煉獄のカルマ

命の大切さや自殺によって生じる不幸や悲しみなど、いじめの現状といじめ問題をテーマにしている。本作のエピソードは第1部にあたる「高校生編」と第2部「集団自殺編」に大きく分かれており、高校生編ではいじめを苦に自殺した男子高校生の七瀬誠が、集団自殺編では集団自殺を図った女子高校生の春川たま子が主人公を務めている。陰湿ないじめに耐え切れずに自殺を図った誠が煉獄の案内人であるカルマと出会い、自らの自殺が原因で不幸になった六人を救うよう命じられる。誠が幽体離脱のような状態でタイムリープを繰り返し、六人を救うために奔走する姿が、予想外のヒューマンドラマと共に展開される。

自己肯定力が低く気弱な性格の七瀬誠は、不良グループからの凄惨ないじめを受ける日々を送っていた。家庭では厳格な父親からは学校をサボるたびに叱責され、暴力を受けていた。そんな中、唯一の生きる希望であり思いを寄せていた霧咲エリカの醜い本性を知って絶望した誠は、学校の屋上から飛び降りて自殺を図る。そのまま命を落としたと思われた誠は、地獄でも天国でもない謎の世界「煉獄」の案内人である美女のカルマと出会う。「一人の自殺によって六人が不幸になってしまう」という「自殺の業(カルマ)」を問われることになった誠は、カルマが見守る中で無限ループする1時間以内に、誠の自殺によって不幸になった六人を順番に救わなくてはならなくなる。その対象は同級生の日向あかりや夜野あつ子、誠が面倒を見ていた野良犬のサンタなど、生前の誠がなんらかのかかわりを持っていた人物（や動物）ばかりだった。誠はあかりたちを救うために奔走する中で、残された人々の本音や事情を知ることとなる。

煉獄に堕ちた自殺者は「自殺の業(カルマ)」によって不幸になった六人を、無限にループする世界で1時間以内に全員救出するという試練を課せられる。救出に成功した際には、リストの顔写真に〇印が付けられていく。自殺者は霊体のような状態になるが、動物を除く生者からは視認されず触れることもできない。しかし、強い思いがあれば家具などの無機物に触れることは可能で、ループを繰り返すうちに霊体にさらなる変化が起こる。これらのルールに翻弄されつつも、六人を救っていく緊張感ある展開や自らの命を奪った加害者と向き合いながら、成長していく姿が見どころとなっている。また煉獄の案内人として誠をはじめとする自殺者たちを見守るカルマの過去や、彼女が自殺者たちに試練を与える本当の理由も明らかになる。