世界観
未来が見える大塚かなでや、過去が見える内藤あろうをはじめとして、作中にはさまざまな能力者が登場する。彼らはいずれもその能力のせいでトラウマを抱えており、そのトラウマや自分の能力との向き合い方などもテーマとなっている。そのうえで彼らの学校生活もしっかりと描かれ、物語のベースは普通の高校生の恋愛事情や悩みを包括した高校生活そのものとなっている。そのため、かなでたちが能力を使う場面は、日常生活を営む中でのことが多い。
あらすじ
触れた相手の未来が見える、という不思議な能力を持つ女子高校生の大塚かなでは、その力を使って、さまざまな人の未来をいい方向へ導こうと行動していた。そんなある日、かなでの学校に転校して来た内藤あろうが、触れた相手の過去を見ることができる能力の持ち主であることを知る。しかし、あろうはかなでとは対照的に、「他人のことに首を突っ込むのは極力やめるべき」という考え方を持つ少年だった。それでもあろうは、未来を変えるために「今」を精一杯生きるかなでに共感し、その手助けをするようになっていく。そして不思議な能力の持ち主同士で秘密を共有し、さまざまな困難と立ち向かっていくうちに、かなでとあろうはいつしか親密になり、お互いに恋心を抱くようになる。
メディアミックス
ドラマCD
2001年7月25日にマリン・エンタテインメントよりドラマCDが発売されている。内容は原作の第1話と第3話を中心としたもので、オマケドラマおよびオマケ応援メッセージも多く収録されている。主なキャストは大塚かなで役を椎名へきる、内藤あろう役を関智一、並木昌寛役を石田彰が演じている。
登場人物・キャラクター
大塚 かなで (おおつか かなで)
女子高校生で、美術部に所属している。人に触れると、その人の未来が時々見えるという能力を持つ。それにより見えた未来が相手にとって不利益なものであれば、どうにかそれを回避させようと、自分のできる範囲内でフォローするように行動する。ただし、人の未来を見ることに若干の恐れを抱いている部分もある。人のために自分を平気で犠牲にするその性格は、大塚かなでの母に「おじいちゃんの血が色濃く受け継がれている」と評されている。 また、熱を出すと記憶が飛び、祖父の言葉遣いでしゃべったり、普段以上の力を発揮するなど、不思議な現象が起こることがある。
大塚かなでの母 (おおつかかなでのはは)
大塚かなでの母親。常に笑顔の朗らかな女性で、初対面の内藤あろうや並木昌寛にも気さくに接した。かなでを「ムチャクチャ」と評しており、祖父の大塚源の血を色濃く受け継いでいると考えている。
大塚 源 (おおつか げん)
大塚かなでの祖父。すでに亡くなっている。元消防士で、辞めた後も、火事になると消防車が通れなくなりそうな危ない場所を自主的に見回る、という活動を行い、かなでも一緒にパトロールをしていた。困っている人は放っておけない性格で、多くの人から慕われていた。
内藤 あろう (ないとう あろう)
大塚かなでの高校に転校して来た男子。園芸部に所属している。触れると、その相手の過去がどこまでも際限なく見える、という能力を持っている。対象は人だけではなく、物の過去を見ることもできる。イケメンで明るい性格で、社交性も高い。料理が得意で、その腕前はプロ級。日本食からフランス料理まで、さまざまなものを作ることができる。
内藤 吾郎 (ないとう ごろう)
内藤あろうの父親。カメラマンという職業柄出張が多く、家に帰れないことが多い。それでも、あろうを大切に想って、たまに早く仕事から帰って来た時は、交流をしっかり持つことを意識している。もう既に亡くなっている妻の内藤早苗の過去に捕らわれないために、早苗の思い出の品はすべて捨てている。
宗 (そう)
内藤あろうの叔父。内藤早苗の兄。顔はあろうにそっくりで、秋祭りでは大塚かなでにあろうと見間違えられたほど。あろうと同様に相手の過去が見える能力者だが、際限なく過去が見えるあろうとは異なり、触った相手の2~3日前の近い過去しか見ることができない。職業は探偵で、その能力を仕事にも活かしている。
