石の花

石の花

1941年、ナチスドイツ軍が侵攻によって始まる、後にパルチザン戦争とも呼ばれる、1941年~1945年まで繰り広げられたユーゴスラビア人民解放戦争が舞台。内部では、クロアチア独立国とユーゴスラビア王国とに分裂し、外部からはドイツ、イタリア、ハンガリー王国、ブルガリア王国などの隣接する勢力によってナチズムや共産主義に脅かされ、様々な民族や宗教が共存していたユーゴスラビアが崩壊していく。故郷と親しい人々に自由を取り戻す為、パルチザンに加わり、非情な戦いに身を投じた主人公クリロを通し、生と死の狭間で理想と信念を問い質されていく、若者たちの姿を描いた歴史戦争漫画。

正式名称
石の花
ふりがな
いしのはな
作者
ジャンル
戦争
 
第二次世界大戦
レーベル
青騎士コミックス(KADOKAWA)
巻数
全5巻完結
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概要・あらすじ

1941年、ユーゴスラビア王国のスロベニアでクリロフィーは平和に暮らしていた。しかし枢軸国ナチスドイツの侵攻によって、クリロは家族と離ればなれとなり、フィーは捕らわれ強制収容所に送られる。フィーを救おうとしたが失敗したクリロは、その場で尊敬していた兄イヴァンがドイツ軍に寝返ったことを知る。

祖国を取り戻すべくパルチザンに参参加したクリロは、大人達のエゴに振り回され、理想や正義とは程遠い戦いに身を投じ、フィーは強制収容所で、生き抜くために人間のあらゆる尊厳を捨てながら、恩師フンベルバルディンクの言葉石の花を支えに生き延びていく。

登場人物・キャラクター

クリロ・ベート (くりろべーと)

『石の花』の主人公の1人。スロベニア東北部の村の少年。フィーの幼馴染み。枢軸国の侵攻により、ナチスの捕虜となったフィーを助けようとするが失敗。その場に居た兄イヴァンがドイツのスパイだと知る。祖国の為、フィーを救う為、パルチザンに参加。激しい戦場で民族、宗教差別などの社会的矛盾と否応なしに対峙し、決して理想を捨てようとしない信念を持つに至る。 石の花の理念を教えた恩師フンベルバルディンクの言葉を支えに生き延びる。

フィー

『石の花』の主人公の1人。クリロの2歳下の幼馴染みの美少女。ドイツ軍侵攻時に強制収容所に送られ。マイスナーに保護されるが、籠の中の鳥同様の生活を忌み嫌い脱走を試みるが失敗し、一時失明する。治療中にモルトヴィッチの陰謀に巻き込まれ、心身に大きな傷を負った状態で、叔父モーリエからマイスナー暗殺を教唆されるが、それを拒み自らの意思で強制収容所に戻る。 強制収容所で死の淵に瀕するが、強靭な意志を持つラーナと出会い、未来に絶望してはいけない事を悟る。戦後ポストイナ鍾乳洞でクリロと再会。フンベルバルディンクの痕跡を見つける。

イヴァン・ベート (いゔぁんべーと)

クリロの兄。幼少期から正義感と優しさを兼ね備えクリロにとっては尊敬すべき兄であったが、実はドイツ人の血を引く従兄。独軍情報局アプヴェーアと連合国の二重スパイ。孤児のピッチや敵のエルケにさえ、自由と平和の大切さを説く理想主義者。マイスナーとは幼馴染であり、ドイツへの裏切者として捉えられた後もマイスナーは彼への友情と敬意を隠さなかった。 モルトヴィッチが隠し持つ財宝をパルチザンに引き渡すべく暗躍するが、独軍情報局に正体が露呈し、作戦は失敗。パルチザンから裏切者としてに射殺、恋人のミルカの腕の中で息を引き取る。

マイスナー

ドイツ軍将校。捕虜収容所司令官で、中佐から大佐へ昇進。亡き妹マリーネに生き写しのフィーを収容所から保護する。平凡な人間を徹底的に嫌い、排除・隷属しようとする独善的な人物で、世界の本質を、より優れた者達を生み出す為の闘争の場と考え、ナチスの力による秩序ある恒久平和を達成しようとする。 戦場では正々堂々とした戦いを好み、ドルメルが命じた民間人の虐殺には難色を示した。W・ギョームの金塊密輸にも協力し、終戦間際ベルリンに向かうが戦後は消息不明。

