異世界でマンチキンなプレイ
本作のタイトルにもなっている「マンチキン」とは、TRPG(テーブルトークRPG)における用語で、「洋マンチ」と「和マンチ」の二種類が存在する。元々はアメリカでTRPGのプレイスタイルを分類した「マンチキンテキスト」に端を発する言葉で、TRPGの自由度を悪用し、「自分に有利な条件を押し付ける自己中心的な子供のようなプレイヤー」を指す。和マンチは、この概念が日本に伝わった際に意味が変化したもので、「ゲームのルールの隙間を突いて自分に有利なプレイをするスタイル」を指す。TRPGのルールに精通したプレイヤーがGM(ゲームマスター)の予想を覆すような戦略を用いるため、時にはゲームを盛り上げる要素として好意的に受け入れられることもある。しかし、行き過ぎた和マンチはゲームバランスを崩す可能性があるため、和マンチを嫌うプレイヤーやGMも少なくない。本作の主人公・桐原行人は、和マンチスタイルで異世界のルールの隙間を突いて冒険を有利に進めていくが、そのプレイスタイルは現地の人々からは「卑怯者」「臆病者」として軽蔑されている。
猛悪の女神と「世界書」
行人は、いじめが原因で不登校になりつつも、献身的に支えてくれる妹・佐奈のおかげで充実した日々を送っていた。しかしある日、家に突如現れた魔物に襲われ、命を落としてしまう。目を覚ますと、行人は「真実と公平」を自称する女神・ネフィリアの前にいた。ネフィリアの手によって異世界「エバーワールド」に転生することになるが、彼女の言葉で妹が無事生きていることを知り、行人はほっと胸を撫で下ろす。そして、女神が持つエバーワールドのすべてが記された「世界書(ワールド・マスター・ガイド)」に自らのプロフィールを刻もうとする。しかしその時、佐奈に関する記述を発見し、ネフィリアが実は「混沌と猛悪の女神」であり、これまでの言葉がすべてウソであったことを知る。真実を知った行人は怒りに燃え、ネフィリアから世界書を奪い、異世界に転生した最愛の妹を捜す旅に出る。
HP1プレイヤーによるダンジョン攻略
桐原行人は、女神から「世界書」を奪った代償に、HPが1に固定され、敵の攻撃を受ければ即死という呪いに等しい状態に陥ってしまう。頼れる者もいない危険な異世界に一人放り込まれた行人は、理不尽な境遇に抗いながらも、行方不明になった妹・佐奈を捜すためにあらゆる手段を講じて冒険を始める。「エバーワールド」のすべてが記された世界書を読み解き、この世界のルールを逆手に取るという特異なプレイスタイルは、次第に人ならざる者たちの注目を集め、やがて巨大な陰謀劇へと巻き込まれていく。
登場人物・キャラクター
桐原 行人 (きりはら ゆきと)
妹の佐奈と仲睦まじく暮らしている少年。年齢は16歳。ゲームが大好きで、能力を制限して意図的に難易度を上げる「縛りプレイ」を日常的に楽しんでいる。陰湿ないじめに遭ってから不登校気味だが、いつも味方でいてくれる佐奈を何よりも大切に思っている。そんなある日、家に突然現れた魔物に襲われ、佐奈をかばって命を落としてしまう。その後、魂は女神・ネフィリアに導かれ、異世界「エバーワールド」へと転生することになる。しかし、ネフィリアの言葉に隠されたウソを見抜いた行人は、彼女が持つ至宝「世界書(ワールド・マスター・ガイド)」を奪い、エバーワールドに降り立つ。世界書を通じて、佐奈が先に異世界に転生していたことを知った桐原行人は、彼女を捜すために旅を始める。さらに、ネフィリアが能力値を決定する前に世界書を奪ったため、行人のHPはわずか1になってしまった。その上、ネフィリアの加護を色濃く受けている行人の魂は、HPの成長を阻害され、レベルアップしてもHPは1のまま固定されてしまう。妹と再会するまで絶対に死ねないという強い決意を胸に、行人はあらゆる手段を講じるマンチキンスタイルで異世界を生き抜く。冒険者としての職業は、魔法攻撃を得意とする「ウィザード」。
シャルロッテ・R・ブラウニア
ブラウニア公爵家の三女。金色のロングヘアをなびかせ、荘厳な白い鎧に身を包んだ「聖騎士(パラディン)」。正義と慈愛の神を信仰し、公明正大で実直な性格の持ち主。愛馬の「ロシナンテ」を駆り、偉大な騎士であった祖父を目指して武者修行の旅に出ている。見た目も性格も立派な騎士だが、実際の能力は追いついておらず、筋力値は桐原行人の初期値すら下回るわずか7にとどまっている。装備が過剰なまでに豪華であることが仇となり、筋力値が装備の適正値に達しないためにペナルティが発生し、もともと低い能力値がさらに低下してしまい、見た目だけのポンコツ騎士と化している。むしろ、愛馬のロシナンテの方が圧倒的に強く、旅の途中で出会う魔物はほとんどロシナンテが倒している。行人が魔物に襲われているところを助けた際、妹を捜す手伝いを懇願され、快く承諾した。ちなみに、行人はシャルロッテがお人よしの箱入り娘であることに気づいており、その人柄につけ込んでいることに罪悪感を抱いている。その後も度々、行人の口車に乗せられて苦労するものの、着実に成長を遂げていく。
クレジット
- 原作
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志瑞 祐
書誌情報
異世界マンチキン ーHP1のままで最強最速ダンジョン攻略ー 13巻 講談社〈シリウスKC〉
第1巻
(2019-09-09発行、978-4065168301)
第2巻
(2020-04-09発行、978-4065191385)
第3巻
(2020-10-09発行、978-4065209899)
第4巻
(2021-05-07発行、978-4065233498)
第5巻
(2021-11-09発行、978-4065258651)
第6巻
(2022-05-09発行、978-4065278215)
第7巻
(2022-11-09発行、978-4065297735)
第8巻
(2023-05-09発行、978-4065317181)
第9巻
(2023-11-09発行、978-4065337066)
第10巻
(2024-05-09発行、978-4065356456)
第11巻
(2024-11-08発行、978-4065373965)
第12巻
(2025-06-09発行、978-4065393802)
第13巻
(2025-11-07発行、978-4065413401)







