犬の哭く村

犬の哭く村

犬神信仰が根強く残る伊佐月村が舞台。再開発に村がゆれる中、建設会社調査員の変死を契機に、人々は次第に狂気に包まれていく。犬神を作り出す犬神筋の家系に生まれた橘月子と幼なじみたちが、謎の事件に巻き込まれる様子を描いた伝奇ミステリー。白泉社「LaLa」2019年5月号より連載を開始。

正式名称
犬の哭く村
ふりがな
いぬのなくむら
作者
ジャンル
サスペンス
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概要・あらすじ

犬神信仰が根強い伊佐月村。そこにはかつて、犬神をあやつることができる犬神筋と呼ばれる一族がいた。しかし一族は消え、村の宮司が犬神を社(やしろ)に封じたと伝えられる。そのような伝説が残る中、旅館経営者の杉本は、社を取り壊して、ゴルフ場を建設しようとする。祟りを信じる人たちは、その計画に反対した。そんなある日、社の前で建設会社調査員の死体が見つかる。犬神の祟りだと噂される中、それでも杉本は、ゴルフ場建設をやめようとはしなかった。反対派は、毎日のように杉本の旅館の前でデモを行っていた。再開発に村がゆれる中、今年も犬神を社に帰す祭が近づいている。あいにく、宮司の田島は体を壊して入院中だが、彼は「犬返し」の祈禱を、遠い親戚に頼んでいた。犬神筋の家系に生まれた橘月子とその兄の結貴は、幼い頃両親がいなくなって田島の世話になっており、月子も、祭りの準備で忙しかった。いよいよ祭り当日、月子は幼なじみの三人(診療所の娘の、村長の息子の健太、旅館の跡取りのスギ)と縁日に出かける。人々でにぎわう中、スギの父親の杉本が騒ぎを起こす。反対派の妨害に苛ついていた杉本は正気を失い、棒を振り回して暴れ回った。杉本は、犬神筋である月子を見つけて「呪えるものなら呪ってみろ」と棒を振り下ろす。そこに犬のお面をつけた少年が現れ、月子を救う。月子を抱きかかえて逃げた少年の名は森川玲一。東京から来た雇われ宮司で、月子のことを知っているようだったが、彼女には幼い頃の記憶がない。その後、騒動はおさまり、祭りはつつがなく終わった。田島が入院する病院に戻った月子は、兄と田島の会話を立ち聞きする。それは「幼い頃、月子が犬神を作り出し、逃してしまった」という衝撃的な内容だった。一方、思い詰めた様子のスギは、自分の手で犬神の存在を否定しようと、斧を持って社にいた。斧を振り下ろそうとした瞬間、犬の面をかぶった何者かに制止される。その翌朝、スギの遺体が社の前で発見された。その口の中には犬の毛が入っていたため、村人はまた犬神の祟りだと噂するのであった。

登場人物・キャラクター

橘 月子 (たちばな つきこ)

犬神筋と呼ばれる一族の少女。小さい頃に何かしらの事件に巻き込まれ、それまでの記憶を失う。その事件で両親がいなくなったため、兄の結貴とともに宮司の田島に引き取られている。父母が犬神を作り出す光景を断片的に記憶しており、何かを思い出そうとすると恐怖に襲われる。

(しのぶ)

橘月子の幼なじみ。診療所の娘で、クールな黒髪の少女。村人から「奇跡の美少女」と呼ばれる。

健太 (けんた)

橘月子の幼なじみで、村長の息子。月子に好意を寄せており、彼女と親しげな様子の森川玲一に嫉妬心を抱く。小さい頃は月子をいじめていたが、彼女が記憶をなくしたことをきっかけに「ずっと友達だった」とウソをつく。

スギ

橘月子の幼なじみで、旅館の息子。父が社(やしろ)を壊してゴルフ場を建設しようとしているため、村でも微妙な立場になっている。思い詰めて狂気に走る父親を見かねて、自分が「犬神の祟りなどない」ことを証明しようと、社を破壊しに行くが、翌朝遺体となって発見される。

田島 (たじま)

神社の宮司で、口髭をはやした中年男性。両親を失った犬神筋の橘月子とその兄を引き取って育てる。月子やその両親に起こった事件を知っている様子だが、月子にはそのことをいっさい伝えないようにしている。肝臓を壊して入院しており、祭りの「犬返し」の祈禱を、遠い親戚だという森川玲一に依頼する。

杉本 (すぎもと)

旅館経営者で、スギの父親。多額の借金を抱えており、そのために村の再開発に賛成している。犬神の社(やしろ)を取り壊して、ゴルフ場を建設する計画にも賛成しているため、多くの村人の反対を受ける。

森川 玲一 (もりかわ れいいち)

橘月子を幼い頃から知っているという少年。月子より年上で、着物を着ており、いつも犬の面を携帯している。神社の宮司である田島に呼ばれ、代わりに祭りの「犬返し」の祈禱を行う。犬神について調べていた、健太の兄である警察官を殴って逃げたため、犬神憑きとして村人に追われる立場になる。

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