概要・あらすじ
時は安政4年(1857)。武蔵国多摩郡石田村の農民の子、土方歳三は女と喧嘩に明け暮れ、周囲から「バラガキ(乱暴者)」と恐れられていた。ある日の夜、歳三は府中の六社明神の祭礼に出かけた。俗に「くらやみ祭」と呼ばれるこの祭礼は、提灯が消えると同時に、男も女も手当たり次第通じ合うものだった。この祭礼で、歳三は絹の着物をまとった良い匂いのする女を抱いた。女が去った後、落ちていた懐剣を拾った歳三は、鞘(さや)に描かれた紋章を頼りに女の居所を突き止めた。彼女は六社明神の神官の妹君の佐絵であった。それ以来歳三は、神官の屋敷に忍び込んでは佐絵と関係を結ぶようになった。ある夜、歳三は甲源一刀流の師範代の六車宗伯(ろくしゃそうはく)に、佐絵との密会を知られてしまう。六車が六社明神の見回りをしているときに、屋敷の土塀を乗り越えてきた歳三と出くわしたのだ。顔を見られ、情事を知られたからには斬るしかない。そう決意した歳三はいきなり六車に撃ちこんだ。躊躇(ちゅうちょ)のない激しい歳三の攻撃に、六車は不覚を取ってしまう。初めて人を殺した歳三は「こんなにあっけないものか」という思いを抱く。そしてこの夜、多摩郡石田村で終えるはずだった歳三の運命が、大きく変わった。
登場人物・キャラクター
土方 歳三 (ひじかた としぞう)
武蔵国多摩郡石田村の農家の息子。後ろでひとつに結んだ長髪、鋭い目つきが特徴の美青年。少年時代から武士になりたいという強い思いを持つ。喧嘩に明け暮れていたことから、周囲からは「バラガキ(乱暴者)」と呼ばれる。天然理心流の道場、試衛館で剣術を学び、師範代となる。後に、幕末最強の武装集団、新選組の副長を務めることになる。同名の実在人物がモデル。
近藤 勇 (こんどう いさみ)
天然理心流・試衛館師範代の男性。土方歳三の兄貴分で、がっちりした体格、豪快な性格が特徴。後に、幕末最強の武装集団、新選組の局長を務めることになる。同名の実在人物がモデル。
沖田 総司 (おきた そうし)
天然理心流・試衛館師範代の男性。天真爛漫(らんまん)な美少年。子供っぽい外見ながら、剣の腕は天才的。後に、幕末最強の武装集団、新選組一番隊組長を務めることになる。同名の実在人物がモデル。
六車 宗伯 (ろくしゃ そうはく)
数千の門弟を抱える甲源一刀流の師範代の男性。立派な口ヒゲが特徴で、武州随一の剣の達人として知られる。ある屋敷を見回っている際、土方歳三と出くわし、歳三に惨殺される。
七里 研之介 (しちり けんのすけ)
甲源一刀流比留間道場の師範代の男性。色白、ボサボサ頭、あごヒゲ、右目周辺の痣(あざ)が特徴。居合の名人で、性格は蛇のように執念深く冷酷。六車宗伯(ろくしゃそうはく)の仇討(あだう)ちで、土方歳三の命を狙う。
クレジット
- 原作
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司馬 遼太郎
- 脚本
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小松 エメル