あらすじ
怪獣になった男
日本では怪獣の出現が日常化し、人々はその暴威に怯(おび)える日々を過ごしていた。日比野カフカは、かつて幼なじみの亜白ミナと、日本防衛隊に入って怪獣を全滅させるという約束を交わしていたが、防衛隊試験に不合格となってしまう。カフカはやむなく民間清掃会社「モンスタースイーパー」に就職し、倒された怪獣の残骸を処理しながら暮らす毎日を送っていた。そんな中、カフカはアルバイトとして入社してきた市川レノと共に働くことになり、任務遂行中に襲ってきた怪獣をレノと共に退ける。ケガを負いつつも、レノから防衛隊試験の受験を勧められたカフカは、かつてあきらめてしまった夢を追いかけるべく、もう一度防衛隊試験に挑戦することを決意。しかしその夜、怪獣と戦ったケガが原因で、横浜南総合病院に入院したカフカは、眠っているあいだに謎の生物に寄生され、肉体が怪獣に変質してしまう。幸い、どうにか元の身体に戻ったことでレノ以外の人たちには正体を悟られずに済んだものの、やがてカフカが変身した姿は周囲から「怪獣8号」と呼称されるようになる。それから数か月のあいだ、カフカとレノは勉強を重ね、ついに防衛隊試験の当日を迎える。カフカは、試験の中で知り合った四ノ宮キコルや出雲ハルイチといった優等生たちと競い合い、体力試験では下位の成績に甘んじるも、適性試験ではレノと力を合わせて活躍する。キコルの奮闘もあって誰一人リタイアすることなく試験は終了するが、そこに人型の怪獣が現れ、ほかの受験生と離れた場所にいたキコルに不意打ちを仕掛ける。これを察知したカフカは、悩んだ末に怪獣8号に変身し、怪獣を撃退してキコルを救助する。その結果、カフカはキコルにも怪獣8号の正体を知られるものの、その情報が公開されることはなかった。そんな中、試験官の一人であった保科宗四郎は、カフカの人柄や底力に好感を抱きつつも、同時に彼が何か隠しているのではないかと勘繰り始める。
夜明けの相模原討伐作戦
日比野カフカは、32歳という年齢もあって体力不足を指摘され、スーツの解放戦力も0%だったことから適性を疑問視する声も上がる。だが、保科宗四郎が土壇場で発揮する底力など、隊員として光る要素が随所に見られるほか、彼が怪獣8号の正体であることを知らないながらも、関連があるのではないかと考え、自分の隊に引き取ると進言する。これによって、カフカは隊員候補生として、亜白ミナが隊長、保科が副隊長として率いる日本防衛隊の第三部隊に配属となる。カフカのほか、防衛隊試験に合格した市川レノや出雲ハルイチ、古橋伊春、神楽木葵らは、怪獣を討伐するという目的に向けて邁進し、各々訓練を続けていた。中でも、入隊前から注目されていた四ノ宮キコルの実力は圧倒的で、ベテランであるミナや保科からも、同期となる新入隊員たちからも、次元の違う存在と認識されていた。一方、カフカはミナと並んで戦うというかつての目標を思い出し、彼女の側近といえる保科に対して、副隊長の座を奪い取る覚悟で臨むことを明らかにする。保科もまた、カフカの向上心に感じ入り、彼の覚悟を認めつつも副隊長の座を渡さないと宣言する。そんな中、カフカとレノを送り出した民間清掃会社「モンスタースイーパー」の面々は、彼らの代わりとして新しい人材を引き入れるが、彼の正体は人間ではなく、かつてカフカやキコルを襲撃した人型の怪獣だった。相模原市に大型の怪獣が現れたという連絡を受けた防衛隊立川基地の面々は、ミナや保科の指揮のもと、その討伐に赴く。保科はカフカたちに、相模原の怪獣が生み出す余獣を人が暮らす地区に到達しないよう、1匹残らず殲滅する任務を課すと、ミナと共に相模原の怪獣に挑み、いとも簡単にこれを討ち果たす。新人たちの活躍で余獣たちもほぼ倒され、初任務は大成功に終わったかに見えた。しかし、仲間たちから離れていたレノと伊春が人型の怪獣に襲われ、絶体絶命の窮地に陥る。人型の怪獣はそのままレノたちを始末しようとせまるが、そこにカフカが変身した怪獣8号が現れ、人型の怪獣を阻止するべく猛攻を加える。
