済的な圧力を受けて過労死し、母親は、地球連邦軍の訓練時の流れ弾を受けて死亡している。そのため、地球連邦に対して強い怒りを持っている。戦闘でイリアスが死亡した後は、チェーホフの艦長代理として乗組員をまとめていく。 のちにイリアスの子供を身籠っていることが分かり、終戦後に無事出産する。
シフォン・C・サイモン
ジオン公国軍の少女パイロット。階級は曹長で、年齢は17歳。母親がシフォンケーキが好きだったため「シフォン」と名付けられた。強行偵察型ザクに搭乗して偵察部隊として活動中に、地球連邦軍の重要情報をキャッチする。その直後に地球連邦軍に襲われ、部隊はシフォン・C・サイモン以外は全滅。シフォンも目を負傷してデブリ宙域に隠れていたところを、ニルス・テオレルに救助される。 戦艦の艦長に情報を伝えるものの、戦艦がア・バオア・クーに向かわずにデブリ宙域に留まることを知ると、自分の手で伝えようとして、強行偵察型ザクに乗って出撃する。
アーサー
ジオン公国軍の少年パイロット。階級は伍長で、チベ級重巡洋艦「チェーホフ」のモビルスーツパイロットを務める。ザク・マインレイヤーに乗って機雷の設置する作業や、ア・バオア・クー内で絶体絶命に陥ったチェーホフを救援するなどの活躍を見せる。生まれた直後に両親が死亡したため孤児院で育ち、両親が唯一くれた「アーサー」という名前を誇りにしている。 その名前を初対面で褒めてくれたアンジェリーナに好意を寄せる。
その他キーワード
ザクⅠ
ジオン公国軍が運用する量産型モビルスーツ。型式番号はMS-05B。「旧ザク」とも呼ばれている。戦争開戦時には主力モビルスーツとして地球連邦軍を圧倒し、多大な戦果を挙げた。MS-06ザクⅡが開発されると第一線を退き、後方部隊に回される。戦争末期になると、次々に開発される新型モビルスーツとの性能差が大きくなり、戦力的価値はほとんどなくなった。 ニルス・テオレルが搭乗する機体のコクピットは、上下開閉式の新統一規格に変更されていて、ニルスは機体から降りる際によく頭をぶつけている。
ザク・マインレイヤー (ざくまいんれいやー)
ジオン公国軍が運用する量産型モビルスーツ。型式番号はMS-06F。宇宙機雷の付設能力を持つ。ランドセルに機雷を搭載しているため、基となった機体より若干性能が低下している。また機雷付設中は攻撃に対して無防備となる欠点があり、作業するには護衛が必要不可欠となる。
強行偵察型ザク (きょうこうていさつがたざく)
ジオン公国軍が運用する量産型モビルスーツ。型式番号はMS-06E。「E型ザク」とも呼ばれる。レーダーを無効化するミノフスキー粒子の散布域における索敵・偵察能力に特化。機体を軽量化および高機動化しており、機体各部に高性能な光学式カメラが内蔵されている。