瑠璃宮夢幻古物店

瑠璃宮夢幻古物店

いわく付きのさまざまなアンティーク品を扱う小さな古物店。その美人店主を中心に、商品に惹かれて購入していく客それぞれが持つ数奇な人生を描く怪奇物語。「月刊アクション」2013年8月号から連載の作品。

正式名称
瑠璃宮夢幻古物店
ふりがな
るりみやむげんこぶつてん
作者
ジャンル
怪談・伝奇
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

静かな住宅地の一角に、美人店主・瑠璃宮真央が構える瑠璃宮夢幻古物店がある。そこには、不思議な力を持つ品物達が、持ち主となる人との出会いを求めて佇んでいる。店を訪れる客は、無意識のうちにやって来て、商品に惹かれては購入していく。そんなある日、店を訪れたのは手鏡に魅入られた地味で控えめな外見の青木紀子だった。彼女は、手鏡に自分の姿が心なしか綺麗に映っているように見えて、その手鏡をとても気に入り、購入していく。紀子には、美しく華やかな外見の妹・青木貴子がおり、貴子は、手鏡を購入して以降、不思議と綺麗になっていく姉を見て、静かに嫉妬の炎を燃やしていた。そんな中、彼氏・が姉に鞍替えしようとした事を知った貴子は逆上。姉の手鏡を割ってしまおうと思い立つ。しかし、それを止めようとする紀子と揉み合いになるうちに、貴子は鏡に映った自分を目にする。そこには、醜く変わり果てた自分の姿があった。(第一話)

この日、瑠璃宮夢幻古物店を訪れた父さんは、べっ甲の老眼鏡に惹かれ、購入する。帰宅した父さんが眼鏡をかけると、15年前に亡くなった妻の姿を見る。この眼鏡には、所有者のその場所での思い出を映し出すという不思議な力があった。父さんは懐かしい妻の姿が目の前にある事に喜び、眼鏡を片時も外す事なく身につけ、思い出が多く存在する自宅で過ごすようになっていく。次第に会社を休みがちになり、連絡が取れなくなった事を心配した息子・弘太郎が家を訪れると、そこには、いないはずの妻を呼び、何もない場所に話し掛ける異様な父親の姿があった。父親の姿に、深刻さを感じた弘太郎は、すべての原因が眼鏡にある事に気づき、父さんの隙を狙って老眼鏡を隠し、新しい眼鏡をプレゼントしようとする。(第二話)

佐渡ゆいかは、転校して来てからというもの、学校で友達ができず、いつもひとりぼっちで過ごしていた。そんな中、知り合った黒猫のカスミに導かれるようにして、瑠璃宮夢幻古物店を訪れたゆいかは、1体のテディベアとの出会いを果たす。店主の真央からの好意でプレゼントされたそのぬいぐるみは、ゆいかに言葉を使って話し掛けた。しゃべるぬいぐるみに驚きを隠せないゆいかだったが、そのぬいぐるみが自分と同じ様に友達がいない事で寂しい思いをしている事を知ると、彼に「マロン」と名前を付け、生涯友達でいる事を約束した。学校では、一向にクラスに馴染もうとしないゆいかに反感を募らせるクラスメイトが増えていった。しかし、そんな中で、橋本さいりだけは、ゆいかに友達になりたいと声を掛ける。喜んだゆいかは、さいりを自宅に招くが、それを知ったマロンは自分はまた捨てられたと嘆き、ゆいかとケンカになってしまう。(第三話)

白石要は、祖父が亡くなってからというもの、争いが絶えない家族の様子に違和感を感じていた。争いの原因は祖父の遺した香炉にあった。売却を希望していた祖父の遺志を尊重しようとする祖母に対して、要の父親・は大反対。意見は真っ二つに分かれ、対立していたが、それを押し切る形で瑠璃宮夢幻古物店の店主・真央が白石家へと呼び立てられ、売却手続きが進められた。真央がそのまま白石家に宿泊した翌朝、事件は起こった。要のお母さんが何者かに襲われてケガを負い、香炉を盗まれてしまったのだ。手ぶらで帰る事になった真央を追いかけて来た要は、真央からの説明で祖父の香炉に人の心を意のままにあやつる不思議な力がある事を知る。祖父の思いを守る決意をした要は、必ず香炉を取り戻し、真央に引き渡す事を約束。そのために真央に力を貸してほしいと願い出る。(第四話、第五話)

東條美幸は悩みを抱えていた。美幸の交際相手である弘太郎は、話し掛けても何の反応もしなくなってしまった父さんの面倒を見る事で、疲弊しきっていた。どんどんやつれていく弘太郎を心配し、声を掛けてみたものの、逆効果。父親を見捨てろというのかと反感を買う結果になり、関係は悪化してしまう。困り果てた美幸は、友人からの紹介で、古物商の横溝ゆかりに相談を持ち掛けた。父さんが変わってしまったきっかけについて話を聞きいたゆかりは、美幸に、嫌な事を忘れて心が穏やかになるというティーセットを使うように勧めた。半信半疑ながらも、そのカップを使ってみた美幸は、効果を実感。それならばと弘太郎を呼び出し、ティーセットを使用してお茶を振る舞う事にした。すると、弘太郎はあんなに悩んでいたはずの父親の事を丸ごとすっかり忘れてしまったのだ。その様子に驚いた美幸は、すぐにゆかりに連絡。彼女を問い詰めるも、彼女の反応に納得がいかなかった美幸は、藁にも縋る思いで瑠璃宮夢幻古物店の真央のもとを訪れる。(第六話)

ある日、瑠璃宮夢幻古物店を突然訪れた要は、自分をここで雇ってほしいと真央に懇願する。真央の弟子となって住み込みで働き、食事の支度も自分がすると言い切った要は、勢いに乗って夕飯の買い物に出かけた。しかし、土地勘のない要は、スーパーマーケットの場所を知らず、店に帰る道もわからず迷子になってしまった。そんな時、要が知り合ったのは、顔が醜く歪んだ貴子だった。清掃業者として公園の清掃を行っていた彼女は、要が真央のもとで働く事を知り、心配する。そして改めて、自分の顔が醜くなってしまった経緯を要に話して聞かせると、真央に気をつけるよう伝える。貴子の事情を知った要は、事実確認をすべく真央に話を聞き、原因となった「手鏡」がまだ存在している事を知る。(第七話)

第2巻

青木貴子の顔が醜く歪む原因となった「手鏡」が、まだ存在している事を知った白石要は、再度貴子のもとを訪れた。家族関係が破たんした自分の身の上を話した要に対し、貴子は自分が現在に至るまで、どのような心の変化があったのかについて語り始める。要はそれを聞いた上で、改めて貴子の力になってあげたいと考え、もう一度鏡を使って自分を取り戻してみる事を貴子に勧める。(第八話)

この日、瑠璃宮夢幻古物店を訪れていたのは、社会科見学でやって来た女子中学生2人組田中達だった。町の歴史を知るため、瑠璃宮真央に話を聞いた一行は、来店の記念にと古めかしい鋏を購入していった。この鋏は、人の間にある縁を断ち切る事ができる鋏だった。鋏を手にした田中は、何もわからないまま、幼なじみの男子中学生と自分をつなぐ糸を切ってしまう。それにより、仲がよかったはずの幼なじみは、田中に対してまったく興味を示さなくなってしまった。これを見た女子中学生二人組は、この鋏の力でビジネスとして金儲けができないかと考え、学校内で秘密裏に人との縁を切る商売を始める。(第九話)

外出中の真央の代わりに瑠璃宮夢幻古物店の留守を預かっていた要は、お店にやって来た客・畑中セツに如雨露を販売した。この如雨露は、使用者の感情を周囲に振り撒く事ができるという不思議なもの。店の近所に住むというセツの動向が気になった要は、通りがかりに声をかけ、庭に出入りするようになっていく。いつまでも殺風景なままの庭の手入れを手伝い始めた要だったが、要が手を入れた所が綺麗な花を咲かせ始めても、セツが手入れした所だけはなかなか花が咲かないままとなっていた。これも如雨露を使うセツの感情が原因かと考えた要は、セツにとって楽しみな事、好きな事を聞こうと話しかけるが、セツから負の感情があふれ出し、突如として態度が豹変する。そして要はそれに引きずり込まれそうになってしまう。(第十話)

