殿*姫*王子

第1巻

芸能事務所「ワナゴナ!」でマネージャーとして働く殿山千歳は、3年の付き合いを経て、いざ結婚という段階になって、妹に彼氏を寝取られてしまう。さらに仕事では、ライバルである同期の姫木鐘也に統括チーフの座を奪われるという屈辱を味わっていた。強烈なWパンチをくらって意気消沈していた殿山は、姫木と入社2年目の後輩、ジョージ王子に、奇妙で愛情いっぱいの励ましを受ける。そして、浮気現場となった自宅に帰る事ができない殿山は、王子の家でルームシェアをする事に決める。こうして未練を断ち切った殿山は、心の奥で密かに姫木と王子に感謝しながら、再び仕事に向き合うようになる。そんな殿山のもとに、新人タレントの金子久江をホットギアガールフレンドオーディションでグランプリデビューさせるという仕事が舞い込む。だが、平凡な女子高校生の金子はあまりにも取り柄がなく、本人のやる気も感じられず、殿山は困惑してしまう。一方で、姫木は礼法の家元を親に持つ徳川承子を、王子は宮大工の頭を父親に持つ男気あふれる香野唯奈を担当する事になる。多彩なアピールポイントを持つ徳川や香野と、金子との差は歴然であった。しかし、この仕事はほかの事務所との勝負以前に、殿山にとっては姫木や王子との勝負でもある。殿山は金子のやる気のない態度に頭を抱えながらも、時に厳しい言葉も投げかけ、グランプリ獲得に向けて奔走する。

第2巻

殿山千歳、姫木鐘也、ジョージ王子の、それぞれが担当する金子久江、徳川承子、香野唯奈は、ホットギアガールフレンドオーディションの一次書類選考を無事通過。しかし殿山が担当する金子は、相変わらずやる気がなく、個性も見つける事ができずに、殿山は悩んでいた。そんな中、金子のダイエットの辛さを共に感じるため、密かにダイエットをしていた殿山は、無理がたたって倒れてしまう。これをきっかけに殿山の思いを知った金子は、次第に彼女に対する態度を軟化させていくようになる。そして迎えたホットギアガールフレンドオーディションの二次審査。カメラテストのために準備をする控室で、香野はほかの事務所の山田あまんに嫌がらせを受ける。一触即発の雰囲気が漂う中、金子と徳川の機転によりどうにか事態は収束。この一件により金子、香野、徳川はより仲間意識を強める。そして三人は、プロのカメラマンを前に臨んだ二次審査で、それぞれに手ごたえを感じるのだった。 二次審査には、徳川と香野は順当に、金子もなんとか通過する事に成功する。殿山達が大いに喜ぶ中、新人の帝美礼がマネジメント事業部に配属される事となった。しかし帝は姫木や王子に媚を売り、電話には出ないし、所属タレントの写真を勝手に撮るなど、新人としてはもちろん、マネージャーとしてもありえない行動を続けていた。殿山は、そんな帝が教育係の姫木に思いを寄せている事を知り、また一方で、姫木が帝を擁護するような発言をした事に動揺している自分に驚くのだった。

第3巻

ホットギアガールフレンドオーディションの最終審査を前に、レッスン合宿の生配信が行われる事となった。そこで、金子久江、徳川承子、香野唯奈らのライバルである山田あまんが熱中症で倒れてしまう。香野は野球部でマネージャーを務めた経験から、適切な対応で山田を助け、周りに好印象を与えて一歩リードする。一方、殿山千歳が担当する金子は、合宿中に「おっかさん」というニックネームが付くほどの存在感を発揮し、異色ながらも強い印象を与える事に成功する。そんな中、殿山は帝に姫木との仲を邪魔しないよう、釘を刺されてしまう。さらに殿山のもとに、警察から彼女が担当している宇野ケイジが、賭け麻雀の疑いで逮捕されたという連絡が入る。久しぶりのクラス会で羽目を外してしまったという事で容疑は晴れたものの、CMの放送見合わせ、ドラマの撮り直しなど、事態の影響は想像以上に大きく、事務所にも多くのクレーム電話が鳴り響く。こうして激しく意気消沈する殿山を、ジョージ王子は親身になって慰め、励ますのだった。 そして迎えた最終審査の発表で、香野がグランプリを、徳川が特別賞を受賞。そして金子も、6位に滑り込む健闘を見せる。殿山にとっては大満足の結果であり、これを受けて金子も、前向きに動き出そうとするのだった。そんな殿山に対し、王子は少しずつ距離を縮める。王子の思いは本物で、彼は姫木に対しても、殿山に手を出さないように頼み込み、誠実にアプローチを重ねていく。そんな中、殿山は泣いてぐずる子供に、絵本を読んであげていた金子を目撃する。その姿に確信とひらめきを感じた殿山は、金子を売り出す光明を見出す。

第4巻

殿山千歳は、金子久江の最大の武器として「声」を見い出し、さっそく「おはなしのおねえさん」のオーディションを受けさせる。参加者は舞台経験者やフリーアナウンサーなど強者ばかりで、完全な素人は金子だけだったが、しっかりと子供を見て、媚びる事などしない金子の存在感は抜群だった。そして金子は、子供達の喧嘩を仲裁したり、一人ぼっちでいる子の世話をするなど、その魅力を存分に発揮する。結果、見事オーディションに合格を果たすのだった。 一方、姫木鐘也は帝美礼に独り立ちするように伝える。帝はそれを拒否し、自分の思いを姫木に伝えるが、彼は帝の告白を断ってしまう。そんな二人の前を通りかかった殿山は、帝の挑発を受ける。これが大きなきっかけとなり、殿山は姫木への思いや、王子からのアプローチに頭を悩ませる事となる。そんな中、殿山が新たに元局アナの后百合花のマネージャーを担当する事が決定。当初は后に好印象を抱いたものの、殿山は彼女の女子アナとしてのプライドが邪魔をして、一筋縄ではいかないと予感する。その思いは的中し、思ったような仕事ができない后は、次第に殿山に八つ当たりするようになっていく。そんな中、謹慎中だった宇野ケイジの復帰が決定。しかし謹慎中のストレスで、宇野は誰だかわからないほどに太っていた。復帰までの1か月で、彼を元の姿に戻さなくてはならない。殿山は、度重なるトラブルにどんどん疲弊していく事となり、ジョージ王子はそんな彼女を傍らで励まし、支え続けるのだった。