ファイアパンチ

氷河期の雪に閉ざされた世界。「祝福者」と呼ばれる特殊能力を持つ少年が、村を焼いて、妹を殺した相手に復讐するため、消えない炎に焼かれた身体のまま戦い続けるダークファンタジー。WEBコミック「少年ジャンプ+」2016年20号から連載中の作品。

正式名称
ファイアパンチ
作者
ジャンル
ダークファンタジー
レーベル
ジャンプコミックス(集英社)
関連商品
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世界観

本作『ファイアパンチ』は、近未来の氷河期となった地球を舞台にし、復讐をテーマとしたダークファンタジー。「祝福者」と呼ばれる特殊能力者達が生きる世界で、すさまじい肉体再生能力を持つ「祝福者」の少年が、別の「祝福者」により全身を決して消えない炎に焼かれ続ける状態にされながらも、復讐のために肉体をコントロールしつつ、戦う姿を描く。作中世界ではすでに失われた文化である「映画」が、作中の重要なカギを握り、次々と起きる予測不能の展開が魅力となっている。

作品が描かれた背景

藤本タツキは、本作『ファイアパンチ』執筆にあたり、「売れるマンガを作るために、戦略的に作品を描こう」と考え、さまざまな作品を研究したという。その結果、やなせたかしの『アンパンマン』の「自分の顔を分けて食べさせる」という行為が、海外では奇抜なアイデアとして受けていることを知り、『アンパンマン』を基軸に物語を作ってみようと考えた。主人公のアグニが脅威的な再生能力を持つという設定は、自身の顔を与えるというアンパンマンの行動に着想を得たもので、「ファイアパンチ」という言葉はアンパンマンの必殺技である「アンパンチ」からきている。さらに、登場人物の名前も有名作品をモチーフに考案されており、例えばアグニはアンパンマンの頭文字「ア」を、他にドマは『ドラえもん』の「ド」、サンは『サザエさん』の「サ」から一文字を拝借している。

作品誕生のいきさつ

本作『ファイアパンチ』は、当初は「月刊ジャンプSQ.」での連載作品として企画されていたが、結果的に「少年ジャンプ+」で連載がスタートした。そのため藤本タツキは、「せっかく「少年ジャンプ+」で連載をやるのなら「アンチ・ジャンプ」的な作品にしたい」と考え、宗教の話題など、本来少年誌ではタブーとされることを描いたと語っている。

作品構成

本作『ファイアパンチ』は、「序」「破」「急」の3部構成となっている。「序」はコミックス3巻掲載の28話で終了し、コミックス4巻掲載の29話からコミックス6巻掲載の55話までが「破」となり、56話から「急」がスタートした。また、藤本タツキは、コミックスの各巻ごとに作品のジャンルを変えることも意識しており、たとえばコミックス1巻は復讐劇として物語が始まるが、コミックス2巻ではその第1巻を否定して、コメディテイストの強い展開が続くなど、構成的にも、ジャンル的にも飽きさせない作品となっている。

あらすじ

第1巻 

近未来の、氷河期となった世界。両親を殺された15歳の少年、アグニは、妹のルナと共に小さな村の人々に拾われ、静かに暮らしていた。しかし、この村にはある秘密があった。生まれつき驚異的な肉体再生能力を持ち、「祝福者」と呼ばれる特別な存在であるアグニは、村を食糧難から救うため、毎日自分の身体を切り落として、村民達に分け与えていたのである。そんなある日、村にベヘムドルグ王国の軍人、ドマがやって来る。そこで村の実態を知ったドマはアグニ達に強い嫌悪感を覚え、自らの炎の「祝福者」としての力を使い、村を焼き払う。再生能力を持つアグニだけはかろうじて助かったものの、ルナを含むほかの村民は全員死亡。アグニはドマによる炎でつねに全身を焼かれ続ける身体にされながらも、ドマに復讐を誓うのであった。そして8年後。ドマを追っていたアグニは、道中でベヘムドルグ兵に殺されそうになっていた奴隷達を偶然助ける。そこで奴隷の一人、サンに気に入られたアグニは、仕方なくサンと行動を共にするが、すぐさまベヘムドルグからの追っ手が現れ、首を切り落とされてしまう。さらに、そのリーダーと思われる女性のユダは、なぜかルナにそっくりな容姿をしていた。

