概要・あらすじ
太平洋戦争の最中、日本海軍の椿十郎少佐はフロッグマンとして活躍しアメリカ海軍に多くの被害を与え、レッドアローと呼ばれて恐れられていた。しかし、彼は終戦を迎える前に任務の途中で爆撃に遭い、乗っていた潜水艦ごと海の中へと消えてしまった。時は経ち、幼い頃からおじ・椿十郎の伝記を読んで育った少年椿アキラは、自分も潜水服を着て海の中で暴れ回りたいという夢が膨らみ、家族に無断で潜水士募集のテストを受け、兄の心配を余所に見事難関を突破してまう。
そこは椿アキラの愛読書『レッドアロー』の著者で、かつて椿十郎の助手でもあった南洋二郎が社長を務める、政府からの指令で海の犯罪に立ち向かう潜水専門の秘密部隊、ゼロ1戦隊だった。
ゼロ1戦隊のメンバー達は、奇しくもおじと同じ赤い矢を使う謎の人物レッドアローの協力を得ながら、かつてアメリカ海軍でレッドアローに対抗する為に組織されたフロッグメン部隊の隊長バックル少佐が、終戦後に海のギャングとして結成したジャガー結社の犯罪に立ち向かっていく。
登場人物・キャラクター
椿 アキラ (つばき あきら)
ゼロ1戦隊の隊員のひとり。8年前に父を亡くし、母と兄と3人で暮らしていたが、高校受験を前に自分も潜水服を着て海の中で暴れ回りたいという夢が膨らみ、家族に黙ってゼロ1戦隊のテストを受けに行く。小柄な体格ながらハンデを逆に利用して装備で重くなった体を武器に格闘戦を行い、冷静さが問われる脱出もクリア、難関を突破して採用となる。 当初、家族は危険なフロッグメンの仕事に就く事を反対していたが、やがてその熱意に理解を示すようになる。本で得た潜水の知識や歴史には詳しいものの、経験の無さから訓練中に危ない目に遭う半人前の実力。太平洋戦争でレッドアローと呼ばれてアメリカ軍から恐れられていた伝説の潜水士椿十郎の甥で、おじの伝記『レッドアロー』を愛読書にしている。
椿 十郎 (つばき じゅうろう)
太平洋戦争の時に活躍した日本海軍少佐。暗号ナンバーゼロ1と呼ばれるフロッグマンで、港に入る潜水艦に時限爆弾を仕掛ける作業の名人。4年間に軍港13、艦艇6、空母1、戦艦1、潜水艦25、その他多くの小さな艦を破壊した実力により、武器の赤い矢から名付けられたレッドアローの名でアメリカ軍から恐れられた。 アメリカ側もバックル少佐を隊長にしたフロッグメン部隊を組織して対抗してきたが、圧倒的な力の差でこれに打ち勝った。終戦を控えた昭和20年5月に任務を終えて乗り込んだ潜水艦がアメリカ軍機に発見され、爆撃により海の中に沈められてしまう。後年、元助手だった南洋二郎により多くの功績について書かれた伝記『レッドアロー』が出版され、椿アキラも愛読書にしていた。
椿教授 (つばききょうじゅ)
椿アキラの兄。海洋学の研究をしている博士。母と3人で暮らしながら、高校受験を控えいたずら盛りの弟を心配し続けている。アキラが家族に無断で受けた潜水士の採用テストの時も、不審に感じて後を着け様子をうかがっていた。当初は母と共に危険なフロッグメンの仕事に反対していたが、アキラの熱意に打たれて応援するようになる。 さらに海洋研究の調査という理由で、訓練や任務先など椿アキラの行く先々に現れるようになる為、邪魔者扱いされてしまう。ゼロ1戦隊とは別に、海洋調査に見せかけた独自の機材を使って、密かにジャガー結社の行動を監視している。
南 洋二郎 (みなみ ようじろう)
政府から秘密裏に指令を受け海の犯罪を取り締まる潜水部隊、ゼロ1戦隊のリーダーだが、表向きは潜水士達を雇う会社の社長となっている。指令はゼロ1通信と呼ばれ、専用の通信機で直接政府の高官から下される。元海軍大尉で大戦時に英雄だった椿十郎の助手を務めていた。伝記『レッドアロー』の著者でもある。 戦前からの潜りのベテランで、崖の上から車ごと海に飛び込み衝撃を和らげて体を守る度胸と知恵を持ち合わせる。再び現れたレッドアローの正体は知らないものの、その実力には絶大な信頼を置いており、密かに度々現場に現れる椿教授なのではないかと考えている。仲間と共に最新鋭の設備を搭載した新造船シースワン号に乗り、犯罪組織ジャガー結社を追跡する。
レッドアロー
ゼロ1戦隊がピンチに陥るとどこからともなく現れ、ジャガー結社を相手に戦う、マスクで正体を隠した謎の人物。ゼロ1通信を使って南社長に有力な情報を伝えている。武器として使う合金製の矢は伝説のレッドアロー(初代)の物と同じ赤い色に染められ、戦時中に彼に苦しめられたバックルは不気味に感じながらもその存在を仇のように思っている。 背中に背負ったボンベの圧縮空気を調整して空を飛ぶことができる。飛び出したモリで相手の船体を突き刺して身動きを封じる3号弾、別名かばやきなど数種類の魚雷を発射したり、厚い氷も切断できるほどの刃が船底から出るなど、ジャガー結社の怪物艇ドリラーに対抗する装備を搭載した新型水中兵器に乗る。
