概要・あらすじ
1941年メキシコシティー郊外ソチミルコの船上で、大日本帝国海軍の連合艦隊司令長官・山本五十六が腹心の鉢乃木少佐を連れ、ドイツ軍アドルフ・ヒットラー総統に選ばれたスコルツェニィ大尉と秘密の会合を行った。そこで2か月後の開戦と同時に、国を奪われた恨みのあるメキシコを加えた三国によるアメリカ本土への侵攻を計画する。
秘密作戦のため新たに組織された101独立空挺団は不意を突き敵地に降下、占領を目的とする激しい戦闘が求められた先鋭部隊。その中の雷神部隊で班長を務める椎馬突兵は仲間達と共に過酷な訓練を受けていた。同時に、かつて蹴球部でチームメイトだった市新鯖太や参卓一も、それぞれの戦地で着々と作戦決行の準備を進めていた。
登場人物・キャラクター
椎馬 突兵 (しいま とっぺい)
特殊空挺部隊101独立空挺団の第二大隊雷神部隊で、20名を率いる班長。階級は兵曹。かつて司令塔の10番として活躍した外神田第五中学校蹴球部の出身。現在はチームメイトだった御司緑次、質草亀蔵、鉢乃木剣、九字源四郎を部下に従えている。卒業と同時に海軍を志願し、大陸では港や基地を守備する陸戦隊に所属していたが、筋を通す性格が組織の中では邪魔になると判断され、御司緑次と共に厄介払いされ、特殊部隊として発足した101独立空挺団に送られる。 仲間にも厳しく冷酷に思われる部分もあるが、その裏には必ず相手を思う深い考えがある。テキサス南部の敵基地を占拠すると、増援要請により部隊と共にさらに危険な戦地に向かう事になる。 本人曰く、臆病で安全な策しかとらない性格。好きな言葉は、ローマは一日にしてならず。
オットー・スコルツェニィ (おっとーすこるつぇにぃ)
日独共同作戦司令官。階級は大尉。1941年9月にメキシコシティー郊外ソチミルコの船上にて、帝国海軍山本五十六大将、鉢乃木少佐と秘密の会合を行い、2か月後の秘密作戦を計画する。以前は武装親衛隊第二SS装甲師団ダス・ライヒに所属し、技術将校として戦車の修理を専門としていた。 軍の中では官僚主義に反発し上官に盾突く性格だったが、柔軟な発想と戦術をアドルフ・ヒットラー総統に認められ、直々に作戦の最高指揮官に任命される。当初は階級の低さから山本五十六に不信感を抱かれたが、秘密会合での二重三重の策を設けた警戒態勢や総統からの高い信頼に、やがてその実力を認められるようになる。 当時としては斬新だった、特殊部隊を投じてキリでもみ込むように一点集中で攻撃する戦術により、少数かつ短期間での任務遂行を可能にした。作戦実行時には自ら先頭に立ち、ベテランの戦車兵をロシア戦線から呼び寄せて司令車の周りに戦車4輌、偵察装甲車、連絡用バイク2台の護衛を付け、陸の艦隊のごとくメキシコからアメリカ本土に渡る。
山本 五十六 (やまもと いそろく)
日独共同作戦においての総合本部司令長官および大日本帝国海軍連合艦隊司令長官。1941年9月にメキシコシティー郊外ソチミルコに鉢乃木少佐と共に訪れ、ドイツ軍スコルツェニィ大尉と秘密の会合を行い秘密作戦を計画する。作戦実行時には主力部隊として赤城、蒼龍、翔鶴、加賀の4隻の空母からなる連合艦隊を率いて12月8日にカリフォルニア湾に侵攻。 テキサス州占領作戦をスコルツェニィ大尉と鉢乃木少佐に託す。作戦決行までの2か月間に万全の準備を整え、味方の犠牲を最小限にし、敵に最大限の損害を与えるために、常に相手の一歩先を読み、天候や人的ミスなど戦況に影響する事態を正確に把握しながら、決してミスの許されない巨大戦略を統括する名将。 メキシコの現地人たちに古くから伝わる、釘を一切使わずに木とロープのみでジャングルに巨大石造物を積み上げた技術を活かし、林の中に巨大戦艦のごとく対空機関砲を配備し、艦隊を狙い攻撃を仕掛けてくる敵爆撃機に対抗した。モデルは同時代の実在人物、山本五十六。