第2巻

 アグニサンは、ベヘムドルグ王国の兵士達に捕獲された。アグニは頭部だけの姿にされ、サンは両足を切り落とされ、絶体絶命の危機に陥っていた。それでもなお生きているアグニを完全に殺害するため、ユダはアグニの頭部を海に投棄する事を思いつく。しかし、海へ行くため仲間と共に地下鉄道に乗り込んだユダの前に現れたのは、謎の女性、トガタであった。トガタは驚異的な強さでベヘムドルグ兵達を倒し、ベヘムドルグ兵達に強姦されそうになっていた少女のネネトを助ける。そんなトガタの目的とは、アグニであった。以前、偶然アグニの存在を知ったトガタは、アグニに強い関心を持っており、アグニを題材にした映画が撮りたいと考えていたのである。トガタはアグニを救出すると、瀕死のユダを逃がす代わりに、自分の監督作品の主演俳優になれと命じる。ユダがルナにそっくりである事から、ユダの事が気になるアグニは仕方なく応じ、同時にトガタに救われたネネトは、その作品のカメラマンを担当する事になる。一方その頃、サンは「祝福者」としての能力を買われ、ベヘムドルグ王国を支える「」として強制労働させられていた。

第3巻 

トガタの命令で、トガタが監督する映画の主演俳優になったアグニは、作中の目玉であるドマへの復讐シーンを撮影するため、ベヘムドルグ王国へ向かう計画を立てていた。しかし、少しでも面白い作品を撮りたいトガタは、先にベヘムドルグ王国に潜入し、ユダに情報を与える事で、戦いをより盛り上げようとしていた。その結果、ユダはすでに戦う意欲をなくしているドマではなく、強力な「祝福者」三人をアグニの敵として用意し、トガタの指定する場所で待ち構える。しかし、アグニとトガタ、ネネトの三人がいざベヘムドルグ王国に到着すると、奴隷達の悲惨な姿を目撃したアグニは、台本を無視して救出を始めてしまう。トガタは激怒するが、アグニが救出した人々の中にはサンの姿もあった。アグニだけでなく、サンと顔見知りであるネネトもまた、サンが生きていた事に安堵するのであった。そしてトガタの予定よりも遅れてユダ達のところへ到着したアグニは、あっという間に「祝福者」達を倒す。その姿は、奴隷達だけでなく、ベヘムドルグ兵達にすら神様のように見え、さらに、騒ぎを聞きつけてやって来たバットマン達の手によって奴隷達はベヘムドルグ王国から逃げ出すのであった。一方その頃、アグニはドマを探していたが、ユダには先ほどの戦いで起きた火災によって既に死亡しただろうと言われたうえ、そこに突如現れた、世界を氷河期にした張本人「氷の魔女」に、ユダを連れ去られるのであった。 

第4巻

 トガタネネトサンらは、ベヘムドルグ王国から逃げ出し、脱出に手を貸してくれたバットマン達の住む村へ向かっていた。しかし、ウロイを中心とするベヘムドルグ兵達が追っ手にかかり、危機に陥る。だが、ビッチブリーフ男が応援に駆けつけた事で、どうにか事なきを得るのであった。それからしばらくして「氷の魔女」と名乗る女性に逃げられたアグニも、遅れてバットマン達の村にたどり着く。そんなアグニを待ち受けていたのは、村に集まった人々の、アグニを「神様」として慕う篤い信仰心であった。彼らの期待を受けとめるため、神様になる事を決意したアグニは、8年前のように自分の身体を切り落とし、食料として人々に与え始める。こうしてなんとか村は安定し始めるが、そんなある日、バットマンがアグニに衝撃の事実を告げる。人の心を読む力を持つ「祝福者」であるバットマンは、トガタがアグニを裏切っており、さらにトガタが性同一性障害を持ち、女性の身体に男性の心を持つ存在である事を見抜いたのである。真実を知られたトガタは村を去ろうとするが、アグニはそれを追う。