テレビアニメ
2024年テレビアニメ化。4月13日よりテレビ東京ほかにて放送。監督は宮繁之、神谷友美。アニメーション制作はProduction I.G。日比野カフカおよび怪獣8号を福西勝也、亜白ミナを瀬戸麻沙美が演じる。
登場人物・キャラクター
日比野 カフカ (ひびの かふか) 主人公
民間清掃会社「モンスタースイーパー」に所属していた男性。年齢は32歳。誕生日は8月5日で、身長は181センチ。好きな食べ物はカレーライスとハンバーグ。緊張するといつもより食べ過ぎるという悪癖を持つ。亜... 関連ページ:日比野 カフカ
怪獣8号 (かいじゅうはちごう)
日比野カフカが、怪獣らしき謎の生物に寄生されたことで肉体が変異し、怪獣化した姿。身体の大きさ自体はもとのカフカとあまり変わらないものの、見た目は怪獣そのもので、腹部や胸部から複数の触手を伸ばしたり、胸の器官から排尿を行ったり、自らの意思と関係なく喉から捕食用の器官が発生して鳥を食べるなど、特異な生態を多く持つ。また、9.8ものフォルティチュードを誇ることから身体能力や戦闘能力も非常に高く、巨大な怪獣であろうと、素手で簡単に撃破できる。怪獣が人間に擬態したとされている人型の怪獣とは根本的に異なり、カフカとしての意識は完全に残っている。怪獣化した当初は、元の身体に戻ることや、力のコントロールができずにいた。そのため、怪獣化したところを目の当たりにした市川レノと共に軽い騒動を引き起こすが、身体が落ち着くと元のカフカの姿に戻り、それ以降は身体が勝手に変異することはなくなり、それどころかカフカの意思で怪獣8号の姿になることが可能となる。ただし、初変身の時の姿が日本防衛隊に記録されており、正体こそバレなかったものの、彼らから「怪獣8号」のコードネームで呼称されている。カフカがもとの姿に戻ってからは、彼とレノで示し合わせて、極力正体がバレないように振る舞い、防衛隊試験の一次試験に通過するまでのあいだ、なんとか隠し通すことに成功する。しかし防衛隊試験の本試験当日に、不意に現れた人型の怪獣の攻撃で四ノ宮キコルが危機に陥ると、彼女を助けるために正体がバレることをいとわず変身する。その後も、レノや古橋伊春が人型の怪獣に襲撃された時に、自ら変身をして救出するなど、正体を隠すより仲間の命を守るために変身することを優先するようになる。
亜白 ミナ (あしろ みな)
日本防衛隊に所属している女性。第三部隊の隊長を務めている。年齢は27歳。誕生日は6月17日で、身長は169センチ。趣味はお風呂とネコ科の動物を愛でることで、仕事中は好物のスルメを食べている。日比野カフカとは同じ小学校に通う幼なじみで、住んでいた場所が怪獣に襲われたことをきっかけに、彼と共に日本を防衛する日本防衛隊に入隊し、怪獣を殲滅させるために戦おうと誓い合っていた。しかし、共に防衛隊試験を受けた結果、カフカのみが不合格となったことで、一人で防衛隊に入隊することになる。その後は順調に出世を重ね、やがて日本防衛隊の第三部隊の隊長に就任する。そして、その美貌と圧倒的な強さから、日本国民からは絶大な人気を得ている。出雲ハルイチや古橋伊春からもあこがれられており、亜白ミナのような強い兵士になることを、日本防衛隊を志す動機の一つとして挙げるほど。気丈な性格で、怪獣に対して臆することなく立ち向かう勇気と、状況を冷静に分析する判断力を併せ持ち、今までに数多くの怪獣を撃破してきた。現在はカフカのことを極力考えないようにしているが、実際は彼が防衛隊に入隊できなかったことを今でも寂しく思っている。それだけに、カフカが再び防衛隊試験を受けた時は滅多に見せない驚愕の表情を浮かべ、保科宗四郎の計らいによって合格したことを喜んだ。ただし、カフカを特別扱いする気はまったくなく、防衛隊の中ではつねに厳しい態度で接する。相模原の怪獣との戦いでは、スーツの解放戦力を96%まで発揮し、本獣に対して強力な射撃を立て続けに浴びせ続け、難なく単独で仕留める。