中村 エリ (なかむら えり)
大塚かなでと同じ高校に通う女子。かなでとは親しい友人関係にあり、お互いのことはよく知り尽くしている仲。元気で男勝りな性格をしている。江沢と付き合っているが、交際当初は江沢に気を遣い、自分の素を隠して女の子らしく振る舞っていた。現在は自分の本当の姿を江沢に明かしたうえで交際が続いており、無理することなく良い関係を築いている。 江沢については、顔と噓をつかないところが特に気に入っている。江沢のために手作りのお弁当を作っているが、料理は下手。
江沢 (えざわ)
大塚かなでと同じ高校に通う男子。中村エリから告白されて、付き合うようになった。最初は「あんたに愛はないけど、それでもいいなら付き合うぜ」などと言っていた。その後、他の告白して来た女子生徒にも、同じセリフを言っているところをエリに見つかり、殴られたことがきっかけでエリの本当の姿を知る。以降、改めてエリと向き合いたいと考えるようになり、現在は真剣な交際をしている。 その一方で、好みのタイプは「おとなしくて女の子らしい人」と公言している。高い場所が苦手。
内藤 早苗 (ないとう さなえ)
内藤あろうの母親。すでに亡くなっている。あろうの能力を理解しており、その能力のせいで人を傷つけたことも知っていた。それでも、「人には傷ついた人を癒やす力がある」という理由から、あろうに人に触れることを恐がらないよう教えていた。
並木 昌寛 (なみき まさひろ)
大塚かなでの高校に転校して来た男子。茶道部に所属している。かなでと同じく未来が見える能力を持つが、相手の不幸な顛末を笑って見届けるなど、自分の能力を楽しむためにしか使っていない。また、能力を株や賭け事に利用して荒稼ぎもしている。なお、能力の発動条件はかなでと少々異なり、相手に触れて「未来を見よう」と強く意識したうえで、そのまま少し時間をかける必要がある。 もともと名門校の首席だったため学業は優秀。家族とは離れて一人暮らしをしている。
並木 淳也 (なみき じゅんや)
並木昌寛の弟。昌寛とは別の高校に通っており、バスケットボール部に所属している。昌寛を表面上嫌っているような素振りを見せているものの、実際は、1人でちゃんと暮らしていけているのかどうか心配している。
並木昌寛の母 (なみきまさひろのはは)
並木昌寛と並木淳也の母親。昌寛が未来が見える能力を持つことを知った際に気味が悪がり、恐怖を抱くようになった。それからは淳也をひいきし、昌寛とはあまり関わらないようにしている。現在は淳也と夫と3人で生活している。
会長さん (かいちょうさん)
大塚かなでと同じ高校に通う女子。染谷祐彰の姉で、生徒会の会長を務めている。周りの生徒からは、どんな仕事でもテキパキと完璧にこなす超人ととらえられており、実際に1人でいくつもの仕事をこなしている。時には自分のキャパシティを越えて無理をしていることもあるが、それを他人に悟られないように努めている。
染谷 祐彰 (そめや ひろあき)
大塚かなでと同じ高校に通う男子。会長さんの弟。バスケットボール部に所属している。レギュラーで試合への出場が確約されている。しかしかなでには、事故に遭って骨折し、試合に出場できないという未来が見えていた。かなでの活躍により、その未来は無事回避される。バスケットボールでは、当初左側からのレイアップを苦手としていたが、のちに克服している。
川村 由紀子 (かわむら ゆきこ)
大塚かなでと同じ高校に通う女子。並木昌寛には、階段から落ちるという未来が見えていた。そのことを知った内藤あろうに口酸っぱく注意を促され、いつ危険が及ぶのかと注視されていた。そのため、あろうを自分に付きまとうストーカーのように捉えている。
森田 (もりた)
大塚かなでと同じ高校に通う男子。小学2年生の頃、小林と同じアパートに住んでいて、1人で寂しい時に相手をしてもらっていた過去がある。そのため、小林が初恋の相手で、生徒と教師の関係となった現在も好意を抱いている。近々、親の都合で転校する予定。