真央は、少し前に瑠璃宮夢幻古物店で鳥かごを購入した男性・佐川博之のその後が気になり、調査していた。別れた彼女が残していったカナリアを、その鳥かごに入れて育てていた佐川は、ある日鳥を自分の意のままにあやつる事ができるようになっている事に気づく。当初はその力を社会の役に立てようとしていたが、ちょっとした悪戯心がきっかけとなり、鳥をあやつって悪さを働くようになった。そして、一度は離れてしまった彼女を取り戻したものの、結局うまくいかず、佐川の行動を怪しんだ彼女は、彼がけしかけた鳥からの襲撃を受け、全身に裂傷を負う事になった。自分の犯した罪に心を痛めた佐川は部屋に引きこもるようになったが、そんな彼の前に姿を現したのは、少女の姿をした青木紀子だった。彼女は、彼の行った事をすべてなかった事にしてあげると言い放ち、その言葉通りに事実は無かった事になった。しかし、記憶だけがそのまま残った佐川は、ますます精神を病んでしまう。そんな佐川をなんとかしてあげようしたのは、古物商を営む横溝ゆかりだった。彼女は、佐川に「心を殺すティーカップ」を販売する。(第十一話)

その日、瑠璃宮夢幻古物店から一点の品物が盗まれてしまった。それを盗んだのは女子高校生の柏木奈々美だった。彼女は、生徒会長として同級生から頼られる存在だった。ほかにも、入院中の母親の世話や自宅の家事などすべてをこなし、忙しいながらも家族から頼られる事に充実感を感じる日々を送っていた。そんな中、入院していた母親が亡くなった事で、周囲の人間が皆自分を気遣ってくれる事に心地よさを感じた奈々美は、同様に同級生の死をも願うようになってしまう。それはすべて、奈々美が盗んだブローチ「モーニングジュエリー」の、使用者の絶え間ない服喪を望むという特殊な力によるものだった。(第十二話)

要は、店の商品である不思議な力を持つ如雨露を売ったセツの事を気にかけていた。セツは如雨露の力の影響で正気を失った際、その前後の記憶を失っていた。最近のセツを心配した娘の恭子は、息子・翔太を連れて様子を見に訪れていた。同じ頃、セツの様子を見に行った要は、恭子から声を掛けられ、セツの家の庭先でいっしょにお茶を頂く事になった。恭子は、最近の記憶が曖昧になってしまった母親の様子を心配しながらも、いつも家族の言いなりで、自分で考えを持とうとしない母親に苛立ちを感じている心の内を語り始める。そんな中で、翔太が一生懸命庭の土を掘る姿に目を止めた要は、翔太が、瑠璃宮夢幻古物店で売っていた「記憶を掘り起こすシャベル」を使っている事に気づく。(第十三話)

留守にする真央の代わりに店番を買って出た要のもとに、紀子が客としてやって来た。あどけない少女のような彼女に、要は警戒する事なく接客しようとする。すると、特殊な腕時計を使って記憶を消し、困った事をなかった事にしてあげると、紀子は無防備な要に襲い掛かる。しかし、要が自分の思い通りにならない事を知った紀子は態度を豹変させ、記憶を消せないようにする何かを持っているはずだと、店の奥にある要の生活スペースに無断で入り込んでいく。(第十四話)

第3巻

白石要は、幼い頃の思い出の品の中に入っていた謎の小箱の中身の「鍵」に魅入られてしまった。「こじ開ける事」に執着した思念が宿ったその鍵は、要の人格を別人のように変え、民家に盗みに入ったり、出会った人の心の中に隠している事を聞きだしたりと、好き放題。その挙句、何もかも面倒くさくなってしまったと、要はすべてを捨てて町を出る事を決意。そのまま差し入れを持って青木貴子のもとに立ち寄り、彼女にも悪事を働こうとする。一方、外出中だった瑠璃宮真央は、青木紀子の企みに気づくと同時に、要の身を案じ、要のもとへと急ぐ。(第十五話)

ある日、瑠璃宮夢幻古物店を訪れた佐渡ゆいかは、友達の橋本さいりへの誕生日プレゼントとして、小人の人形を購入する。その小人は、持ち主が眠っているあいだに、頼まれた願いを叶える力を持っていた。さいりの家の中は、帰宅しなくなった父親に代わり母親が忙しく働き始めた事で、ほったらかしになってしまっていた。そんな部屋の中を小人が綺麗にしてくれた事で、母親から褒められ、さいりは毎晩小人に願い事をするようになる。そんなある夜、いつも忙しい母親の仕事の手伝いと、帰って来ない父親を探すことを小人に頼んださいりは、眠ったまま目を覚まさない。4日経っても学校に姿を現さないさいりを心配したゆいかは、事態を察し、願いを叶えるために姿を消したままの小人を探しに出かける。(第十六話)

川元は、タバコを吸うための一時の間に合わせとして、瑠璃宮夢幻古物店でオイルライターを購入した。後日、職場の喫煙所で後輩の清原とタバコを吸っていた川元は、「あまり人前で火をつけるな」という真央の忠告を聞かず、オイルライターで火をつけた。すると、その火を見た清原は、同僚の男性社員に対する不満を爆発させ、突然暴行に及んでしまう。また別の日には、いっしょに喫煙所にいた同僚の広川が、川元のオイルライターの火を見て、5年同棲して来た彼氏に結婚話を切り出そうと決意。しかし、もともと彼氏に結婚の意思がない事はお互い了承したうえでの同棲だったため、彼氏の逆鱗に触れ、二人の関係は終わりを迎える事になってしまう。そんな清原と広川が後日、喫煙所で自分の行動について見つめなおしていると、互いに川元の存在がきっかけになっている事に気づく。(第十七話)

真央の留守中、瑠璃宮夢幻古物店を訪れた神谷をもてなすようにと言づかっていた要は、プレッシャーを感じながらも老紳士を相手に何とか間を持たせようと奮闘していた。そんな空気を察してか、神谷は要に、自分の過去を語り始める。電器屋を営んでいた神谷が、娘を通して不思議な力を持つシェードランプと出会い、その結果家族がバラバラになってしまったが、今では少しずつ元に戻って来ているという話だ。神谷が古物と出会うきっかけになった話しでもあり、真央と知り合うきっかけにもなったのだが、その話は、要に家族との仲を取り戻せるという事を暗に伝えていた。(第十八話)

ある日健二は、瑠璃宮夢幻古物店で見つけたゲルマニウムラジオを購入した。なつかしい佇まいのラジオのスイッチを入れると、聞こえて来たのは聞き覚えのない女性の声だった。なぜか兄のとの関係を匂わせる女性の語りに興味を持った健二は、その声の主を探し始めた夜、紀子と出会った。夜に似つかわしくないその少女を心配した健二は、紀子に声を掛け、いっしょの時間を過ごすようになる。そして紀子の持つ不思議な魅力に惹かれ、次第に親しくなっていく。一方で、兄の透は以前の自分の行いについて考え、見つめなおしたうえで、元彼女の貴子のもとを訪れる決意をする。(第十九話、第二十話)

真央と要は、身辺整理のために自宅にある土蔵の整理をしてほしいと依頼され、幸田のもとを訪れた。口の悪い幸田は、たった二人の女手しかない事に不満を漏らしながらも、土蔵から品物を出す作業を手伝ってくれていた。そんな中で、土蔵から発掘されたのは、気持ちをつなぎ止める不思議な力を持つホッチキスだった。何日もかけて作業するうちに、要は幸田に気に入られ、家族とのかかわりについて改めて考える事になる。(第二十一話)

第4巻

古物商の横溝ゆかりは、しばらくのあいだ、瑠璃宮夢幻古物店を営む瑠璃宮真央のもとで世話になる事にした。そんな中でゆかりは、自分が知らないあいだに青木紀子と取引を行っていた事を知る。ゆかりにその覚えがなかったのは、紀子に時を戻す力を持つ時計を売ったあと、その力を使われ、取引自体の記憶を失ってしまったためだった。真央から詳細を聞き出し、紀子のその後を知ったゆかりは、彼女に売ったと思われる商品の回収を目的に、紀子が暮らしていたはずの場所へと向かう。(第二十二話)

