概要・あらすじ
行商人・ロレンスは取引先のひとつ・パスロエの村で、荷馬車へ忍び込んだ少女・ホロと出会う。ホロの正体は、数百年を生き、パスロエで人間たちに豊作をもたらしてきた神とも崇められる、巨大な狼であった。故郷であるヨイツの森を探し、帰ろうとしているホロは、ロレンスに同行を依頼する。
立ち寄る町や村で商いをするロレンスは、しばしば金儲けを目論んだ悪だくみに巻き込まれるが、不思議な能力や豊富な知恵を備えるホロと協力し合いながら、数々の危機を乗り越えていく。
登場人物・キャラクター
クラフト・ロレンス (くらふとろれんす)
20代半ばの若き商人。将来は何処かの街で店を持ち定住することを夢見ているが、現在は荷馬車などで街や村を行き来する行商を続けている。パスロエでホロと出会い、彼女が故郷であるヨイツの森に帰る旅に同行することになる。各地を渡り歩く商人として、多彩な情報や知識を備え目端が利くが、人がよくドライになりきれない面がある。 女性からのアプローチに鈍く、特にホロとは好意を抱きあっていながらも関係が進展せず、不用意な発言で怒らせたり嫉妬を買ったりすることが多い。
ホロ
普段は、亜麻色の髪と赤い瞳を持つ少女の姿をしているが、正体は「賢狼ホロ」と呼ばれる巨大な狼。一人称が「わっち」、語尾が「ありんす」などの廓言葉で話し、獣のような耳や大きな尻尾は普段、頭巾や服で隠している。肉や甘い物を好み、動物の生き血か少量の麦を口にすることで狼の姿に戻ることができる。 数百年前、故郷であるヨイツの森を離れ、パスロエで人間たちに農業の知恵を授けて「豊穣を司る神」として崇められていた。しかし長い年月で、親しい者が年を取って死に、新しい農業技術の導入で村から不要とされることを憂い、ヨイツの森へ帰ろうとしてロレンスの荷馬車へ忍び込んだ。少女の姿のままでも、麦を見る間に発芽させ生い茂らせるなど、不思議な力をふるうことができる。 長生きしているため豊富な知識や老獪さを備えており、ロレンスに助言を与えることが多い。普段はロレンスを子ども扱いしながらも好意を抱いており、苛立ちや嫉妬心を見せることもある。
ヤレイ
パスロエの村で、商人と麦の売買を交渉する交渉人の役目を負う青年。ロレンスとは顔なじみであった。近年に導入された農業技術で収穫が上がり、パスロエで崇められてきた豊穣を司る神、すなわちホロを疎んでいた。私利のためロレンスとホロを教会に告発する。
ノーラ・アレント (のーらあれんと)
リュビンハイゲンで羊飼いとして働く少女。本人は小柄で非力だが、牧羊犬・エネクとの連係で巧みに羊の群れを指揮し、普通の狼なら寄せ付けないで済ませることができる。羊飼いとして優秀でありながら、異教の技を使う疑いを教会から持たれ、不遇の扱いを受けていた。仕立て屋になる夢を持っており、ロレンスが持ちかけた金の密輸計画に協力する。
ヤコブ
リュビンハイゲンでローエン商業組合の商館主を務めるベテラン商人の男性。ロレンスを我が子のように思っているが、組合の一員として膨大な借金を負ったロレンスを助けず、自分の力で解決することを求める。
エルサ・シュティングハイム (えるさしゅてぃんぐはいむ)
テレオの村で、亡きフランツ司祭から教会を受け継いだ少女。村の青年・エヴァンとは恋仲。助祭の資格しか持っていおらず、フランツ司祭の生前の根回しにより立場を保たれていたが、近隣の町・エンベルクの教会から併合を狙った工作を受け、異端者の疑いをかけられる。フランツ司祭が収集していた異教の神の伝承を求めて訪れたロレンスとホロによって村から脱出するが、自ら村に戻り身の潔白を示した。 後に、エヴァン、ル・ロワと旅に出て、レノワでロレンス達と再会する。
フルール・フォン・イーターゼンテル・マリエル・ボラン (ふるーるふぉんいーたーぜんてるまりえるぼらん)
港町ケルーベの商人で、普段は顔を隠しエーブ・ボランという男性を装っているが、正体は没落貴族の女性当主。町の南北が対立するケルーベで、北側の重鎮として二つの顔を使い分けながら立ち回る。基本的に自分以外の者を信じないが、ロレンスを気に入り、南北対立への利用価値は別として心を許して接する。
トート・コル (とーとこる)