大谷 優助 (おおたに ゆうすけ)
並木昌寛の能力を利用し、株などで荒稼ぎしている男性。定期的に昌寛と会っては自分の手を触らせ、未来の株価変動を見てもらっている。昌寛とは金を稼ぐために組んでいるビジネスパートナーに過ぎないが、昌寛が家を不在にしている時には、代わってまろ太の面倒を見るなど、意外と優しいところもある。
担任の先生 (たんにんのせんせい)
大塚かなでの通う高校の男性教師。かなでのクラスの担任を務めている。生徒たちのことをよく見ており、成績は悪くなく運動神経も良い内藤あろうに、何か内心に抑え込んでいる様子が見えることを心配している。独身であることを気にしており、親しげなあろうとかなでの様子を見て、「許せない」とひがむこともある。
小林 (こばやし)
大塚かなでの通う高校の女性教師。常に仏頂面でぶっきらぼうな話し方をする。まだ学生の頃、当時小学2年生だった森田と同じアパートに住んでいたことがある。その時に森田と一緒に遊んだり、手作りのクッキーを振る舞ったことがある。
園芸部の顧問 (えんげいぶのこもん)
大塚かなでの通う高校の男性教師。園芸部の顧問を務めている。この高校の卒業生で、学生当時は園芸部唯一の部員だった。当時の顧問から言われて、緑豊かな畑を目指して活動していたが、その実現にはいまだに至っていない。そのため、内藤あろうの入部には喜んでいた。
保健室の先生 (ほけんしつのせんせい)
大塚かなでの通う高校の男性養護教諭。もともとは有名な大学病院に勤めていた医者だったが、転職して現在に至っている。かなでが未来の見える能力を持っていることを知ると、「人の未来を変える特権などない」と主張し、かなでの活動には否定的な意見を述べる。萌という妹がいたが事故死しており、その時のことを未だに悔やんでいる。
萌 (もえ)
保健室の先生の妹。兄想いで、当時は大学病院の医者として不規則な生活を送っていた兄の支えとなっていた。ある日、「虫の知らせで学校に行きたくない」と兄に告げた後に登校し、そこで事故に遭って亡くなった。
村田 (むらた)
大塚かなでが海に行った時に出会った男子高校生。内藤あろうの中学時代の同級生。当時から過去を見ることのできる能力を持つあろうを恐れており、現在も「バケモン」呼ばわりしている。なお、能力の詳細までは知らず、「超能力」の一種だと思い込んでいる。
本間 栄一郎 (ほんま えいいちろう)
男子高校生で、内藤あろうの中学時代の同級生。父親が政治家をしており、自身も将来的には政治家になりたいと考えている。あろうの能力のことを知っている。高校進学後にあろうのもとを訪れ、「お前の力は武器になる」と、陰の仕事人にするべくスカウトしたが、断られている。当時、あろうが能力のせいで他の同級生から気味悪がられている中、唯一根気強く声をかけ続けていた人物。
井上 (いのうえ)
保健室の先生が大学病院の医者時代に診ていた男性患者。大塚かなでによく似た孫娘がいたが、事故で家族をすべて亡くした。井上自身もその事故の後遺症で記憶が混乱しており、今も家族と仲良く暮らしていると思い込んでいた。
新見 (にいみ)
並木昌寛の能力を知り、それを利用していた男性。競馬のレースを昌寛に予想させ、ともに金を稼いでいた。当初は昌寛に対しても寛容に接していたが、昌寛から新見自身が死ぬことを予知されると激しく取り乱し、昌寛に暴力を加えて警察沙汰を起こした。
雄太 (ゆうた)
大塚かなでが遊園地で出会った迷子の少年。服装が似ていたため、かなでを母親と間違えてしまう。最初は母親とはぐれた理由をかなでのせいにしていたが、実際はパレードに気を取られていたためであった。
雄太の母 (ゆうたのはは)
雄太の母親。大塚かなでと内藤あろうの能力により、はぐれた雄太と会うことができた。内心では、かなでとあろうのことを「気持ち悪い」と感じていた。
田中 (たなか)