第5巻

 バットマンによって秘密を暴かれたトガタは、一人村から去ろうとしていた。しかしアグニはそれを追い、自分にとってトガタは姉のような存在なので、今後も自分のそばにいてほしいと頼む。その思いにトガタは折れ、アグニが、これから自分を退屈させないような面白い行動を取れるのであれば、村に戻ると言い出す。そこでアグニは、行方不明となったドマを見つけ出し、復讐を終わらせる事にする。アグニとトガタは、村にやって来た元ベヘムドルグ王国兵士の案内でドマの居場所を探り当て、ついにドマと再会する。ドマは小さな村で子供達を守りながら、静かに生活していた。そこでアグニはドマが自らの過去の行いを恥じ、せめて子供達には正しい教養を与えようと、必死に生きている事を知る。意気消沈したアグニは、一度はドマへの復讐をやめようとするが、怒りは消えず、ドマ達の暮らす村を焼き払うのであった。そして復讐を終えたアグニは、湖に入って自殺しようとする。しかし、それを止めたのはトガタであった。トガタは自分の命と引き換えにアグニを救出すると、アグニに触れた事により、炎に包まれて死亡するのだった。 

第6巻

 アグニが意識を取り戻すと、辺りは謎の大きな木に破壊され、アグニが住む村の村民を含む、たくさんの人々が死亡していた。それを生み出した張本人である「氷の魔女」を名乗る女性のスーリャによると、彼女は凍えたこの世界を温めるためにユダを使い、あの木を生み出したのだという。アグニは、ユダさえ倒せば奇跡が起き、この惨状から人々がよみがえるのではと考え、すぐさま木の中心部へ向かう。しかし、アグニはユダを倒す事に失敗し、そのまま意識を失う。そしてアグニが目を覚ますと、なぜかアグニは全身を包んでいた炎と右腕を失い、普通の人間に戻っていた。さらにいっしょに目覚めたユダは、記憶喪失となっていたのである。亡き妹のルナに似ているユダをどうしても憎み切る事ができないアグニは、自分の名前すら忘れているユダを「ルナ」と呼び、自分の事は「ニーサン」と呼ばせる事で、ユダをまるでルナのように扱い始める。こうしてユダに噓をついたアグニは、ひとまず物資を確保しようと、ユダと近くの建物に入る。しかしすぐさま住民の女性達に見つかってしまう。彼女達は、ドマの教え子達の生き残りであった。彼女達がベヘムドルグ王国兵に苦しめられている事を知ったアグニは、やって来た兵士達を撃退するが、再生能力が極端に落ちているアグニは重傷を負ってしまう。この一件から、テナをはじめとする住民の女性達の信頼を得たアグニとルナは、テナ達といっしょに暮らすようになる。しかし、アグニがテナ達を守るため、またもベヘムドルグ王国兵を殺したある日、アグニはその強さを見込まれ、テナからある頼み事をされる。それは、テナの父親であるドマを殺し、テナが望まぬ妊娠をする要因にもなった「ファイアパンチ」と呼ばれる、全身が炎に包まれた化け物を殺してほしいというものだった。 