フンベルバルディンク

ダーナスに赴任した、クリロとフィーの学校の若い臨時教師。自然と人間の心の力を愛し、ポストイナ鍾乳洞でクリロたちに石の花を見せた際に、「石の花が見ているのは我々のまなざしだ」と語る。ナチスドイツ侵攻後は行方不明となるが、クリロとフィーが過酷な現実に挫けそうになる都度、幻影のように表れて彼らを励ましてくれる、二人の支えとなる存在。

モルトヴィッチ

ユーゴスラビア王国の金庫番。行方知れずの王室の莫大な黄金を隠し持っている人物とされ、多くの組織に追われているが、巧みな変装で正体を掴ませない。マイスナーに恩を売るため、イヴァンとミントを使いフィーの狂言誘拐を行った際には、W・ギョームとしてマイスナーの前に現れた。 狂言誘拐の関係者を平然と抹殺するなど、性格は冷酷非情。あらゆる思想に価値を感じておらず、「時に付く」がモットーと述べる。

W・ギョーム

真意を掴ませない奇怪な言動をする、謎の老骨董商。正体はモルトヴィッチの変装。金塊探索のために近づいたイヴァンの計画を、モーリエを利用して阻止。金塊を海外に持ち出す直前、モーリエが正体を追求し金塊の分け前を要求したが、全く動じることなく「モルトヴィッチの方がW・ギョームの変装かも知れない」と嘯き、モーリエを殺害した。 マイスナーの思想に共鳴し、弱者は自由を扱いこなせない愚民であり、力による支配こそが世界に光をもたらすと宣言した後、ナチスも見限り金塊と共に姿を消す。

ミルカ・ストピカ

イヴァンの年上の美貌の恋人。故郷を離れザクレブの工場で働いていたところ、政治研究グループでイヴァンと知り合い、情熱的な彼に惹かれる。政治研究組織がブランコ達の地下組織と合流した後は、イヴァンのメッセンジャーとして働く。クリロからイヴァンがスパイだっだと聞かされ、ドイツ軍への潜入作戦だと知らずショックを受ける。 イヴァンを探し放浪。パルチザンに粛清され瀕死の重傷を負ったイヴァンとようやく再会し、最期を看取る。

エルケ・ハンゼン

独軍情報局アプヴェーアのエージェント。イヴァンの補佐であり、監視役としてモルトヴィッチの金塊を探す任務に赴く美女。BdM(ドイツ女子青年団)出身で、自らの子供も国家に捧げた程の愛国者。洞察力に長け、エッカルトと共に、イヴァンが二重スパイである事も、マイスナーの行動原理がマリーネを奪った世界に対する復讐心に過ぎない事も看破する。 イヴァンとは肉体的関係があり、終戦直前、ともに全てから逃れようと持ちかけたが、イヴァンは応じなかった。

モーリエ

フィーの叔父。様々な違法行為に手を染める貿易商。経済的利益の為ならば、身内であろうと利用する。フィーにマイスナー暗殺を依頼したため、フィーは過酷な状況に陥る。イヴァンと共にモルトビッチの探索をしていたが、W・ギョームと接触し、金塊の海外密輸に協力。W・ギョームがモルトヴィッチと同一人物であると気付き、分け前をよこせと脅しをかけるが、返り討ちに合い殺される。

ミント

クリロと偶然知り合い、兄貴分として何かと世話を焼くコソ泥。モルトビッチに騙されフィーの狂言誘拐に加担した際にイヴァンと知り合い、以前から関係のあったネナドとイヴァンを結び付け、パルチザンの金塊強奪作戦に協力する。生まれ持った悪運で幾度も危機を切り抜けるが、金塊奪回に失敗し、パルチザンからは裏切者と誤解され粛清され、瀕死の重傷を負ったまま姿を消す。 小心者で金にも女にもだらしないが、クリロ、イヴァン達との約束は生命をかけて果たそうとする義理堅さを持つ。

ブランコ

第一次世界大戦の時はゲリラとして戦った百戦錬磨の兵士。避難民たちを率いてパルチザンに参加し、非常に強靭な意思を持ち、バルゴ部隊の精神的なリーダーとなる。イヴァンとは地下組織の同士。時に過酷な現実に挫けそうになるクリロを、力強く見守り、自らを見捨てる事なく、信じ続け真の戦士を目指す事を訴え続ける。 イヴァンを二重スパイとしてドイツ軍に送り込んだ事実を、クリロやミルカに知らせなかった事を後悔する。