保坂は、体が弱く寝込みがちな妻ママに代わり、子供の保育園の送り迎えや弁当作り、炊事洗濯など日常的な家事全般をこなしながら、会社勤めをしていた。周りからは負担の大きな生活を心配する声も多く聴かれたが、保坂自身は愛する妻のため好きでやっていたため、少しも苦にはならなかった。そんなある日、娘との保育園の帰り道、どこからともなく聞こえて来た風鈴の音色が気に入った二人は、瑠璃宮夢幻古物店を訪れ、風鈴を購入して帰る事にした。不思議な事にその風鈴を家のベランダに吊るし始めてから、ママの体調がすこぶるいい状態となったのだ。炊事洗濯に子供の送り迎え、夫の弁当作りまで、すっかりなんでもこなせるまでに回復した妻は、その元気さ故に人が変わったようにアクティブになり、次第に家を空ける事が増えていく。保坂は妻の元気な姿に安堵感を感じながらも、どこかで喜びきれない複雑な思いを抱え始める。(第二十三話)

篠原は、美人で仕事ができて部下や上司から慕われていた。しかしそれは、瑠璃宮夢幻古物店で購入した香水の効果によるものだった。篠原はある日の仕事中、高校時代の友人にばったり遭遇するが、彼女に対しては香水の効き目が表れていない事を実感する。慌てた篠原は、再び古物店を訪れ、香水の効果がない事について真央に詰め寄ると、昔の自分を知る人には効果が表れないという事実を知る。周囲から慕われ、認められる自分に酔っていた篠原は、すべての人から好かれたい、ちやほやされたいと願い、新たに不思議な力を持つシュガースプーンを購入する。(第二十四話)

柏木奈々美は、瑠璃宮夢幻古物店で販売していたブローチを手にして起こした一連の騒動後、入院生活を余儀なくされていた。真央は、その責任の一端は自分にあると、奈々美のもとを幾度となく訪れては、奈々美の体を気遣っていた。妹の由美は、しっかり者だったはずの姉の人格が、わがままな子供のように変わってしまった事に対し、不信感を拭えずにいた。以前の、尊敬する頼りがいのある姉の姿がなぜ失われたのか、真実が知りたいと考えた由美は、瑠璃宮夢幻古物店の真央のもとを訪れる。(第二十五話)

雨の日、ある一つの傘の下で、麻衣は付き合っていた彼氏との別れを迎えた。その場に投げ捨てられた傘を拾った女子高校生は、それを瑠璃宮夢幻古物店に持ち込んだ。さらに、急な雨に困った老紳士が真央からその傘を購入し、次は下校途中の谷垣、山内の手に渡る。次から次へと持ち主の手を離れて行くこの不思議な傘。これを手にした者は、それぞれが相傘をした相手と必ず別れを迎えるという不思議な力を持っていた。そして傘自身も、つねに所有者との別れを繰り返し、世の中を流れて行くのだ。そして巡り巡って、いつかは最初の持ち主のもとへ戻る事ができるまで、傘は不思議な出会いと別れを繰り返していく。(第二十六話)

ある日、瑠璃宮夢幻古物店に訪れた神谷が連れて来たのは、自分の店を持ったばかりという若手の古物商・藍沢公彦だった。彼は自分が所有している、とある絵画のために作られたという額縁を譲ってほしいと真央に頼みに来たのだ。その額縁は、いずれも曰くつきのものばかりといわれる四方照光コレクションの一つで、絵画にも額縁にも人を陥れる謂れがあった。しかし、真央から額縁の譲渡を断られた藍沢は、自分が古物商として一人前である事を示すため、資料をまとめて真央に渡したが、それでも断られてしまう。絵のためにと自らを見失った藍沢は、何としても額縁を手に入れようと強硬手段に出る。(第二十七話)

ゆかりは、実家に戻った白石要の様子を見に行ってほしいという真央からの頼みを聞き入れ、要の家にやって来た。要は、祖父の遺品が原因で破たんした家族から一度は逃げ出したものの、もう一度やり直す決意をして実家に戻り、苦しいながらもなんとか暮らしていた。古物商として遺品整理の手伝いをしたいという体でやって来たゆかりを、要は古物商という仕事を懐かしむように笑顔で迎え入れた。まだ高校生のはずの要が、一人で家の何もかもを背負っている様子を見たゆかりは、彼女を心配し、少し休むように声を掛けて、いっしょに一服するように勧めた。ようやく腰を下ろした要は、事の発端と現状について語り始める。(第二十八話)

第5巻

瑠璃宮夢幻古物店を訪れた小平は、瑠璃宮真央から、「迷いがある時は扉を開けないように」という言葉と共にアンティークのドアノブを購入した。自宅のドアに取りつけた日、妻ののもとにはしばらく会っていなかった友人が、小平のもとには若い頃にケンカをしたまま疎遠になっていた友人がドア越しに訪ねて来る夢を見る。どうやらこちらが会いたいと思っている人物、もしくは相手がこちらに会いたいと思っている場合に、このドアノブがついた扉の前に立つ夢を見るようだ。小平は、訪ねて来た友達に対して思うところがあり、一度は扉を開ける事を拒否したが、その後、彼の訃報を知るところとなる。ずっと会いに行かなかった事を後悔した小平が、亡くなった友達に会いたい想いを募らせたまま眠りにつくと、ドアの前に彼が会いに来る夢を見る。(第二十九話)

正太はある日、母親が祖母のためにと瑠璃宮夢幻古物店で買って来た虫眼鏡に興味を示し、母親から借りて使い始めた。初めのうちは友人の和哉浩介と三人で遊びに使っていたが、小さいものを見る事に飽きた三人は、互いの手相を見てみる事にした。すると、相手の身の上に明日起こる出来事が見える事に気づく。三人は虫眼鏡で見えた悪い事が起きないようにと、細々対処していく事で、よりよい未来を迎えようとした。しかし、そうして悪い事を回避していくと、別の形で悪い結果を産む事があるという事に気づいた和哉は、虫眼鏡を使うのは辞めようと提案する。(第三十話)

ある日田中は、人の縁やつながりを示す糸が、ここ数日で急激に増え始めている事に気づく。それは、彼が縁を切る事ができる鋏を所持しているからだ。増えた糸には、中心になっている人物が存在する事に気づいた田中は、糸を辿り、その中心になっている米村への接触を図った。米村は、瑠璃宮夢幻古物店で購入した、束ねた物同士が好意を持つようになる不思議な力を持つホッチキスを所持していた。米村はそれを使って人と人を結びつけ、好意でつなぐ事で、人間関係の嫌な部分をなくし、自分が思う楽園を作ろうとしていたのだ。田中は、それ以降もどんどん増え続ける糸を見て心配していたが、好意だけでつながれたはず人々の中で、つながっていない人に対する不満の声があふれ出している事に気づく。(第三十一話)

藍沢公彦は、自分の店の常連客でもあった女子高校生・佐竹に、店の手伝いをして貰う事が増えていた。ある時、犬用の首輪を見つけた佐竹は、それを藍沢につけてみたいと提案した。犬用だからと困惑しつつも首輪を装着された藍沢は、佐竹の言葉に逆らう事ができなくなってしまう。この首輪は、犬が従順になるという不思議な力を秘めていたのだ。人が装着してもその効果を発揮する事に気づいた佐竹は、想いを寄せていた藍沢を自分の思うようにしようとし、首輪を絶対に外さないようにと指示。藍沢が自分に従順になった状態で、この関係を見せつけるためにと真央のもとを訪れる。(第三十二話)

白石要は、家族が少しずつ正常に戻りつつある中で、安定した生活を送り始めていた。入院していた祖母はホームへの入居が決まり、お母さんの身体的、精神的負担も減っていく事が見込まれた。まだ17歳の要は、家族のために休学を余儀なくされていたが、家が落ち着いた事を機に復学し、自分の将来の事を考えようとしていた。お母さんはそれに賛同したが、自分と仕事の事を中心に考えている父親のは、要の考えに真っ向から反対した。そんなある日、隆は知人のつてで、アンティークのオカリナを手にする。これには、吹けば風に乗って噂を広める事ができるという不思議な力が宿っていた。隆はそれを使い、要が「家族のために自身を犠牲にするよくできた娘」であるという噂を流し始める。そうする事で、要を外側から囲い込み、家に縛りつけようとしたのだ。周囲の異変が、古物使用によるものだという事にいち早く気づいた要は、引きこもっていた弟・から話を聞き、隆と話し合って理解を得て、解決へ導こうと試みる。(第三十三話、第三十四話)

