白いパイロット

白いパイロット

いくつもの新型兵器を装備した最新鋭の戦闘機同士が、激戦を繰り広げる近未来SF戦闘漫画。戦隊ヒーローものの先駆けともいえる作品。デュマの冒険小説「鉄仮面の男」が物語の下敷きになっており、話題を呼んでいた邦画「七人の侍」や「用心棒」の影響も見られる。「週刊少年サンデー」にて1961年8月27日号~1962年6月24日号まで連載された作品。

正式名称
白いパイロット
ふりがな
しろいぱいろっと
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
レーベル
手塚治虫文庫全集(講談社コミッククリエイト)
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概要・あらすじ

ミグルシャ国に生まれた双子の男児がいた。そのうちの一人はマルス王子。そしてもう一人は日本人男性の息子・伴大助。二人とも巨大な地下要塞で奴隷として育つ。大助は仲間と共に地下施設を脱走して最新戦闘機ハリケーン号を奪い、「白いパイロット」となる。そして、世界征服をたくらむミグルシャ国の権力者に戦いを挑む。これに対しミグルシャ王国の軍隊も、マルス王子を隊長とするロボット戦闘機編隊を組織して迎え撃つ。

両者の激しい戦闘が繰り広げられるなか、大助とマルスは自分たちの出生に隠された、ある重大な秘密を知るのだった。

登場人物・キャラクター

伴 大助 (ばん だいすけ)

隠された出生の秘密を持つ少年。伴俊作の養子としてミグルシャ王国の地下要塞で奴隷として育つ。要塞脱出後はハリケーン号の初代艇長となる。そして、弱者を助け悪に挑む正義の戦士「白いパイロット」のリーダーとして、ミグルシャ王国の軍隊に戦いを挑み、マルス王子と運命の対決に臨む。

マルス王子 (まるすおうじ)

隠された出生の秘密を持つ少年。ミグルシャ国の王子として育てられ、戦闘機パイロットとしての英才教育を受ける。ロボット戦闘機隊の隊長兼ロボット戦闘機「13号」の操縦士として、伴大助の率いる「白いパイロット」と対峙する。卑怯な戦法は嫌う、という正義の心を持っている。名前はギリシャ神話の軍神に由来する。

ポスク博士 (ぽすくはかせ)

ミグルシャ王国の優秀な科学者。空中の元素を集めて物体の複製を作り出す、という「ダブル・マシン」を発明し完成させる。さらに人体実験を成功させるが、ジークフリード首相の命令に背いたため、妻と共に窮地に陥ってしまう。

伴 俊作 (ばん しゅんさく)

私立探偵で日本人の中年男性。たまたまミグルシャ王国を訪れていた時に事件に巻き込まれ、鉄仮面をかぶせられて地下要塞に拘束され、奴隷労働を強いられる。同時に連行されて来た赤ん坊を伴大助と名付け、自身の養子として育てる。一人で大勢の敵を倒すことができるほどの格闘技の達人。

メロ中佐 (めろちゅうさ)

隻眼の眼光鋭い男性。ミグルシャ王国の軍人で、空軍随一の戦闘機パイロット。マルス王子の飛行訓練指導官であり、同時にジークフリード首相の腹心として秘密警察の長官を兼ねる。目的のためには手段を選ばず、抵抗する者は容赦なく部下に射殺命令を出す、という冷酷非道な性格。伴大助の宿敵でもある。

メフィスト大尉 (めふぃすとたいい)

ミグルシャ王国の軍人で、メロ中佐の側近を務める冷徹な男性。ジークフリード首相より、メロ中佐の後任として秘密警察の長官の拝命を受け、伴大助の率いる「白いパイロット」と対決する。名前はゲーテの「ファウスト」に登場する悪魔から。

ジークフリード首相 (じーくふりーどしゅしょう)

普段は礼服にシルクハットの紳士然としたミグルシャ王国首相。裏の顔は、地下要塞で戦闘兵器を量産し、世界征服をたくらむ悪徳政治家。軍隊と秘密警察の指揮官に命令を下す、影の軍事総司令官でもある。名前はドイツの古典叙事詩に由来する。

女王 (じょおう)

ミグルシャ王国の国家元首。すらりとしたスタイルの美貌の女性。地下要塞へ護送途中だった赤ん坊の一人を密かに救出し、夭逝した自身の長男であるミグルシャ王国の王子の身代わりとして育てた、という秘密を持っている。

うば

ミグルシャ王国の女王に仕える肥満体の女性。女王やマルス王子の前では従順だが、自分の意見もはっきり主張するという芯の強さも持っている。宮殿内では、女王以外でマルス王子の秘密を知る唯一の人物。