第7巻

 テナから、右腕が完治し次第「ファイアパンチ」を殺してほしいと頼まれたアグニは、自分こそが「ファイアパンチ」であると告げられず、悩んでいた。アグニは何度も自殺を図ろうとするが失敗し、ある日とうとう海に飛び込むが、ユダに止められてしまう。そしてそのまま10年が経過し、テナに子供が生まれ、とうとうアグニの右腕が完全に再生したある日、アグニは再度テナから「ファイアパンチ」を殺してくれと頼まれるのだった。一方その頃、成長したサンネネトは、アグニ教の人間としてスーリャをはじめとする仲間と共に活動していた。しかし、その生活には限界が近づいており、さらに世界は10年前ユダが木になった事で一度は温まり、気温が上昇したものの、現在は再び雪に覆われつつあった。世界を温めるには、やはりユダが必要であると考えたサン達は、ユダを奪う計画を立てる。それを聞いたネネトは、計画実行前に単独でアグニのもとを訪れ、ほかの人間は助けるのでユダを差し出してほしいと、取引を持ち掛ける。しかしアグニにユダを引き渡す意思はないと見抜いたネネトは、予定よりも早く計画を実行し、ユダを連れ去るのだった。アグニはすぐさまネネト達を追おうとするが、そこをアグニこそが「ファイアパンチ」であると知ったテナとその子供に止められる。テナは長らく「ファイアパンチ」を憎んでいたが、その正体がずっといっしょに暮らしたアグニであったと知って殺意を消失させ、アグニには幸せになってほしいと語る。しかしアグニは応じず、それに怒ったテナの子供が持っていた炎の「祝福者」の力により火を受け、再度全身を炎に包まれる。こうして「ファイアパンチ」に戻ったアグニは、ユダを追う。 

第8巻 

アグニユダを助けに向かっていた頃、サンは意見の相違からスーリャと、アグニ教の中心人物を殺し、独裁者となっていた。サンは、この世界に住む人々にとっては、世界は寒いままの方がいいので、ユダを再び木にする必要はなく、すぐに殺してしまっていいと考えたのである。そこへユダを連れて合流したネネトは、サンの凶行に驚いて反論するが、逆にサンに殺されかける。しかしそこに、とうとうアグニがやって来る。だが、焼けただれたアグニの顔は、サンにとっては別人に見え、サンはアグニが何者かによって、本来とは別の身体に閉じ込められたのだと思い込む。激怒したサンはアグニに襲い掛かるが、アグニが勝利。サンは死亡し、呆然とするアグニのもとへ、ユダがやって来る。そしてユダは、生き残ったネネト達に自分が木となる代わりに、今後のアグニの平穏な人生を保証してほしいと頼む。ネネトはその条件を飲み、ユダの力によって記憶喪失となったアグニを「サン」と呼び、サンの生まれ変わりとして扱い、いっしょに暮らすようになるのであった。そして80年後。ネネトは亡くなり、80年前と変わらない姿のままサンとして暮らすアグニは、ある日仲間から、奇妙な映像を受け取る。そこには、全身を炎に覆われた男性が、ひたすら戦う姿が記録されていた。そして数百年後。木となり不老不死となったユダは、たった一人で地球を温め続けていた。さらに数万年、数千万年が経過し、ユダが孤独で絶望しかけた頃、突如ユダのもとに、一人の男性がやって来る。サンと名乗る彼は、ずっと一人で漂い続けており、やっと人に会えた事が嬉しいのだという。そんな彼に名前を尋ねられたユダは、ルナと名乗る。そして二人は、一人ぼっちではなくなった安堵感から、少しの眠りにつくのだった。  

コラボレーション

2017年6月、本作『ファイアパンチ』コミックス5巻の発売を記念して、藤本タツキと沙村広明の対談企画と、コラボレーションイラストの制作が行われた。こちらは藤本タツキが沙村広明の熱心なファンであったことと、沙村広明も『ファイアパンチ』の愛読者であったことから実現した企画。「少年ジャンプ+」と「月刊ジャンプSQ.」の2誌に対談が掲載され、「少年ジャンプ+」には『ファイアパンチ』のアグニと『無限の住人』の万次のイラストが、「月刊ジャンプSQ.」には『ファイアパンチ』のルナと『波よ聞いてくれ』のミナレのイラストが掲載された。

