不思議の国の千一夜 ~ヘンデク★アトラタン物語~

不思議の国の千一夜 ~ヘンデク★アトラタン物語~

「男になった女」というマケドニアの民話を基とするファンタジーコメディ。元々、作者の曽祢まさこは読み切りの短編作品として構想していたが、最終的には1000ページを超える長編作品となった。「なかよしデラックス」1980年1月号から1985年3月号にかけて連載された作品。

正式名称
不思議の国の千一夜 ~ヘンデク★アトラタン物語~
ふりがな
ふしぎのくにのせんいちや へんでく あとらたんものがたり
作者
ジャンル
ファンタジー
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概要・あらすじ

ランバルド王国のセブラン王子は、訳あって男の子として育てられている。それは、世継ぎがなかなか誕生しなかったザカリアス王が、「男の子でなければ殺す」と王妃に言い渡したためだった。王妃は自分の兄弟たちを教育係に迎え、セブランの性別を偽って命を守ろうとする。やがて立派な若者に育っていくセブラン。しかし、王位を狙うダロスの陰謀によって秘密がばれそうになったことを機に、セブランは伝説の神馬を探す旅に出ることを決意する。

登場人物・キャラクター

セブラン

ランバルド王国の王子。実際は女の子。母親と兄たちのきめ細やかな教育によって、心優しく真っすぐな性格に育つ。小さなことは気にしないタイプであるためか、自分の性別について深く思い悩んだことはない。聡明で剣術にも長けており、ザカリアス王に「あんな立派な王子はどこを探してもいない」と言わしめた。

ヘンデク=アトラタン (へんでくあとらたん)

伝説の神馬。直接話すことはできないが、テレパシーで人間の心の中に語りかけることで意思疎通を図れる。白い毛並みが特徴で、美しさを保つためにリンスは欠かさない。所有者である妖精の女王でさえも手を焼くほどブライドが高く、非常に扱いにくいと言われていた。妖精の女王からセブランへと渡った後は、数々の冒険でセブランの指南役となる。

ミルティア

アルンハイムの王女。川でハンカチを落として困っていたところ、それを拾ってくれたセブランに一目惚れをする。気さくで親しみやすく、誰からも好かれる性格で、召使たちとも身分を気にせず気軽に付き合っている。一方で世間知らずなところが多々あり、赤ちゃんは夫婦同士でキスをすれば、コウノトリが運んできてくれる、とずっと信じている。

ベルベル

クラブ「黒猫」で踊り子を務める女性。魅惑的な赤毛とグラマーなスタイルで、多くの男性たちから支持されている。ダロスからセブランの正体を探るために誘惑するよう依頼され、夜の寝室に忍び込む。かなりのしっかり者で面倒見がいい。

フリーダ

ミルティア(ミルテ)に仕えている侍女。赤ちゃんはキャベツから生まれると祖母から教えられ、今も信じている。ミルテとは、身分の差を越えて、まるで親友のように何でも話し合う間柄。ミルテのことを天然だと思っているが、フリーダ自身も天然である。

オルティス

アルンハイムの王子でミルティアの弟。おっとりした性格の姉とは異なり、聡明で非常にクール。欠点は口が悪くて生意気なところ。飼っているおしゃべり上手なオウムの「コンスタンタン」にも、少なからず影響を与えている。国王をも凌ぐ頭の良さから、実質的にアルンハイムを統治しているといっても過言ではない。

イアモン

超一流の殺し屋を自称する男性。報酬は一殺につき金貨一千枚。ダロスの依頼により、神馬サイクロンで地の果てまでもセブランをつけ狙う。背中にたくさんバラを背負っているのがトレードマーク。「殺しは華麗に、殺し屋も華麗に」がモットー。天才喜劇役者としての顔も持ち、その時は「バランシアーノ・イアモーネ」と名乗る。

サイクロン

落ちこぼれの神馬。ヘンデク=アトラタンにバカにされている。黒い毛並みが特徴。ニンジンを縦に飲み込もうとして、うっかり喉に詰まらせてしまったところを、偶然通りかかったイアモンに助けられる。その後イアモンにずっとこき使われている。

ハビアン

リーリアの兄。腕のたつ騎士であることから、剣術の師範としてランバルド王国へ迎え入れられ、セブランを厳しく指導する。セブランの本当の性別を知る数少ない人物の1人。結婚適齢期だが、なかなか良縁に恵まれない。

ラモン

リーリアのすぐ下の弟。ランバルド王国では、学者として算数などの学問を、セブランとエルナンに教える。兄のハビアンと同様に独身が長く、弟たちに先を越されているが、女性たちには人気がある。兄弟で協力して全力でセブランを守り通し、立派に育て上げた。