時は、真央がまだ古物商の仕事を始めたばかりの頃に遡る。古物商・四方照光の助手として、秘書を務めていた真央は、養母である瑠璃宮華子のもとで暮らしていた。ある日、四方が急用で3日ほど仕事を休む旨知らせを受けた真央は、四方からその間の指示をもらい、忙しく働いていた。その後、帰宅した真央が見たものは、自宅で倒れて息絶えた状態の華子の姿だった。突然の事だったが、真央は大きく動揺する事なく葬儀を終え、日常へと戻ろうとした。しかし真央は、華子が大切にしていた櫛の行方がわからなくなっている事に気づく。(第三十五話)

第6巻

瑠璃宮夢幻古物店を訪れた橋田は、とある扇子を気に入り購入した。その扇子は、痛い、辛い、苦しいなど、本人が不快と感じる事を吹き飛ばす不思議な力を持っていた。ある日、娘を迎えに幼稚園に行った橋田は、転んでケガをした娘が痛いと泣くため、「いたいのいたいのとんでいけ」とお決まりの言葉を唱えながら、扇子で仰いで見せた。すると、離れたところにいた男の子が急に痛いと泣き出したのだ。それと引き換えに痛がるのをやめた娘の様子を見た橋田は、この扇子に不思議な力が宿っている事を実感する。同様に、その一部始終を一緒に見ていた橋田の友人・三好は、自分の悩みも吹き飛ばしたいからと、橋田から扇子を借り、悩みによる不快感を吹き飛ばす事に成功。そのすっきり感がやみつきになり、扇子を手放せなくなってしまう。一方で、扇子の効果について真摯に考えていた橋田は、なかなか扇子を返してくれなくなった事が心配になり、扇子を使うのをやめ、返してほしいと三好のもとを訪れる。(第三十六話)

雪の降る日、白石要が寒さに震えながら[★瑠璃宮真央]のもとへと帰宅すると、そこには以前実家で世話になった[◆横溝ゆかり]の姿があった。もともと、真央からの頼みで要の様子を見に来ていた事を知らなかった要は、二人が知り合いだった事に心底驚いた。この日、ゆかりが真央のもとを訪れたのには理由があった。真央に預かってほしい古物があったからだ。それはいわくつきの刺繍針だった。一見普通のフランス刺繍針のようだが、これを使って制作した作品は、大衆から愛でられる事を強く望むようになる。そのため使用者は、寝食を忘れるほど刺繍作成に没頭するようになってしまうという。ゆかりは、要の手製の鍋を御馳走になりながら、その刺繍針を回収する事になった経緯について、小さな山間の町で出会った女の子の事を話し始める。(第三十七話)

後藤は、死んだ父親が趣味で集めていた骨董品などの遺品を、瑠璃宮夢幻古物店に売却する事にした。売却したたくさんの品物の中には、生前父親が執着していたメダルがあった。そのメダルは、勝ちを呼び込むお守りのようなもので、実際に後藤の家が裕福なのはこのメダルのおかげであると、生前父親はずっと言い続けていた。それを気にする妻・悦子に対し、そんなものは迷信にすぎないと一蹴した後藤だったが、メダルを売却してからというもの、仕事でミスを起こし始める。そして続けざまに、悦子はFXで多額の損失を出し、息子の晴人はサッカーの試合で負け続きになってしまう。あまりの惨状に、メダルの事が気になり始めた後藤は、真央のもとを訪れ、メダルを買い戻す事にした。すると、みるみるうちに何もかもがいい方向へと動き出したのだ。(第三十八話)

藍沢公彦が、真央に頼んでとあるコップを仕入れた。それをブログに載せると、購入したいと希望する少女・桜井美香が店を訪れた。美香によれば、もともとペアだったこのコップを間違えてリサイクルに出してしまい、探していたため買い戻したいとの事。このコップには、それぞれの所有者は離れ離れになってもいつか巡り会えるという不思議な力が宿っているのだ。その力を知っていた美香は、片割れを小さい頃になかよしだった少年・泰志にプレゼントした。自分が持っているべきコップをようやく買い戻す事に成功した美香は、自宅でそのコップを使ってみた。すると、震えるような不思議な音が聞こえる事に気づく。(第三十九話)

両親が離婚し、父親と二人で暮らしているすみれは、中学生になるにあたって、瑠璃宮夢幻古物店で弁当箱を購入した。すみれは、収入の少なさを理由に、自分が日々我慢している事がたくさんある事を知ろうとしない能天気な父親に対し、不満を募らせていた。しかしある日、毎日父親の作る弁当を食べるうちに、自分が父親に対して持っていたはずの不満がなくなっている事に気づく。それどころか、父親の作る食事がどんどん好きになり、気づけば父親の事ばかり考えている。その変化が気になったすみれは、真央の言葉を思い出し、原因が弁当にあるのではないかと推察。翌日から弁当を自分で作る事にし、今まで使っていた弁当箱を父親に譲る事を決める。(第四十話)

真央と要は連絡を受け、久しぶりに幸田の家へやって来た。幸田は、自分の老い先を考えて引っ越しを決めたため、家の中の物の引き取りを依頼して来たのだ。片づけの最中、幸田は要に手伝いを求め、二人で話を始める。それは幸田が、実家の家族との事で悩みを抱えていた要がそれを解決できたのか、話を聞きたかったためだった。要は、家族との問題解決に向けてきっかけをくれた幸田に、ようやく報告とお礼ができた事で気が緩み、涙を流す。それに対して、口も態度も悪い幸田は要を孫のように思っている事を明かし、要に大切な万年筆をプレゼントする。(第四十一話)

ある日、藍沢が真央のもとにやって来た。藍沢の持ち物である「他者に認識されなくなるスカーフ」が何者かに盗まれてしまったというのだ。物が物だけに、警察に届け出る事もできず、心配しているという。またそれに対して、神谷にも相談の連絡を持ち掛けたものの、彼は体調を崩しているらしいという事を聞いた。そんな最中、ゆかりからの連絡を受けた真央は、四方照光コレクションの一つである、情念が強くこもった霧吹きの回収に出向く事になった。霧吹きを手にした少女・赤井千代子は、荒れ放題だった植物園を一人で蘇らせ、見た目にそぐわない大人の女性のような言葉遣いをしていた。理由を話し、霧吹きを譲ってもらおうとした真央だったが、千代子は真央が霧吹きを奪い取ろうとしていると考え、真央に対し突然牙をむく。(第四十二話)

第7巻

四方照光コレクションの一つである霧吹きを手にした少女・赤井千代子に殺されそうになった瑠璃宮真央は、突然姿を現した神谷に助けられる事となった。神谷は、藍沢公彦が盗まれたと言っていたスカーフを身にまとい、透明人間の様になって姿をくらませていたのだ。しかし神谷は、千代子から霧吹きを奪い取ると、そのまま姿をくらましてしまった。真央は帰宅し、その一部始終を藍沢に報告すると、藍沢は自分が神谷と親しくなったきっかけについて話し始める。(第四十三話)

佐渡ゆいかは、引っ越しが決まったため、瑠璃宮夢幻古物店の真央のもとに挨拶に訪れた。その際、手に取った古い眼鏡を使ってみたゆいかは、黒猫のカスミの周りに火の玉が見える事に驚いた。真央からの説明で、これがカスミに縁のある人の命の炎であると知ったゆいかは、そのうちの一つの炎が今にも消えてしまいそうになっている事に気づく。それがカスミの元飼い主だった父さんの事であるとわかり、ゆいかはカスミを連れて父さんの家へと向かった。寝たきりの父さんは、思いがけない来客に驚きながらも、カスミとの再会を喜んだ。そして、カスミと二人だけの時間を過ごす事になった夜、彼が妻の姿を見ようと眼鏡をかけると、そこには、カスミの目線で記憶された自分と妻の姿が映し出される。それは、妻に対して思いやりのない言動を続ける自分と、それに耐える妻の姿だった。(第四十四話)

