あらすじ
第1巻
北海道沿岸の海面に着水した国籍不明の戦闘機の操縦士は、ナチ残党の秘密組織「WCA」の暗殺集団Zに所属し、「ヒットラーの息子」と俗称される「ボタン」というコードネームの青年だった。WCAの幹部は、着水のショックで記憶喪失となったボタンの抹殺を決断する。同時にイスラエル諜報機関「モサド」もまた、美人諜報員のエスター・アミトを日本に派遣し、ボタンの暗殺を計画。来日したエスターは、第一級テロリストとして国際指名手配されているボタン捕縛の協力を、日本の警察に依頼する。一方、室蘭に移動したボタンは、自身を襲撃したWCAのスナイパーを撃退し、その時に自分の身体に送信機が埋め込まれている事を知る。その後、エスターは逃走中のボタンを拘束する事に成功。アジトに拘束し、強力な薬剤を注射して彼の潜在意識を探り、ついにボタンがアドルフ・ヒットラーのクローン人間である事を突き止める。しかしボタンはアジトを脱走し、ある暴力団にヒットマンとして雇われる身となる。
第2巻
WCAの女スナイパー、氷心のもとを訪れたボタンは、ボタンがクローン人間であり、彼の「産みの母」が日本にいる事を知る。暴力団組織の頭目を暗殺したボタンは氷心を殺害し、産みの母がいる京都の療養所に向かう。極度の自閉症で会話不能状態の母親を、ボタンは献身的に看護するが、追跡して来たWCAのスナイパーによって、母親はボタンの身代わりとなって射殺されてしまう。悲しみにくれるボタンはWCAへの復讐を誓う。さらにWCAのスナイパーは、ラジコン兵器を駆使してボタンの生命を狙うが、ボタンは見事返り討ちにする。そんな中、一計を案じたボタンは、敵であるはずのエスター・アミトと一時的に手を結び、彼女に打倒WCAの策略を持ちかける。ボタンは自分の体内に埋め込まれていた濃縮ウランを取り出し、エスターと彼女の三人の弟と共に日本の大企業がWCAとウラン密輸を行う現場を急襲する計画に着手するのだった。
第3巻
密輸の基地である伊浜沖の神無島に潜入したボタンとエスター・アミト達は、この島が核燃料の巨大な貯蔵施設である事を発見する。そこでボタンは、突如裏切ったエスターの弟達によって殺されそうになるが、間一髪でエスターに救われる。エスターは、宿敵であったはずのボタンを愛し始めていたのだった。ボタンとエスターはIAEAの査察官に変装して伊浜原発に潜入し、核燃料再生工場が山口県にある事を知る。その後、核燃料再生工場に潜伏したボタンは、そこが原爆の密造工場である事を突き止める。ボタンは工場の乗っ取りを謀るが、内閣官吏の伊吹俊彦に邪魔される。しかしボタンは決闘の末に伊吹を負かし、ここに政界と大企業が癒着した原爆密造計画は無に帰する。そして後日、ボタンと瓜二つの顔をした宣教師のジェフ・モーガンは、彼を追って来日した美人画家のナタリー・ウォルサムと日本で再会を果たす。しかし、警察は彼をボタンの変装だと喝破していた。
第4巻
ジェフ・モーガンに変装したボタンの目的はナタリー・ウォルサムに近づき、WCAが何故ボタンをモーガンの顔に似せた顔に整形したかを探る事にあった。そしてボタンは、それがWCAによる米国軍需産業乗っ取り計画の一環であった事を知る。その後、ボタンはかつての仲間で今はWCAに反逆するクレージー ビルと偶然に再会する。そして彼とWCAのスナイパーとの対決の場に駆けつけたボタンは、スナイパーを倒してビルの死を看取り、メンバーの家族をも犠牲にするWCAへの憎悪の炎をたぎらせる。その後、日本の秘密機関がWCAと組んで企んでいた核兵器をめぐる陰謀を暴いたボタンは、自身の記憶を取り戻すために外務省情報局の桑山暁子に従い、エスター・アミトと離別する。そしてボタンはアドルフ・ヒットラーの生まれ故郷にて、WCAとの最期の闘いに挑むのだった。
登場人物・キャラクター
ボタン
元WCAメンバーの青年。「ボタン」はコードネームで本名は不明。アドルフ・ヒットラーのクローン人間として誕生し、暗殺集団Zに所属するテロリストとして名を馳せており、「ヒットラーの息子」という別称で国際指名手配されている。
エスター・アミト (えすたーあみと)
モサドに所属する諜報員の女性。「赤い爪」というコードネームを持つ。メイア・アミトの娘で、階級は少佐。スタイル抜群の美女で、真紅のマニュキュアを塗った爪を刃物代わりに使う。下腹部には鉤十字にドクロマークの焼印の痕がある。
エドゥアルト ヒムラー
元ナチスSS(親衛)隊将校の男性。ドイツのオーバーザルツベルクにあるワッヘンフェルト荘に住む老人。ドイツ第三帝国の復興を夢見て、世界中に散在する数十万の同志を束ねて指令を下す首魁的存在。ふだんは猫を抱き、揺り椅子に腰掛けている。
メイア・アミト (めいああみと)
モサドに所属する幹部の男性。イスラエル軍の将軍でもあり、組織の最上位チーフとして会議では上席に君臨する大物。ボタンを抹殺するために、娘であるエスター・アミトを日本に派遣する。
