概要・あらすじ
「無頼記者」のペンネームで知られる熊野熊五郎は、野球と酒をこよなく愛する人情派記者。彼の記事は単なる勝利、優勝のみを求めるものではなく、選手個人の魅力や内面を鋭く描いていた。時に挫折し、時に涙を流すイーグルスの選手たちへの敬意を胸に、無頼記者は今日も新たな記事を執筆し続ける。
登場人物・キャラクター
熊野 熊五郎 (くまの くまごろう)
毎朝スポーツに所属しているライターの男性で「無頼記者」というペンネームを持つ。明るく気さくな性格の人情派で、仲間内からは「熊さん」と呼ばれることが多い。高校時代は野球部に所属しており、現在も数多くのプロ野球選手と交流がある。その伝手を活用した情報収集能力を活かし、ファンのみならず、編集部をもあっと言わせる記事を書き連ね、高い評価を得ている。 自らを高めようと努力する選手に対しては声援を惜しまない一方、自堕落な選手に対しては容赦のない記事を書くこともある。しかし、これは決して選手たちが努力できないことを蔑んでいるわけではなく、再起を願う熊野熊五郎なりの想いが込められている。事実、熊野の記事にはっぱをかけられる形で再起したプロ野球選手も少なくない。
三郎
毎朝スポーツに、記者見習いとして所属している少年。主に熊野熊五郎の助手として働いており、彼からは「サブ」と呼ばれている。カメラなどの技術に優れており、熊野からも頼りにされている。反面、年相応と言える精神的な未熟さを抱えており、活躍に恵まれない選手に対して辛らつな言葉を吐くことがあり、たびたび熊野にたしなめられている。
真二
毎朝スポーツに所属しているライターの青年。熊野熊五郎とコンビを組むことが多い。のんびりとした性格で、記者としての経験は浅いが、プロ野球に関しては詳しく、洞察力に優れているうえ度胸もあるため、熊野も一目置いている。
東 浩一
イーグルスに所属する男性で、守備位置はキャッチャー。熊野熊五郎から親しみやすいと評される、明るく朗らかな性格の巨漢で、童謡「ぞうさん」を口ずさむ癖を持つ。デビュー当初こそパッとしなかったが、徐々に頭角を現していき、優れたパワーと、パフォーマンス能力によって多くのファンを獲得するに至る。しかし、酒好きが災いして十二指腸潰瘍に冒されてしまい、30歳という若さでこの世を去ってしまう。 東浩一の死は、熊野、および野邑監督を始めとしたイーグルスのメンバーに深く悼まれた。
野邑監督
イーグルスの監督を務める男性。選手としても活躍しており、捕手と4番バッターを兼任している。東浩一(トンヂ)の才能に早いうちから着目しており、ゆくゆくは自らのポジションを継承し、監督業に専念しようと考えていた。しかし、球場でトンヂが十二指腸潰瘍で急逝してしまったことを聞き、激しく動揺する。それでも試合が終わるまではチームメイトに告げることなく、最終打席では香典替わりとしてホームランを打つことでトンヂを弔った。
中田
イーグルスに所属する青年。体力がなく技術面も今一歩ではあるが、走力に優れており、熊野熊五郎は十二球団の中でも右に出る者はいないと賞賛している。その特徴から代走を引き受けることが多く、想いを寄せる相手である冴子が試合観戦に訪れた際は、見事なホームスチールを決め、勝利に貢献して見せた。
冴子
暴漢に襲われていたところを中田に助けられたという女性。この事件をきっかけにフィアンセに離れられてしまい、生きることに対して絶望してしまっていた。しかし、そんな折に中田と再会し、熊野熊五郎の計らいによってイーグルスの試合を観戦。彼の活躍を見て生きる気力を取り戻した。
関田
高校時代、熊野熊五郎の後輩だった男性。10年もの間、プロ野球球団で活躍してきたが、突如解雇されてしまう。これがきっかけで自棄を起こし、関田サチ子や息子を放って遊び歩くようになってしまい、ついには海に飛び込むことで自らの命を絶とうと、助手席に熊野を乗せたまま車を発進させてしまう。しかし恩人である熊野を巻き込むことができず、断念。 さらに、熊野からサチ子と息子が懸命に働いていることを聞かされ、改心するに至る。その後はサチ子とともに蕎麦屋を営み、第2の人生のスタートを切った。
関田 サチ子
関田の妻。上品な雰囲気を持つ女性で、熊野熊五郎とも家族ぐるみの付き合いがある。家族思いであった関田が解雇されてしまい荒れていることを気に病んでおり、何とか立ち直ってもらおうと息子ともども必死に働いている。この勤勉さが、関田の再起を促す結果となった。
豪介
プロ球団の1つであるジャガーズでピッチャーを務める20歳の青年。熊野熊五郎とは旧知の仲で、彼を先輩と呼び慕っている。豪快なフォームによるピッチングが持ち味だったが、プロになってからは言われたことに唯々諾々と従っていた結果、フォームが中途半端になってしまい、調子を崩してしまう。そのことを熊野に厳しく指摘、追及されるが、それに対する反発心からかつての我の強さを取り戻し、スランプを克服する。 のちに、チームメイトのさりげない一言から、熊野が誰よりも豪介を心配していたことを察する。そして偶然にも再会することで、心から笑いあうことができた。
