特攻の島

特攻の島

生きる意味を見つけられないまま予科練で過ごしていた渡辺裕三は、回天特攻隊の隊員として出撃。だが回天の故障により意に反して生還し、くすぶった日々を送る。やがて敗戦直前に企図された最後の総攻撃で、渡辺は再び回天搭乗の機会を得た。当時の実在の人物が多数登場するのも特徴。

正式名称
特攻の島
作者
ジャンル
第二次世界大戦
レーベル
芳文社コミックス(芳文社)
巻数
全8巻完結
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概要・あらすじ

太平洋戦争末期、日本海軍士官・黒木博司仁科関夫は自爆兵器を考案して軍に導入を提言。やがて人間魚雷・回天として実用化され、福岡海軍航空隊予科練にいた渡辺裕三らが搭乗員として集められた。生きる意味を見出せず空虚な日々を送っていた渡辺は、「俺自身の人生を俺のものにするため」回天での特攻に命を燃やそうとする。

だが渡辺金剛隊の一員として出撃した際、回天の故障と敵の猛攻で発進できないまま帰投。いっぽう同じ金剛隊の親友・関口政夫は回天で自ら敵の駆逐艦を引きつける囮となり、渡辺らを助けて爆死する。回天隊は生還した搭乗員を再び出撃させない不文律があり、渡辺は回天操縦の指導員となった。

やがて家族が空襲で全滅した知らせが届き、渡辺は死に場所を求めて憔悴。米軍の本土上陸が目前の脅威となった1945年7月、ついに渡辺に出撃命令が下される。

登場人物・キャラクター

渡辺 裕三 (わたなべ ゆうぞう)

福岡海軍航空隊予科練出身で、階級は三飛曹、後に二飛曹に昇進した。九州の炭鉱町に暮らす貧困家庭の出身。幼い頃から残飯回収の仕事を手伝い、周りの子供に蔑まれて育つ。予科練に志願して実家に仕送りをするようになるが、生きる意味を見出せないまま無為に日々を過ごしていた。1944年に回天への搭乗を打診され、大勢の仲間とともに志願。 回天の創案者の一人・仁科関夫との出会いから、特攻に命を燃やすことで生きる意味を得ようとする。回天による第二次攻撃隊・金剛隊の一員に選ばれ、伊53潜に乗り組んで出撃。だが回天を発進させる機会がないまま生還してしまい、周囲からそしられるように。 以後は回天隊の不文律により出撃の機会を与えられず、死に場所を求める渡辺は自殺未遂まで起こす。だが敗戦が直前に至り、海軍は回天による総攻撃を企図、渡辺にも念願の出撃命令が下った。幼い頃から絵を描くことを好み、予科練に志願した際に母親から贈られたスケッチブックに素描を描きためている。

仁科 関夫 (にしな せきお)

海軍中尉、後に少佐。黒木博司とともに人間魚雷を創案、海軍に実用化を提言した。父親は師範学校の校長。尊敬する黒木に少しでも近づくため、回天の開発に没頭した。回天が持つ意味にこだわる渡辺裕三に、黒木との思い出などを語って聞かせる。死ぬことに意味を見出せないと言う渡辺を菊水隊から外し、生きろと言い残した。 回天による第一次攻撃隊・菊水隊の一員として1944年11月に出撃。回天で敵船団に突撃し、爆死した。ただし戦果は不明。同時代の実在人物・仁科関夫がモデルになっている。

黒木 博司 (くろき ひろし)

海軍大尉、後に少佐。仁科関夫とともに人間魚雷を創案、回天と名づける。当初は軍上層部に反対されたが、後に実用化が認められた。1944年9月、悪天候のなか樋口大尉の指導官として回天の訓練を強行。海底で遭難して動けなくなり、樋口大尉とともに窒息死した。死の直前まで艇内の様子を冷静に記録した遺書を残す。 同時代の実在人物・黒木博司がモデルになっている。