登場人物・キャラクター

アグニ

ルナの兄で、「祝福者」の23歳の男性。以前は普通の少年だったが、8年前に住んでいた村をドマによって焼かれて以来、顔の半分以外の全身が、ドマによる決して消えない炎に覆われた姿で生き続けることになる。損傷した肉体が即座に再生するという能力を持っており、炎に全身が焼かれていても生きていられるのはその能力のため。 正義感が強く、純朴で心優しい性格。さらに大切な人のためなら自己犠牲もいとわず、たとえば自分の腕を切って食べ物として他者に与えることも喜びとしている。炎に焼かれるようになってからは、焼かれる苦しみや痛みにより複雑な感情が表現できないため、23歳という年齢にしては、やや幼いところがある。村を焼き、さらにルナを殺したドマに強い憎しみを抱いており、ドマへの復讐を誓っている。 その生き様に関心を持ったトガタにより、自分が主演の映画を撮影されながら復讐を目指す、という奇妙な日々を送ることになる。

ルナ

アグニの妹で故人。白い髪に青い瞳を持ち、前髪を目の上で切った、肩につくほどのセミロングヘアにしている少女。ユダとスーリャに容姿が非常によく似ている。常に敬語で話し、兄のアグニに対しても敬語で接する。健気で前向きな性格。「祝福者」でもあり、肉体の再生能力を持つが、アグニよりも再生能力は低く、再生スピードも遅い。 アグニのことを兄以上の存在として慕っており、彼との間に子供を作っても構わないとまで考えていた。しかし8年前、ドマの手により村が滅ぼされた際、炎に焼かれながらアグニに「生きて」と言い残して亡くなった。

トガタ

突如アグニの前に現れた「祝福者」の女性。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、顎の高さまで伸ばしたボブヘアにしている。左目の下に2つ、口元に1つほくろがある。若い女性の姿をしているが、肉体再生能力を持つ祝福者であるために加齢しないだけで、実年齢は300歳ほど。さらに性同一性障害があり、肉体は女性だが精神は男性となっている。 そのため明るくひょうきんに振る舞っているが、自分の肉体と精神の乖離に悩んでおり、あえて自分を女性だと思い込むことで精神の均衡を保っている。大の映画好きで、1990年から2200年にかけて作られた作品を愛好して暮らしていた。しかしある日、ベヘムドルグ王国兵に自宅を破壊され、映画のデータをすべて失ってしまう。 そのため意気消沈していたが、部下のダツとニオデラが偶然撮影したアグニの存在に関心を持ち、アグニを題材にした映画を撮ろうと考える。それゆえに、周囲の人間には自分のことを「監督」と呼ばせ、面白い映画を撮るためであれば手段を選ばない。再生能力を持つ祝福者であることも手伝い、非常に強く、ユダも簡単に倒してしまった。 英語も話すことができる。

ドマ

ベヘムドルグ王国の兵士の「祝福者」の男性。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、肩につくほどのセミロングの髪型にあご髭を生やしている。正義感の強い善良な人間。自分で学校を作り、子供に勉強を教えるほど教育熱心だったが、現在は精神を病んで隔離されている。ある日、自分が毎日礼拝していた「ベヘムドルグの神」の正体は映画「FIRE BEHEMDOLG」の主人公で、自分が見ていたものは映画であったことを知り、深く絶望する。 噓を信じ込まされていた過去を振り返り、今の人間に必要なのは暖かい気候や大量の食糧、そして神ではなく、想像力を養い、物事を冷静に判断するための「正しい教養」だと考えた。そしてベヘムドルグ王国崩壊後も、生き残った子供たちに勉強を教えていた。 そのため子供たちからは「先生」と呼ばれている。

ユダ

神様によって治められているとされるベヘムドルグ王国で教祖を務める「祝福者」の女性。白い髪に青い瞳を持ち、前髪を目の上で切り、肩につくほどのセミロングの髪型をしている。ルナとスーリャに容姿が非常によく似ている。若い女性の姿をしているが、再生能力を持つ祝福者であるために加齢しないだけで、実年齢は130歳。 また、年を経るごとに感情の起伏が小さくなっており、無表情で冷徹な性格。幼い頃、父親により実際は存在しない神の声を聞く役割に任命され、以来ずっと神が実在するかのように振る舞っている。ある日、偶然見かけたアグニの能力を危険視し、バラバラにして連れ去る。しかし、その後トガタの策略によりベヘムドルグ王国は滅び、さらにスーリャに連れ去られてしまう。

