概要・あらすじ
昭和19年、太平洋戦争末期の名古屋で、12歳の少女・木村あいは姉と2人の妹、両親とともに、貧しいながらも家族そろっての堅実な暮らしをしていた。しかし幼い妹が学童疎開で家を離れたり、自身は学徒動員で工場で働くことになったりと生活が変化していく中で、不安な気持ちが強くなっていく。
登場人物・キャラクター
木村 あい (きむら あい)
初登場時12歳。長めの髪をおさげにしている。少しおっちょこちょいだが真面目な性格で、心優しく家族想いな、ごく普通の少女。国民学校初等科を卒業後は女学校に進学したいと密かに願っていたが、家が貧しいため、姉の木村みねと同様、学費の安い高等科に進学した。学徒動員が始まってからは戦闘機の部品工場に勤め、鋲の選別の仕事をする。 木村ときの遊び相手になっていたことがきっかけで出会った猿渡洋三を好きになり、のちに同居するようになってからは両想いに。
猿渡 洋三 (さるわたり ようぞう)
波多野の妻の甥。波多野家に手伝いに来ている14歳の男子で、中学校の2年生。長身で体力もあり、愛想も良いため、地域の夫人たちから可愛がられている。木村ときや戦争で親を亡くした子供たちの遊び相手になっていた際に、木村あいと出会う。在郷軍人の父親を何度もアジア各地の戦地に送り出している。 波多野家が取り壊されてからは、波多野の妻とともに木村家で暮らすようになり、やがてあいと想いを通わせる。
木村 みね (きむら みね)
木村家の長女で、木村あいの姉。少し短めの髪を二つ縛りにしている。国民学校高等科の生徒だが、学徒動員が始まってからは軍服の縫製工場に勤める。姉らしくしっかり者で、明るい性格。
木村 とき (きむら とき)
木村家の三女で、木村みね、木村あいの妹。初登場時、国民学校初等科の3年生。おかっぱ頭で、小柄だが声は大きく、明るくあっけらかんとした性格。学童疎開により一時的に名古屋を離れ、岐阜の寺に預けられる。絵を描くのが得意。
木村家の父 (きむらけのちち)
木村家の当主で、木村あい達の父親。眼鏡をかけている。穏やかな性格で、必要なしつけはするが子供に手を上げることはしない。地域の警防団員を務めている。元は大工の仕事をしていた。
木村家の母 (きむらけのはは)
木村あい達の母親で、木村家の父の妻。常に冷静沈着で毅然とした態度の女性で、バケツリレーの大会で入賞するなど、体力がある。娘たちのことを愛し、信頼している。木村みね、あい、木村ときの下にさらにもう一人、乳飲み子を抱えている。
児玉 節子 (こだま せつこ)
木村あいの、国民学校初等科の頃の友人。裕福な家に育ち、初等科卒業後は女学校に進んだ。その間に見聞きした情報により軍国少女となり、自身も国のために死にたいと願い、国民学校でビラを撒くなどの思想活動を行おうとする。学徒動員が決まった際、父親により女学校を退学させられており、国に貢献できない自身を歯がゆく思っている。
花子 (はなこ)
木村あい、児玉節子の、国民学校初等科の頃の友人。家は裕福で、卒業後は女学校に進学した。やや高飛車で人を見下しているところがあり、貧しく野暮ったいあいのことも実はバカにしていた。学徒動員による勤め先だった工場への空襲により命を落とす。
浅井先生 (あさいせんせい)
木村あい、田部悦子の、国民学校高等科での担任の教師。女性。生徒には厳しく接するが、闇雲に叱りつけるのではなく、必要な場面ではきちんと論理立てて説明する。あいらが学徒動員された際に教師を辞めている。
田部 悦子 (たべ えつこ)
木村あいの、国民学校高等科での友人。学徒動員後は同じ工場で働き、常にあいと行動を共にするようになる。手先が器用で料理が上手。優しい性格の少女。
波多野の妻 (はたののつま)
木村あいらの家の近所に住む女性で、猿渡洋三のおば。夫を戦争により失い、自身も後を追おうとしていたところを、あいの行動により思いとどまった。建物疎開のために家が取り壊されてからは、洋三とともに木村家で暮らすようになる。ニワトリを飼っている。
書誌情報
あとかたの街 5巻 講談社〈KCデラックス〉
第1巻
(2014-06-13発行、 978-4063769999)
第2巻
(2014-10-10発行、 978-4063770759)
第3巻
(2015-03-13発行、 978-4063771442)
第4巻
(2015-07-27発行、 978-4063772210)
第5巻
(2015-11-13発行、 978-4063773507)