イザーク

ユダヤ人事業家の家に生まれたが、ナチスドイツの侵攻によって、欧州中を流浪するうち、家族と離散。一人逃避行を続け、偶然クリロと出会い意気投合し、パルチザンに合流する。敬虔なユダヤ教徒であり、その教義に従って当初はあくまでも戦う事を拒否したが、子供部隊の副隊長となりバルゴ部隊の隊員としてクリロと共に戦場で戦う。 優しい性格とユダヤ人と言う出自からスラブコからは幾度も暴行を受ける。

ラーナ

強制収容所の囚人。顔に醜い痣があり、外見をを他者から揶揄し続けられ、その事を指摘されると激高する。気難しく頑な性格で同じ囚人に対しても斜に構えた態度を取るが、裏表なく接するフィーに対しては誠意を持って接し、何かと気遣った。病で死に至る直前、偏見の無い自由な未来の夢を持ち続ける様フィーに言い残した。

メル

強制収容所の囚人。フィーと知り合い親交を結ぶ。マイスナーから別れ強制収容所に戻ったフィーと再会した時にはカポ(労働監視員)になっていた。自らの待遇改善の為に看守に売春を続け、囚人、看守からも蔑みの目で見られるが、フィーの友情を大事にし、彼女を何かと気遣う心根の優しい少女。

ネナド

ナチスに反発する地下組織の構成員。イボヲとも連携をとっている。偶然ミントと知遇を得た事から、イヴァンと共にモルトビッチの金塊強奪計画を練るが、モルトビッチに手の内を読まれて作戦は失敗し、ゲシュタポの一斉射撃を受け蜂の巣となり死亡した。共産主義の利益を第一に考えており、フィーの救出は共産党の利益にならないと拒否した結果、ミントがモルトビッチと接触し、彼の陰謀に加担する機会を与えた。

イボヲ

パルチザンの兵士で、主に地下活動を担当。モルトビッチの金塊探索を目的として、イヴァン、ミントと協力。イヴァンにクリロの生存を伝える。金塊強奪計画が失敗し、ネナドと共にゲシュタポの一斉射撃を受け蜂の巣となるが奇跡的に生き残り、戦後は中尉に昇進する。イヴァンがドイツ人とのハーフであることから、当初から疑念を抱いていた。 パルチザンの兵士にもその疑念を知らせており、金塊強奪の失敗でミントが裏切者として粛清される要因となった。

イルチ

枢軸国に抵抗する地下組織の一員。イヴァンとは政治研究サークルで知り合い、パルチザンに強力する。イヴァンが二重スパイとしてドイツ軍に潜り込んだ際には、パルチザンとの連絡係を務めていたが、イヴァンの正体がばれそうになり、相手のドイツの情報局員を殺害したため、ゲシュタポに囚われれ命を落とす。

ピッチ

靴磨きの孤児の少女。ウスタシやドイツ兵による性的暴行を避ける為、普段は男装している。ウスタシに殺された両親の仇を討とうとイヴァンに協力し、イヴァンとミントの伝言役を受け持つ。ビッチとの会話によって、失いかけていた自信と自由への信念を取り戻したイヴァンから、モルトビッチの金塊強奪作戦直前に解放され、再会を約束して別れた。

ザクル

ドイツ軍の兵正だが、正体を隠しパルチザンとしてクリロ達と共に戦いの旅を続ける。パルチザンの作戦をドイツ軍に漏らし、補給部隊への連絡を妨害して、バルゴの部隊を危機に陥れた。起死回生の策としてブランコが発案した作戦を実行する間際、ドイツ軍に通報しようとした所をクリロに見つかり彼に射殺される。 クリロにとっては初の殺人であり、大きな心の傷を残した。

スラブコ

パルチザンのバルゴ部隊の一員。ユダヤ人と言うだけでイザークに何度も暴力をふるったり、捕虜を平然と射殺する粗野で狭量な男。バルゴの部隊の状況が悪化するにつれ、不満のはけ口を求めリジェを強姦しようとするが、逆に射殺される。

ペル

イヴァンの大学時代の友人。大学時代は左翼思想の濃い青年であったが、ドイツ軍侵攻後は、家業の居酒屋に引きこもる。イヴァンを探しに来たミルカを一時的に保護するが、自己保身に言及し何も出来ない自分と理想の為に戦うイヴァンとの落差を感じて、以前から惹かれていたミルカへの想いが暴発し強姦。 ミルカが流浪の身となる要因を作った。密輸で逮捕された際にイヴァンと再会する。