横溝ゆかりは、ある日突然真央のもとにやって来た。海外へと足を延ばす事を決めたゆかりは、自分が不在の間、古物の在庫の管理を真央に頼みに来たのだ。その夜、真央の家に泊まる事になったゆかりは、食後に白石要にお茶を御馳走する事にした。そして、話はゆかりの父親・横溝丈の事や、ゆかりの生い立ちに及んでいく。(第四十五話)

要は再び真央のもとで暮らし始めた事で、新しい学校に通っていたが、友達はいなかった。しかしある日、要はクラスメイトの女子から声を掛けられ、いっしょにショッピングに出かける事になる。連れられてやって来たのは、藍沢の店だった。思いがけず訪れる事になり、藍沢の店を始めて見た要は、同じ古物店でも真央の店との雰囲気の違いに驚き、感心していた。そして後日、改めて要に声を掛けて来たのは、藍沢の店でアルバイトをしている女子高校生・佐竹だった。(第四十六話)

神谷によって奪われ、失われた四方照光コレクションは、数を増すばかりだった。藍沢は、コレクションの所有者に連絡を取り、神谷よりも先回りして話をつけに行く事に成功した。しかし、残念ながらその所有者すら、すでに神谷の息がかかっており、身動きが取れないようにと藍沢は閉じ込められてしまう。

一方で神谷は、真央の家に姿を現した。予想していた真央は、藍沢と共に出向く事をやめ、自宅で神谷を迎えたのだ。真央は神谷に、コレクションを奪い始めるに至った理由を聞く。すると神谷は四方照光コレクションを破壊し、真央を自由にするためだとその目的を語ると、倉庫の扉を閉め、火を放って自分もろともすべてを灰にしようと目論む。しかし要の持つ鍵の不思議な力によって、被害は最小限に留められるのだった。

その後、神谷の家から見つかったのは四方のモノクル(片眼鏡)だった。このモノクルに、四方自身が宿っていると考えた真央は、藍沢の力を借りて、四方本人に会う事を決断する。藍沢がモノクルを装着する事で、藍沢の体を借りて四方が姿を現すと思われた。しかし、真央の前に現れたのは予想に反し、四方の妻・四方和歌子であった。(第四十七話、第四十八話)

すべてを終えた真央と要は、神谷の葬儀への参列を済ませ、自宅に戻った。一息ついたあと、真央は要に店を任せ、外へ出ようと思っている事を告げる。そして、必ず戻って来るからと要に約束し、真央は姿を消した。時は過ぎ、外国を飛び回っていたゆかりとの再会を果たした要は、真央からの連絡はずっとないままになっている事を語る。長生きしたカスミもこの世を旅立った。別れが一つずつ訪れ、要にも死が訪れる頃、真央は姿を現して瑠璃宮夢幻古物店は再び営業を始める。(最終話)

登場人物・キャラクター

瑠璃宮 真央 (るりみや まお)

瑠璃宮夢幻古物店の店長を務める女性。外見や会話からは年齢や日常が感じられない、ミステリアスで落ち着いた雰囲気を持つ。お店で販売している商品に惹かれて購入していく客には、必ず一言助言を添える。「それぞれに不思議な効果を発揮する道具を、如何に使うかは購入した本人が決めること。自ら使わないという選択もできるため、身を持ち崩すのも本人の意思である」という考えのもと、助言はするが口出しはしない方針で、不思議な力を持つ道具を売買している。 ある意味、横溝ゆかりとは対極の考え方の持ち主。

白石 要 (しらいし かなめ)

誠の姉。祖父が亡くなってからというもの、何かと争いが絶えない我が家に違和感を感じている。祖父の遺品である香炉を買い取るために訪れた瑠璃宮真央の力を借りて、慕っていた祖父の遺志を守ることを決意し奔走するが、香炉の力によって家族の精神が操られ、事態は悪い方向へと向かってしまう。正常な毎日が破綻し、家族から蔑まれる毎日を送っていたが、ある日、真央の弟子になりたいと、家族を捨てて単身瑠璃宮夢幻古物店を訪れる。 それ以降しばらくの間、炊事などの家事全般と、雑用係として生活をともにしながら、お店に訪れる客や、不思議な商品と関わりを持つことになる。幼かった頃にいじめられたことがきっかけで、祖父から日記を書くようにと譲り受けた万年筆を今でも大切にしているが、それが後々自分の身を護る大切な役割を果たすことになる。

横溝 ゆかり (よこみぞ ゆかり)

瑠璃宮真央の友達で、古物商を生業にしているツインテールの女性。背中にはいつも大きなバッグを背負っている。「どんな形であれ、幸せになれるものしか扱わない」をモットーに、紹介者がいる客だけに取引を行っている。また、一度売った商品の引き取りは、売値以下であれば受け付けている。口調は荒っぽいが明るい性格で、親しみやすい雰囲気の持ち主。 母親は早くに亡くなり、幼い頃から古物商の父親とともに街を転々としていた。その後父親も亡くなり、商品を必要とする客のもとへと身一つで移動しながら商売している。

青木 貴子 (あおき たかこ)

青木紀子の妹。その風貌は華やかで美しく、姉とは正反対の印象。しかし、性格は尖っていて自己中心的。さまざまな男性と付き合っては別れることを繰り返しており、つい最近も元彼に飽きたからと新しい彼ができたばかり。アンティークの手鏡を買ってきた姉の変化にいち早く気づき、その手鏡が持つ真の力を身を以て知ることになる。のちに正常な心を取り戻して公園の清掃員として働いている時に白石要と知り合い、瑠璃宮真央を接点として、次第に親しくなっていく。 それからは、何かと近所の事情に詳しいことで、要を助ける大切な存在となっていく。

青木 紀子 (あおき のりこ)

青木貴子の姉。偶然通りかかった瑠璃宮夢幻古物店で、アンティークの手鏡に一目惚れし、購入する。地味で控えめな顔だちの女性だが、その手鏡に映る自分の姿は、心なしか綺麗に見える気がして、古いながらもとても気に入っていた。自分とは正反対の華やかで美しい貴子を自慢の妹として誇りに思っている。しかし、不思議な力を持つ鏡によって変化した彼女の心が、姉妹に悲劇をもたらす事になった。その後、貴子との関係が悪化し、姿をくらませるが、横溝ゆかりから購入した古物の力で少女のように姿を変えた。それ以降、瑠璃宮夢幻古物店で買った商品によって何かしらの弊害が発生している人物の前に姿を現し、その後の処理を勝手に申し出るようになった。彼女は、自分が触れた人や物の時間を任意の時まで戻し、なかった事にする能力がある腕時計を持っている。基本的に本人に断りなく、他人の記憶を操作しようとするため、悪質。すべての目的は、瑠璃宮真央を追い詰めて、彼女をこの世から消し去る事。そのため、のちに白石要のもとを訪れ、彼女の記憶をも操作しようとする。子供の姿になって以降は、一時的に「佐々木紀子」と名乗った。

(とおる)

健二の兄。以前に青木貴子と付き合っていたが、不思議な手鏡の力に惑わされて彼女の姉である青木紀子に乗り換えた。しかしその手鏡の恐ろしさを目の当たりにして正気に戻り、貴子の姉とも別れ、その後誰とも付き合っていなかった。最近、公園で貴子の姿を見るようになり、彼女への罪悪感をずっと持ち続けてきたため、思い切って声をかけることを決める。

健二 (けんじ)

透の弟。瑠璃宮夢幻古物店でゲルマニウムラジオを購入する。そのラジオから聞こえる不思議な声の主を探していた時、青木紀子と出会う。なにか訳がありそうな彼女と何度か会ううちに打ち解けていき、次第に親しくなっていく。

佐川 博之 (さがわ ひろゆき)

29歳の男性会社員。別れたばかりの彼女が残していったカナリアを、瑠璃宮夢幻古物店で購入した鳥かごに入れ換えてから、さまざまな鳥を自分の意のままに操ることができるようになる。当初はその能力を社会の役に立てようとしていたが、通りかかった女性にからかわれたことをきっかけに、盗みを働くようになってしまう。これにより、自信を取り戻した佐川博之は別れた彼女と再びやりなおすことに成功する。 しかし、佐川にとってはもはや彼女よりも鳥が大切になっていたため、2人がうまくいくはずもなく、さらなる悲劇を引き起こすこととなる。