パスツール

ミグルシャ王国の宮殿で女王に飼われている犬。女王に忠実なしもべであると同時に極めて利口で、我が身を犠牲にして敵を撃退するほどの勇敢さを持っている。マルス王子と伴大助の出生に関わる秘密の鍵を握っている存在でもある。名前はフランスの高名な細菌学者から。

クリス

伴大助の率いる「白いパイロット」のメンバー。アメリカのテキサス出身の少年。権力者に対して強い恨みを抱く、ひねくれた性格の持ち主。敵に対しては情け容赦なく接する。大助とはたびたび意見が対立し、艇長の座をめぐって大助と一対一の決闘をする。

ガム

伴大助の率いる「白いパイロット」のメンバー。機械に強く、ハリケーン号の操縦を担当する。機転を利かせて、たびたびの危機を乗り越える勇敢な少年。戦闘中に、割れたガラス窓の破片によって眼を負傷してしまう。

エミー

伴大助の率いる「白いパイロット」のメンバー。紅一点の美少女。両親をメロ中佐の部下によって殺害され、仇を討つために男装して地下要塞に潜入し奴隷となる。のちに「白いパイロット」の隊員に加わる。大助にほのかな想いを寄せている。

ジミー

伴大助の率いる「白いパイロット」のメンバー。足の速さが自慢の少年。椰子の実を9秒ジャストで取って来ることができるという。俊足を生かして仲間のピンチを救う。

カバ公 (かばこう)

伴大助の率いる「白いパイロット」のメンバー。ずんぐりむっくりした体形で、ダンゴ鼻に大きな口が特徴の少年。ひょうきんな性格で、いつもドジを踏んで周りを笑わせている。

エコー

伴大助の率いる「白いパイロット」のメンバー。背が低く、帽子を目深にかぶり、ダブダブの服を着ている少年。人の声や物音などに似せた声色をうまく使い分けて敵をあざむくという、生まれつきの特技の持ち主。

ショット

伴大助の率いる「白いパイロット」のメンバー。大きなダンゴ鼻にニキビ面の少年。隊員の中ではあまり目立たない存在だが、いざという時には、自身を犠牲にしてでも仲間の命を救う、という勇敢さを持っている正義漢。

海賊のかしら (かいぞくのかしら)

密輸団のボス。日本列島近海にあるサンゴ礁でできた環状島の村に定期的に出没し、村人たちを襲い苦しめる。拳銃の使い手で、一味と共に「白いパイロット」と対決し、最後は伴大助と決闘する。

サターン

ミグルシャ王国空軍のロボット戦闘機「デイモン」の機長。「デイモン」は時速1600キロで地下に潜ることもできる。黒づくめの軍服に眼帯、ヒゲ面という容貌の男性。自分の声だけに反応して操縦する「デイモン」を操り、ハリケーン号と対決する。

コブラ大尉 (こぶらたいい)

ミグルシャ王国空軍のロボット戦闘機「スネーク」の機長。「スネーク」は全体がゴム製で、まるで蛇のように地面を這いまわることができ、最大時速1700キロ。コブラ大尉はサンゴの島でハリケーン号と対決する。

ウルトラ

ミグルシャ王国空軍のロボット戦闘機「タイガー」の機長。「タイガー」は最大時速1500キロ、怪力線砲を装備した虎模様デザイン機体を持つ。ウルトラも全身虎模様の戦闘服を着用している。火山島の間欠性火山に爆弾を投下して火山の爆発を誘発させ、島民たちを窮地に陥れる。

ダリ中尉 (だりちゅうい)

ミグルシャ王国空軍最強のロボット戦闘機「ロボケット」の機長。「ロボケット」は最大時速1250キロながら1台で東京を壊滅させるほどの装備を持つ。ダリ中尉は巨体にサングラスでヒゲ面という容貌。アザラシ島でハリケーン号と激烈な戦闘を繰り広げる。

その他キーワード

ハリケーン号 (はりけーんごう)

「白いパイロット」が搭乗する最新型戦闘機。元々はミグルシャ王国の地下要塞で製造された機体だったが、伴大助たちが奪取し、大助を艇長とした。時速1万キロで飛行できるロケットエンジンを搭載しており、東京~サンフランシスコ間を1時間半で飛べる。破壊光線発射装置を装備し、潜水艦にもなる万能戦闘機。

書誌情報

白いパイロット 講談社コミッククリエイト〈手塚治虫文庫全集〉

(2011-12-09発行、 978-4063738773)

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