市川 レノ (いちかわ れの)
民間清掃会社「モンスタースイーパー」に所属していた青年。誕生日は4月12日で、身長は174センチ。趣味は音楽鑑賞と料理で、少年漫画をよく読んでいる。立ち振る舞いや外見からクールに見られがちだが、実際は... 関連ページ:市川 レノ
四ノ宮 キコル (しのみや きこる)
日比野カフカや市川レノと共に、防衛隊試験を受験した少女。誕生日は9月7日で、身長は157センチ。日本防衛隊の長官の娘で、父親からつねに完璧であるよう求められている。天性の才能に加えて彼の期待に応えるために必死に努力を重ねてきたが、褒められたことは一度もなく、そのことを寂しく思っている。怪獣に対する敵意が強く、彼らを討伐することを喜びとしている。16歳でカリフォルニアの大学を飛び級で首席卒業し、それからすぐに日本に帰国すると、防衛隊試験を受験する。非常に高いプライドの持ち主ながら、カフカにちょっかいをかけるような子供らしい一面もある。不意にカフカが怪獣8号の力を使ったことから彼に興味を持ち、防衛隊試験ではカフカを挑発するような言動を向ける。そして、試験の中でスーツを装着すると、防衛隊の隊員ですらなかなか到達できない46%もの解放戦力を発揮し、適性試験では自分が活躍するだけでなく、受験生を一人もリタイアさせないように戦い抜くなど、ほかの受験生とは次元の違う活躍を見せる。しかし、試験終了後に近づいてきた人型の怪獣から不意打ちを受け、大きなダメージを負ってしまう。さらに、人型の怪獣が差し向けた余獣に襲われるが、そこに駆け付けた怪獣8号に助けられる。これによって、怪獣8号の正体を知ることになったが、命を助けられた恩から、カフカの秘密を誰にも明かさないことを約束する。試験終了後は主席合格者となり、訓練ではスーツの解放戦力を55%まで引き上げるなど、ほかの隊員と一線を画す結果を次々に叩き出す。相模原の怪獣との戦いでは、保科宗四郎の率いる小隊に所属し、カフカと連携して巨大な余獣を撃破する。
出雲 ハルイチ (いずも はるいち)
日比野カフカや市川レノと共に、防衛隊試験を受験した青年。東京にある怪獣討伐関連の大学を首席で卒業した秀才で、体力試験では神楽木葵に次ぐ2位の成績を収めた。慎重な性格で、前線で戦うよりもサポートを得意としている。自らの能力や技量を客観的に把握しており、自らを特別な存在でないことをはっきり認識している。そのため、試験では自分の実力を見せつけるという自負よりも、四ノ宮キコルのような天才にどこまで食らいつけるかということを気にしていた。適性試験では、キコルと怪獣の弱点をよく知るカフカや、レノにも活躍の場を奪われる。それでも焦ることなく、手傷を追うことなく試験を終了させた結果、防衛隊試験に合格して日本防衛隊の一員となり、防衛隊立川基地に配属される。神楽木とは互いにライバル心を抱き合い、彼に対しては自分の戦果を誇示することもある。防衛隊を志した理由は、亜白ミナの戦いぶりに感じ入ったためで、カフカがミナの幼なじみだと知った際は人が変わったように目の色を変え、伊春と共に幼い頃の彼女について質問攻めをする。相模原の怪獣との戦いでは、神楽木と共に中ノ島の指揮下に入り、ベテランの隊員すら唸(うな)らせるほどの活躍を見せる。
古橋 伊春 (ふるはし いはる)