バックル
太平洋戦争でアメリカ軍がゼロ1を捕らえる目的で組織した特別フロッグメン部隊の隊長。階級は少佐。ゼロ1の圧倒的な強さに部隊は壊滅的な打撃を受けてしまう。戦後、退役するとしばらくは消息不明となっていたが、3年程前から潜水技術を活かした海のギャング、ジャガー結社のボスとして名が知られるようになる。 手がかりが残りにくい海難事故に見せかけて、沈めた船から金品や高価な荷を強奪していく事件を繰り返す。黄金狂で知られ、上野の美術館で開かれた東洋の黄金展に出品される芸術品が収められた金庫を奪う為に、ダムを破壊し海抜より低い土地の山若市を海に沈めた。過去に苦しめられた経験から日本人を憎み、再び現れたレッドアローに敵意をむき出しにする。
古葉 伸 (こば しん)
ゼロ1戦隊の一員。あご髭を生やし普段はサングラスをしているが、見た目よりも若い25歳。ライフルの名手でシースワン号の砲手を務める。かつては日本一と言われたギャング。今は改心して正義の味方となったが、ギャング達の消息には誰よりも詳しく、ジャガー結社よりも早く金庫破りのテーラーの銀次の居所を突き止めた。
舟方 (ふなかた)
ゼロ1戦隊の一員。顔に大きな傷のある人相の悪い男。椿教授曰く、一癖ありそうな顔。機械屋で運転手の他にもシースワン号の舵を握る。テストの日に椿アキラの家まで迎えに行き、車内で眠らせた後に市電の廃線に設けられた秘密の会場へと連れて行った。体格がよくテスト生達の格闘試験の相手を務めた。
ゴンじい
ゼロ1戦隊の一員。名造船技師の老人で、装備に新たな工夫を取り入れる天才。椿アキラ達がテストを受けていた間、3か月にわたって造船所に詰め切りとなり、最新設備を搭載した新造船シースワン号の製造に当たっていた。任務の時は仲間達の装備を揃えたり食事の世話をしている。ジャガー結社をおびき出す為に61歳のテーラーの銀次の身代わりとなった。
山上 (やまがみ)
椿アキラと共に南社長が募集した潜水士の試験に参加。大学の空手部で鍛えた体力自慢だったが、格闘試験で足ひれを付けた状態では思うようにスピードが出せず苦戦する。見事3人の合格者の一人となりゼロ1戦隊の一員となる。採用後の任務では新人同士が組み、鈴野と共に椿アキラの救出や捜索に当たった。
鈴野 (すずの)
椿アキラと共に南社長が募集した潜水士の試験に参加。力も技も落第点だったが、最終服を着替えて冷静に脱出口を探して抜け出すテストで一番の成績となり見事3人の合格者の一人としてゼロ1戦隊の一員となる。採用後の任務では新人同士が組み、山上と共に椿アキラの救出や捜索に当たった。
兵曹長 (へいそうちょう)
戦時中からバックルの部下だった男。ジャガー結社でもバックルと共に作戦を計画する頼れる存在。アイパッチにパイプがトレードマーク。若い仲間達にバックルがレッドアローに苦しめられた過去の恨みから日本人を嫌うようになった事を説明した。仲間でも弾除けに使い、肘に吸盤テープが付いたアクアラングを着て船体に張り付き、海に落ちたと油断するレッドアローを攻撃する悪賢い性格。 怪物艇ドリラーを操ってゼロ1戦隊を苦しめる。
テーラーの銀次 (てーらーのぎんじ)
バックル達が盗み出した新型の金庫をただ一人開ける事ができるという金庫破り。東京にいたが1年前に銀行ギャングをした為に捕えられ、現在は北海道の亜田尻刑務所に服役している。脱獄を計画するジャガー結社の囮として年恰好が似ているゴンじいを身代わりに仕立て上げた。
その他キーワード
ドリラー
『ゼロ1戦隊』に登場する架空の海中艇。ジャガー結社が所有する怪物艇。船体には双頭の鳥とトゲの生えた尻尾が付いている。海中の移動の他にさまざまな武器を装備し、高速で回転するモーターは数秒で人間の体をバラバラの肉片にしてしまうほどの大きな水流を発生させる。二つの鳥の形をした口は回転して中の機銃が海上の敵を攻撃する。さらに水中だけでなく、船底のドリルを使って砂の中を潜りながら進む事もできる。
人間流星 (にんげんりゅうせい)
『ゼロ1戦隊』に登場する架空の兵器。ジャガー結社がテーラーの銀次脱獄計画の為に作った新兵器。巨大なマンモスの形状で、伸ばした鼻を相手に巻き付け放り投げると同時に先端が発火し火あぶりにさせる事ができる。毛皮で覆い、遊園地から注文された張子のマンモスに見せかけて街中を移動した。2本の牙はシースワン号の船体を突き破る破壊力を持つ。 弾丸を跳ね返し、外部から刺激を受けると巨大化する特殊鋼で作られている。