あらすじ
第1巻
勉強も運動もからっしきダメな中学生の三黒充雄(ミクロ)は、やっとの事で入った柔道部でもぱっとせず、「投げられ屋ミクロ」という不名誉なあだ名を付けられ、居残り練習の乱取りでは3年間、ほかの部員にひたすら投げられるという悲惨な日々を送っていた。しかし、3年間の成績をこまめにノートにつけていたミクロは、3年前には1日に100回投げられていた回数が、3年後の現在では、10回にまで減っている事に気づく。翌日の7月7日を記念日にするべく、投げられ回数の目標を一桁である「9回」に定めたミクロは、居残り練習に参加し、県内2位の実力者である剣崎拓海との乱取りに挑むのだった。圧倒的な実力差によって守勢一方となったミクロだったが、3年間の練習で培った強靱な足腰を武器にひたすら粘り、強引に内股を狙う拓海の一瞬のスキを突き、拓海から一本を取って勝利する事に成功する。この敗北に逆上した拓海は翌日、固いコンクリートの上を舞台に、ミクロに対して生死を賭けた試合を挑むが、両者の気迫が拮抗したために最後まで決着はつかず、勝負はお預けとなる。柔道の楽しさ、勝つ事の大切さを再確認したミクロは、自分が柔道を始めるきっかけとなった、拓海がいじめっ子の天山を投げ技で軽くひねった過去の出来事をふと思い出す。
登場人物・キャラクター
三黒 充雄 (みくろ みつお)
柔道部に所属する中学3年生の男子。気弱なうえに勉学全般と運動がからっきしの少年。中学入学後に野球部やバスケ部といった運動部への入部を希望していたが、身長の低さからすべて断られてしまう。自分の無力さに絶望していたある日、いじめっ子の天山を柔道の投げ技で打ちのめした剣崎拓海の姿に衝撃を受け、「小さくても大きな相手を投げられる」柔道部への入部を決意。 自身の不器用さと弱さに悩みながらも、必死で練習に励むことになった。部員同士の居残り稽古では格好の投げられ役になっており、初回の乱取りでは他の部員から合計で100回も投げられるほどの軟弱ぶりを発揮。拓海から「投げられ屋ミクロ」という不名誉なあだ名まで付けられてしまう。それでも、3年間居残り稽古を続けたことで、徐々に体の使い方が上達し、足腰も強化。 3年後には投げられ回数を1日10回に減らすまでに成長する。投げられる目標回数を「9回」に設定したその日に、県内2位の実力者になった拓海から1本を取る快挙を成し遂げ、そこで柔道本来の楽しさを再確認することになった。柔道の技術はまだつたないが、居残り稽古の成績を3年間ノートに記録し、投げられ回数を減らすことを励みに練習を続けるという、不屈の精神力の持ち主でもある。
剣崎 拓海 (けんざき たくみ)
中学3年生の男子で、三黒充雄(ミクロ)の同級生。柔道部の主将を務めており、教室で大声を上げていた天山を、体格差をものともせずに投げ飛ばしてしまうなど、県下では有数の実力者。ミクロが柔道部に入るきっかけを作った人物だが、弱者であるミクロのことを見下しており、柔道部の乱取りで連日投げられ続けるミクロに対し、「投げられ屋ミクロ」というあだ名を付けて馬鹿にしていた。 しかし、3年後の7月7日にミクロに一本負けしたことで激昂。試合の場をコンクリートの上に移し、雪辱を晴らそうとする。自身にとって柔道はスポーツでなく、殺し合いであると断言する苛烈な性格で、そのくらいの覚悟がないと上を目指せないと考えている。全国大会への切符を争う試合で一本負けを喫した苦い経験を持つことから、投げ技に対する思い入れは人一倍。
田中 (たなか)
中学3年生の男子で柔道部員。剣崎拓海とともに、三黒充雄(ミクロ)を馬鹿にしており、乱取りで3年間ミクロを投げまくっていた。しかし、月日が経つにつれ、ミクロに一本勝ちするのに手間取るようになっていたため、ミクロが強くなりつつあることを実感していた。拓海から一本を取ったミクロを思わず祝福する。敗北に猛り狂った拓海とミクロが乱取りすることがないように、自身がミクロと試合を続けるなど、意外と気配りができる性格。
小池田
中学3年生の男子で柔道部員。剣崎拓海や田中とともに、乱取りで三黒充雄(ミクロ)を投げまくっていた。ここ最近、ミクロから簡単に一本を取れなくなっていたため、ミクロが強くなっているという感想を漏らすが、それを認めようとしない剣崎拓海から一喝されていた。
天山 (てんざん)
三黒充雄(ミクロ)の幼なじみで、体格のいい少年。幼い頃から弱虫のミクロを馬鹿にしており、ヒーローごっこで遊ぼうとしていたミクロに対し、無理やり怪人役を押し付けるいじめを行っていた。中学入学後にもミクロに嫌がらせをしていたが、昼寝を邪魔された剣崎拓海の怒りを買い、柔道の技で投げ飛ばされる。