サン

アグニが助けた8歳の「祝福者」の少年。自分の身体から電気を作り出す力を持つ。前髪を目の上で切り、肩につくほどのセミロングヘアをポニーテールの髪型にしている。中性的でかわいらしい容姿をしており、女性に間違えられることもある。おっとりとしていて明るいが、ややとぼけた性格。奴隷としてベヘムドルグ王国に輸送されていたところを、偶然通りがかったアグニにより助けられた。 以降は、アグニのことを神様だと思い込むようになる。好物は砂糖。

ネネト

13歳の少女。前髪を目の上で切り、肩につくほどのセミロングヘアにしている。三白眼が特徴。行動的で自立した性格。生まれた村の「女性は男性に絶対従い、13歳になった際は必ず子供を産む」というルールに耐え切れず、逃げ出したところをベヘムドルグ王国に捕らえられる。その際、同時に捕らわれていたサンと知り合い、さらにトガタに救われた。 そこで、トガタに守ってもらう代わりに、アグニの生きざまを撮影して映画にする「カメラマン」ならぬ「カメラガール」を務めることになる。

スーリャ

「祝福者」の女性。滅びかけた地球にとどめを刺し、「一度この世界を終わらせ、次の世界を暖かい世界にする」ことを目的に、独自に動いている。白い髪に青い瞳を持ち、前髪を目の上で切り、肩につくほどのセミロングヘアにしている。ルナとユダに容姿が非常によく似ているが、右目から木の枝のようなものが生えている。白い髪に青い瞳の女性を、進化した人間の証としており、ユダを捕獲し、計画に利用しようとする。 実は最初は1人で計画を実行しようとしたが、「映画『スター・ウォーズ』の新作が見たい」という未練により計画が果たせず、ユダを巻き込むこととなった。

ゴバ

強盗の若い男性。アグニとルナの一家を襲い、2人の両親を殺した一味の1人。坊主頭に帽子を被っている。アグニとルナの両親を殺して、薪にしてくべただけでは飽き足らず、ルナを強姦しようとしたところを、アグニに殺された。

サンの兄 (さんのあに)

サンの兄。前髪を目の上で切って、左寄りの位置で斜めに分けたショートカットの髪型をしている。疫病に侵された自分たちの村で唯一無事だったサンを感染させないために、わざと「役立たずなので、口減らしとして追い出す」と噓をついて逃がした。

ジャック

ベヘムドルグ王国の兵士の若い男性。イワンの兄。前髪を真ん中で分けて額を全開にしたストレートショートカットの髪型をしている。一見温厚そうに見えるが、実際は捕まえてきた人間を、飼い犬たちと獣姦させるのを見るのが好きという変質者。連れて来られたサンとネネトにその役割をさせようとする。

イワン

ベヘムドルグ王国の兵士の男性。ジャックの弟。サイモンの一番弟子でもある。「祝福者」。両サイドの髪の毛を刈り上げてオールバックにした髪型に、眼鏡をかけている。がっしりした体格の持ち主。若い男性の姿をしているが、ユダやサイモン同様、再生能力を持つ祝福者であるために加齢しないだけで、実年齢は不明。 ある日、捕らえたアグニを完全に殺すため、海に頭部を沈めに向かっていた際、同行させたネネトを集団強姦しようとする。しかし、そこに突如現れたトガタにより殺された。

サイモン

ベヘムドルグ王国の兵士。「祝福者」の男性。イワンの師匠でもある。前髪を額が見えるほど短く切ったショートカットの髪型で、長身の若い男性の姿をしている。ユダやイワン同様、再生能力を持つ祝福者であるために加齢しないだけで、実年齢は80歳から90歳程度。しかし、本人も詳細な実年齢は把握していない。女性に対して差別的な思想を持つ。 ある日、捕らえたアグニを完全に殺すため、海に沈めに向かっていた際、銃声を聞きつけてイワンたちのもとへ向かうが、そこでトガタにより殺された。