父さん (とうさん)

最愛の妻と死別し、寂しい毎日を送る初老の男性。瑠璃宮夢幻古物店で、偶然見つけた老眼鏡を気に入り、購入する。それ以降、老眼鏡の持つ、思い出を映し出す力により、死別した妻の生前の姿と再会して楽しい日々を過ごし始める。しかし、妻との思い出に執着するあまり、次第に会社も休みがちになってしまう。

弘太郎 (こうたろう)

父さんの息子。最近電話をかけても出ず、連絡のとれなくなった父親が心配になり、様子を見るため実家に戻って来る。父親の様子に変化が起きたのが、老眼鏡をかけるようになってからであることに気付き、その老眼鏡を隠して、新しい老眼鏡をプレゼントする。

東條 美幸 (とうじょう みゆき)

弘太郎の彼女。父親の介護に疲れている弘太郎を、なんとか助けてあげたいと、友人からの紹介で横溝ゆかりに相談を持ち掛ける。その際、購入を勧められたティーセットを使用したことで招いた結果に納得がいかず、元凶を作ったとして瑠璃宮真央のもとを訪れる。

カスミ

父さんの家で飼われていた黒猫。飼い主が入院することになったため、瑠璃宮真央と生活をともにすることになり、瑠璃宮夢幻古物店のマスコット的な存在になっている。もともと、特にかわいがってもらっていた飼い主の妻が、病に倒れて帰らぬ人となったため、「別れ=永遠の別れ」と認識しており、人間との別れに対して敏感で、あきらめに似た悲しみを感じている様子。 その後は白石要とも親しくなり、一時的な別れの後に再会した時は予想以上の喜び様を見せる。

佐渡 ゆいか (さわたり ゆいか)

引っ越して来たばかりの小学生の女の子。友達ができず、いつもひとりぼっちで過ごしていた。そんななかできた最初の友達である黒猫のカスミに導かれ、瑠璃宮夢幻古物店にやって来る。そこで出会ったテディベアを瑠璃宮真央からプレゼントされ、大切な友達として同じ時を過ごすことになる。

橋本 さいり (はしもと さいり)

佐渡ゆいかのクラスメイトの少女。転入して来たばかりで孤立していたゆいかに声をかけ、初めての友達になった。最近母親の仕事が忙しくなり、帰宅時間が遅くなったことで、掃除など、家事を手伝わなくてはならないことが増え、面倒になっている。また、父親とはしばらく会っていないため、自宅で1人で過ごす時間が増えていた。そんな時、ゆいかから誕生日プレゼントとして持ち主が寝ている間に願い事を叶えてくれるという木彫りの人形をもらう。

(まこと)

白石要の弟。祖父が亡くなってからというもの、何かと言い争いが絶えない毎日に苦痛を感じている。それを認識しながら何もしようとしない姉に対しても不信感を募らせており、心の中にさまざまな不満を抱えている。そんななか、香炉の持つ力を使って家族の精神を操り、自分を中心とした理想の家族を作ろうと画策。しかし香炉が破壊されたことで、誠の望む精神状態を保ったまま、家族は自我を失い、生活が破綻してしまう。 それ以降は、自分の部屋に引きこもる生活を送っている。

お母さん (おかあさん)

白石要の母親で隆の妻。義父が亡くなってから、義父の遺した香炉を巡って家族間での争い事が絶えなくなっていた。その後、その香炉の持つ力によって精神を操られ、家族は一度破綻を迎える。のちに、そんな家族を一度は捨てて出て行った要が戻って来てくれたおかげで、徐々に正常な日々を取り戻していく。しかし、お母さん自身は今でも病院のカウンセリングに通いつつ、要に頼った日常生活を送っている。 母親として、要に負担をかけていることに心を痛めており、早く娘を平穏な日常に戻してやりたいと考えている。

(たかし)

白石要の父親でお母さんの夫。父親が亡くなってから、父親の遺した香炉を巡って家族間での争い事が絶えなくなっていた。亡き父親は自分の死後、香炉を売却し処分することを希望していたが、隆は香炉の持つ力を理解しており、売却に反対していた。その後、香炉の持つ力によって自分を含めた家族は精神を操られ、生活が破綻。さらに仕事でのストレスをすべて妻にぶつけていたが、家族を捨てた要が戻ったことで、正常な日々を取り戻す。 しかし、傷ついた家族のためにと家事に専念していた要の、自分の将来のために復学したいという思いを知り反対。結局、自分と仕事のことにしか考えが及んでおらず、これがさらなる不幸を呼ぶこととなる。

田中 (たなか)

社会科教育の一環として、瑠璃宮夢幻古物店を訪れた男子中学生。お店に来た記念にと、縁を切る力を持つ鋏を購入する。意味も分からずに幼い頃からの親友である男子生徒との縁を切ってしまったことで彼の態度の急変を招き、なんとか修復しようと奔走する。そのなかで、女子中学生2人組の口車に乗せられ、お金をもらって縁を切る商売を始める。

女子中学生2人組 (じょしちゅうがくせいふたりぐみ)

社会科教育の一環として、瑠璃宮夢幻古物店を訪れた中学生のうちの女子生徒2人。田中が購入した不思議な鋏の持っている力を検証し、その鋏を使ってお金儲けをしようと画策。親友との縁を取り戻したい田中自身を巻き込んで、秘密裏に学校内で不要な縁を切る商売を始める。

米村 (よねむら)

田中と同級生の女子生徒。瑠璃宮夢幻古物店で、写真など、束ねた者同士が好意を持つというホッチキスを購入する。みんなに仲良くなってほしいという願いから、学校内で写真を撮ってはホッチキスで止めて縁を取り持っている。繋がる縁を切ることができる鋏を持った田中から、警告を受けるも聞く耳を持たず、今は学校中の縁をつなぎ、将来的には世界中の縁をつなぐと豪語する。

畑中 セツ (はたなか せつ)

瑠璃宮夢幻古物店で、持ち主の感情を周囲に振り撒く如雨露を購入したおばあさん。寝たきりの夫と、海外には娘夫婦と孫がいるが、ほとんど接点もなく1人で寂しい毎日を送っている。庭の手入れが上手だった亡き母親のことを思い出し、その如雨露で自分もガーデニングをしたいと思い立つが、心の奥に深い闇を抱えている。

恭子 (きょうこ)

畑中セツの娘で翔太の母親。セツの様子がおかしいことを知り、母親のもとを訪れた。白石要に、母親の様子と自分との関係について語る。母親が自分の意思を持たず、何でも言いなりになることに嫌悪感を持っている。

翔太 (しょうた)

畑中セツの孫で恭子の息子。母親とともに瑠璃宮夢幻古物店を訪れた際、気に入ったシャベルを購入し、深く掘りすぎないようにと瑠璃宮真央から忠告を受ける。そのシャベルで祖母の家の庭を堀り進めていく。

神谷 (かみや)

瑠璃宮真央の古くからの知り合いで、古物商を営む老人男性。若い頃、娘が買って来た不思議な力を持つシェードランプの存在が原因で娘や妻と生き別れになってしまい、孤独な毎日を送っている。もともとは、町の小さな電器屋を営んでいたが、現在はランプを中心に買い取りや修理を行っており、真央が彼の修理の腕に頼ることもある。

柏木 奈々美 (かしわぎ ななみ)

瑠璃宮夢幻古物店で、ブローチを盗んだ女子高生。学校では生徒会長を務めており、たくさんの仕事を任され、同級生から頼られる存在。他にも、入院中の母親の世話や自宅の家事などすべてをこなし、忙しい毎日を送っている。しかし、母親のその後を悲観し、思わず母親の死を願ってしまった翌日、母親が帰らぬ人になる。母親を亡くした自分に対する周囲の気遣いが心地よく感じられ、今度は自分を悪く言う同級生の死を願ってしまう。

由美 (ゆみ)

柏木奈々美の中学生の妹。姉がブローチを手にして起こした一連の騒動後、しっかり者だったはずの姉の人格が、我が儘な子供のように変わってしまったことに対し、不信感を拭えずにいる。その理由を聞きに、瑠璃宮真央のもとを訪れる。

川元 (かわもと)

