永年雇用は可能でしょうか

永年雇用は可能でしょうか

梨川りさの代表作で、yokuuの小説『永年雇用は可能でしょうか ~無愛想無口な魔法使いと始める再就職ライフ~』のコミカライズ作品。魔法の存在するファンタジー世界を舞台に、メイドのルシル・オニバスと無口で不愛想な魔法使い・フィリスの不思議な共同生活を描く、異世界同居ファンタジー。余計なことを嫌うフィリスと、その意を汲(く)み取るルシルとの以心伝心の関係が見どころとなっている。講談社のマンガアプリ「Palcy」で2022年7月7日から配信の作品。2024年2月にebookjapan「ebookjapanマンガ大賞2024」を受賞している。

正式名称
永年雇用は可能でしょうか
ふりがな
えいねんこようはかのうでしょうか
原作者
yokuu
漫画
ジャンル
ファンタジー
 
恋愛
レーベル
KCx(講談社)
巻数
既刊4巻
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生真面目メイドとイケおじ魔法使い

メイドのルシル・オニバスは、「町一番の名士」といわれるニゼアから執拗(しつよう)なセクシャルハラスメントを受けていたが、ニゼアの妻のカンちがいから嫉妬を受け、理不尽に解雇される形で屋敷を追われてしまう。同じ町でメイドを続けることに嫌気がさし、ルシルは遠く離れた田舎町コートデューまで足を延ばし、新たな就職先を探すこととなる。そんな中、商工会の会長のコルテスに紹介された就職先は、町はずれの森で一人で暮らす魔法使いフィリスの屋敷だった。口数少なく無愛想なフィリスとの会話は最初から困難を極めるものの、ルシルは手探りで仕事を進めることになる。干渉されることを嫌うフィリスと適度な距離感を保ちながら、ルシルは丁寧な仕事ぶりでフィリスからの信頼を得る。

二人の丁寧な暮らしぶり

魔法に依拠することを嫌うフィリスは、日常生活を送るうえでも魔法に頼ることはない。一方のルシル・オニバスは、これまでメイドとして培ってきたノウハウを最大限に活かし、家政婦としてフィリスの生活を控え目にサポートする。つねに生活や仕事の中に楽しみを見出そうとする前向きなルシルは、無口なフィリスを観察しながら仕事のクオリティを上げることに貪欲。家庭菜園で作った野菜を収穫し、さまざまなスパイスを使ってフィリス好みの料理を作ることに尽力している。また毎日のバスタイムと月に一度の外食など、自分のために使う時間も大切にしている。ルシルとフィリスが過ごす、ゆるやかに流れる穏やかな時間が丁寧に描かれる。

推しの魔法使いとの同居生活

無口で無愛想なフィリスと共に暮らすメイドのルシル・オニバスは、つねに前向きな性格で完璧に家事をこなしている。しかしその心中は、動揺してオロオロしたり、フィリスにツッコミを入れたり時に辛辣だったりと、実に感情豊かでかわいらしい。穏やかな同居生活の中で巻き起こる事件や出来事にかかわる人物の距離感や関係性がおもしろく、猫をはじめとした生き物たちも魅力的に描かれている。またルシルはフィリスと同じ時間を過ごすうちに、不器用ながらもその優しさに気づき、ルシルがフィリスに対して抱く「尊い」という感情は、推しに入れ込むオタクさながらで、一方のフィリスも有能なルシルに信頼を寄せている。また気がつかぬ間に、フィリスへの思いがあふれ出るルシルの様子がコミカルに表現されている。

登場人物・キャラクター

ルシル・オニバス

元メイドの女性。前向きな性格で自立心が強いしっかり者。もともと町一番の名士、ニゼアの屋敷でメイドとして雇われていたが、ニゼアからのセクシャルハラスメントが原因で、ニゼアの妻から誤解と嫉妬を受け、理不尽に解雇された。17人兄妹の下から2番目ということもあり、実家を頼ることもできない状況の中で新しい職場を探していたところ、小さな田舎町、コートデューの森の中に住む魔法使いのフィリスのもとで住み込みの家政婦として働くことになる。仕事ぶりは丁寧で家事全般をそつなくこなす。ルシル・オニバス自身の今後の生活のためにも、気難しい雇い主のフィリスの要望に沿って距離感を意識しつつ、尽力している。ようやく手に入れた穏やかな暮らしの中で、ニゼアから強引に連れ戻されそうになったり、魔法使いに猫にされたりするが、いつもフィリスに助けられている。やがてルシルは無愛想ながらも不器用なフィリスの優しさに気づき、彼への思いを募らせていく。表面上は穏やかで冷静に振る舞っているが、心の中では落ち込んだり元気になったりと、実は感受性が豊か。月に一度の給料をもらうと、一人で分厚いステーキを食べに行くことが自分へのご褒美になっている。

フィリス

コートデューの町はずれの森に住む魔法使いの男性。白髪で外見は初老といった感じだが、魔法使いは人間よりも4倍から5倍ほど長生きするとされており、実年齢は不明。コートデューの名産品である香油石鹸は、昔町が貧しかった時代に人々から助けを求められた際、フィリスの助言で作られたもので、その頃から町の人々からは「先生」と呼ばれ慕われている。無口で無愛想に加え、他人とは距離を取る傾向にあり、自分が求めていないことに口出しや手出しされることを極端に嫌う。これまでの家政婦がことごとく1週間もたずに辞めてしまうため困っていたところ、商工会の会長、コルテスの紹介でルシル・オニバスを住み込みの家政婦として雇うことになる。ルシルには基本的に屋敷の1階のみを任せ、フィリス自身のプライベートスペースである2階は上がることも許さない。実は2階では世界の裏側にある「世界樹」の研究を行っている。もともと魔法優位主義に疑問を抱いていたこともあり、魔法を使うことに懐疑的で、よほどのことがない限り魔法を使うことはない。いつしかルシルが生活を送るうえでかけがえのない存在となり、頑(かたく)なな態度が少しずつ変化していく。魔法使いたちの協会に在籍しているが、面倒くさそうな組織体制に嫌気が差して魔法使いを統括する協会の発足には加わらず、協会とも距離を置いている。

クレジット

原作

yokuu

キャラクター原案

烏羽 雨

書誌情報

永年雇用は可能でしょうか 4巻 講談社〈KCx〉

第2巻

(2023-04-28発行、 978-4065311189)

第3巻

(2023-10-30発行、 978-4065332405)

第4巻

(2024-05-30発行、 978-4065353745)

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