ドルメル

ドイツ軍中将で、マイスナーの上司。ユーゴスラビアに赴任し、マイスナーを通して強制収容所の建設とユダヤ人虐殺を進め、「抵抗運動は見せしめをもって恐怖を与える」として、マイスナーに市民虐殺を命じた。面従腹背な態度でナチス上層部に取り入る一方、娼婦と遊びほうけている男で、マイスナーからは内心では俗物と唾棄されている。 軍人としては有能とは言いがたく、ドイツ軍のソビエト侵攻にも楽観的であった。

フォン・エッカルト

独軍情報局アプヴェーアの高官で、ユーゴスラビア方面の責任者。外見は肥満体の紳士だが、実態は冷酷な策士。イヴァン、エルケの上司としてモルトビッチの黄金奪回などを命じる。イヴァンの忠誠に疑念を抱き、マイスナー邸宅に保護されていたフィーを救おうとしたクリロにイヴァンの正体を暴露し、クリロの銃殺をイヴァンに命じた。 その後イヴァンの裏切りに気づき厳しい拷問を与えるが、処刑によってイヴァンが英雄となる事を嫌い釈放。パルチザンにイヴァン粛清を唆した。

ウィリアム・リカード

イギリス外務省高官。イヴァンとは親戚関係で学生時代からの親交があった。SIS(英秘密情報部)とのコネクションを受け持ち、イヴァンに連合国の内情を伝える役割。プロのスパイとしての訓練を受けていないイヴァンを気遣い、無謀な行動を控えるよう助言する。

オット

マイスナーの秘書。政治思想や民族主義とは無縁の、素朴で人当りの良い性格の持主で、フィーも心を開いた。フィーの狂言誘拐事件に巻き込まれ、重傷の身でありながら彼女を守ろうとした。フィーが強制収容所に戻ってからは、頻繁に訪ね、強制収容所の実態に罪悪感を隠さず軍を抜けたいと漏らすこともあった。

ハインリヒ

強制収容所の看守。軍曹。ヒトラーユーゲントの卒業だが、無用な暴力を好まず繊細。ナチズムにも民族主義にも馴染む事が出来ず、フィー達囚人に同情し、強制収容所の非人道的な実態に苦悩し転属願いを出し続ける。病で死の淵に瀕したラーナを救って欲しいと懇願したフィーの為、違法に薬を届けようとした所を同僚に見咎められ射殺される。

バルゴ

大尉。クリロやブランコが属するパルチザン部隊の指揮官で、チトーの部下。頑健な肉体を持ち、平和の為に戦う事を疑わない、愛国心に満ちた軍人。一方で、戦略眼に乏しく、加えて名誉欲ばかりが先走る性格もあって、無謀な作戦を繰り返して多くの部下を失う羽目になり、クリロやブランコと幾度となく衝突。 最終的には彼の部隊はクリロを残し、地雷によって壊滅した。

リジュ

パルチザンの女闘士。有能な兵士であり、熱心な共産主義者。新婚の夫が死んでも悲しみを表面に出さず、過酷な戦場でクリロやブランコと共に戦い続ける。バルゴの部隊でただ一人残った女性であり、部隊の状況が悪化するにつれスラブコから幾度となく性的嫌がらせを受け、彼を射殺。人間は管理されねばならないと、共産主義を頑なに崇拝する様になる。

マリーネ

マイスナーの妹。フィーと瓜二つ。第一次世界大戦の敗北後のドイツの混乱で、全ての財産と両親を失い、貧困に苦しみながらマイスナーと流浪し、荒廃した故郷に帰るが餓死した。マリーネの様な悲劇を防ぐには、力による支配が必須であると確信し、闘争こそが世界の本質であるとマイスナーが考える要因となった。

ペートの父 (ぺーとのちち)

クリロの実父で、イヴァンの叔父かつ養父。農業をしながら2人を養い、土と共に生きる農業の尊さを訴えた。ナチスドイツの侵攻で重傷を負い半身不随と記憶喪失となり、終戦後も障害が残った。イヴァンがスパイとして処刑される直前に書いた遺書では、素直に「父さん」と呼び敬意と感謝を述べたが、イヴァンの政治活動を認めない頑固な養父であった。

チトー

パルチザンの指揮官。本名はヨシプ・ブローズ。「チトー」という口癖(セルボ・クロアチア語の「お前があれをしろ」と言う意味)から、「チトー」と呼ばれるようになり、自身もこの名を好んだ。ドイツ軍とチェトニクの攻撃によって危機に瀕するパルチザンを、忍耐強く指揮し続ける。各国の利害関係に左右される戦況を冷徹に見つめ、ユーゴスラビアへの愛を深め、その独立を目指す。 実在の人物であり、パルチザンの指揮官、ユーゴスラヴィアの政治家、ヨシップ・ブロズ・チトーがモデル。

