王室スキャンダル騒動

王室スキャンダル騒動

遠藤淑子の初期の代表作。ヨーロッパにある架空の君主制国家、エッシェンシュタイン公国の一人娘エヴァンジェリン姫が巻き起こす騒動顛末記。病弱な父王に代わって貧乏な小国の政務を取り仕切る世継ぎ姫の、笑いあり、涙あり、ちょっぴりロマンスありの王室コメディ。元々は遠藤淑子の投稿作にしてデビュー作である「大さわぎのウエディングマーチ」が読み切り短編連作の「エヴァンジェリン姫」シリーズとなり、当初は「花とゆめCOMICS」から『王室スキャンダル騒動』『南から来たインディラ』『夢みる佳人』の3巻が刊行された。本作は文庫版刊行にあたりその3巻を1冊にまとめたもので、コミックスと同様の全13編のエピソードに加え、書き下ろしのおまけ漫画で構成されている。

正式名称
王室スキャンダル騒動
ふりがな
おうしつすきゃんだるそうどう
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
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概要・あらすじ

ある日、エッシェンシュタイン公国エヴァンジェリン姫が、執務官のアルバート・オーソンと恋仲だというスクープ記事がゴシップ誌に掲載される。これは実は、親交の深いハイデル王国の不細工な皇太子の妃に、という申し出を断ろうとしたエヴァンジェリン姫が自ら書かせた記事であった。ところが嘘から出た真で、乗り気になった近臣たちにオーソンとの結婚話を内緒で進められてしまう。

降ってわいた縁談に腹を立てたエヴァンジェリン姫は、結婚相手当人とは知らず、オーソンに偽の駆け落ちを持ちかけスイスへ向かう。スイスの森で、姫とオーソンは世俗を離れて暮らしているというアンリエ・ド・ブランシュ伯爵に拾われるが、連れて行かれた屋敷は他国の情報を売り買いする中継地だった。

絶体絶命の窮地に陥る2人だったが、事態はまるでおとぎ話のような結末を迎えることとなる。

登場人物・キャラクター

エヴァンジェリン姫 (えゔぁんじぇりんひめ)

エッシェンシュタイン公国の一人娘で、次期女王。病弱な父王に代わり政務を執っているが、姫君らしからぬ行動力ととぼけた人柄、鋭い洞察力で、いつも騒動の中心になっている。「王族は国民に養われている」という意識を強く持っており、国民が平和で穏やかに暮らせるよう日々心を砕いているが、残念ながら空回りすることも多い。お金と顔のいい男性が好きで、ダンスが苦手。

アルバート・オーソン (あるばーとおーそん)

アイルランド出身の青年。大学在学中に旅行でエッシェンシュタイン公国を訪れたところ、エヴァンジェリン姫に婚約者の替え玉を頼まれる。大学卒業後、エッシェンシュタイン公国の執務官に就職。エヴァンジェリン姫の駆け落ちに付き合わされたり、姫をかばって撃たれたりと、騒動の一番の被害者であり、頼りになる相棒。チャールズ&キャロライン夫妻の長男。 メアリーとローラという姉に、キャリーとグレースという妹がいる。姫に主従を超えた親しさを見せることがある。

執務室長 (しつむしつちょう)

いつもエヴァンジェリン姫に振り回されている、エッシェンシュタイン公国の執務室長。本名は不明で、役職名でのみ呼ばれている。普段は真面目だが、失踪した姫の不在を隠そうと執務官全員で姫の仮装をするなど、なかなかユーモラスな人物。

国王 (こくおう)

ファーストネームは「ルドルフ」。エッシェンシュタイン公国の現国王で、エヴァンジェリン姫の父親。病弱でほとんど表に出てこず、政務を姫や大臣、執務官たちに任せている。同じく病弱だった亡き王妃を深く愛しており、再婚は考えていない。自分たちの健康を差し出す代わりにエヴァンジェリン姫が健康に育つことを願っていたが、その元気すぎる姿に、半分くらい返して欲しいと思っている。

執務官 (しつむかん)

エッシェンシュタイン公国の執務官たち。上司は執務室長で、アルバート・オーソンの同僚にあたる。4、5人ほど常在しているようだが、ほとんど名前は出てこない。終盤のエピソードで、やっと「イエーガー」と「クラウゼ」のみ名が明かされた。

マクシミリアン

隣国であるロッテンベルグ公国の第10王子で、エヴァンジェリン姫の婚約者。見目が良く、ロイヤルウエディングの観光収入による赤字削減を目論んだエヴァンジェリン姫の相手に選ばれた。結婚式に向かう途中で事故に遭い、死亡が伝えられるが、実は生きており、王政反対派に利用されてしまう。

フランツ・ヨゼフⅡ世 (ふらんつよぜふにせい)

エッシェンシュタイン公国がお金持ちだった時代の国王。クリスマスセレモニーの直前に、時価数千万円といわれるデューラー作のフランツ・ヨゼフⅡ世の肖像画が盗まれたことから騒動が始まる。

アンリエ・ド・ブランシュ (あんりえどぶらんしゅ)

