猫背を伸ばして

猫背を伸ばして

肉体的にも精神的にもちょっと虚弱体質な漫画家・神崎良太が遭遇した数々の出来事や回想を通し、「俺」が懸命に生きる姿を諦観とある種の達観を交えながらゆるゆると描いていく半ドキュメンタリー風の作品。現在のエピソードは太い線、学生時代を中心とした過去の回想は細い線と、両者を意図的に異なるタッチで描いており、作品全体に奇妙なコントラストを生み出しているのが特徴。

正式名称
猫背を伸ばして
ふりがな
ねこぜをのばして
作者
ジャンル
自伝・伝記
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概要・あらすじ

漫画家として生計を立てる青年・神崎良太は、メジャー誌でのデビューを果たしたものの、人気アンケートで最下位を取ってしまうなど、順風満帆とは程遠い漫画家ライフを送っていた。漫画を描くために机にかじりつけば母から「運動しろ」と言われ、気分転換に散歩に出れば職務質問に遭い、必死にひねり出したネームも編集者の「つまらない」の一言でつき返される日々。

先の見えないねずみ色の青春に苦悩しながら、それでも背筋を伸ばし、運命を切り開こうと前向きに生きる良太に襲い掛かる「俺クオリティ」と呼ばれるエピソードの数々が、しみじみと描かれていく。

登場人物・キャラクター

神崎 良太 (かんざき りょうた)

神崎良太の母と2人暮らしをしている24歳の男性漫画家。メジャー誌に連載を持つが、人気アンケートの結果が芳しくなかったため、早期打ち切りに怯えながら日々を過ごしている。学生の頃から勉学と運動全般を苦手としており、健康面ではお腹がゆるく、さらに乗り物酔いもしやすいという虚弱体質。頭部だけは例外的に頑丈で、階段で出血するほど後頭部を強打してもとくに異常は見られなかった。 人一倍運がないのを自覚しており、新調した自転車を1週間で盗まれたり、散歩に出かければ3回連続で職務質問を受けるといった、我が身に降りかかる不幸の数々を自嘲気味に「俺クオリティ」と称している。モデルは作者である押切蓮介。

神崎良太の母 (かんざきりょうたのはは)

神崎良太の母親で、アパートで良太と2人暮らしをしている。少々口うるさい性格で、根を詰めて漫画を描いている良太に対し、たびたび外に出るか家の手伝いをするように指示していた。猫背気味で運気が悪いと自問する良太に対し、シャンと背筋を伸ばすようにアドバイスする。

清野 とおる (せいの とおる)

神崎良太の友人である男性漫画家。街を愛する「街中毒」であるとされ、多摩周辺の街を良太と共に散歩し、その街並みと風情を2人でじっくりと堪能していた。漫画家として人々の注目を集めるよき方法は「自殺」であると良太にアドバイスする。作者の押切蓮介の友人であり、実在する漫画家でもある清野とおるがモデル。

ひろろ

長野県に住む漫画家志望の男性で神崎良太の友人。良太から「漫画家志望ならもう少し漫画を読んだほうがいい」とアドバイスされるほど、あらゆる物事に対する関心が薄い性格。出版社へ漫画を持ち込むために定期的に上京していたが、いつも結果は芳しくなく、そのたびに落ち込みながら新幹線で帰郷していた。

近藤 (こんどう)

神崎良太の中学校時代の教師。聖職にたずさわる者とは思えない凶悪な風貌をしており、規律を破った生徒に対しては男女を問わず容赦のない体罰で締め上げる暴力教師。明らかに行き過ぎた暴力性と、それを他の教師が止めないという2つの現実が良太を震え上がらせていた。

横尾 (よこお)

神崎良太の中学校時代の友人。漫画家を目指しており、一人暮らしをはじめたのをきっかけに、良太と再び交流するようになる。しかし、隣室の男性が首を吊るなどの事件が発生したことで、自身につきまとう死の匂いに怯え、徐々に精神的に追い詰められていく。

太田 (おおた)

神崎良太が高校生の時にアルバイトしていたホームセンターの社員。ルックスは悪くないが無類の女好き。自身はたいして仕事をせず、チーフと一緒になって良太をこき使っていた。適当な仕事ぶりが他の社員の怒りを買い、ついに衝突することになる。

菊池 (きくち)

神崎良太が清掃員のアルバイトをしていた時の先輩。いつも怒っており、清掃器具のポリッシャーを満足に扱えない良太にはっぱをかけていた。とあるビルの地下を清掃している時に得体の知れないモノが顔に触れ、それ以後は大人しくなる。

コロちゃん

神崎良太の愛猫。良太と神崎良太の母から大変可愛がられていたが、老衰によって14年の生涯を閉じる。コロちゃんの死は2人を深い悲しみの淵へと突き落とし、良太を一時的にペットロスに陥らせた。

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