眼鏡のサラリーマン男性。タバコを吸おうとするも、ライターがないことに気付き、ちょうど通りかかった瑠璃宮夢幻古物店でオイルライターを購入する。瑠璃宮真央からは、「あまり人前で火を付けないように」との助言をもらうが、その意味に気付くはずもなく、ライターの持つ不思議な力の犠牲になる。

清原 (きよはら)

川元の後輩のサラリーマン男性。同僚の男性社員に対して思うところがあり、常日頃から、目の前から消えてくれないかと思うほど嫌っていた。同僚と2人で仲が悪いことを川元に相談していた際、川元のライターの炎を見たことで、燻っていた心に火が付き、同僚に暴行。相手が入院する事態を引き起こしてしまう。

広川 (ひろかわ)

川元の同僚の女性社員。同棲して5年になる彼氏と結婚するきっかけを欲しており、川元のライターの炎を見たことで、やる気に火が付く。彼氏に結婚の相談を持ちかけるが、もともと彼氏に結婚の意思がないことはお互い了承していたはずの同棲だったため逆鱗に触れ、振られてしまう。

幸田 (こうだ)

口の悪い老人男性。妻を亡くし、子供もいないため、身辺整理のために自宅にある土蔵の整理を瑠璃宮夢幻古物店に依頼した。さまざまな品物の中で、父親の形見だというホッチキスは、束ねた者同士が好意を持ち、離れられなくなるという力を持っており、若い頃に妻との縁を取り持ってくれたこともあって大切にしている。しかし、手伝いに来ていた白石要がなにかしら訳ありなことを察し、そのホッチキスを彼女に託す。

保坂 (ほさか)

ママの夫で、一児の父親。体が弱く寝込みがちな妻に代わり、子供の保育園の送り迎えや弁当作り、炊事洗濯など家事全般をこなしながら、会社に勤めている。周囲の人からは「大変だろう」と言われるものの、保坂自身は愛する妻のため好きでやっており、苦にしていない。娘と瑠璃宮夢幻古物店を訪れ、病を払う力を持つ風鈴を購入する。

ママ

保坂の妻。生来体が弱く、何かと寝込みがちのため、家事や育児を満足にこなすことができず、夫に頼りきりの毎日を送っている。夫と娘が買って来た風鈴を使い始めてから、体調に変化が訪れ、今まで任せきりにしてきた家事や育児をこなし始める。

篠原 (しのはら)

会社勤めの女性。綺麗で仕事ができ、部下や上司から慕われている。それは、瑠璃宮夢幻古物店で購入した香水の効果によるものだったが、昔の自分を知る人には効果がないと知り、すべての人から好かれたい、ちやほやされたいとの願いから、新たに瑠璃宮真央から不思議な力を持つシュガースプーンを購入。それを使い、さまざまな人から親愛を受けることになる。

老紳士 (ろうしんし)

瑠璃宮夢幻古物店で傘を購入した温和な初老の男性。たびたび借金の申し入れをしてきながら返す気がない息子との関係に疑問を持ったことはなかったが、別れを迎えるという不思議な力を持つ傘を使ったことで、その親子関係を清算する。

谷垣、山内 (たにがき、やまうち)

小学生の男女2人組。もともと互いに顔を合わせば憎まれ口ばかりたたき合う仲だったが、互いにそんな仲を楽しく感じていた。しかし、道に落ちていた傘を拾い、2人で使ったことで急にそんな関係に嫌気がさし、ケンカ別れすることになる。

麻衣 (まい)

付き合っていた彼に別れを切り出した女性。彼がさしていた傘に入った際、つまらないことでケンカになり、別れることになった。しかしその後、巡り巡って自分の手元にやってきたその傘を返そうと、元彼に会いに行く。あの時はどうかしていたと再び2人でやり直すことになったが、2人で傘に入った途端に彼の様子が変化したことに気付く。

藍沢 公彦 (あいざわ きみひこ)

神谷の知り合いの古物店で手伝いをしていた男性。自分の店を持ち落ち着いたため、瑠璃宮夢幻古物店に神谷とともに挨拶に訪れた。その目的は四方照光のコレクションである額縁を譲ってもらうためだったが、瑠璃宮真央に断られてしまう。自店では、来店したお客さんの相談に乗り、事情に見合ったものを見繕うという方針のもと、お店を営んでいる。

佐竹 (さたけ)

藍沢公彦の店でアルバイトをしている女子高校生。もともとは、藍沢の店の常連客で、友人とともによくお店を訪れては品物を購入していた。しかし個人的に藍沢に対して好意を持っており、彼と近づきたいという思いでアルバイトを始めた。アンティーク品の市に出店した際、瑠璃宮真央と藍沢の親密な様子を見て、2人の仲を勘違いする。

小平 (こだいら)

花の夫。偶然訪れた瑠璃宮夢幻古物店で、アンティークのドアノブを購入し、自宅のドアに取り付けた。若い頃に仲良くしていたが、些細なケンカをきっかけに疎遠になっていた友人が訪ねて来る夢を見た後、彼の訃報を知り、早めに会いに行かなかったことを後悔する。

(はな)

小平の妻。家のドアノブが壊れていたが、古いドアに新しいドアノブが付くのを嫌がっていた。夫が購入してきたアンティークのドアノブは、家のドアによく合うと喜んでいたが、取り付けた後から不思議な現象に遭遇するようになる。疎遠になっていた友人と再会する夢を見た翌日、その友人から連絡があり、実際に会うことになる。

正太 (しょうた)

和哉と浩介の友達の男子小学生。母親が祖母のためにと瑠璃宮夢幻古物店で買って来た虫眼鏡に興味を示し、母から借りて使い始める。小さいものに対して使うことに飽きてきたため、ふと思い立って手相を見てみることに。すると手相を見た相手に、明日起こることが見えることに気付く。些細なことから大変なことまでさまざまなことが見えるため、和哉や浩介とともに明日の出来事を見て、対処することに夢中になってしまう。

和哉 (かずや)

正太と浩介の友達の男子小学生。正太が持ってきた虫眼鏡で手相を見ると、明日起こることが見えることがわかり、浩介と3人で虫眼鏡に夢中になる。しかし、虫眼鏡で見えた悪いことが起きないようにと対処していくと、別の形で悪い結果を産むことがあるということに気付き、誰よりも早く虫眼鏡を使うことに疑問を持ち始める。

浩介 (こうすけ)

正太と和哉の友達の男子小学生。正太が持ってきた虫眼鏡で手相を見ると、明日起こることが見えることがわかり、和哉と3人で虫眼鏡に夢中になる。楽観的な性格で、100点をとるためにテストの問題を知ろうするなど自分の日常に密着した問題の解決に利用しており、問題意識も持っていない。

瑠璃宮 華子 (るりみや はなこ)

瑠璃宮真央の養母。夫と死別した後に真央と出会い、養子として迎え入れた。その後は静かで穏やかな毎日を過ごしていたが、ある日突然自宅で亡くなっているのが発見される。生前、夫の形見の櫛を大切にしており、自分が亡くなった時にはこの櫛とともに火葬され、永遠に夫とともにありたいと考えていたが、火葬の際に櫛が見つからなかったため、その願いは叶わなかった。

四方 照光 (よも てるみつ)

情念の宿ったアンティーク品の蒐集家の男性。瑠璃宮真央の養父と仕事上の関係があり、真央が秘書を務めていた事がある。彼の名の付くコレクションは、強すぎる情念が残っているため、持ち主に大きな影響を与える力を持ち、総じて取り扱いに細心の注意を必要とするものばかり。瑠璃宮夢幻古物店にある彼のコレクションに関しては、基本的には倉庫で厳重に保管されており、売買されていない。生前、妻・四方和歌子からプレゼントされた片眼鏡(モノクル)の力を使い、瑠璃宮華子を手にかけ、彼女の情念を櫛に宿す事に成功。これをきっかけに、自分の妻をモノクルに宿すなどし、情念を宿した古物を作り上げた。彼は愛する人にどんな形であれ永遠を与え、人を使い愛され続ける道具を作る事に生涯をささげた。彼は死後、モノクルにその情念を宿している。

女の子 (おんなのこ)

