概要・あらすじ
中禅寺秋彦(京極堂)達の友人いさま屋(伊佐間一成)は、釣りに訪れた逗子の海岸で、「朱美」と名乗る女性と出会う。体調を崩していたいさま屋は、彼女の家に誘われ、奇怪な話を聞かされる。一方、京極堂の友人で小説家の関口巽はある日、葬儀の席で幻想小説の大家宇多川崇から、彼の妻・宇多川朱美に関する不可思議な相談を受ける。
同じ頃、逗子の海では金色の髑髏が発見される事件が起こった。京極堂はこれらの事件が複雑に絡み合うことを見抜き、解決に乗り出す。
登場人物・キャラクター
中禅寺 秋彦 (ちゅうぜんじ あきひこ)
長い髪に目つきの鋭い男性。中野の坂の上で古書店・京極堂を営んでいる。裏手にある神社の宮司もつとめ、副業で拝み屋もしている。宗教や民族伝承等に深い知識を有している。周囲からは店の屋号に因んで「京極堂」、「京極」と呼ばれている。「この世に不思議なことなど何ひとつない」が口癖。いつも和装で、事件の現場に向かう際には五芒星の紋が入った漆黒の羽織と着物を着る。 学生時代からの友人・関口巽、知人の釣り堀屋いさま屋(伊佐間一成)、警視庁の刑事木場修太郎から、それぞれ持ち込まれた相談に共通項を見出し、「憑物落し」に動き出す。
関口 巽 (せきぐち たつみ)
気弱そうな男性。小説家で 中禅寺秋彦(京極堂)とは学生時代からの付き合い。かつて鬱病に悩まされ、現在も時折精神的に不安定になることがある。幻想小説の大家宇多川崇から、彼の妻に関わる不可思議な出来事について相談を受け、私立探偵の榎木津礼二郎に捜査を依頼する。これがきっかけで、京極堂が手掛けることになる複数の事件に関わりを持つようになる。
榎木津 礼二郎 (えのきづ れいじろう)
人形のように端正な顔立ちの男性。私立探偵で、薔薇十字探偵社を営んでいる。旧制高等学校では中禅寺秋彦(京極堂)、関口巽の一期先輩で、彼らから「榎さん」と呼ばれている。また警視庁の刑事木場修太郎とは幼馴染。相手の記憶を見ることができるという不思議な能力を持っている。天衣無縫で奇妙な振る舞いが目立つ。 関口から幻想小説の大家宇多川崇の妻に関わる不可思議な出来事の捜査を依頼される。
木場 修太郎 (きば しゅうたろう)
いかつい身体の男性。警視庁捜査一課に所属している刑事。私立探偵の榎木津礼二郎とは幼馴染で、中尊寺秋彦(京極堂)や関口巽とも旧知の仲。前作『魍魎の匣』の事件の後で謹慎処分を受け、その後ベテラン刑事の長門五十次とコンビを組まされている。長門と共に葉山で起きた集団自殺事件と、死のう団事件の関連を捜査する。
宇多川 朱美 (うだがわ あけみ)
中禅寺秋彦(京極堂)が手掛ける事件の鍵を握る1人。幻想小説家・宇多川崇の妻。長い黒髪に美しい面立ちの27歳の女性。不可思議な体験を夫に語るようになり、悩んで自らも飯島基督教会に懺悔に訪れた。
鴨田 周三 (かもた しゅうぞう)
中禅寺秋彦(京極堂)が手掛ける事件の鍵を握る1人。恰幅の良い老年の男性。信州塩田平にある鴨田酒造の主。かつて佐田朱美を店で奉公させていた。宇多川崇が訪ねた際には、朱美を村から逃がしたことなどを詳細に語った。元は鷺宮という姓だった。
宗像 民江 (むなかた たみえ)
中禅寺秋彦(京極堂)が手掛ける事件の鍵を握る1人。信州塩田平にある鴨田酒造の奉公人だった女性。同じ奉公人だった佐田朱美とは同い年で仲が良かったが、朱美の夫佐田申義と駆け落ちしたとされている。その後の消息は分かっていない。
文覺 (もんがく)