市新 鯖太 (いちにい さばた)
第五列としてあらかじめ敵地に潜入し、奇襲攻撃時のバックアップを任務とした情報部員。階級は中尉。椎馬突兵とは外神田第五中学校蹴球部のチームメイト。テキサス州ダラスの巨大精油所に移動販売のパタちゃんとして出入りし、労働者に食事や日用品から売春婦の世話までしていた。 元はメキシコ古代史専攻の大学助教授としてユカタン半島で発掘調査をしていたが、精油所で働く労働者の多くがメキシコ出身者である事から、文化に詳しい人間としてスコルツェニィ大尉に情報部員として採用される。武装親衛隊第二SS装甲師団ダス・ライヒのエルケ・ゾンマーと共同で作戦に当たる。 現地の人間たちからはサパタと呼ばれ親しまれている。
御司 緑次 (ごじ ろくじ)
特殊空挺部隊101独立空挺団の第二大隊雷神部隊で椎馬突兵の班に所属。階級は二水。外神田第五中学校蹴球部ではマネージャーを務める。判断を任された時にじっくり考えるタイプで決断が遅く、周りからはドジと呼ばれる。レギュラーだった6人は竹馬の友で、自分の性格も見抜いた上で友達付き合いができるため、愚痴も言い易く頼りになると思っている。 ゲン担ぎで西洋数占いの本をあてにするが、しばしば大事な局面で不吉な番号が巡ってきて士気に影響を与えてしまう。親は貿易商を営み、卒業後は跡を継いで会社を大きくする事を夢見ていたが、アメリカとの関係が悪化するにつれて業績が落ち込み会社は倒産、通訳として徴兵される。 悪運続きの中で大陸で知り合った香蘭と婚約をするが、香蘭は街で暴れる水兵に暴行を加えられ自殺してしまう。
質草 亀蔵 (しちぐさ かめぞう)
特殊空挺部隊101独立空挺団の第二大隊雷神部隊で椎馬突兵の班に所属。階級は二水。椎馬突兵と同じ外神田第五中学校蹴球部でポジションはゴールキーパー。自由で何物にも縛られずに生きるおおらかな性格で、好きな言葉は明日は明日の風が吹く。ただし、一度怒らせると上官であろうと関係なく手を上げ、生き残るために自暴自棄になった仲間に喝を入れる。 割り切った物の考え方で、戦闘の中でも決して冷静さは失わない。学生時代は祭を追って全国を旅する香具師が自分にはふさわしいと考えていた。
鉢乃木 剣 (はちのき けん)
特殊空挺部隊101独立空挺団の第二大隊雷神部隊で椎馬突兵の班に所属。階級は二水。椎馬突兵と同じ外神田第五中学校蹴球部でポジションはフォワード。思いつきで行動する所が、深く考える椎馬突兵とは対照的で、フォワードと司令塔の10番がヒラと軍曹の差になったと質草亀蔵に言われている。 とっさの判断や行動の速さは、椎馬突兵に心配を掛けるものの、部隊のピンチを救う結果に繋がる事もある。兄二人が兵学校に入ったため、江戸時代から続く大工の棟梁として8代目を継ぐはずだった。作戦指揮の鉢乃木少佐は兄。
九字 源四郎 (くじ げんしろう)
特殊空挺部隊101独立空挺団の第二大隊雷神部隊で椎馬突兵の班に所属。階級は二水。椎馬突兵と同じ外神田第五中学校蹴球部の出身。狙撃手。五輪に出ていれば金メダルは間違いないと言われるほどの銃の腕前。クールで必要以外の事はあまり語らず、兵舎で他の兵達が雑談をしている間も、黙って聞き耳を立てながら銃の整備をしている。 卒業文集を書く事も無駄と切り捨てる合理主義者。好きな言葉は心中。
参卓 一 (さんたく はじめ)
階級は一飛曹。椎馬突兵と同じ外神田第五中学校蹴球部の出身。海軍航空隊として12月8日現地時間10時にカリフォルニア湾で連合艦隊の空母から発進した後、北上してカリフォルニア州サンディエゴ海軍基地を撃破している。お守りとして、胴の部分に3の文字が入った月輪熊のマスコットを首から下げている。
エルケ・ゾンマー (えるけぞんまー)
