双子の騎士

双子の騎士

手塚治虫の『リボンの騎士』の続編。前作の主人公サファイアとフランツのあいだに生まれた双子、王子デージィと姫ビオレッタの、王位簒奪を目論むダリヤ侯爵との戦いを描く。「なかよし」1958年1月号から1959年6月号にかけて掲載された。

正式名称
双子の騎士
ふりがな
ふたごのきし
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
レーベル
手塚治虫文庫全集(講談社コミッククリエイト)
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概要・あらすじ

シルバーランド国に王子デージィと姫ビオレッタの双子が誕生した。ビオレッタを王位に就けて国を自由に動かしたいダリヤ侯爵ダリヤ侯爵夫人は、デージィを誘拐。国をあげての大騒ぎとなるが、この事態を収めるため、かつて王子として育てられたサファイアの反対を押し切り、ビオレッタを一日置きに王子、姫として生活させる事が決まった。

時が経ち、この事実をダリヤ侯爵達に知られると、フランツとサファイアは塔に閉じ込められ、国を乗っ取られてしまう。双子の兄がいる事を知ったビオレッタは、サファイアから剣を習い、国を飛び出してズボラの森へと逃げる。そこでエメラルドと出会うと、ビオレッタはジプシーの仲間になり、兄のデージィを探す旅を始める。

一方デージィは、「ロニー」という名前で小ジカのパピに育てられたのち、森の怪獣ズボラを倒して王宮へと向かう。するとダリヤ侯爵夫人は、ビオレッタと瓜二つのデージィに王子の服を着させ、逃げ出したビオレッタの身代わりをさせるのだった。

登場人物・キャラクター

ビオレッタ

サファイアとフランツのあいだに生まれたシルバーランド国の姫。デージィの双子の妹だが、デージィが行方不明になって以来、1日置きに王子の役も担う事になる。剣の腕が立ち、国がダリヤ侯爵達に乗っ取られてからは「リボンの騎士」と名乗り、男として過ごしながら、生き別れの兄を探す。

デージィ

サファイアとフランツのあいだに生まれたシルバーランド国の王子。ビオレッタの双子の兄で、次期国王になる運命だったが、ダリヤ侯爵の悪だくみによって誘拐され、ズボラの森に捨てられる。それからは、人の姿になった小ジカのパピの弟ロニーとして育てられた。狩りの腕を上達させていく中で、小ジカの姿のパピを誤って殺めてしまった事を後悔している。 その体を沼の前に埋めるが、ズボラに荒らされ激怒する。激しい戦いの末にズボラを倒すと、この事を報告するために王宮へ出向きダリヤ侯爵の陰謀に再び巻き込まれていく。

サファイア

シルバーランド国の王妃であり、デージィとビオレッタの母親。かつては「リボンの騎士」と呼ばれ、女性である事を隠して、王子として育てられた経歴を持つ。デージィが行方不明となった際、王のフランツがビオレッタを姫であり王子としても育てる事を決めた時には、自分と同じ運命にさせる事に心を痛めながらも、やむを得ずこれを受け入れた。 のちにダリヤ侯爵に捕らえれるが、その際にはビオレッタに強く生きてほしいと願い、剣の手ほどきをする。

フランツ

シルバーランド国の王であり、デージィとビオレッタの父親。デージィが行方不明になると、ビオレッタを1日置きに姫、王子として育てる事を決め、これを秘密にしていた。しかし、ダリヤ侯爵にこの事が知られると、秘密にする代わりに命令を聞くように言われ、国を乗っ取られてしまう。

コスモ伯爵 (こすもはくしゃく)

シルバーランド国のフランツに仕える伯爵。国の後継者にデージィを推薦する男性で、ダリヤ侯爵と対立する。デージィが行方不明となると、国民と共に大騒ぎをするが、フランツの言いつけにより、王子が見つかったと御触れを出して、事態を収束させる。

ダリヤ侯爵 (だりやこうしゃく)

シルバーランド国のフランツに仕える侯爵。国の後継者にビオレッタを推薦し、そのまま国の実権を握ろうとした事で、コスモ伯爵と対立をする。またダリヤ侯爵夫人とたくらみ、デージィを誘拐し、行方不明にさせた。そして王子が健在だという事に疑問を抱くと、ビオレッタがデージィのふりをしているのではないかと疑い、その秘密を暴くと、フランツから国の支配権を奪う。

ダリヤ侯爵夫人 (だりやこうしゃくふじん)

ダリヤ侯爵の妻。ダリヤ侯爵同様、国の後継者にビオレッタを推薦し、国の実権を握ろうとする。しかし次期国王がデージィに決まると、デージィを誘拐し、配下にズボラの森で殺すよう命じた。ビオレッタがデージィのふりをしていると勘繰ると、黒の王子を差し向け、ビオレッタの正体を暴いた。のちにズボラを倒したデージィにドレスを着せて、ビオレッタのふりをさせる。

