生者の行進

生者の行進

霊を見ることのできる男子高校生、吉川泪が、不気味な生き霊、唇のオバケに取り憑(つ)かれた幼なじみの高岡まどかを連続殺人事件から救うため、刑事の東雲亜希や除霊師の神原省吾らの協力を得ながら奮闘する姿を描いたホラーサスペンス。「少年ジャンプ+」2017年46号から2018年43号にかけて掲載された作品。

正式名称
生者の行進
ふりがな
せいじゃのこうしん
作者
ジャンル
ホラー
 
サスペンス
レーベル
ジャンプコミックス(集英社)
巻数
全3巻完結
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

事件発端編

霊が見える男子高校生の吉川泪は、アルバイト先のコンビニで不気味な姿の生き霊、唇のオバケと、そのオバケに取り憑かれた女子高校生の小栗美弥を目撃する。そして翌日、泪は美弥が滅多刺しで殺害されたことを知るが、その直後に幼なじみの高岡まどかに唇のオバケが取り憑いているのを目撃し、次はまどかが殺害されるのではないかと心配する。泪はまどかに危険がせまっていることを知らせるため、自分が霊の見える体質であることと、唇のオバケがまどかに取り憑いていることを伝える。そんな中、まどかが夢の中で唇のオバケに襲われたことをきっかけに、美弥の霊に直接会い、事件の概要の解明のために本腰を入れる。さらに美弥殺害事件の担当刑事である東雲亜希、そして除霊師の神原省吾に協力を要請し、まどかが殺されないように奔走する。

事件進展編

高岡まどかの家庭教師として護衛することになった刑事の東雲亜希は、まどかの兄、高岡浩二の友人である水戸則夫が不審な行動をしているのを目撃し、吉川泪に報告する。そんな中、泪はかつて自分の不注意から交通事故で死なせてしまった異父弟の吉川トモキの霊がなにかを訴えかけてくる夢を見るようになり、トモキが今も自分を恨んでいるのではないかと思い悩むようになっていた。さらに、まどかが殺害されると思われる3日前のある日、新たに滅多刺しで殺害された女子高校生の遺体が発見される。被害者が浩二の彼女の妹だったことから、亜希は浩二の関係者が犯人であると目星をつけ、高岡家の前に現れた水戸の身柄を確保する。

犯人判明編

小栗美弥をはじめとする複数の少女を殺害した犯人が鮫島瞬だと睨(にら)んだ高岡浩二だったが、瞬から反撃されて捕まってしまう。さらに瞬は、浩二を人質にして高岡まどか吉川泪を公園に呼び出し、泪の意識を失わせたうえでまどかを誘拐する。泪は意識を取り戻し、半ば朦朧(もうろう)とする中で追跡を始めるが、その道がかつて夢の中で吉川トモキが教えてくれていた道であることに気づく。そんな中、二人が瞬からの呼び出しを受けたことを東雲亜希に知らせに行った神原省吾は、亜希が姉の霊とコミュニケーションを取っている様子を目撃する。亜希に自分も霊能力者であることを告げた省吾は、これまで瞬が殺害したと思われる犠牲者の資料を見せてもらい、ある行動を起こす。

関連作品

本作『生者の行進』の続編に、佐藤祐紀の『生者の行進 Revenge』がある。本作でも登場する神原省吾が成長して中学校教師となり、いじめの加害者が次々と猟奇的な自殺を遂げる連続自殺事件の謎にせまる姿を描いたホラーサスペンス。集英社「ジャンプ コミックス」から刊行されている。

登場人物・キャラクター

吉川 泪 (よしかわ るい)

とある高校に通う1年生の男子。黒髪短髪を真ん中分けにしている。4年前に異父弟の吉川トモキが交通事故で亡くなり、その頃からはっきりと霊を見ることができるようになる。トモキが死んだのは自分のせいだと考えており、トモキの葬儀の際に義父から憎悪の視線を向けられて以来、義父から嫌われていると思っている。また、高校卒業後は家を出る決意をしており、それまでは両親に迷惑をかけないように極力接触を避けている。アルバイト先のコンビニで小栗美弥と唇のオバケを目撃しているため、美弥が殺害されたと知った時には唇のオバケが関係しているのではないかと直感した。さらに唇のオバケが高岡まどかに取り憑いていることを視認したことで、次はまどかの身が危険だと予見し忠告する。その後、東雲亜希や神原省吾に協力を仰ぎ、まどかを助けるべく奔走している。

高岡 まどか (たかおか まどか)

吉川泪の幼なじみで、泪と同じ高校に通う1年生の女子。茶髪をショートボブヘアにしている。交友関係が広く恋人も途切れたことがないが、実は長年、泪に片思いをしている。小学校の頃は太った体型で、「殺すぞ」が口グセの粗野な少女だったが、泪から「痩せたらかわいくなると思う」と言われたことをきっかけに必死のダイエットを敢行した。毎晩、唇のオバケや焼け焦げた女が現れる夢を見るために憔悴(しょうすい)しきっているが、泪と話す機会が増えたことに関しては喜んでいる。泪から唇のオバケに憑かれていることを指摘されて以来、霊の姿が見えるようになった。

東雲 亜希 (しののめ あき)