沢井 信一
プロ球団の1つであるブラックスでピッチャーを務める男性。熊野熊五郎とは高校時代の同級生で、高校野球大会においてバッテリーを組んでいた。プロ球団でも長い間活躍し「黄金の腕」の異名を持っていたが、近年はその活躍もすっかり衰えてしまい、敗戦処理投手としての起用が多くなっていた。沢井信一本人は熊野に対し、もうこういった扱いも慣れていると告げるが、内心では悔しさを抱いており、熊野もそれを察してしまう。
団 圭吾
イーグルスに所属する男性。志元幸夫のバッティング練習における投手を任されている。気こそ弱いが抜群のセンスを誇る志元を強く信頼しており、弟のようにかわいがっている。しかし試合には出られないため、息子がからかわれるといったこともあり、多少の歯がゆさを覚えている。ある時息子が交通事故に遭ってしまい、これを機にイーグルスを退団。 野球から遠ざかる覚悟をしていたが、熊野熊五郎の策によって、別の球団に移籍することとなる。
末元 幸夫
イーグルスに所属する青年。イーグルスが誇るバッターの1人で、専属のバッティング投手として団圭吾を据えている。団を強く尊敬しており、彼の家族とも親しい。一方で団に依存してしまっている傾向があり、そのことを熊野熊五郎や団本人に危惧されていた。その危惧は悪い形で的中してしまい、団がイーグルスを去ると調子を崩してしまう。 しかしその後、思いもよらない形で団と再会することとなる。
志村
プロ球団の1つであるジュピターで、スカウトを任されている老年の男性。熊野熊五郎と親しく、彼からは「おっさん」と呼ばれている。ジュピターの球団代表とは球団立ち上げの時から長らくともに仕事をしてきており、中心人物として名を馳せていた。しかし、長らく志村がスカウトをしてきた選手が大成しなかったため、批判の声を向けられている。 熊野によれば、志村のスカウトした選手はいずれも優れた資質を持っていたが、周りの人間がそれをダメにしているとのこと。スカウト業に限界を感じ引退したものの、その矢先に嶋岡栄治を見つけ出し、ジュピターの中心的な選手として据えることに成功する。
志村 洋子
志村の娘。父親と2人で暮らしており、熊野熊五郎とも親しい。広い心の持ち主で、志村が嶋岡栄治を住み込ませて特訓をすると決めた際も快く受け入れている。のちに嶋岡と親しくなり、密かに好意を寄せるようになる。その想いは彼が増長してからも変わることなく、のちに嶋岡が志村の実家に戻って来た際には涙を流して喜んでいた。
嶋岡 栄治
運送会社に勤める、社会人野球選手の青年。才能と根性を併せ持つ努力家で、練習中の姿が志村および熊野熊五郎の目に留まり、プロ球団の1つであるジュピターにスカウトされることとなる。当初はプロでやっていくことに不安を抱いていたが、志村の家に住み込み特訓を重ねることで、プロデビュー早々に活躍を見せ、驚異の新人として知られるようになる。 しかし、多数のファンが付くことで増長してしまい、その結果、大きく調子を崩してしまう。
北川
プロ球団の1つであるエレファンツに所属する青年。パッとした活躍が見られず、三郎からの評価も低い。本人の気も弱く、結婚して8年目になる妻が妊娠したものの、今の稼ぎでは養っていけないのではないかと悲観している。しかし、熊野熊五郎からの助言を受け意識改革を行った結果、代打で逆転ホームランを打つことに成功。妻を大いに喜ばせた。
永谷 茂
プロ野球界において英雄と語り継がれている老年の男性。「球界の名将」、「稀代の勝負師」など、多くの称号を持つ。毎朝スポーツにおいてもそのネームバリューは群を抜いており、熊野熊五郎や真二にも注目されていた。しかし現在は病に倒れており、余命いくばくもない状態にある。
大原 修
永谷茂の高校時代からのライバル。甲子園大会において因縁ができてからというものの、時には選手として、時には監督同士として、幾度となく戦いを繰り広げてきた。永谷が病に倒れ、危篤状態に陥っても見舞いにすら現れず、真二はその理由を、永谷の顔を見たくないためだと考えていた。しかし実際は永谷の死を認めたくない一心によるもので、彼が自分を置いてこの世を去ってしまったという事実に、深い悲しみと憤りを覚えていたためであった。
集団・組織
イーグルス
プロ野球を構成する12球団の1つ。東浩一や中田、末元幸夫など、個性的な選手を数多く擁しており、毎朝スポーツにおける記事の題材として選ばれることも多い。また、熊野熊五郎は、野邑監督を始めとしたメンバーと親しく、彼らとの交流が多いことも取り上げられやすい一因となっている。
毎朝スポーツ
熊野熊五郎が所属している新聞社。スピードが命のスポーツ誌を刊行している都合上、常に社内は慌ただしく、熊野のようなのんびりと構える社員は稀となっている。一方で、熊野の情報収集能力には社員のほとんどが一目置いており、発行される新聞には彼の記事が記載されていることが多い。
クレジット
- 原作