板倉少佐 (いたくらしょうさ)

回天隊指揮官。潜水艦・伊169潜の水雷長として真珠湾攻撃に参加した経歴を持つ。1943年に潜水艦の艦長となり、7度の作戦に参加。板倉も自分だけ生還したためにそしりを受けたことを、渡辺裕三に告白する。死にたがる渡辺に生きろと告げるが、後に最後の総攻撃にあたって出撃命令を下した。 板倉も回天隊とともに潜水艦艦長として出撃を希望していたが、軍上層部に認められないまま敗戦を迎える。同時代の実在人物・板倉光馬がモデルになっている。

関口 政夫 (せきぐち まさお)

福岡海軍航空隊予科練出身。ほかの予科練生と異なる冷めた雰囲気を漂わせていた渡辺裕三に興味を持ち、親友となる。渡辺とともに回天の搭乗員に志願。死を恐れない反面、犬死にすることを強く拒んでいた。関口も回天に搭乗して死ぬ意味を見出せなかったが、土壇場で渡辺を生かすために死ぬことを決意。 伊53潜が敵駆逐艦に囲まれて絶体絶命となった際、艦内から回天に搭乗して発進した。関口は自ら囮となって敵駆逐艦を引きつけた後、その爆雷によって回天もろとも爆死。敵駆逐艦はこれを伊53潜の爆発と勘違いして引き揚げ、渡辺らは九死に一生を得る。

豊増 清八 (とよますせいはち)

潜水艦・伊53潜の艦長。金剛隊の出撃に参加、回天4基を伊53潜に搭載してパラオ島コッソル水道へ向かった。敵駆逐艦隊の包囲で退路を断たれ、艦を身軽にするため回天を破棄しようとする。だが回天搭乗員たちの直訴で関口政夫の海中発進を容認。関口が囮となって自爆したことにより救われた。 種子島で艦を修理した後、残った3基の回天とともに再びコッソル水道へ出撃。だが戦果が挙げられないまま敵駆逐艦に追われ、帰投を余儀なくされた。1945年7月、回天による最後の総攻撃を敢行する多聞隊に参加。伊53潜に渡辺裕三を乗せてバシー海峡東方へ向かうが、浮上した際に敵機の機銃掃射を浴びて倒れた。 同時代の実在人物・豊増清八がモデルになっている。

有森上曹 (ありもりじょうそう)

金剛隊の回天搭乗員として、渡辺裕三、関口政夫、伊東少尉らとともに伊53潜に乗りこむ。最初の攻撃では潜水艦内の回天搭乗口が浸水で閉鎖され、発進できなかった。2度目の出撃でようやく回天を発進させるが、敵艦の手前で砲撃により破壊された。同時代の実在人物・有森文吉がモデルになっている。

伊東少尉 (いとうしょうい)

金剛隊の回天搭乗員として、渡辺裕三、関口政夫、有森上曹らとともに伊53潜に乗りこむ。最初の攻撃では、敵駆逐艦の猛攻で発進の機会が得られなかった。2度目の出撃でようやく回天を発進させるが、海中に敷設された機雷つきのネットに引っかかって爆死。同時代の実在人物・伊東修がモデルになっている。

渡辺裕三の母親 (わたなべゆうぞうのははおや)

九州の炭鉱町で、夫、渡辺裕三の弟である久男、行男、史郎らと暮らす。家庭は貧しく、渡辺裕三の母親も残飯回収の仕事をしていた。1945年、B29の空襲で消息不明に。後に板倉少佐の調査で一家全員が死亡したと判明する。

集団・組織

菊水隊 (きくすいたい)