32歳の放火魔の男性。2か月で20件もの放火を繰り返しており、大塚かなえの近所でも放火をしていた。放火をする際には、自分の思い通りに燃えないと満足しない。ボヤ程度で消し止められた場合は、その日のうちに他の場所に再度放火するという危険人物。結局、張り込み中の警察に現行犯逮捕されている。
山内 武夫 (やまうち たけお)
内藤あろうと同じ小学校に通っていた男子。当時、あろうは転校して来たばかりで、他の同級生から靴を隠されたりする嫌がらせを受けていたが、そのあろうに好意的に接していた。あろうの過去が見えるという能力を知っても、気味悪がることなく、むしろいいことだと考えていた。
山内武夫の母 (やまうちたけおのはは)
山内武夫の母親。内藤あろうの能力を事前に武夫から聞いており、あろうが家に遊びに来た時は、自分の過去を知られることを極端に恐れていた。実は武夫とは血が繋がっておらず、武夫は養子にあたる。
まろ太 (まろた)
並木昌寛が飼っている雑種犬。もともとは捨て犬だったが、昌寛によって保護された。好戦的な性格で、弱いくせに威勢よく相手に突っかかっていく。一方で頭が良く、「おすわり」「お手」「おかわり」などの芸を短時間で習得している。
大谷優助のカメ (おおたにゆうすけのかめ)
大谷優助が飼っているミドリガメ。何故か優助とは明確に意思の疎通が図れる。並木昌寛の飼い犬のまろ太が唯一威張れる相手で、やたらとちょっかいを出されているが、それを許す懐の広さを兼ね備えている。
集団・組織
園芸部 (えんげいぶ)
大塚かなでの高校にある部活動。昔は熱心な顧問がいて、緑豊かな畑を目指して活動していたが、結局その夢は実現されていない。偶然、能力によりその過去を知った内藤あろうが、途中から入部することとなった。現在はそれでも部員不足で、茶道部と合同で活動している。
場所
生物室 (せいぶつしつ)
大塚かなでの学校の南棟の一番端にある教室。昔、ここで教師が1人亡くなっており、そのまま誰にも発見されずに、夏休みに入っても放っておかれていたという噂がある。内藤あろうがその真相を確かめるために、能力で過去を見ようとしたが、本当に死体が見えたら大変だという理由で、かなでに止められたため、真偽は不明。
イベント・出来事
おい出し茶会 (おいだしちゃかい)
茶道部が毎年引退する3年生のために茶会を開くイベント。今年は合同で活動している園芸部の内藤あろうがいたので、あろうもその手伝いに駆り出されて茶会にも参加している。また、その際にあろうが振る舞ったお茶の味は、茶道部のメンバーにも「美味しい」と絶賛されている。
文化祭 (ぶんかさい)
大塚かなでの通っている高校で開催される文化祭。文化祭に対しての熱量は高く、特に文化祭直前になると、そのための道具などで教室の三分の一程を埋め尽くされてしまい、教卓と生徒たちの机の距離が近くなる現象が起きる。また、文化祭になると生物室の幽霊目撃情報が増える。
秋祭り (あきまつり)
大塚かなでの住んでいる地区にある神社で開かれる祭り。規模が大きく、さまざまな出店が出るため、毎年秋になると町全体が活気づく。また、深夜まで盛り上がっていて、一番人出が多くなる時間帯は深夜2時。かなでは、ここで人混みに紛れて財布を盗もうとしていたスリを見つけ、並木昌寛がそのスリを確保した。
その他キーワード
目隠しの国 (めかくしのくに)
大塚かなでが人に触れた際、時々その人の未来が見えるという自分の能力を説明するために用いる言葉。全員が目隠しをしているため「見える」という概念が存在しない目隠しの国という場所があるとして、その中でかなでだけ目隠しが時々ズレることがあり、そのため唯一「見える」という概念を理解できている状態にある、と例えている。またその際、ズレることがある自分の目隠しを「欠陥品」と称している。 なお内藤あろうの場合は、相手に触れれば無条件で過去が見えるので、目隠しの国の例で言うと「1人だけ目隠しそのものを付けていない状態」となる。