アルダス

リーリアから見て2番目の弟。文学や芸術に長けている。セブランとエルナンに学問を教えるため、ランバルド王国にやってきた。しかし、遊ぶことが大好きな2人に振り回され、いつも勉強以外の話ばかりせがまれていた。ヘンデク=アトラタンの存在をセブランに教えたのは、アルダスである。

エルナン

リーリアの末の弟。セブランの遊び相手として、小さな頃から共に育つ。兄弟のなかで一番頼りないと言われているが、結婚したのは一番最初。セブランと背格好が似ていることから、一度だけ身代わりを務めたことがあり、それがきっかけで運命が大きく変わってしまう。

ザカリアス王

ランバルド王国の国王。長年連れ添った前王妃を追い出し、国一番の男系家族出身のリーリアを後妻にした。セブランが成長しても、疑うことなくずっと男だと信じ続けている。セブラン以外に7人の娘がいる。

リーリア

ランバルド王国の王妃で、セブランの母親。男ばかりの家庭で育ったたくましさと知恵を活かし、ザカリアス王にセブランの性別がばれないよう万全の態勢で守ってきた。子供を産んでからすっかり強くなり、王にさえはっきりと意見を言うようになる。小じわが出てきているのが最近の悩み。

ダロス

ザカリアス王の弟で、ランバルド王国の大臣を務める。誕生した時から一度も抱かせてもらえないセブランのことを、実は女ではないかと疑っている。密かに次期国王を狙っているため、セブランの性別を暴き、何としてでも王位継承権を得ようと暗躍する。サイラスという一人息子がいるが、妻の存在は不明。

サイラス

ダロスの息子。無類の読書好きで、まさに本の虫。常に図書館に入り浸る生活を送っている。父親とは違って権力にはまるで無頓着で、王位継承権にこだわり続ける父親に呆れている。学問と知識を習得するため、長年、放浪の旅に出ていた。セブランの出生の秘密を、偶然に知ってしまう。

シルリア

水の精の一族で、水界の王の娘。自分を助けてくれたサイラスに一目惚れをする。顔つきが少しだけセブランに似ているが、実際のところは何も関係はない。次元がずれると人の姿を保っていられなくなるため、地上では小さな魚に姿を変える。

妖精

妖精の女王を母親に持つ、妖精の男の子。ドジを踏んでくもの巣にひっかかり、もう少しで命を落としてしまいそうだったところをセブランに助けられる。曽祢まさこの別作品『妖精旅行』の主人公であるアルファルの祖先にあたり、ドジな性格はアルファルにも受け継がれている模様。

妖精の女王

妖精の女王。妖精の息子がいる。伝説の神馬ヘンデク=アトラタンをはじめ、金のガチョウや空飛ぶじゅうたん、魔法のランプ、東の遠い国のはきものと言われるゲタなど、珍しいものをたくさん所有している。息子が地上へ遊びに行く度に、宝物が減るのを不満に思っている。

アルンハイム国王

アルンハイムの国王である男性。ミルティアとオルティスの父だが、2人とも母親似で、親子ながらまったく似ていない。政治や軍事についてはオルティスに頼りきり。アルンハイムは決して軍事力が高い国ではないため、何としても近隣国と婚姻関係を結ぼうと躍起になるが、そのことが子供たちを苦しめることになる。

バルトレス

西の山に住む男性。大ワシに姿を変えることができる。泣く子も黙るほどハンサムなその顔は、自ら少女漫画を読んで研究したという。しかしその正体は、不死身だと恐れられる、魔王の血を引く怪物。ミルティアに一目惚れし、自分の妻にしようと画策する。

リゼラ

北の国の王女。美人だが、つっけんどんな性格で、滅多なことでは笑わない。愛読書はボードレールの「悪の華」。どんな男にも見向きはしなかったが、唯一、セブランにだけは、ほんの少し興味を示す。同じデザインのドレスを何着も持っているなど、ファッションの方向性については頑固。

北の国の王

リゼラの父親で、北の国を統治している男性。何を見ても決して笑わないリゼラを心配し、国を挙げて必死で笑わせようとする。国が豊かな資源に恵まれているため、財源をあまり気にすることなく、王妃ファーミラにも自由に浪費させている。

ファーミラ

北の国の王妃。リゼラの母親で、類まれな美貌を誇る。非常に派手好きで、国のファッションリーダーとして五百着以上のドレスを所有している。国の財政には無関心。偏屈な娘に対しても、父親ほどの関心はない。

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