作品が描かれた背景
本作『流星コーリング ~双つ星の願い事~』に登場する「人工流星」は、2019年からJAXAが行っている人工流れ星実証衛星「ALE」がモチーフとなっている。人工流星は人工流れ星実証衛星の2号機で、2020年春に行われる予定だったが、2号機は動作不良を起こしたため計画は延期。2023年に3号機によって行われる予定となっている。
作品誕生のいきさつ
本作『流星コーリング ~双つ星の願い事~』は、NTTレゾナント株式会社主催のコラボレーション企画「流星コーリング・コミカライズプロジェクト」によって誕生した。本企画ではAIチャットボット作成サービス「goo botmaker(グーボットメーカー)」とロックバンド「WEAVER」のコラボレーションが行われ、企画への参加者を「天文部員」として大々的に募集した。本作はもともと小説版『流星コーリング』のアナザーストーリーとして制作されることが決定しており、天文部員にはその制作過程が公開されることになっていた。また「goo botmaker」は本作、小説版、両方に登場するキャラクター、モナをモデルにしたAIチャットボットを提供した。天文部員はモナを育成したり、会話したりすることができ、『流星コーリング』の世界観を楽しむことができた。企画に参加した天文部員はコミックス版に「天文部員一覧」としてクレジットされている。
あらすじ
不幸な彼と流星
広島に住む高校生の南條麦は来る日も来る日も、自らの不運と奇妙な頭痛に悩まされていた。そんなある日、クラスは広島に降る「人工流星」の話題で持ち切りになっていた。人工流星の話に興味を覚えた麦は、天文部なら詳しい人物がいると思い、部室を訪れる。しかし天文部は部員が少ない弱小部で、部長のモナはこれ幸いと、星占いで麦を天文部に勧誘する。そしてそこで麦に告げられたのは、麦の運勢はどん底で、「人工流星の日に死ぬ」という占いだった。一方、麦と同様に人工流星に興味を持った上川真珠実が天文部を訪れ、同じようにモナに占ってもらう。真珠実の運勢は麦と真逆の最高状態で、「人工流星の日に願い事が叶(かな)う」というものだった。真逆の運勢を持つ二人だったが、同じ時期に天文部を訪れた縁で知り合う。しかし言葉の行き違いから麦と真珠実はケンカになってしまうが、運を改善したいという麦に真珠実は手伝うことを申し出て、二人はその方法を求めて奔走することとなる。
関連作品
小説版
本作『流星コーリング ~双つ星の願い事~』は河邉徹の小説『流星コーリング』を原作としている。小説版はKADOKAWAより刊行された。本作と小説版は物語の舞台と時間軸、一部キャラクター、「人工流星」をモチーフにしている部分は共通しているが、主人公は別で、物語の展開もまったく違うものとなっている。
アルバム
本作『流星コーリング ~双つ星の願い事~』の原作者である河邉徹はロックバンド「WEAVER」のドラマーでもあり、同バンドの手掛ける楽曲の作詞もそのほとんどを担当している。そのため小説の執筆に合わせて、小説と楽曲を組み合わせた「流星コーリングプロジェクト」を始動し、小説の発売に合わせてアルバム『流星コーリング』を作曲した。アルバムは小説版と同時発売となった。
登場人物・キャラクター
南條 麦 (なんじょう むぎ)
廿日(はつか)市中央高校に通う2年生の男子。取り立てて特徴のない平凡な見た目に反して、運が異様なほど悪く、いつも自分の不幸を嘆いている。最近は不幸に加え、頭痛もひどくなっており、悩みの種となっている。自分の運命がひっくり返るような転機を熱望しているため、「人工流星」の日に興味を覚え、天文部を訪れる。しかしそこでモナから頭痛は不幸の予兆で、「人工流星の日に死ぬ」と告げられてしまう。ただの占いだと無視しようとするものの、占いの結果が頭から離れず、天文部と縁を持つようになった。ただし入部に関しては保留中。占いの結果でモヤモヤしている中、靴占いをしようと靴を放り投げた結果、通りすがりの上川真珠実に当たってしまう。さらにそこで自分の不幸を嘆いた姿が真珠実の逆鱗(げきりん)に触れてしまい、ケンカ状態となった。だがそれでもなんだかんだ言いつつ、自分の運の改善に協力してくれる真珠実に感謝している。
上川 真珠実 (かみかわ ますみ)
廿日(はつか)市中央高校に通う2年生の女子。長く伸ばした髪をポニーテールにしている。東京からの転校生で、最近広島にやって来たが、持ち前の明るさと人懐っこさからすぐにクラスメイトとも打ち解け、なかよくなっている。自他共に認める「運のよさ」を持つ。おとめ座生まれで、妹の上川るりがテレビで星座占いを見る時は、おとめ座がいつも1位となる。バレー部に所属しているが、人工流星で星に興味を覚え、天文部を掛け持ちするようになる。入部の際にモナの占いで、上川真珠実自身の運勢は絶好調で、人工流星の日にピークを迎え「願い事が叶う」と告げられる。南條麦とは出会った際の、なんでもかんでも自分の不幸に責任転嫁する姿に腹を立て、思わず言い争いとなる。しかしその後も何かと麦を気に掛けており、彼の運勢を改善させるためにサポートしている。
モナ
廿日(はつか)市中央高校に通う2年生の女子。天文部の部長を務めている。黒い髪を長く伸ばし、口元にホクロがある。ミステリアスな雰囲気を漂わせており、占いを得意とする。飄々(ひょうひょう)としてつかみどころがなく、占いにかこつけて南條麦を天文部に引き込むことを画策。占いはあくまで趣味でやっているだけで、深いところはよくわかっていない。麦の占いの結果には一応責任を感じているようで、彼の運勢改善のため、麦と新山真希を引き合わせた。
レオン
廿日(はつか)市中央高校に通う2年生の男子。天文部の副部長を務めている。制服の上からフードをかぶり、花粉症なためつねにマスクを付けている。物静かな雰囲気を漂わせており、言葉少なめながらいつもモナの横にいる。
新山 真希 (にいやま まき)
廿日(はつか)市中央高校に通う3年生の女子。髪をセミロングにセットし、朗らかな性格をしている。宮島の神社の娘で、運勢改善に悩む南條麦に弥山(みせん)の仙人の噂(うわさ)ついてを教えた。深い悩みを抱えており、上川真珠実とはお互いの思いに共感を抱き、激励を送っている。
上川 るり (かみかわ るり)
上川真珠実の妹。明るい性格で姉とは仲がよく、星座占いでおとめ座が1位になった時に、姉に教える役目を担っている。姉の明るさにはいつも助けられているが、一方で姉が本音を隠して苦労を抱えこむ気質であることを理解しており、心配している。
仙人 (せんにん)
宮島の弥山(みせん)にあるお寺の住職を務める老爺(ろうや)。立派なヒゲを生やし、見た目が仙人っぽいことから「仙人」と呼ばれている。不思議な力を持ち、その昔、流れ星を捕まえたと噂されている。現在でも「仙人に会った人はみんな幸福になる」と言われている。
クレジット
- 原作
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河邉 徹