スイス在住の伯爵。中立国であるスイスを拠点に情報の売買で稼いでいたが、エッシェンシュタイン公国に目をつけて拠点を移すことを計画し、自領の森に迷い込んできたエヴァンジェリン姫に結婚を申し込む。

ドミニク

舞踏会に出席するためコンコルディアの街を訪れたエヴァンジェリン姫を連れ去った、美術品や宝石専門の窃盗団のリーダー。金に不自由しない家に生まれたが、現状に退屈し、スリルを求めて趣味で窃盗を行っている。

エリザベート

大砲を誤って操作し、城に大穴を開けてしまったエヴァンジェリン姫が、修理費用のための出稼ぎに行った遠縁の家の跡取り娘。父親が亡くなり後見人の継母と暮らしているが、その悪事を暴くために幽霊のふりをして屋敷内を調べている。

レイシー・スタンフォード (れいしーすたんふぉーど)

アルバート・オーソンの幼なじみ。自然保護団体の仕事という名目でエッシェンシュタイン公国に滞在している。爆発事故でオーソンに助けられたことで急接近する。実はアイルランドの独立を目指すテロリスト。

クラーク・ケント (くらーくけんと)

タバコ嫌いが高じて喫煙家の少ないソ連への亡命を企むCIAの諜報員。職業柄、この名前が本名か偽名かは不明。エッシェンシュタイン公国の山で迷っていたところでエヴァンジェリン姫に出会い、姫の正体を知らないまま脅してスイスへの道案内をさせる。

インディラ

エッシェンシュタイン公国に迷い込んだ象。エヴァンジェリン姫が見つけて世話をしていたが、自然保護団体やサーカス団など引き取り手が複数現れる。インディラにはシファカ王国の行方を左右する秘宝が隠されていた。

アクシス

アジアにあるシファカ王国の王子。正統な王位継承者だが、父王亡き後、王位を狙うおじに王の証となる宝石を盗まれてしまった。象使いと偽りインディラに隠された宝石を取り戻そうとする。

マリー・ルイズ (まりーるいず)

裕福な大実業家ゼッツァー家の令嬢で、エヴァンジェリン姫の留学時代の友人。大学部の卒業パーティーに姫を招く(財政難のため時間短縮を余儀なくされた姫は飛び級で先に卒業)が、出生の秘密を抱えており、姫に複雑な感情を持っている。

シンシア

姉の結婚式に出席するために帰省途中のアルバート・オーソンに無理やり同行するスイス警察の女刑事。過去の事件のトラウマから人間不信に陥っており、単独で強引な捜査を行う。実は素直で傷つきやすい性格。

サラ

16歳の旅芸人。情熱家で、恋人との結婚を占い師の祖母に反対され、連れ戻す協力を頼まれたエヴァンジェリン姫と共にイタリアの見知らぬ町に無一文でたどり着く。以前友達になったというイタリア人の富豪の老人に助けを求めるが、そこで意外な人物と会うこととなる。

シュテファン・ステュアート (しゅてふぁんすてゅあーと)

クランドル王国の元王子。子供の頃、避寒のためによく宮殿を訪れていたエヴァンジェリン姫に、「夢みる佳人」という曲の作曲者の直筆楽譜を贈る約束をする。共和制となった母国で王政復活のクーデターを起こし失敗した後、エッシェンシュタイン公国への亡命を願う。

スティーヴン・コリンズ (すてぃーゔんこりんず)

アメリカのアクションスター。隣国での撮影中に怪我をし、エッシェンシュタイン公国の温泉で療養しているところを、武術に興味津々のエヴァンジェリン姫に絡まれる。ヒットした前作映画のプロデューサーとギャラの件でもめている。

場所

エッシェンシュタイン公国 (えっしぇんしゅたいんこうこく)

ヨーロッパのどこかにある小国。戦争のどさくさに紛れ独立した君主制国家で、武器を持たない平和でのどかな国。スイスに隣接している。裕福な時代もあったが、特に目立った産業も観光地もないため現在は貧しく、城の修復費用にも事欠く有様。エピソード「大さわぎのウエディングマーチ」の騒動で湧いた温泉に、少しずつ人が来るようになった。

ロッテンベルグ王国 (ろってんべるぐおうこく)

エッシェンシュタイン公国の隣国で、豊かな鉱山を保有するお金持ちの国。王子が多く、そのため第10王子のマクシミリアンをエッシェンシュタインに婿に出そうとする。

ハイデル王国 (はいでるおうこく)

エッシェンシュタイン公国と国交の深い王国。皇太子妃としてエヴァンジェリン姫に政略結婚を持ちかける。

シファカ王国 (しふぁかおうこく)

アジアの小国で、3ヵ月前に王が亡くなり王位継承の争いが起きている。「王家の盾と剣」を持つ者が王になるとされている。

クランドル王国 (くらんどるおうこく)

エッシェンシュタイン公国と縁戚関係にあり、5年前に君主制国家から共和制になった国で、急激な共和制移行に不満を持つ反乱分子がシュテファン・スチュアートを旗頭にクーデターを起こす。

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