概要・あらすじ
海上自衛隊の潜水艦やまなみが沈没し、艦長の海江田四郎以下乗員70名は死亡したと思われた。だがやまなみの乗員は秘かに脱出しており、日米で秘密裏に開発していた原子力潜水艦シーバットの乗員となる。だが海江田はシーバットの試験運行中に反乱逃亡し、アメリカや日本の手を離れた独立国家やまとを宣言した。
アメリカ、ソ連、日本の思惑が交差する中、海江田は巧みな指揮と高度な戦略で次々と追っ手をかわしていく。
登場人物・キャラクター
海江田 四郎 (かいえだ しろう)
海上自衛隊の潜水艦やまなみの艦長だったが、偽装工作で殉職とされ、日米で極秘裏に開発された原子力潜水艦シーバットの艦長になった。だがシーバットごとアメリカから逃亡し、独立国家「やまと」を宣言する。強いカリスマ性で乗員を統率し、明晰な頭脳と高い操艦能力で敵を翻弄する。
深町 洋 (ふかまち ひろし)
海上自衛隊の潜水艦たつなみの艦長。海江田四郎とは防衛大学校の同期で、良き競争相手だった。一見粗野で豪放な男だが、その能力や意外性は海江田も認めるところ。やまなみ乗員の全滅が偽装といち早く気づき、シーバットをめぐる一件にいち早く関わることになった。
竹上 登志雄 (たけがみ としお)
日本の首相。当初は「外交オンチ」などと揶揄される凡庸な政治家だったが、独立国家やまとによって日本が重大な局面に立ったことを覚悟し、決断力を持った政治家に成長する。七ヶ国首脳によるサミットでも厳しい立場ながら他国首脳と渡り合った。
ニコラス・J・ベネット (にこらす・じぇい・べねっと)
第43代アメリカ大統領。アメリカを「最も責任ある強い国」とするタカ派であり、独立国家やまとを認めず核テロリストとしての扱いを保ち続けた。やまとの件も利用して日本を再占領する計画を進めるが、やまとに米艦隊が敗れ続け、また竹上首相らの抵抗によって、対応を改めていく。
ジョージ・アダムス
ニュージーランド出身の国連事務総長。常任理事国の拒否権などによって、国連による国際平和が困難なことを憂いていた。独立国家やまとの国連加盟宣言を支持し、また竹上首相による自衛隊の国連への指揮権移譲案を高く評価した。
山中 栄治 (やまなか えいじ)
やまとの副艦長を務める。やまなみの副艦長でもあり、海江田四郎からの信頼が篤い。真面目で操艦能力も堅実かつ優秀。
溝口 拓男 (みぞぐち たくお)
潜水艦やまなみおよびやまとのソナーマン。鋭い聴覚を持ち、海中を伝わる音から潜水艦の周辺状況を素早く察知する。
速水 健次 (はやみ けんじ)
海上自衛隊の潜水艦たつなみの副艦長。物腰の穏やかな優男風の容姿だが、深町艦長からの信用は篤い。
南波 栄一 (なんば えいいち)
潜水艦たつなみのソナーマン。鋭敏な聴覚で海中を伝わる音から様々な情報を得るほか、テープレコーダーのノイズカットや、シーバットが発する音を偽装するなど、音の加工技術にも優れる。
海原 大悟 (うなばら だいご)
元防衛庁長官であり、莫大な資産と人脈を持つ日本政界の黒幕。やまとの独立を認めず、日本政府の支配下に置こうと暗躍するが、息子の海原渉に実権を奪われる。
海原 渉 (うなばら わたる)
竹上登志雄内閣における、官房長官。独立国家やまとをめぐる問題では、アメリカ大使に強硬な姿勢を示した。国会の解散総選挙では竹上の新民自党に加わり、後に外務大臣となる。
天津 航一郎 (あまつ こういちろう)
日本の外務次官を務める青年。日米安保条約を信用せず、日本のアメリカの庇護からの自立を画策していた。独立国家やまとを支持し、日本はアメリカからやまとを守るべきと主張する。タンカーに偽装したやまと用の補給ドック「サザンクロス」を発注した。
海渡 一郎 (かいと いちろう)
日本の保守政党の幹事長。独立国家やまとへの対応を巡って、竹上首相と対立。二分された党で旧体制側をまとめ、総選挙を戦った。対立しながらも常々竹上を高く評価しており、総選挙の敗北後も連立を拒否し巨大なる野党を率いる、筋の通った人物。
大滝 淳 (おおたき じゅん)
日本の保守政党の一派閥にいた政治家だったが、独立して党首に就任。党首となった後も、北極海に出向いて海江田四郎と会見、イギリスでやまと保険を交渉、新内閣への参入、国連による「沈黙の艦隊実行委員会」の中枢に居座るなど、非常にフットワークが軽い人物。
ライズ保険機構 (らいずほけんきこう)
三百年の伝統を持つイギリスの保険会社であり、資産家シンジケートが無限の支払い責任を負うことで、世界最高の信用と、特殊な保険を成立させるだけの力量を持つ。大滝淳から持ち込まれた、やまとに対する国家規模の保険を検討し、可能との決断を示す。
ジョン・アレキサンダー・ベイツ
アメリカ海軍でシーウルフ級潜水艦の「アレキサンダー」艦長を務める。兄・ノーマンとの連係でやまとを苦戦させるが、先に兄の艦を沈められてしまう。なおも交戦するが部下の生命を優先させ、降伏した。その戦いぶりは海江田四郎にも高く評価される。
アレックス・P・ナガブチ