日比野カフカや市川レノと共に、防衛隊試験を受験した青年。八王子にある怪獣討伐の高専を首席で卒業し、そのまま日本防衛隊への入隊を希望する。やや直情的で、負けず嫌いな性格の持ち主。中学生の時に怪獣に襲われていたところを、亜白ミナに助けられたことがあり、それ以来、彼女のような強い隊員になり、怪獣と戦うことを志す。防衛隊試験での、体力試験では神楽木葵や出雲ハルイチに次いで3位の成績を収め、スーツを初めて着用した際は、14%もの解放戦力を発揮した。適性試験での怪獣との戦いでは、別次元の実力を誇る四ノ宮キコルや、怪獣の弱点を知り尽くすカフカとレノに活躍の場を奪われるものの、大きな傷を受けることなく試験を終了させた。その結果、防衛隊試験に合格して日本防衛隊の一員となり、防衛隊立川基地に配属される。ミナを尊敬する気持ちは防衛隊に所属してからも変わらず、カフカが彼女の幼なじみであると知った時は、彼から昔の彼女の話を聞かされ、ハルイチと共に感動していた。やがてレノにライバル心を抱くようになり、彼を超えるべく熱心に訓練を重ね、スーツの解放戦力を20%にまで引き上げる。相模原の怪獣との戦いでは、「斑鳩小隊」と呼ばれる小隊でレノと共に戦う。その中で、ユニソケットを巧みに使い分けて戦うレノに対抗心を抱きながらも、多数の余獣を相手に奮戦する。しかし、戦いの終盤で人型の怪獣に襲われ、一転して危機に陥る。通信も通じなくなる中、レノが古橋伊春自身を守るために必死になって抗戦する姿を見て、気に入らないのはレノではなく、守られるだけの自分自身であることに気づく。さらに、レノが将来隊長に相応しい力を得ることを確信すると、今度は自分がレノを守ることを志し、勝ち目が薄いことを承知で人型の怪獣を相手に果敢に立ち向かう。
神楽木 葵 (かぐらぎ あおい)
日比野カフカや市川レノと共に、防衛隊試験を受験した青年。かつては陸上自衛隊に所属しており、若きホープとして期待されていた。しかし、本心では怪獣と戦うことを願っており、やがて陸上自衛隊を辞めて日本防衛隊への編入を志す。自衛隊で鍛えていただけあって筋骨隆々で、古橋伊春やレノからは「神楽木葵に比べれば自分たちは貧弱でしかない」と言わしめるほど。また体軀に見合った体力を誇り、防衛隊試験の体力測定では、伊春や出雲ハルイチを抜いて1位の成績を収めた。その一方で、怪獣の知識や戦闘センスなどはほかの受験生たちよりも劣り、神楽木自身でもそのことを自覚している。適性試験での実戦では、四ノ宮キコルや、怪獣の弱点を知り尽くしているカフカとレノに活躍の場を奪われるものの、大きな傷を受けることなく試験を終え、防衛隊試験に合格して日本防衛隊の一員となり、防衛隊立川基地に配属される。似たような性格のハルイチにライバル心を抱いており、彼に対抗すべく訓練を重ねて、スーツの解放戦力を25%まで上昇させる。相模原の怪獣との戦いでは、中ノ島の指揮下に入り、ハルイチのサポートを受けつつも3体の余獣を次々と撃破した。
保科 宗四郎 (ほしな そうしろう)
日本防衛隊に所属している男性。防衛隊第三部隊の副隊長を務めている。誕生日は11月21日で、身長は171センチ。飄々とした性格で、関西弁をしゃべる。「日本防衛隊の隊員は、いつ何がきっかけで命を落とすかわからない」というシビアな考えを持っており、仲間意識を持つのはほどほどにするべきだと明かしたこともある。室町時代から延々と続く怪獣討伐の家系に生まれ、二振りの特殊金属製の小太刀を武器に戦う。その実力は非常に高く、中型や小型の怪獣を相手取った戦いでは、亜白ミナ以上の戦果を叩き出すことも少なくない。このことから、ミナからも頼りにされており、緊急事態が発生した場合は、彼女に追随して怪獣の退治を行う。防衛隊試験では審査官の一人となり、その試験の中で奇抜な動きを見せる日比野カフカに注目する。そして、カフカの底力を見込んだうえで、彼と怪獣8号との関係を探るべく、隊員候補生として日本防衛隊第三部隊に所属させるよう取り計らう。ミナのことを尊敬しており、彼女の副官であることを誇りに思っている。カフカから副隊長の座を奪う勢いで励むと公言されると、彼の度胸を高く評価しつつも、副隊長の座を渡すつもりはないと意思を露わにする。相模原の怪獣との戦いでは、カフカと四ノ宮キコルを率いて余獣の群れに立ち向かい、背後からせまって来る巨大な余獣を振り向きもせずに瞬殺するなど、圧倒的な力を見せる。
中ノ島 (なかのしま)
