狼の碑 エゾオオカミ絶滅記

狼の碑 エゾオオカミ絶滅記

戸川幸夫の小説『狼の碑』と『悲しき絶叫』を再構成し、コミカライズした作品。かつて北国の地に君臨していたエゾオオカミが、いかにして絶滅への道をたどったのかを重厚な筆致で、丹念に綴ったセミドキュメンタリー。「週刊少年チャンピオン」に掲載された。

正式名称
狼の碑 エゾオオカミ絶滅記
ふりがな
おおかみのひ えぞおおかみぜつめつき
原作者
戸川 幸夫
漫画
ジャンル
自伝・伝記
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概要・あらすじ

明治10年、開拓期の北海道。友人と一緒に魚獲りをしていた少年・市村隆永は、川で溺れていたエゾオオカミの子供を救出するが、岸に上がった隆永を出迎えたのは、親オオカミたちの一群であった。恐怖におののく隆永をよそに、何もせずにその場を立ち去るエゾオオカミを見て、アイヌの老人が語った「ここの狼は人間を襲わない」という言葉を思い返す隆永。

帰宅した隆永を待っていたのは、北海道開拓使の畜産指導員エドウィン・ダンが、姉の市村キクが働いている新冠牧場へ赴任するという知らせ。表に出た隆永は、雨が降りしきる農道で初めてダン本人と遭遇するのだった。

登場人物・キャラクター

市村 隆永 (いちむら たかなが)

北海道で暮らす快活な少年。市村吉兵衛の息子で、父親とともに薩摩から移住してきた。吉兵衛と西郷隆盛を強く尊敬している。ガキ大将気質で、言葉に詰まるとすぐに手が出てしまう短気な面があり、その短慮さを吉兵衛からは厳しく戒められている。アイヌの老人から聞いた、エソゾオオカミは人間を襲わないという言葉を信じており、地元の子供が怯える山にも平然と入り浸る豪胆な性格。 魚獲りの最中にエゾオオカミのスカーフェースの息子を救ったことがきっかけとなり、彼らの群れに近づける唯一の人間となる。新冠牧場にやって来た畜産指導員のエドウィン・ダンによく懐き、憧れの感情を抱いていたが、彼がエゾオオカミを駆逐するために猛毒の使用を決意したことを知り、ダンを憎み始める。

エドウィン・ダン (えどうぃんだん)

日本政府の要請を受けてアメリカからやって来た、北海道開拓使の顧問を務める男性。牧畜に対する知識と情熱は人一倍で、アメリカから導入した羊を一頭も死なせることなく、日本まで輸送するなど、卓越した能力の持ち主。自ら先頭に立って作業に従事する徹底した現場主義で、その高潔な精神性を西郷隆盛に絶賛されている。英語を聞きなれていない市村隆永たちからは、イドイン・ドンやドン先生という名前で呼ばれていた。 のちに、牧場に大きな被害をもたらすエゾオオカミを駆逐するために、アメリカで使用されている猛毒のストリキニーネを使うことを決意する。実在の人物であるエドウィン・ダンがモデル。

市村 吉兵衛 (いちむら きちべえ)

北海道に住む開拓民の男性。薩摩藩の郷士だったが、戊辰戦争で多くの人々の死を見て、戦いに飽いたため、北海道へと移住して来た。誇り高い性格をしており、息子である市村隆永の教育には厳しい。隆永が素手の相手に刃物を使った際には思い切り殴りつけ、厳しく戒めている。

市村 キク (いちむら きく)

西北海道に住んでいる女性で、市村吉兵衛の娘。1年間の期間限定で新冠牧場で働いており、そろそろ家に戻るように吉兵衛から催促されている。男ばかりでむさくるしい牧場を彩るため、牧場長の氏家からは、もう少し長く勤めてほしいと望まれている。エドウィン・ダンに気に入られている。

西郷 隆盛 (さいごう たかもり)

威風堂々とした武士の男性。東京で洋式農具のデモンストレーションが開かれた際に、燕尾服で泥まみれになりながら働いていたエドウィン・ダンの高潔な姿勢に興味を抱き、彼の教えが若者に良い影響を与えることを期待する。西南戦争終結後に自決し、ダンに大きな衝撃を与える。実在の人物である西郷隆盛がモデル。

エゾオオカミ

北海道を生息地としていた狼で、狼の中では最大級の大きさとされていた日本の固有種。アイヌからは「人間を襲わない獣」とされており、山中でエゾオオカミの群れに遭遇した市村隆永も、その言葉通り無事に帰宅を果たしている。北海道への移住者が増え、人間の生息域が拡大したことで徐々に絶滅へと追いやられていく。

スカーフェース

崖の上に巣を作って住んでいたエゾオオカミの群れのリーダー。オス。額に十字型の傷があることから、エドウィン・ダンにスカーフェースと呼ばれていた。他のエゾオオカミよりも頭が良く、驚くほどに粘り強い。獲物となるエゾシカを数日かけて飲まず食わずで追跡し、確実にしとめている。川で溺れた子供を救った市村隆永を信頼し、群れに接近することを許している。

その他キーワード

ストリキニーネ

無味無臭の猛毒。各地の牧場で馬を襲うスカーフェースを始めとするエゾオオカミの被害に手を焼いたエドウィン・ダンが、彼らを駆逐する最後の手段として用いる。その効き目は非常に強力で、多くのエゾオオカミを死へと追いやることになる。

クレジット

原作

戸川 幸夫

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