ダツ

ニオデラの恋人の年老いた男性。トガタと「何でも言うことを聞く代わりに、トガタに保護してもらう」という契約を結んでいる。両サイドの髪を肩につくほど伸ばして、頭頂部は禿げ上がった髪型に、あご髭を生やしている。丁寧な口調で話す。元はベヘムドルグ王国に住んでいたが、ベヘムドルグ王国では同性愛は認められないため、ニオデラとともに逃げ出して来た。 ある日、映画のデータを失って消沈していたトガタを励ますために、何気なく周囲を動画撮影していたところ、アグニを偶然発見し、アグニを題材にした映画を撮影してはどうかと提案する。

ニオデラ

ダツの恋人の年老いた男性。トガタと「何でも言うことを聞く代わりに、トガタに保護してもらう」という契約を結んでいる。坊主頭で、片言で話す。元はベヘムドルグ王国に住んでいたが、ベヘムドルグ王国では同性愛は認められないため、ダツとともに逃げ出して来た。ある日、映画のデータを失って消沈していたトガタを励ますために、何気なく周囲を動画撮影していたところ、アグニを偶然発見し、アグニを題材にした映画を撮影してはどうかと提案する。 トガタの「映画の主人公の条件とは、今後が気になる人物であること」という言葉を覚えており、アグニは適任だと思っている。

ダイダ

ベヘムドルグ王国の牢屋に収容されている死刑囚。「祝福者」の男性。スキンヘッドにあご髭を長く伸ばし、右目の真上から真下にかけて長い一本線の傷跡のある、屈強な風貌をしている。通常の人間より筋力が高くなる能力を持っており、奴隷ではない女性を何人も強姦し、兵士を34人殺したことにより死刑囚となった。アグニ主演の映画を盛り上げるために、強い敵が必要だと考えたトガタの策略により、ユダの手によって解放され、アグニと戦うことになる。

カルー

ベヘムドルグ王国の牢屋に収容されている死刑囚。「祝福者」の若い男性。モヒカン頭に筋肉質な身体つきをしている。三白眼が特徴。施設の子供17人の顔を、自らの快楽のためだけに削いだことにより死刑囚となった。アグニ主演の映画を盛り上げるために、強い敵が必要だと考えたトガタの策略により、ユダの手によって解放され、アグニと戦うことになる。

フガイタイ

ベヘムドルグ王国の牢屋に収容されている死刑囚。「祝福者」の年老いた男性。能力の特性上、目隠しをされた状態で投獄され、カイゼル髭を生やしている。視界に入った鉄を自在に操る能力を持つ。ベヘムドルグを自らの国にするために戦い、ベヘムドルグ兵数百人を殺したことにより死刑囚となった。アグニ主演の映画を盛り上げるために、強い敵が必要だと考えたトガタの策略により、ユダの手によって解放され、アグニと戦うことになる。

ウロイ

ユダの側近を務めるベヘムドルグ王国の兵士。「祝福者」の若い男性。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、顎の高さまで伸ばしたボブヘアに帽子を被っている。ベヘムドルグ王国の労働力やエネルギー源として使われる人間たちである「薪」への差別意識が強い。炎を操る力を持つ。

バットマン

アグニを神とあがめる「アグニ教」信者。「祝福者」の男性。顔の目元と口元以外をマスクで覆い、顎ひげを生やし、帽子を被っている。そのため顔はほぼ見えない。バットを武器として使うので、トガタからは「バット男」と呼ばれている。亡くなった息子の死に際が、アグニのおかげで穏やかだったと考えており、アグニを盲信している。 そのため、ある日ベヘムドルグ王国が燃えているのを見てアグニがいると察し、アグニに会って神託を受けるため、戦いの助太刀に入る。人の心を読む能力があり、戦闘時はその能力を活かして相手の行動を読むこともできる。

ビッチ

アグニたちのもとに突如現れた「祝福者」の若い女性。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、胸まで伸ばしたストレートロングヘアにしている。右目に眼帯をし、ビキニのような服装にパーカーを羽織っている。新陳代謝が異常に速いという能力を持つため、非常に寒い現在の地球でも露出度の高い格好をしている。本名は不明なため、その挑発的な服装から、便宜上トガタに「ビッチ」と名付けられた。 英語しか話せず、そのため英語のわかるトガタとしかコミュニケーションが取れない。アグニ教信者たちと一緒に暮らすことになるが、アグニが本当は神様などではなく、ただの「祝福者」なのではないかと疑っている。