チンク

天使の男の子。フランツが神様にシルバーランド国の次期国王を、デージィとビオレッタのどちらにしたらいいかと聞いた時、神様の代わりに天から降りて来た。そして、弓の倒れた方の子供を次期国王にする事を決め、その結果、デージィが次期国王に決まる。

パピ

ズボラの森に住むメスの小ジカ。ダリヤ侯爵達の陰謀によって捨てられたデージィをズボラから守り、彼を弟の「ロ二ー」として育てる。森の女神によって月が出ているあいだは人間の女の子の姿に変身する事ができるが、日が昇ると小ジカの姿に戻ってしまう。

森の女神 (もりのめがみ)

ズボラの森の湖に住む女神。背がすらりと高く、背中からは妖精の羽が生えている。パピがデージィを育てるために人間になりたがった事に応え、月が出ているあいだだけ人間の女の子になれる魔法をかけてパピを応援する。

ズボラ

ズボラの森に住む怪獣。大きく太った猫のような姿をしている。凶暴な性格で、森に住む動物達が怯える存在。捨てられたデージィを食べようと襲い掛かろうとした事もある。剣をも砕く歯を持っているが、虫が大の苦手で、見ると驚いて逃げてしまう。

白の王子 (しろいおうじ)

バラの館に住む王子で、黒の王子の兄。デージィに扮したビオレッタの剣の腕前を認め、その美しさに惹かれた。ビオレッタが本当の姿で目の前に現れると恋に落ち、彼女がジプシーの少年のふりをしても、それを見抜くなど確かな眼力の持ち主。ビオレッタが黒の王子から命を狙われそうになると、彼女を助けに現れ、お守りとして金の薔薇を託す。

黒の王子 (くろいおうじ)

バラの館に住む王子で、白の王子の弟。ビオレッタの部下に猟犬を殺されて以来、デージィに扮する彼女に敵意を向け、剣を振るう。そしてビオレッタの秘密を暴くと、ダリヤ侯爵、ダリヤ侯爵夫人にこの事を知らせ、国ごとビオレッタの地位を危機に陥れる。また、ビオレッタが王宮から逃げ出した事を知った際には、彼女を守ろうとする白の王子と敵対し、ビオレッタを殺そうと行動を起こす。

エメラルド

ジプシーの女の子。髪の長い勝気な少女で、行き倒れになっていたビオレッタを救う。「リボンの騎士」と名乗るビオレッタに好意を抱くが、彼女が女性である事を知って失望し、自分を騙していた事に対する怒りを覚えるようになる。だがその後、カゲロウの森でベコニアの魔法で苦しめられているところをリボンの騎士に助けられてからは、その怒りを鎮めていく。

メルセデス

エメラルドが共に旅をしているジプシーの老婆。占い師でもあり、人の未来などを占う事ができ、とてもあたると評判である。男のふりをしているビオレッタを占って、本当は女の子である事を見抜き、さらには生き別れの兄デージィが生きているという事を伝える。

ベゴニア

カゲロウの森に住む魔女。人をからかうのが大好きで、森に入って来たビオレッタやエメラルドに幻覚を見せて惑わせたり、風の魔法で二人を翻弄していく。また、ビオレッタが白の王子からもらった金の薔薇を持っていると知ると、それを奪おうと現れる。

場所

シルバーランド国 (しるばーらんどこく)

フランツ国王や、サファイア王妃が治める美しい童話の国。しかし、王子デージィと姫ビオレッタが生まれた事から、次期国王を誰にするかで国民の意見は半分に別れ、仲の悪い状態になっている。

ズボラの森 (ずぼらのもり)

シルバーランド国の外にある森で、怪獣のズボラが生息している事から名付けられた。森にはズボラのほかに、小ジカのパピや多くの動物、森の女神が住んでいる。ダリヤ侯爵夫人によってここに捨てられたデージィは、パピの手によって、自分が王子である事を知らずに育つ。

バラの館 (ばらのやかた)

白の王子と黒の王子が住む城。城中バラの花で埋め尽くされているが、黒の王子の庭ともいえる「くろバラの園」は茨で囲まれ、迷い込んだビオレッタは黒の王子に殺されかけてしまう。城にある井戸の水を抜くと、カゲロウの森の泉につながっている。

カゲロウの森 (かげろうのもり)

バラの館につながる森で、魔女ベゴニアが住んでいる。森には湖や川があるほか、草木が生い茂り、見通しがとても悪い。ビオレッタとエメラルドがこの森に入ると、母親サファイアやジプシーの仲間達の幻影を見て翻弄されていく。

書誌情報

双子の騎士 講談社コミッククリエイト〈手塚治虫文庫全集〉

(2010-05-12発行、 978-4063737547)

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