概要・あらすじ
女は夜の空襲が始まると興奮を覚えるようになり、戦争を憎まなくなっていた。映画の脚本を書いている野村とは、酒場のマダムと客という関係だったが、どうせ戦争で日本は滅茶滅茶になるだろうから、万事刹那的に生きていこうと、一緒に暮らし始めた。女は、野村が自分に溺れることに満足していたが、野村がいずれ別の女房をもらうことを予期し、自分が浮気をするであろうこともわかっていた。
そんな2人の住む街がある夜、爆撃を受けてしまう。
登場人物・キャラクター
女 (おんな)
表向きは野村の妻として暮らす女性。元女郎で、酒場のマダムを経て野村と同棲するようになった。退屈を嫌い、遊びを本能的に追求する性格で、淫蕩だが不感症でもある。夜の空襲に惹かれる破滅的なところがあり、敗戦後の世の中にも、まったく不安を感じていない。
野村 (のむら)
映画の脚本家の男性。女がマダムを務めていた酒場の常連客。女に持ちかけられ、お互いに束縛しないという了解のもと、同棲するようになった。戦争に負ければ映画どころではないだろうと、脚本はほとんど書いていない。女に惹かれてはいるが、遊びがすべてだという彼女の思想にはついていけず、もっと自分を高められる何かを求めている。
カマキリ
工場の社長を務める初老の男性。女のことを「姐さん」と呼ぶため、女からは嫌われている。空襲を怖がってはいるものの、空襲があるたびに現地に足を運んでは、その被害を確認している。女には陰で「カマキリ」と呼ばれている。
班長 (はんちょう)
地域の班長を務める中年男性。任務に忠実で、いつも道行く人々の服装や生活態度のチェックに余念がない。窓から明かりがもれていることを女に厳しく注意したり、野村を防火訓練に出るように説得するなど、何かと口うるさい。
井戸屋
初老の男性。女や野村、カマキリとともによくバクチをしている花札仲間。太った体に丸いメガネが特徴で、温厚で人当たりが良い性格。女のことを「奥さん」と呼ぶので、女から好感を持たれている。
クレジット
- 原作
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坂口安吾