アメリカの空母「ジョン・F・ケネディ」の艦長として、ニューヨーク港でやまとを迎え撃った。日系人だが、それゆえアメリカ人以上にアメリカ人らしくある事を自分に求めている。
クリス・ストリンガー
イギリスの原子力潜水艦「タービュレント」艦長。ロシア、フランス、中国、インドの原子力潜水艦と共に、突然ニューヨーク沖へ現れた。海江田四郎の思想に理解を示す。
ミハイル・マレンコフ
ソビエト連邦、およびロシア連邦共和国の大統領。やまとが北極海を通過した際、ベネットと交渉して両軍の戦略ミサイル原潜引き上げを表明した。後にニューヨークでのサミットにも出席。
アンドレイ・ロブコフ
ソビエトの原子力潜水艦「スコルピオン」(西側の呼称は「レッド・スコーピオン」)艦長。ソ連共産党に絶対の忠誠心を持ち、批判者を素手で処刑する怪力の持ち主。潜水艦の指揮能力も優れているが、海江田四郎のやまとに敗れる。
ピエール・モルガン
フランス大統領。背の低い太った男で、よく鼻をかんでいる。皮肉屋で、とりわけアメリカ大統領であるベネットへの嫌味をよく口にする。
セシル・デミル
アメリカのテレビ局社長。海江田四郎が掲げる世界平和への構想について、それに対する民意を確かめるべく全世界のマスメディアを提携させて「情報サミット」を開催。さらにやまとやアメリカの行いに対する、世界規模の市民投票を行った。
ボブ・マッケイ
セシル・デミルが社長を務めるテレビ局の、レポーター。デミルの命で独立国家やまとに乗艦するため、ほか4名のテレビクルーと共にやまと国民になる。やまとを中心としたネットワーク網「情報国家やまと」を構想した。後にニューヨーク港でやまとから退去させられる。
集団・組織
イースト・ウェスト・ダイナミックス社 (いーすとうぇすとだいなみっくすしゃ)
『沈黙の艦隊』に登場する組織。国際的な軍需産業。世界政府による平和を訴えた海江田四郎を危険視し、各国のマスコミを通じて反やまとキャンペーンを展開した。軍縮を目論むベネットも敵視し、圧力をかける。
場所
独立国家やまと (どくりつこっかやまと)
海江田四郎ら70名の元海上自衛官が、アメリカから原子力潜水艦シーバットを奪い、その艦を国土とする独立国家宣言をした。後に沈黙の艦隊計画の中心となる。
ソビエト連邦
『沈黙の艦隊』に登場した国家。アメリカおよび日本と政治的に対立する超大国だったが、『沈黙の艦隊』連載中に崩壊し、ロシア連邦共和国となった。
その他キーワード
シーバット
『沈黙の艦隊』に登場する攻撃型潜水艦。日米共同で開発され、所属はアメリカ第七艦隊。深度1000mまで安全に潜行でき、原子力ゆえの豊富なエネルギーで水も酸素も海水から得られるため、浮上することなく20万キロの連続潜行が可能とされている。通常の魚雷のほか、核弾頭による対艦ミサイルの搭載も可能。モデルとなった実在の潜水艦は、特にないとされている。
やまなみ
『沈黙の艦隊』に登場した、海上自衛隊所属の潜水艦。ディーゼルエンジンを搭載。ソビエト連邦所属の潜水艦と衝突して沈没したが、それは艦長の海江田四郎以下70名の乗員を、原子力潜水艦シーバットに乗せるための工作だった。
たつなみ
『沈黙の艦隊』に登場する兵器。最初、深町洋が艦長を務める、海上自衛隊の潜水艦。ディーゼルエンジンを積んでいる。東京湾でやまとを援護し、米艦隊や原潜隊を相手に奮戦の末、沈没する。
シーウルフ級潜水艦 (しーうるふきゅうせんすいかん)
『沈黙の艦隊』に登場する、アメリカの攻撃型原子力潜水艦。実在する級であり、『沈黙の艦隊』連載中に起工・進水された、当時の最新鋭原子力潜水艦。「キング」「アレキサンダー」の二艦が、北極海でやまとを苦戦させた。
アニメ
書誌情報
新装版 沈黙の艦隊 16巻 講談社〈KCデラックス〉
第1巻
(2013-05-23発行、 978-4063768459)
第2巻
(2013-06-21発行、 978-4063768503)
第3巻
(2013-07-23発行、 978-4063768602)
第4巻
(2013-08-23発行、 978-4063768787)
第5巻
(2013-09-20発行、 978-4063768862)
第6巻
(2013-10-23発行、 978-4063769043)
第7巻
(2013-11-21発行、 978-4063769128)
第8巻
(2013-12-20発行、 978-4063769210)
第9巻
(2014-01-23発行、 978-4063769302)
第10巻
(2014-02-21発行、 978-4063769425)
第11巻
(2014-03-20発行、 978-4063769524)
第12巻
(2014-04-23発行、 978-4063769678)
第13巻
(2014-05-23発行、 978-4063769869)
第14巻
(2014-06-23発行、 978-4063770063)
第15巻
(2014-07-23発行、 978-4063770308)
第16巻
(2014-08-22発行、 978-4063770445)