小さな山間の町で暮らしている15歳の少女。母親を亡くし、父親と二人で暮らしている。幼い頃から母親に刺繡の手ほどきを受けていたため、母親の死後も彼女が遺した図案と刺繡針で刺繡を続けた。刺繡の実力はかなりのもので、町の公民館で展覧会を開催するほど。その際、展覧会に訪れた横溝ゆかりと知り合った。その後、失恋をきっかけに、とり憑かれたように刺繡に没頭するようになってしまう。

義兄夫婦 (ぎけいふうふ)

横溝丈の亡き妻の兄とその妻。仕事で世界中を飛び回る丈に代わり、横溝ゆかりを一時的に引き取った。ゆかりのために必要なお金を丈からかなり預かっていたが、基本的にゆかりの方から要求がない限りいっさい何も用意してやらなかった。そのため、使われなかったお金はすべて自分達家族のものとして私腹を肥やし、生活は次第によくなっていった。しかし、その状況を察したゆかりが、小学校卒業と同時に一人暮らしをすると言い出したため、慌てて取り繕おうとした。ゆかりが出て行くと、自分達にお金が入らなくなり、当てにして組んだローンを払えなくなる事を恐れ、ゆかりを監禁するなど、凶行に及んだとも語られている。

お父さん (おとうさん)

すみれの父親。妻と離婚してから、娘と二人暮らしをしている。料理が趣味なため、日々の食事の支度や、すみれのお弁当も作っている。給料はちょっと少な目。そのせいで、すみれにはかなり苦労をかけているが、あまり自覚はない様子。すみれに対して深い愛情を持っているが、実はあまり娘の事を理解できていない。

桜井 美香 (さくらい みか)

女子学生。幼い頃、なかよしだった少年の泰志が引っ越す事を知り、離れ離れになっても必ず巡り会える不思議な力を持つ、というペアコップの片割れをプレゼントした。しかしその後、自分のコップを母親にリサイクルに出され、行方不明になってしまった。ずっと探していたコップは、藍沢公彦が営む古物店のブログに掲載された事で、買い戻す事に成功する。

佐倉 (さくら)

藍沢公彦が以前勤めていた家具専門の古物店の店長を務める男性。神谷が古物の仕事を始めたばかりの頃に市で知り合い、付き合いはもう20年近くになる。お店の物とは別に、本人の個人的な古物のナイフコレクションを持っていた。中でも興味があったのは特に曰くつきの物。若い頃お金に苦労した事もあり、いい品物を安く手に入れるのは、趣味のようなものだった。ある時、四方照光コレクションのナイフを手に入れた。もともと芯が強く、甘言や誘惑に惑わされないタイプだったため、心配ないと思われたが、間もなくナイフの情念に乗っ取られてしまった。

三好 (みよし)

幼稚園児の娘を持つ母親。橋田とは、娘を同じ幼稚園に通わせているママ友達。ある時、橋田が持っていた扇子で、不快な事を吹き飛ばせると知り、貸してもらう事になった。他人の幸せを羨み、妬んでしまう自分自身に悩み、日々苦しい思いを抱えていた。その悩みから解放されたいと、扇子を使って思い切りその不快感を吹き飛ばす事に成功する。しかし、そのすっきり感に味を占め、何かと扇子に頼るようになり、扇子を橋田に返したくなくなってしまう。

橋田 (はしだ)

幼稚園児の娘を持つ母親。三好とは、娘を同じ幼稚園に通わせているママ友達。ある日、瑠璃宮夢幻古物店で売っていた扇子を気に入り、購入した。その扇子は扇ぐ事で、痛い、辛い、苦しいなど、本人が不快と感じる思いを吹き飛ばす事ができるという不思議な力を持っていた。購入時には、白石要から扇子の持つ効果について話を聞いていたが、信じていなかった。しかし娘のお迎えにいった際、その効果を実感。吹き飛ばされた思いが、消えるわけではなく、周囲に飛び移る事を知ったため、使い方について深く考える事になる。

晴人 (はると)

若い男性。後藤と悦子の息子。ずっと順調だったはずのサッカーで負け始め、落ち込んでいた時、母親から勝ちを呼び込むメダルについての話を聞く。そのメダルを手放した事で今の状況になった事を知ると、父親には内緒のまま、売却されたメダルを瑠璃宮夢幻古物店の瑠璃宮真央から直接買い戻し、平穏な毎日を手に入れようとする。

悦子 (えつこ)

後藤の妻であり、晴人の母親。最近義父を亡くし、彼が遺した骨董品を売却する事になった。その中にあったメダルに、勝ちを呼び込む効果があり、この家が裕福なのはすべてメダルのおかげだと言っていた義父の言葉を思い出し、売却する事を心配している。その後、いつも通りやっていたFXで巨額の損失を出してしまい、改めてメダルの効果を思い知る事になる。

すみれ

女子中学生。両親が離婚し、父親であるお父さんと二人暮らしをしている。お父さんの給料から生活費をもらっているが、給料が少なすぎて、生活はかなり厳しい状況。しかし、お父さんにはその自覚があまりなく、少し不満に思っている。中学生になるにあたり、お弁当箱を新調する事になったが、予算的な側面から瑠璃宮夢幻古物店に立ち寄り、アルミのお弁当箱を購入した。その後、毎日父親の作る弁当を食べているうちに、父親への不満がなくなり、いつも父親の事を考えるようになっている事に気づく。

泰志 (たいし)

男子学生。幼い頃、なかよしだった少女の桜井美香からプレゼントされたコップを、何年も経った今でも使い続けている。コップの持つ意味について、当時は何か説明された気がするが、詳細はもうすっかり忘れてしまった。コップのデザインと、こすると出る何とも言えない音が大好きで、気に入っている。

赤井 千代子 (あかい ちよこ)

四方照光コレクションである古物の霧吹きに見初められてしまった少女。その霧吹きを使って、亡き祖母が世話をしていた荒れ放題の植物園をたった一人で蘇らせた。もともとは少し荒い気性の持ち主だったが、霧吹きを使うようになってからというもの、性格が変わり、慈愛に満ちた笑みを浮かべるようになった。そして、日を追うごとに年齢に不相応な言葉遣いをするようになったため、家族が心配している。

四方 和歌子 (よも わかこ)

四方照光の妻。若くして病に倒れ、亡くなった。生前、夫に片眼鏡(モノクル)をプレゼントした。そのモノクルは、人の心をある一点にのみ向けさせる事ができるという代物だった。彼女は自分の命が短い事を知っていたが、同時に夫と共にいる事を望んでいた。そのため、彼女の情念は夫の手によってモノクルに宿され、永遠に生き続ける事となった。

横溝 丈 (よこみぞ じょう)

横溝ゆかりの父親。古物商だが、店を持たずに基本的に身一つで仕事をしていた。イギリス人と日本人のハーフで、イギリス生まれ。日本人女性と結婚し、ゆかりが生まれた。妻は若いうちに亡くなり、しばらくはゆかりを連れて仕事のために転々としていた。しかし、ゆかりが小学生になり、義務教育を受けさせる必要があったため、妻の兄である義兄夫婦の家にゆかりを預け、一人で動くようになった。義兄夫婦にはゆかりのためのお金をかなり渡しており、月に1回は必ずゆかりに会いに行った。ある時、四方照光によってその魂は茶器に移され、肉体は失ったがその精神は茶器に生きている状態。その茶器も、四方照光コレクションの一つとなっている。

後藤 (ごとう)

社会人の男性。妻の悦子と息子の晴人の三人家族。最近父親を亡くし、彼が遺した骨董品の売却を決めた。その中にあった、勝ちを呼び込むメダルの効果について、まったく信じていなかった。しかし、メダルの売却と同時に周囲のすべてがうまく回らなくなり、メダルを買い戻した。そして元通りうまく回るようになった事で、その効果を実感する事になったが、人生のすべてが自分の実力ではなかった事に気づき、その虚しさにメダルを再び売却。努力で成功を勝ち取ろうと心に決める。

場所

瑠璃宮夢幻古物店 (るりみやむげんこぶつてん)

大正の終わり頃から続く古物店で、瑠璃宮真央が店主を務めている。長い年月、人に愛され受け継がれて今に残るさまざまな道具、特にいわくのある物を専門に取り扱っている。そういった物のなかには、不思議な効果を発揮するものがあり、その道具を必要としている人を呼んでは引き付け出会う場ともなっている。

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