日本防衛隊に所属している女性。男勝りの性格で、自ら前線に立って戦うことを好む。肉食系でいい男には目がなく、相模原の怪獣との戦いでは、出雲ハルイチと神楽木葵がライバル心を燃やす姿に見とれていた。ハルイチや神楽木のほか、四ノ宮キコルなどの優秀な新入隊員に触発されて、全体のレベルが大きく上がっていくことを期待している。さらに、いざ戦いが始まると彼らの息の合った戦いぶりに感心する。
相模原の怪獣 (さがみはらのかいじゅう)
日比野カフカや市川レノらが日本防衛隊に入隊した約3か月後に、相模原市に現れた超大型の怪獣。全長150メートル越えるキノコのような見た目で、菌類系怪獣に近い構造をしている。しかし、カフカが余獣を解体した結果、ほかの菌類系怪獣と異なり核が首の付け根にあることが確認される。余獣にも自己増殖をうながすための増殖機関が備わっていることから、本獣を倒しても余獣を放置すれば、大量発生の危険がある。防衛隊立川基地に駐屯する日本防衛隊第三部隊に向けて討伐指令が下され、隊長格の亜白ミナや保科宗四郎、中ノ島が出動する。さらに随伴する形で、新入隊員であるカフカ、レノ、四ノ宮キコル、出雲ハルイチ、古橋伊春、神楽木葵の初陣相手となる。のちに余獣に搭載されていた増殖器官が、人型の怪獣によって外付けされたものであることが判明する。
人型の怪獣 (ひとがたのかいじゅう)
キノコのような頭部を持つ小型の怪獣。人間に近い体軀を持ち、人間の言葉でしゃべることもできる。指先からスーツの防御機能すら上回るほどの威力を持つ弾丸を発射したり、肩から複数の触手を生やして爆弾に変化させるなど、戦闘能力はほかの怪獣を圧倒し、四ノ宮キコルすら手も足も出なかったほど。人間に擬態することも可能で、日比野カフカと市川レノが日本防衛隊に入隊後、民間清掃会社「モンスタースイーパー」に新人として潜入する。優秀な隊員を擁する防衛隊立川基地に目をつけると、防衛隊試験の開催に合わせて忍び込み、適性試験で使われた怪獣とその余獣の死骸に干渉し、復活させる。さらに、その様子を目の当たりにしたキコルに不意打ちで重傷を負わせ、復活した怪獣に命令して始末させようとする。キコルが倒される様子を見る前に撤退するが、あとで流された報道から犠牲者が誰もいないことを知って驚き、ますます彼らに興味を持つようになる。次なる手として相模原の怪獣が率いる余獣に増殖器官を仕掛けて、討伐に赴いた防衛隊を一網打尽にしようとするが、器官がカフカに発見されたことでまとめて破壊され、作戦は失敗する。撤退しようとしたところでレノや古橋伊春と出くわし、彼らを苦戦させたうえで通信を妨害する電波を発生させ、孤立させる。そして、二人を始末しようとするが、気配に気づいた怪獣8号によって妨害される。
集団・組織
モンスタースイーパー
日本防衛隊に倒された怪獣の残骸処理を専門としている民間の清掃会社。日本防衛隊に入隊できなかった日比野カフカが勤務することになり、のちに市川レノもアルバイトとして入社する。男性のみで構成されており、巨大な怪獣の解体や清掃、処理が主な業務となっている。異臭や体液が付着したりケガを負うなど、危険や不潔と隣り合わせの作業であるため、その分給料はよく、日々の生活にはまったく困らないほどの稼ぎを得られる。また業務上、怪獣の体組織に詳しくなることから、防衛隊に入隊するための防衛隊試験の役に立つという側面がある。レノが民間清掃会社「モンスタースイーパー」に入社したのも、防衛隊試験に有利になる可能性を考慮したためであり、カフカもモンスタースイーパーで培った怪獣の情報で防衛隊試験を有利に進めることができた。カフカとレノが辞めたあと、その枠を埋めるために人型の怪獣が入社した。
日本防衛隊 (にっぽんぼうえいたい)