ブリーフ男 (ぶりーふおとこ)

アグニたちのもとに突如現れた「祝福者」の男性。鳥の頭のような形のヘルメットで頭全体を覆い、服はブリーフ一丁という奇妙ないでたちをしている。本名は不明なため、その服装から、便宜上トガタに「ブリーフ男」と名付けられた。言葉は話さず、ジェスチャーでコミュニケーションを取る。指から金属を作り出す能力を持ち、斧などの武器を作ることもできる。

テナ

ドマの娘で、「祝福者」の若い女性。前髪を眉上で短く切り揃え、肩につかない長さまで段をつけて切った外はねボブヘアにしている。ドマと一緒に暮らしていたが、彼の考えに賛同できなくなり、リアンらとともに離れて倉庫のような場所で暮らしていた。指から炎を発する能力があるが、使うと疲労するため、あまり戦闘の役には立たない。 男に強姦され、現在妊娠している。家族を亡くしたのも自分が妊娠させられたのも、すべて「ファイアパンチ」のせいだと捉えており、「ファイアパンチ」を激しく憎んでいる。ある日、偶然訪れたアグニと記憶を失ったユダと知り合い、助けられたのを機に2人と一緒に暮らすことになる。

リアン

ドマの元教え子の若い女性。髪の右半分は刈り、左半分は目が隠れるほど伸ばしている。鼻の周囲にそばかすがあり、唇にピアスをしている。男性のような口調で話し、一緒にいる仲間たちのリーダー的存在。ドマと一緒に暮らしていたが、彼の考えに賛同できなくなり、テナらとともに離れて倉庫のような場所で暮らしていた。ある日、偶然訪れたアグニと記憶を失ったユダと知り合い、助けられたのを機に2人と一緒に暮らすことになる。

場所

ベヘムドルグ王国 (べへむどるぐおうこく)

ユダたちが住む王国。150年ほど前、廃墟となった都市に、勝手に住み始めた人間たちによって建国された。神様によって治められているとされているが、実際はユダの父親による狂言。ユダは国民の前で常に神の声が聞こえる演技をしている。さらに、世界を凍えさせた「氷の魔女」を倒すと謳っているが、「氷の魔女」は実在しないため、こちらも噓。 自由の国とされ、能力があれば年齢を問わず出世ができ、奴隷ももてる。国内に「祝福者」が生まれた際は、「薪」として国のエネルギー源にするか、危険である場合は死刑にする。「ベヘムドルグ」という名は、旧時代に制作された「FIRE BEHEMDOLG」という娯楽映画のタイトルからつけられており、「FIRE BEHEMDOLG」の主人公は「ベヘムドルグの神」としてあがめられている。

その他キーワード

祝福者 (しゅくふくしゃ)

生まれながらに奇跡を使える人間。アグニ、ルナ、ドマ、ユダなどが該当する。損傷した肉体を再生させる力であったり、人の心を読む力であったり、金属を作り出す力であったりと、その能力はさまざま。どのような要因で「祝福者」が生まれるのかは不明。

(まき)

エネルギー源となるもの。世界には樹木が存在しないため、人間の身体を物理的に切り刻んで燃料とすることがあり、そのような人間を「薪」と称する。それらの人間は被差別階級であり、「薪」は差別用語として使われることもある。他に、発電や発火能力を持つ「祝福者」を捕獲して、エネルギー供給の労働力にする際も、「薪にする」という言い方をする。

氷の魔女 (こおりのまじょ)

「祝福者」の1人で、世界を雪と飢餓と狂気で覆った張本人。そのため、ベヘムドルグ王国の最大の敵とされている。実在はせず、地球に氷河期が訪れたことにより、生きていくのに絶望的な星になったことを隠すために生まれた架空の存在。

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