警察官の女性。肩下までの黒髪をゆるくサイドでまとめている。10年前に通り魔によって姉が殺されているため、この世に存在する卑劣な犯罪者を一人でも多く刑務所にぶち込もうとしている。東雲亜希自身が警察官になったのは、基本的にその思いが原動力となっている。小栗美弥が殺された事件について事情聴取した吉川泪の様子から、なんらかの手がかりを握っているのではないかと考え、個人的に接触を図る。この時、泪が亜希に取り憑いている姉の霊を言い当てたことから、泪に霊が見えているという事実をあっさりと認め、協力関係を築く。泪の証言から次の犠牲者が高岡まどからしいと知り、家庭教師のふりをしてまどかの周囲を警戒すると共に、護身術などを教えている。家庭教師のふりをしている時には、「東田」という偽名を使用している。また、泪から姉の霊に憑かれていることを指摘されて以来、姉の霊が見えるようになった。

神原 省吾 (かんばら しょうご)

吉川泪たちのとなりの高校に通う1年生の男子。除霊師であり、白髪短髪で、関西弁をしゃべる。智安寺の住職が心霊相談やお祓(はら)いをする際に助手をしており、霊感のない住職に代わって霊を祓っている。また、故人の顔と名前がわかれば霊に呼びかけ、任意の場所に誘導することもできる。母親が入院しているため多額の金を必要としているため、神原省吾に除霊を依頼すると、手付金として5万円、成功報酬として5万円を要求される。泪から高岡まどかに憑いている霊の除霊を依頼された際にも同じ金額を提示したが、泪が20万円を支払ったために唇のオバケの一時的な除霊に加え、その後も焼け焦げた女の除霊や犯人解明に協力している。

笹塚 恭一郎 (ささづか きょういちろう)

警察官の男性。東雲亜希の部下で、金髪をツーブロックヘアにしている。神原省吾のはとこでもあり、亜希からも省吾からもいいように使われている。亜希によれば「ドM」とのことで、笹塚恭一郎自身はこき使われていても不満がない様子。亜希に好意を持っている。

高岡 浩二 (たかおか こうじ)

高岡まどかの兄。大学生で、茶髪をソフトモヒカンヘアにしている。かつて吉川泪をいじめていたグループのリーダーでもあり、粗暴な性格をしている。中学時代までは荒れた生活を送っていたが、高校でラグビー部に所属したことで更正している。まどかをはじめ家族のことは心から大切に思っており、家族を守るためなら危険を冒すことも厭わない。

鮫島 瞬 (さめじま しゅん)

高岡浩二の高校時代からの友人の男性。金髪を真ん中分けにしており、はっきりとした目鼻立ちをしている。高校でラグビー部に所属しており、部内一のイケメンと評判で女子生徒のファンも多かった。両親は幼少期に亡くなっているが、父親は生前に援助交際をしており、母親は薬物中毒者だった。

水戸 則夫 (みと のりお)

高岡浩二の高校時代からの友人の男性。黒髪ベリーショートヘアで、平面的な顔立ちをしている。高校でラグビー部に所属しており、選手な中で一番足が速かった。高岡まどかに思いを寄せており、ストーカーのような行為を繰り返していたが、家庭教師に扮した刑事の東雲亜希を目にしてそそくさと逃げ出した。

小栗 美弥 (おぐり みや)

女子高校生で、故人。金髪を高い位置でお団子ヘアにしている。両目を潰されたうえ、性的暴行を加えられながら滅多刺しにされて殺害された。殺害される直前に吉川泪のアルバイト先を訪れており、その際に唇のオバケに取り憑かれている姿が確認されていた。

吉川 トモキ (よしかわ ともき)

吉川泪の異父弟で、故人。幼稚園児の時に泪が幼稚園まで迎えに行ったあと、少し目を離した際に交通事故で亡くなった。高岡まどかにもよく懐いていたため、よくいっしょに帰っていた。まどかの危険が近づくと、泪の前に現れて危機を救うためのヒントを与えてくれる。

唇のオバケ (くちびるのおばけ)

高岡まどかに取り憑いている生き霊。全裸の肥満体型の男性。頭部は巨大な唇で、全身に梅毒症状に似た発疹(はっしん)が見られる。女性の背後に取り憑き、取り憑いた日を殺害の7日前として、7日間の猶予を与えてカウントダウンしていく。カウントダウン中は女性の夢の中に現れ、全裸にして舐(な)め回すなどのハレンチ行為を行っている。まどかの前は小栗美弥に取り憑いている姿を、吉川泪に目撃されている。神原省吾からは、焼け焦げた女と同じ人物から発生していると推測されている。

焼け焦げた女 (やけこげたおんな)

高岡まどかに取り憑いている生き霊。全身が焼け焦げている。スキンヘッドだが、呟(つぶや)いている内容から女性であることがわかっている。まどかに憑いていた唇のオバケを神原省吾が一時的に祓ったあとに現れた。まどかの夢の中に登場し、刃物で滅多刺しにしようとしている。省吾からは、唇のオバケと同じ人物から発生していると推測されている。

書誌情報

生者の行進 全3巻 集英社〈ジャンプコミックス〉

第1巻

(2018-01-04発行、 978-4088814346)

第2巻

(2018-06-04発行、 978-4088815060)

第3巻

(2018-11-02発行、 978-4088816609)

SHARE
EC
Amazon
logo