怪獣を駆逐するために結成された国直轄の防衛部隊。スーツやユニソケットなど、最新鋭の装備が支給されており、今までに数多くの怪獣を駆逐してきた。日本防衛隊に命を救われた国民も少なくないことから人気が高く、中でも亜白ミナが率いる第三部隊は連日テレビで放送されるほどの知名度を誇る。怪獣に対する憎しみや、人々を守る意思から日本防衛隊に入隊したがる市民は多く、かつて日比野カフカとミナは日本防衛隊に入隊して、共に怪獣を駆逐することを誓い合っていた。カフカが防衛隊試験に不合格となり、ミナだけが入隊したことで二人のあいだに深い溝ができてしまう。しかし、のちにカフカが市川レノに背中を押される形で再受験して合格を果たす。なお、現時点で存在が確認された怪獣は、ほとんどが日本防衛隊によって駆除されているが、怪獣8号は一度確認されただけでそれ以降の足取りがつかめておらず、その正体がカフカであることも気づいていない。
場所
横浜南総合病院 (よこはまみなみそうごうびょういん)
日比野カフカが怪獣に襲われてケガを負って入院した病院。なんの変哲もない病院のはずだったが、カフカがベッドに寝ていた最中に謎の生物に寄生され、肉体が怪獣8号に変質したことでパニックに陥る。さらに、怪獣8号の能力をカフカが制御できなかったことで、周囲に無差別の破壊を撒き散らす。幸いケガ人は出なかったものの、このことが日本防衛隊に怪獣8号の存在が知られる原因となる。
防衛隊立川基地 (ぼうえいたいたちかわきち)
横浜にある日本防衛隊が擁する基地の一つ。陸上自衛隊の駐屯地に併設されている。ふだんは亜白ミナや保科宗四郎など、第三部隊の隊員の拠点として利用されている。日比野カフカや市川レノが参加した防衛隊試験の二次試験会場でもあり、敷地内には広大な市街地型演習場をはじめ、数多くの訓練施設が存在する。
その他キーワード
ユニソケット
日本防衛隊の隊員に支給される対怪獣用の弾丸強化アタッチメント。怪獣の特性を発揮する器官および分泌物を収納したソケットで、弾丸に怪獣の使用する攻撃と似た特徴を持つ。ユニソケットには、1970年8月4日に発生した怪獣から採取した器官を利用した「炸裂弾」や、1988年2月19日に発生した怪獣から採取した器官を利用した「凍結弾」など、複数のバリエーションがある。市川レノはユニソケットを使い分ける戦法を得意としており、新たに開発された「発雷弾」を使って、人型の怪獣に一矢報いたことがある。
スーツ
日本防衛隊の隊員に支給される対怪獣用の特殊防護服。装着者の身体の保護や、戦闘能力を引き上げる効果を発揮する。スーツの性能は、装着者の解放戦力によって大きく増減し、同じ火器でもスーツの装着者の解放戦力によって、大きく威力が増減する。中でも、96%もの解放戦力を発揮した亜白ミナは、重火器を軽々とあやつることで相模原の怪獣を容易に倒した。また、日比野カフカは相模原の怪獣が生み出した余獣を解体する際に、解放戦力が1%上昇しただけでも、民間清掃会社「モンスタースイーパー」で業務を遂行していた頃とは効率が段違いであると感じ、いつか民間会社もスーツが使えるようになるといいのではないかと考えるようになった。
怪獣 (かいじゅう)
人類の脅威となる異形の生物たち。人類に対して敵対行動を取る個体が多く、現れるたびに甚大な被害をもたらす。本体となる「本獣」と、本獣が生み出す「余獣」が存在し、大抵の怪獣はこの両者が連携して破壊行動を行う。余獣は本獣を倒しても消えるわけではなく、余獣も含めたすべてを殲滅しない限り退治できたことにはならない。古くは室町時代から存在したとされており、現在でも世界中で存在が確認されているが、その中でも日本は「怪獣大国」の異名で呼ばれるほど出現率が高い。そのため、日本では怪獣に対抗するために日本防衛隊が組織され、フォルティチュードを計測する機器やスーツ、ユニソケットといった兵装を生産しており、その甲斐あって多くの怪獣は出現が確認されてすぐに撃破されるようになる。特に強力な怪獣は特別枠として記録され、「怪獣1号」などの番号が名付けられる。号が付けられた怪獣は現在までに8体存在しており、そのうちの7体はすでに倒されているが、怪獣8号のみ、今でも日本防衛隊に捕捉されていない。最近、怪獣8号や人型の怪獣のような知能を持つ怪獣が現れ、その個体は通常の怪獣をはるかに上回る力を持つ。