港町ケルーベ手前の関所で、ロレンスとホロに拾われた少年。ピヌという異教を信じる村の出身で、改宗を食い止めるため教会の権力機構に潜り込もうと、町へ出て教会法学を学んでいた。学費を得るため出稼ぎをしようとしたが詐欺に遭い困っていたところ、通りかかったロレンス達へ強引に助けを求めた。 聡明かつ素直で、ロレンスやホロの言いつけに従い、情報収集などもこなす。物乞いに扮した際は可愛らしい顔立ちで多くの施しを得た。ケルーベの町を出た後もロレンス達の旅に同行する。
キーマン
ローエン商業組合のケルーベ商館副館長を務める青年。普段は町の三角州にある別館を取り仕切るが、ロレンスが本館を訪れた際は不在の館長に代わり応対した。町の利権や、捕獲された珍獣「イッカク」をめぐって、エーブ・ボランと複雑な対立関係にある。冷静で柔和そうな人物だが、両陣営に関わると見られるロレンスに釘を刺す時には冷たい凄味を覗かせた。
ル・ロワ (るろわ)
レノワでロレンスと出会った、太った書籍商の男。ケルーベで得た情報により、異端の禁書を扱う人物としてロレンス達が捜し求めていた人物でもあった。エルサの養父・フランツ司祭とは旧知であり、エルサの旅に同行していたが、エルサからは養父の知人として信用される一方、軽薄さや強欲さを軽蔑されてもいた。
集団・組織
正教会 (せいきょうかい)
『狼と香辛料』に登場する組織。単に「教会」と呼ばれることが多い。唯一神を信仰する宗教で、複数の国家にまたがる大規模な宗教集団。大規模な商業組合にも匹敵するネットワークを形成している。都市部では確固たる権力を持っているが、地方では土着の信仰が残っている集落が多く、教区の拡大を求めて各地で大小の軋轢を起こしている。
ローエン商業組合 (ろーえんしょうぎょうくみあい)
『狼と香辛料』に登場する組織。行商人同士の互助を目的とした組織で、複数の組合が存在する中のひとつ。ロレンスはこの組合に所属している。都市ごとに商館を持ち、訪れる組合員には情報や宿の斡旋、身分の保証などの便宜を図る。一方で、己のミスで大損をした者、組合に不利益をもたらす者には手厳しい。所属していない組合の商館を訪れて取引を行うこともしばしばある。
場所
パスロエ
『狼と香辛料』に登場する村。故郷であるヨイツの森を離れたホロが、麦の豊穣を司る神として数百年住み着いていた。毎年、収穫の時期にはホロを祭った収穫祭が催される。近年、他地方からの進んだ農業技術が取り入れられて収穫が増し、村人の中にはホロを旧い時代の気まぐれな神として疎む者もいた。
ヨイツの森 (よいつのもり)
『狼と香辛料』に登場する地名。ホロが仲間の狼たちと共に育ったとされる森。パスロエで数百年を過ごしたホロはこの地に帰ろうとしているが、今ではその位置が分からなくなっている。伝承によれば、ホロが旅立った後、「月を狩る熊」という巨大で凶暴な熊の神によって滅ぼされた、とされている。
クレジット
- 原作
-
支倉 凍砂
書誌情報
狼と香辛料 全16巻 KADOKAWA〈電撃コミックス〉
第1巻
(2008-03-27発行、 978-4048666961)
第1巻
(2008-03-27発行、 978-4840242547)
第6巻
(2011-04-04発行、 978-4048705004)
第7巻
(2012-02-27発行、 978-4048862943)
第8巻
(2012-10-27発行、 978-4048910514)
第9巻
(2013-08-27発行、 978-4048918398)
第10巻
(2014-04-26発行、 978-4048664882)
第11巻
(2014-12-20発行、 978-4048690546)
第12巻
(2015-08-27発行、 978-4048651721)
第13巻
(2016-02-27発行、 978-4048657259)
第14巻
(2016-09-27発行、 978-4048923415)
第15巻
(2017-05-27発行、 978-4048929110)
第16巻
(2018-02-27発行、 978-4048935968)
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