水晶の響

水晶の響

脳性まひと診断された少年の式町水晶は、バイオリニストを目指している。耳の聞こえない親友の奈月に自分の音を伝えたい思いから、理想のバイオリニストである中吉俊博に出会い、念願のレッスンを受けることになる。障がいと音をメインテーマに、実在のバイオリニストの式町水晶をモデルにして、脳性まひの少年の苦難と成長を描いたオリジナルストーリー。「BE・LOVE」2019年第6号から掲載の作品。式町水晶本人のメジャーデビューに合わせて掲載された読み切りドキュメンタリー「水晶の音」も収録されている。

正式名称
水晶の響
ふりがな
すいしょうのひびき
作者
ジャンル
その他芸能・音楽
 
いじめ
 
障がい
レーベル
BE LOVE KC(講談社)
巻数
既刊4巻
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あらすじ

第1巻

バイオリニストを目指している少年の式町水晶は、4歳の頃に脳性まひと診断され、車いすの生活を送る障がい者だった。水晶には、耳の聞こえない親友の奈月がいるが、大好きな奈月に、どうやって自分の音を伝えたらいいのか悩んでいた。そんなある日、偶然足を運んだライブで、バイオリニストの中吉俊博の音を聞いた水晶は、全身で空気を奏でるようなその音に感銘を受け、彼のようなバイオリニストになりたいと強く願うようになる。そして、一歳年上の奈月が卒業を間近に控え、中学からろう学校に進学することを知った水晶は、自分も自分にできるチャレンジをしたいと、特別支援学級から通常学級に移ることを決意。こうして水晶は、6年生から通うことになった6年3組で、担任の菊池や介助の有田の手を借りて新生活を始めるが、初めて知る通常学級のスピード感に自分がついていけないことにショックを受ける。さらに、水晶は一部のクラスメートからの悪意に満ちた言葉や態度に傷ついてしまう。水晶は好奇の目にさらされ、通常学級での心ない行為に、障がい者として今まで感じたことのなかった挫折感を味わうことになる。

登場人物・キャラクター

式町 水晶 (しきまち みずき)

3歳の時に脳性まひ(小脳低形成)と診断された少年で、年齢は11歳。手足の力加減の調節がうまくできず、特に足は親指に力が入らないため、ひょこひょこと独特な歩き方になってしまう。また緑内障の影響で、視野の下の方が欠けるため、転びやすい原因となっている。病気であることを感じさせない明るい性格で、おしゃべりが大好き。4歳で出会って以来、バイオリンが大好きで、幼い頃からクラシックの先生に習い続けてきたが、将来は中吉俊博のようなジャンルを超えたバイオリニストになりたいと思っている。奈月とは、M市立南小学校で特別支援学級に入った時からの付き合いで、無二の親友。奈月が中学からろう学校への進学を決めたことをきっかけに、式町水晶自身も6年生から通常学級へと通うことになった。しかし編入することになった6年3組は、もともと問題のある学級として有名なクラスだった。結局クラスメートから心ない言葉を浴びせられ、障がい者として通常学級での洗礼を受けることになる。誕生日は10月28日。

式町 啓子 (しきまち けいこ)

式町水晶の母親。北海道旭川で、水晶を予定より2か月早く出産した。早産だったことで、水晶がさまざまな障がいを負うことになると早々に覚悟を決めるものの、夫はそれに従うことができずに離婚。退院の許可が下りると水晶を連れて実家に戻り、仕事をしながら両親の手を借りて水晶を育ててきた。時間とともに現れる水晶の多くの障がいに向き合いながら、彼が生きていく手助けになればといろいろなことにチャレンジしている。音楽好きな水晶にさまざまな楽器に触れさせ、彼をバイオリンとの出会いに導いた。

奈月 (なつき)

式町水晶の親友の少年で、年齢は12歳。小学校2年生の時に、水晶がM市立南小学校の特別支援学級に入学して以来の仲。腎臓を患っており、学校でも時折透析のために別の教室へと移動することがある。耳が完全に聞こえない状態だが、幼い頃には聞こえていたこともあり、話すことはできる。ただし、相手の口の動きを読み取って言葉を聞くため、会話にはつねに相手の顔が見える状態であることが必要。特技はダンスで、音は聞こえないながらも周囲の動きを感じ取り、タイミングを合わせて踊ることができる。明るい性格で、協調性もあるが、耳の聞こえないことによるさまざまなストレスから、時々周りを受けつけなくなることがある。中学からは、ろう学校への進学を決めた。

中吉 俊博 (なかよし としひろ)

バイオリニストの男性。ジャズ、ポップス、クラシックとジャンルを超えた超絶バイオリンの弾き手、スーパーバイオリニストとして有名。中吉俊博の奏でる音が、式町水晶に感動を与え、水晶の目標となっている。自分のライブに訪れた水晶から、感動を伝えられて知り合うことになった。水晶側からはその後レッスンを求められ続けるが、多忙を理由に生徒は取らないことになっていたため、スタッフを通じて断り続けていた。しかし、水晶から送られた動画や手紙に目を通したことがきっかけで、水晶に興味を抱き、彼と直接会って話を聞くことで、生徒としてレッスンを始めることになる。

菊池 (きくち)

M市立南小学校6年3組の担任を務める教師の女性。穏やかな性格でつねに笑顔を浮かべており、眼鏡を掛けている。特別支援学級からやって来た式町水晶に、必ず車いすに座るようにと指示を出し、歩くことを禁じた。クラスの子供からは、「きくばぁ」と呼ばれることもある。

有田 (ありた)

M市立南小学校の通常学級に通う式町水晶の、介助を務めることになった男性。つねに笑顔を見せることなく、いつも無表情。意気込んで歩こうとする水晶を制止し、必ず車いすに乗るように指示を出す。基本的に水晶の学校生活に口をはさむことはなく、手助けもしない。6年3組の子供たちからは、水晶に黙って仕えるさまから、「ロボ」や「執事」などと揶揄されている。

一ノ瀬 雄大 (いちのせ ゆうだい)

M市立南小学校6年3組のクラス委員を務める男子生徒。クラスメートを引き連れ、率先していじめを行っているボス的な存在。もともとクラスメートの久地をターゲットにしていたが、新たに式町水晶が転入してくると、水晶をターゲットに加え、彼の特殊な歩き方をまねて笑い者にしている。笑顔で水晶に対する悪意を表面化させ、クラス中に広めようとしている。

久地 (くじ)

M市立南小学校の6年3組に在籍する男子生徒。以前から、一ノ瀬雄大を中心とするクラスメートたちからいじめを受けており、肉体的にも精神的にもダメージを負わされている。上履きを隠されるために裸足でいたり、いつの間にか早退していたりと、学校生活はかなり辛いものとなっている。

書誌情報

水晶の響 4巻 講談社〈BE LOVE KC〉

第1巻

(2019-10-11発行、 978-4065172452)

第2巻

(2020-02-13発行、 978-4065183700)

第3巻

(2020-08-12発行、 978-4065202166)

第4巻

(2021-07-13発行、 978-4065239995)

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