逗子にある聖寶院文殊寺に居住する老僧。通常は本尊がある場所に端座している。事件の関係者達を引き連れて寺院に訪れた中禅寺秋彦(京極堂)と対峙する。
石井 寛爾 (いしい かんじ)
丸眼鏡をかけた中年男性。神奈川県警の警部。前作『魍魎の匣』から引き続き登場する。前作の事件で降格されたが、警部に復帰している。逗子で発見された髑髏の事件の捜査を手掛けている。警視庁の刑事・木場修太郎とはいがみ合っていたが協力するようになり、その後また中尊寺秋彦(京極堂)と関わりを持つようになる。
中禅寺 敦子 (ちゅうぜんじ あつこ)
ショートヘアーの女性。中禅寺秋彦(京極堂)の妹。大手出版社稀譚舎の看板雑誌「稀譚月報」の編集記者。関口巽とも旧知の仲。兄の京極堂とは対照的に、明るく活動的な性格。関口巽と共に、幻想小説の大家宇多川崇から相談を受ける。
伊佐間 一成 (いさま かずなり)
どじょう髭を生やした男性。中禅寺秋彦(京極堂)の知人で、釣り堀「いさま屋」の主人。釣のために日本各地に旅行に出かけている。逗子の海岸で妖艶な「朱美」と名乗る女性と出会った。体調を崩していたため彼女の家で休息するが、そこで語られた彼女の過去の話に衝撃を受ける。
宇多川 崇 (うだがわ たかし)
白髪交じりの貫録のある男性。物語開始時は57歳。小説家で怪奇小説の大御所。妻・宇田川朱美が恐ろしい過去を語り、また不可思議な出来事が起きていたため、関口巽と中禅寺敦子に相談する。その後、関口と敦子は私立探偵・榎木津礼二郎にこの事件の捜査を依頼した。後に自身がある事件に巻き込まれ、中禅寺秋彦(京極堂)が手掛けることになる。
降旗 弘 (ふるはた ひろむ)
神経質そうな風貌の男性。元は精神科医だったが、飯島基督教会に居候している。フロイトの学説に惹かれて精神医学を学んだが、逆にトラウマに苛まれるようになった。教会で宇多川朱美の懺悔を聞いたことが縁で、中禅寺秋彦(京極堂)が手掛ける事件に関わるようになる。警視庁の刑事・木場修太郎や私立探偵の榎木津礼二郎とも面識があった。
白丘 亮一 (しらおか りょういち)
短髪に丸眼鏡をかけた男性。飯島基督教会の牧師。放浪していた元精神科医の降旗弘を教会に居候させている。故郷は能登(羽咋(はくい))で、少年の頃ある体験をしたことから、寺や神主を恐れている。また人骨に恐怖を抱きながらも異常な執着を見せ、後に中禅寺秋彦(京極堂)の「憑物落し」の対象となる。
長門 五十次 (ながと いそじ)
警視庁捜査一課のベテラン刑事。謹慎明けの木場修太郎の相棒兼監視役となる。木場を「修さん」と呼ぶ穏やかな性格。木場と共に葉山で起きた集団自殺事件と、死のう団事件の関連を捜査する。捜査の過程で中禅寺秋彦(京極堂)と邂逅し、彼に協力することになる。
佐田 申義 (さだ のぶよし)
幻想小説家宇多川崇の妻・宇多川朱美の前夫。信州塩田平に住んでいた。第二次世界大戦中、召集令状が着いた際に逃げ出し、その後、首なし死体で発見されたという。朱美や彼の父は兵役忌避者の家族ということで村八分の扱いを受けた。彼の存在が中禅寺秋彦(京極堂)が手掛ける事件の鍵の1つとなる。
青木 文蔵 (あおき ぶんぞう)
こけしのような顔をした男性。警視庁の刑事で、木場修太郎の部下だった。木場の「変わったお仲間」中禅寺秋彦(京極堂)や関口巽とも面識があり、共にある人物の葬儀に出席した。前作『魍魎の匣』から引き続いて登場する。
クレジット
- 原作
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京極夏彦