アーロン・ヤリブ (あーろんやりぶ)
モサドに所属する幹部の男性。イスラエル軍の将軍であり、同時に敵対国の軍事情報を収集する諜報組織「アマン」のチーフを務める。アフロヘアで、右目には眼帯をしている。
ズヴィ・ゲーマー (ずゔぃげーまー)
モサドに所属する幹部の男性。イスラエル軍の将軍であり、同時に国内の治安維持を任務とするシャバクのチームを務める。左腕の先には鉤爪型の義手を装着している。
ザドック グラドニコフ
モサドに所属する医師の男性。専門は精神分析で、記憶喪失となった人物に対し、薬剤を用いて過去の記憶を甦らせる治療に長けている。禿頭で、鼻ヒゲと顎ヒゲをはやした初老の博士。
絵梨 (りか)
日本の暴力団の親分に仕えている情婦。若く美しい容姿だが、極度の麻薬依存症で、ヤクのためならなんでも言う事を聞くという「薬漬けの泥人形」状態になっている。
氷心 (ひょうしん)
WCAメンバーの女性。国籍は台湾で、スタイル抜群の美人。ふだんは赤坂のクラブ「スコルピオ」でヌードダンサーをしている。暗殺集団Zのスーパーヒロインと呼称されるスナイパーで、格闘技に長けており、射撃の腕も一流。
柴崎 (しばさき)
ボタンの母親。京都の宇多野にあるサナトリウムで治療を受けている中年の女性。極度の自閉症を患っており、他人とまともにコミュニケーションを取る事ができない。
アーレフ
モサドに所属する諜報員の男性。エスター・アミトの弟で、名前の呼称は、ヘブライ語のアルファベット最初の文字を表すコードネーム。アフロヘアの青年で、ナイフの扱いを得意とするスナイパー。口下手かつ短気な性格で、ボタンを目の敵にしている。
メーム
モサドに所属する諜報員の男性。エスター・アミトの弟で、名前の呼称は、ヘブライ語アルファベット第13番目の文字を表すコードネーム。短髪で丸メガネをかけている。冷静沈着な性格で、情報分析力に長けている。IQ230という天才肌のインテリ青年。
タウ
モサドに所属する諜報員の男性。エスター・アミトの弟で、名前の呼称は、ヘブライ語アルファベット最後の文字を表すコードネーム。スポーツ刈りで、がっしりした体格の青年。偵察や後方支援を担当する。
伊吹 俊彦 (いぶき としひこ)
日本政府の内閣調査室に勤務する男性。ハゲ頭に鋭い目つきが特徴で、変装が得意。防衛庁と軍事産業企業との癒着を捜査する目的で、ボタンとエスター・アミトを尾行し、彼らを利用して自身の計画を遂行しようとする。銃身12インチという強力な拳銃の使い手。
ナタリー・ウォルサム (なたりーうぉるさむ)
アメリカ国籍の白人女性。ボストン大学の大学院に籍を置く23歳の才媛で、世界中で個展を開く画家でもあり、世間からは「彷徨える愛の画家」と呼ばれている。ピート・ウォルサムの孫娘で、Aコンツェルンの莫大な資産を相続するといわれている。
ジェフ・モーガン (じぇふもーがん)
アメリカ国籍の27歳の白人青年。ナタリー・ウォルサムの恋人で、新興宗教団体「ワールド」で宣教師を務めていたが、5年前に行方不明となった。ボタンと瓜二つの顔と容姿のせいで、周囲からはその正体はボタンが変装した人物と疑われている。
ピート・ウォルサム (ぴーとうぉるさむ)
アメリカ国籍の白人男性。ウォルサム財団の総帥で、米国軍事産業の6割を占める大企業Aコンツェルンの会長を務める老人。孫娘のナタリー・ウォルサムを溺愛しており、遺産をすべて彼女に相続させようとしている。
チョウさん
日本の警視庁に勤務する中年の男性刑事。刑事生活20年のベテランで、生涯最大の難敵となったボタンを逮捕する事に執念を燃やしている。時には違法スレスレの捜査を決行する。
クレイジー ビル
元WCAメンバーの白人男性。ボタンの同志であり、友人のスナイパー。対戦車用ライフルを暗殺に用いており、周りから「臆病者」と言われても、危険な仕事は絶対に引き受けないという性格。かなりの愛妻家でもある。
桑山 暁子 (くわやま あきこ)
日本の外務省情報局に務める女性。役職は第一室長で、格闘技やナイフ投げに長けた凄腕のクールな美女。ボタンを利用し、WCAの組織を使って日本を自分の思いのままに動かす事を夢想する野心家。
集団・組織
WCA
旧ナチスの残党による犯罪組織。世界犯罪者同盟の英語の頭文字をとった呼称。アドルフ・ヒットラーのクローン人間を誕生させ、ナチス復興を目的とする世界的なテロリスト集団。組織の尖兵集団として「Z」という暗殺集団を極秘裏に活動させている。
モサド
イスラエルの諜報機関。1937年に創設された国内最古の秘密警察組織。「アマン」や「シャバク」など複数の下部組織で構成され、テルアビブ北郊のビルに貿易会社を装った司令部がある。各部門のチーフ五人で構成された幹部会議で重要事項が決定される。
クレジット
- 原作
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小堀 洋