解放戦力 (かいほうせんりょく)
スーツの機能をどれだけ解放しているかを示す値。数値は百分率で表示され、100%に近ければ近いほど、スーツ本来の能力を引き出せていることになる。高い解放戦力を発揮することは難しく、初めてスーツを着た時に発揮できる解放戦力はよくて10%前後とされる。日本防衛隊では、多くの隊員が30%以上の解放戦力を発揮できないまま終わり、一握りの特別な人材のみがそれ以上の境地に達することができるとされている。日比野カフカは防衛隊試験の体力試験で、解放戦力0%という結果に終わっている。この原因が、彼に適性がなかったからか、彼が怪獣8号に変化する能力を獲得した影響かは不明。
フォルティチュード
怪獣の強さを図るための指標の一つ。日本防衛隊で用いられており、防衛隊の基地に搭載されている計器によって観測が可能で、怪獣の存在を知らせるためのセンサーおよびレーダーとしても機能する。フォルティチュードの基本値は6.0前後がふつうであるとされており、6.4ともなると一個中隊の規模でなければ対処が難しくなる。怪獣8号が出現した時に観測されたフォルティチュードは9.8とほかの怪獣とは大きく離れており、この報告を受けた保科宗四郎は、計器の故障の可能性が高いが、仮に本当だとしたら歴史に残るほどの強力な怪獣の可能性があると分析した。
防衛隊試験 (ぼうえいたいしけん)
日本防衛隊の入隊資格を得るために必要となる試験。33歳までなら、学歴や性別を問わず誰でも受験することができる。受験者はまず、郵送形式で行う一次試験に挑戦し、これに合格すると日本防衛隊の基地に赴き、二次試験を受けることになる。二次試験は、基礎体力を測定する「体力試験」と、怪獣への対応能力を判断する「適性試験」の二つに分かれ、この二つとスーツの解放戦力を総計して合否を決定する。日比野カフカは、かつて亜白ミナと共に防衛隊試験を受けたが、ミナが合格し、カフカは不合格となったことでミナとのあいだに溝ができ、日本防衛隊に入隊することをあきらめてしまう。しかし、のちに出会った市川レノにうながされて奮起し、彼と共に再度防衛隊試験へと臨む。
関連
怪獣8号 side B (かいじゅうはちごう さいど びー)
松本直也の『怪獣8号』の小説版である、安藤敬而の『怪獣8号 密着!第3部隊』のコミカライズ作品。漫画は『ジガ -ZIGA-』(原作:佐野ロクロウ)の肥田野健太郎が担当。怪獣と呼ばれる存在が定期的に人々... 関連ページ:怪獣8号 side B
書誌情報
怪獣8号 14巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2020-12-04発行、 978-4088825250)
第2巻
(2021-03-04発行、 978-4088826110)
第3巻
(2021-06-04発行、 978-4088826714)
第4巻
(2021-09-03発行、 978-4088828152)
第5巻
(2021-12-03発行、 978-4088828725)
第6巻
(2022-03-04発行、 978-4088830537)
第7巻
(2022-07-04発行、 978-4088831701)
第8巻
(2022-11-04発行、 978-4088833057)
第9巻
(2023-03-03発行、 978-4088834436)
第10巻
(2023-08-04発行、 978-4088836133)
第11巻
(2023-12-04発行、 978-4088837475)
第12巻
(2024-04-04発行、 978-4088838984)
第13巻
(2024-07-04発行、 978-4088841601)
第14巻
(2024-11-01発行、 978-4088843155)