『特攻の島』に登場する部隊。回天による特攻を初めて行った。1944年11月出撃。潜水艦3隻に回天12基を搭載し、西太平洋カロリン諸島ウルシー泊地の米軍フィリピン攻略部隊を狙う。潜水艦3隻のうち伊37潜は攻撃前日、回天4基とともに消息が途絶。残る回天8基のうち3基が故障、5基が敵船団に向かって発進、自爆した。 うち1基は仁科関夫が搭乗。回天による敵の損害は大型輸送船1隻の撃沈にとどまる。5基の搭乗員のうち大型輸送船を沈めたのが誰かは不明。後に戦艦2隻、空母3隻を沈めたという虚偽の戦果が報告され、回天による特攻作戦に拍車をかけた。

金剛隊 (こんごうたい)

『特攻の島』に登場する部隊。菊水隊に続き、回天による2度目の特攻を行った。1945年1月出撃。潜水艦6隻に回天24基を搭載し、ウルシー泊地などの攻撃に向かう。攻撃後、伊48潜を除く5隻が帰投。敵艦18隻を撃沈する大戦果が報告されたが、米軍側にその記録はなかった。

千早隊 (ちはやたい)

『特攻の島』に登場する部隊。回天による特攻を行う。1945年2月出撃。潜水艦・伊44潜、伊368潜、伊370潜の3隻に回天を搭載、敵攻略部隊を撃滅すべく硫黄島へ向かう。だが伊368潜、伊370潜は敵艦に撃沈され、伊44潜も敵の制圧で回天を発進させられないまま帰投した。

多聞隊 (たもんたい)

『特攻の島』に登場する部隊。回天による最後の特攻を行う。1945年7月出撃。伊53潜など潜水艦6隻に回天32基を搭載し、台湾とバシー諸島に挟まれた海上の要衝・バシー海峡へ向かった。伊53潜に乗りこんだ回天搭乗員は、渡辺裕三、勝山中尉、関少尉、川尻一飛曹、荒川一飛曹、高橋一飛曹。 回天隊のそれまでの不文律を破り、渡辺ら生還した搭乗員にも出撃命令が下った。

その他キーワード

伊53潜 (いごじゅうさんせん)

『特攻の島』に登場する日本海軍の潜水艦。艦長・豊増清八。金剛隊に参加して4基の回天を搭載、渡辺裕三、関口政夫、伊東少尉、有森上曹がその搭乗員として乗り組んだ。攻撃目標はコッソル水道。だが敵駆逐艦の爆雷で損傷を受け、種子島へ帰投。修理を経て再びコッソル水道へ向かった。 2度の出撃で渡辺を除く3名が回天で発進・自爆したが、いずれも敵側の損害はなし。だが艦長の豊増は帰投後、輸送艦2隻の撃沈を確認したと虚偽の報告を行った。1945年7月、多聞隊に参加。

伊47潜 (いよんじゅうななせん)

『特攻の島』に登場する日本海軍の潜水艦。艦長・折田善次。菊水隊に参加し、仁科関夫らが搭乗する回天4基をウルシー泊地へ運んだ。次の金剛隊でも川久保輝夫、原郭郎らが搭乗する4基の回天を搭載して出撃。フンボルト湾ホーランジア泊地で4基全てを発進させ、大型輸送船4隻を撃沈したと報告した。

伊36潜 (いさんじゅうろくせん)

『特攻の島』に登場する日本海軍の潜水艦。艦長・都所静世。菊水隊に参加し、加賀谷武、本井文哉らが搭乗する回天4基をウルシー泊地へ運んだ。4基全てを発進させ、敵艦4隻を轟沈したと報告。後の神武隊にも参加した。

書誌情報

特攻の島 全8巻 芳文社〈芳文社コミックス〉 完結

第1巻

(2006年5月発行、 978-4832230521)

第2巻

(2011年1月発行、 978-4832232327)

第3巻

(2011年8月発行、 978-4832232600)

第4巻

(2012年3月発行、 978-4832232860)

第5巻

(2012年9月発行、 978-4832233119)

第6巻

(2013年12月発行、 978-4832233805)

第7巻

(2014年8月16日発行、 978-4832234130)

第8巻

(2015年11月16日発行、 978-4832234772)

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