異世界転生の冒険者

異世界セカンドライフ

事故に遭って命を落としてしまった鳳天馬は、幽霊となって呆然と自分の葬式を眺めていた。創世神をはじめとする神々から気に入られた天馬は、複数の力を授かったうえで異世界「ファンタズマ」に転生することになる。しかし天馬がこの時授かった能力は、神の存在をも脅かすチートともいえる力でもあった。転生のスタートが赤ん坊であった天馬は、10年後には立派な少年に成長し、育ての親であるリカルドとシーリアに大切にされながら順調な異世界ライフを送っていた。転生前の記憶を保持したままの天馬は、彼を育ててくれた家族から大冒険者になることを期待され、マーリンの修行の果てにAランクダンジョン「大老の森」に足を踏み入れる。膨大な魔力を駆使して魔物と戦った天馬は、ダンジョンの中で魔獣・フェンリル族となかよくなる。だが、子供を連れていたつがいをほかの魔物から助けられず、天馬は残された真っ白なフェンリルの子供を引き取ることになる。その魔獣に「シロウマル」と名づけた天馬は、慣れないシロウマルの世話に手を焼きながら、チート能力を駆使して楽しいセカンドライフを送っていた。しかしそんな平穏な暮らしに陰りが見え始め、天馬が育ったククリ村の周囲ではある異変が起きていた。

大老の森の調査

鳳天馬たちの住むククリ村を突然襲撃したならず者は、冒険者とシロウマルを狙う獣人たちであった。凶暴なならず者との戦いでピンチに陥るものの、リカルドをはじめとする家族に救われた天馬は、シロウマルを狙ったならず者たちが、貴族・レイザック子爵家に命じられていたことを知る。一方、冒険者が所有していたゾンビ化の薬を発見したマーリンは、その薬を拾って調査を始める。それから2年半の月日が経ち、立派な冒険者に成長していた天馬は、家族に見守られながらさらに実力を伸ばしていく。家族や魔物たちと共にファンタジー世界を堪能する日々を送っていたある日、森を探索していた天馬は、スキルによってオークの集団が暴れている気配を感知する。オークに襲われている馬車を見つけた天馬は、修行の成果の実験も兼ねてさっそく助太刀に向かうが、彼が助けた相手はクラスティン王国の国王・アレックスであった。アレックスとその臣下たちに気に入られた天馬は、ククリ村に用事があるという彼の馬車に乗せられ、いっしょに村に行くことになる。アレックスたちの目的は、気分転換の外出を兼ねた、大老の森の異変に関する調査であった。アレックスはリカルドの旧友でもあるとともに、マーリンのかつての教え子でもあった。ククリ村で旧友と再会を果たしたアレックスは、予定どおり森の調査を開始する。

ドラゴンゾンビとの死闘

ならず者の襲撃を受けたり、国王自ら調査のためにククリ村を訪れたりと、異世界ライフを満喫する鳳天馬のもとで、思いがけないトラブルや事件が次々と巻き起こっていた。国王・アレックスによる大老の森調査開始から数か月後、ククリ村は謎のゾンビ集団に突如襲撃を受ける。天馬は家族と連携してなんとか敵が村に侵入するのを食い止めるが、シーリアをかばったリカルドが重傷を負ったうえに、巨大なドラゴンゾンビが出現する。天馬は家族や村人を守るために、マーリンと協力しながら必死でドラゴンゾンビと死闘を繰り広げる。死闘の果てにドラゴンゾンビを倒すものの失った代償は大きく、家族を失った天馬は絶望感と疲労から気を失い、川に落ちてしまう。川に流された天馬は目覚めた先の川辺で、彼と同じく別の世界から転生してきたというナミタロウと出会う。今は魚の魔物と化したナミタロウはすぐに天馬の気持ちを察し、周囲から耳にしていたククリ村のその後について話す。村も家族も失った天馬は、今度こそ大事なものを守るために、さらに強くなることを誓うのだった。

グンジョー市での決闘

ククリ村のゾンビ襲撃事件から数年が経過し、鳳天馬は公爵領内のグンジョー市という街に滞在していた。15歳に成長した天馬はさらにパワーアップしており、ギルドの冒険者として正式に登録し、難易度の高い依頼を次々とこなしていく。ギルドから一目置かれ、旅の中で出会った女の子たちにも慕われる天馬は、眷属であるスラリンとシロウマルにも囲まれ、のんびりと平和なスローライフを満喫していた。天馬は反則的な強さで淡々と依頼をこなしては荒稼ぎを繰り返すが、そんな彼が気にくわず妬んだり絡んだりする者もいた。大半の者を軽く蹴散らしてきた天馬だったが、ある依頼の途中で準男爵であるレギルの息子を倒したことで、レギルから因縁をつけられてしまう。天馬はグンジョー騎士団団長を務めるプリメラや、その父親・アルサスに対面し、彼らの提案でレギルと決闘でケリをつけることとなる。仕方なく誓約書にサインして戦うことになった天馬は、騎士団や貴族を巻き込んで新しい戦いを繰り広げる。だが、レギルは確実に勝利して天馬を殺害するために、一人だけでなく複数の精鋭を引き連れて現れる。卑劣な行為で追い詰めようとするレギルのもくろみをものともせず、天馬は次々と敵を蹴散らしていく。天馬の圧倒的な強さの前に精鋭たちも逃走し、すっかり孤立したレギル親子は素直に負けを認めるのだった。

セイゲンでダンジョン攻略

グンジョー市での決闘を終え、鳳天馬は騎士団やギルドをはじめとするさまざまな人々からさらなる注目を浴びながら、仲間と共につかの間の平和を楽しんでいた。温かい人々に囲まれながらグンジョー市での生活にすっかり慣れ親しんでいた天馬だったが、彼はある思いと目標を胸に、次なる冒険へと旅立つことを決める。天馬の次の目標は冒険者の花道であり、男のロマンでもある「ダンジョン攻略」に挑戦することであった。表向きは新しい出会いを求めるという理由であったが、天馬の本当の目的はダンジョン攻略を通して、家族を奪ったククリ村の事件を解明することであった。後日、グンジョー市で出会った仲間たちとの別れを惜しみながら、別れと感謝を告げた天馬は街をあとにする。道中ではさまざまなトラブルがあったものの、天馬はダンジョンを内包する都市「セイゲン」に無事到着する。さっそくセイゲンを散策しながらギルドを訪れた天馬は、ダンジョンの入り口と内部を行き来できるワープカードを購入する。まずは街中でダンジョンの情報収集を始めた天馬だったが、夕方から宿を探してもなかなか見つからずに困ってしまう。どこかで野営しようかと考えていたところ、天馬は酔っぱらい冒険者に絡まれている少女・エイミィと出会う。

小説

本作『異世界転生の冒険者』は、ケンイチの小説『異世界転生の冒険者』を原作としている。原作小説版はマッグガーデンのマッグガーデンノベルズから刊行され、イラストはネムが担当している。