集団・組織

パルチザン

『石の花』に登場する、反政府の武力集団。枢軸勢力のユーゴスラビア侵攻後に創設された。指導者はチトー。共産主義を掲げていたが、ユーゴスラビアとは直接国境を接していないソ連は、連合国との関係悪化を恐れ、当初は非協力的であった。ドイツ軍の攻撃に苦戦を強いられ、山岳部の撤退を続ける事になるが、有名なネレトヴァの戦い等で勝利を重ね、クロアチア、ユーゴスラビア王国の圧制を嫌う人々を取り込む形で勢力を拡大。 やがて国際的な支持を取り付けて戦争に勝利する。

チェトニク

『石の花』に登場する、ユーゴスラビア王国のセルビア人将兵で構成された抵抗組織。指導者はドラジャ・ミハイロヴィッチ。ユーゴスラビア王国亡命政府および連合国から、抵抗運動として唯一承認された勢力である。しかし当初から大セルビア主義、反共産主義が顕著で、ドイツ軍の過剰な反発を恐れ、パルチザン、クロアチア独立国との戦闘には組織の温存に徹した消極的な戦略に終始した。 内部では非セルビア系住民の虐殺も横行。末期には組織存続の為、敵であったドイツ軍とも手を組む状況となり、連合国や、人民の支持を失い崩壊する。ドラジャ・ミハイロヴィッチは1953年にチトーによって死刑にされる。

ウスタシ

『石の花』に登場する、クロアチアに存在したファシズム政党。民族主義を標榜する。1929年に設立。イタリア・ファシスト党、ナチスの支援を受けクロアチア独立国を設立し、ナチスを真似た親衛隊も創設。強制収容所を建設し、虐殺行為を行った。ナチスの国家理念としての虐殺行為とは異なり、民族主義的遺恨に由来する虐殺行為は、ナチスの将兵でさえ目を背けるほどであったとも言われている。

場所

ユーゴスラビア王国 (ゆーごすらびあおうこく)

『石の花』の舞台となる国。1929年に建国された王国で、現在のクロアチア、セルビア、スロヴェニア、マケドニア、モンテネグロを含んだ多民族、多宗教が共存する国家で、互いの利益を巡っての衝突が絶えず、政情は常に不安定であった。1930年代以降、ナチズム、共産主義の影響を受け政情が不安定になり、1941年にドイツ、イタリア、ブルガリア、ハンガリーの枢軸国の侵攻を受け崩壊。 枢軸国占領地域。クロアチア独立国とユーゴスラビア王国に分断する。

クロアチア独立国 (くろあちあどくりつこく)

『石の花』に登場する国家の名称。舞台となるユーゴスラビア王国から、クロアチア自治州を母体とし、スラベニア、ボスニア・ヘルツェコヴィナを統合した枢軸勢力の傀儡国家。ウスタシによる独裁国家と言われる。ウスタシによって作られた強制収容所で行われた、ユダヤ人、ロマ、セルビア人の大量虐殺は、セルビア人の反発を招き、多くのセルビア人がパルチザンに参加する契機を与えた。

イベント・出来事

パルチザン戦争 (ぱるちざんせんそう)

『石の花』で、舞台となるユーゴスラビア王国で起きた戦争の呼称。ユーゴスラビア人民解放戦争とも呼ばれ、ユーゴスラビア王国に侵攻した枢軸勢力に対する人民解放戦争である。枢軸勢力とその傀儡政府であるセルビア救国政府、連合国、ソ連、大セルビア主義を掲げるチェトニク、クロアチア独立国、パルチザンなど、様々な政治勢力が入り乱れる内戦を経て、チトー率いるパルチザンが勝利し、連合国の支持を取り付ける。 チトーによって、ユーゴスラビアはユーゴスラビア社会主義連邦共和国として再統一される。

書誌情報

石の花 全5巻 KADOKAWA〈青騎士コミックス〉

第1巻

(2022-01-20発行、 978-4047368712)

第2巻

(2022-01-20発行、 978-4047368729)

第3巻

(2022-01-20発行、 978-4047368736)

第4巻

(2022-02-19発行、 978-4047368743)

第5巻

(2022-02-19発行、 978-4047368750)

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