武装親衛隊第二SS装甲師団ダス・ライヒに所属する女性兵士。階級は少尉。市新鯖太の店の出張コールガールとして精油所に潜入し、汚れ役として現場の監督と夜を共にしながら部屋から鍵を持ち出す。ナイフや銃の扱いに優れ、何人もの敵に囲まれた状況を銃撃戦により撃破している。その実力は市新鯖太から、小羊の皮を被った狼にたとえられ、自分以上の戦力として絶大な信頼をされている。 骨董品の銃に目が無く、知識も豊富。
鉢乃木少佐 (はちのきしょうさ)
日独共同作戦における日本側の指揮官として、スコルツェニィ大尉と共に司令車でアメリカに向かう。メキシコシティー郊外ソチミルコでの秘密会合には山本五十六大将と共に参加する。天才戦術家として海外の軍隊の情報にも詳しく、イギリス砂漠挺身隊SASの存在も耳にしていたため、スコルツェニィ大尉の発案による特殊部隊の計画を絶賛した。 特殊空挺部隊雷神に所属する鉢乃木剣は弟。
アドルフ・ヒットラー (あどるふひっとらー)
ナチス・ドイツ総統。1941年9月にメキシコシティー郊外ソチミルコの船上で行われた日独秘密会合に、部外者の観光客を装って出席し、当初スコルツェニィ大尉がドイツ側の代表である事に不満を示していた山本五十六大将を驚かせた。山本五十六はその場でスコルツェニィ大尉に、最高指揮官として要求通りの兵員装備は陸軍省が無条件で与える事を誓った。 スコルツェニィ大尉のことは、その戦術論を読み、将軍達では成し得ない柔軟な発想に目を付け抜擢した。本物のヒットラーはベルリンから一歩も動かず、各戦線を5人のダミーが出没する噂があり、この会合に出席したのもその内の1人であることを山本五十六大将は見抜いていたが、日本の顔を立てた行為を非常に感謝した。
小川 (おがわ)
特殊空挺部隊101独立空挺団の第二大隊雷神部隊で椎馬突兵の班に所属。クリスチャンで首から十字架を下げており、兵達の内輪揉めをなだめる穏やかな性格。落下傘訓練では御司緑次と共に部隊の足を引っ張る存在で、作戦の時は補充要員が間に合わなかった第一大隊水神に転属させられる。 落下傘の降下中に風に流され、目的地を大きく外れてしまう。
兵曹長 (へいそうちょう)
特殊空挺部隊101独立空挺団の第二大隊雷神部隊における椎馬突兵の上官。大陸での戦闘で多くの部下を失ってきた過去を引きずっており、兵達の命を使い捨てるような軽はずみな命令をする事ができない。テキサス南部の航空基地を襲撃し、破壊した敵戦闘機の機銃を奪い応戦した。
磐田 (いわた)
特殊空挺部隊101独立空挺団の第二大隊雷神部隊の中隊長。数々の先頭を経験してきたため、戦闘時の状況判断に長けている。部下思いで、作戦通りにいかない事態のいち早い察知や、パニックになった兵の扱いなど細かな配慮も欠かさず、士官学校では教えられない優れた状況判断能力を発揮する。
猫田 (ねこた)
特殊空挺部隊101独立空挺団の第二大隊雷神部隊の小隊長。軍人である事を笠に着て、弱者を苦しめ傍若無人な振る舞いをする男。上海で御司緑次の婚約者だった香蘭を襲い自殺させた張本人。罪もない市民に暴行を加えたことを椎馬突兵に咎められ憲兵に売られた事を恨み、戦死に見せかけた復讐の機会を狙っている。 戦闘には参加せず、テキサス南部の航空基地を占領した後に、中隊本部の事務方と一緒に現れ、増援要請の名目で椎馬突兵たちの部隊をさらに危険な戦地へと送らせる。兵站担当。
集団・組織
101独立空挺団
『特殊空挺部隊雷神』に登場する組織。大日本帝国海軍が日独共同作戦のために結成した特殊部隊で、港や基地を守備する陸戦隊各隊を中心に、さらに艦艇乗組員、航空隊などから先鋭を選抜、1万人の将兵を訓練し、弱兵を落として残った先兵で構成されている。空挺部隊では不意を突いて真っ先に敵地へ降下・占領をするため激しい戦闘が求められ、数多くの犠牲者が出る。 第一~四大隊にはそれぞれ水神、雷神、冥府、魔道という呼称がある。