灰仭巫覡

本作は、国を滅ぼす天災「夜」に対抗するため、量子力学を応用した「霊磁気学」が研究されている世界を舞台にしている。「夜」の襲来によって大英帝国は既に滅亡しており、日本に駐留している英国軍の様子が回想シーンとして描かれることもある。神話とSFが融合した独特の世界観を背景に、故郷を守るために「夜」に立ち向かう少年少女たちの奮闘と青春群像劇が、コミカルな要素を交えながら展開される。また、繊細で迫力あるアクションシーンや、緻密に描かれたメカニック描写も、本作の大きな魅力の一つとなっている。

かつて「夜」の襲来によって故郷を失った英国軍人のガオは、母親の遺言に従って日本へ向かい、とある田舎町で少年、仭と出会う。自然豊かな穏やかな町で、仲間たちと共に束の間の平和を謳歌する仭とガオだったが、再び「夜」が襲来する。二人は神楽を舞い、神をその身に降ろす「巫覡(ふげき)」として、未知の災厄に立ち向かう。青春と天災が交錯する日々の中、彼らの前に「地割れの夜」から生まれた小型の怪異「メリメリ」が現れる。当初はいたずら好きな小動物に過ぎなかったメリメリだが、ある日を境に巨大化し、破壊の限りを尽くすようになる。英国軍がメリメリの排除に動き出す中、ガオは「夜」との共存を望む日本との価値観の違いに直面し、ある選択と決意を胸に秘める。

仭とガオが出会ってから10か月が経過した頃、彼らが封じた「夜」を天に送り返す「大祓(おおはらえ)」の祭りが近づいていた。仭の「祟り刀」を整備する鍛冶屋の娘で、巫覡にあこがれる少女、縁は、大祓の準備中に好奇心と気の迷いから「鎌息断の夜」を解放してしまう。鎌息断の夜を放置すると、周囲の生命の魂が刈り取られてしまい、既に縁の腕と御陵ナツの魂が刈られていた。荒れ狂う鎌息断の夜を再び封じるため、仭とガオは縁を連れて狩猟の神の神殿へ協力を求めに向かう。