あらすじ
第1巻
1996年、アニメや漫画をこよなく愛する青年の浅倉水貴は大阪芸事大学へ入学し、宮崎駿や押井守、庵野秀明といった尊敬するクリエイターたちを輩出した伝説のサークル「MAGI」への入部に胸をときめかせていた。しかし、MAGIは顧問の影山十郎によって去年廃部にされていた。納得のいかない水貴は影山に掛け合い、1週間以内に5名の部員を集めればサークルを復活させることができるという約束を取り付ける。その夜、水貴が学生寮の自室でカップ麺を食べるためにお湯を注ぐと、もくもくと煙が立ち込め、全裸の褐色美女が現れる。その女性は、復活した古代エジプトの豊穣と享楽の女神、バステトだった。長い眠りによってすっかり神の力を失って落ち込むバステトに、水貴がビデオに録画したアニメを見せると、バステトは初めて見るアニメに夢中となる。翌日、大学の食堂で影山と出会った水貴は、いっしょにいたバステトをつい部員第1号として紹介してしまうのだった。(第1話。ほか、5エピソード収録)
第2巻
浅倉水貴は、廃部となったサークル「MAGI」の復活の条件であった5名の部員を集めることに成功する。そこに大学の事務員が現れるが、それはバステトの妹であるセクメトであった。5000年前、復讐と破壊の女神であるセクメトは、父親である太陽神ラーの乱心から発せられた人類殲滅(せんめつ)命令を遂行しようとしたが、人類を愛する姉のバステトがセクメトの前に立ちふさがり阻止したのだった。敵対関係にあった姉妹だったが、姉より一足早く日本で復活を遂げていたセクメトは、すっかりアニメ声優の熱狂的ファンになっており、姉妹の戦いは一時休戦となる。翌日、水貴が5名の部員を集めたことを影山十郎に報告すると、セクメトが大阪芸事大学の学生でないことを見抜かれ、サークルの復活は却下される。しかし、セクメトが大学の書類を改ざんしてバステトが学生であるように工作しており、サークル「MAGI」は復活を果たす。(第7話。ほか、5エピソード収録)
登場人物・キャラクター
浅倉 水貴 (あさくら みずき)
この春、大阪芸事大学の映像学科へ入学した1年生の男子。年齢は18歳。アニメや漫画、特撮などをこよなく愛するオタクの青年。こだわりが強く、人と話す時はやや語気が荒くなる。宮崎駿や押井守、庵野秀明といったクリエイターたちを尊敬しており、彼らを輩出した伝説のサークル「MAGI」へ入部するつもりだったが廃部になっていたため、顧問の影山十郎に掛け合って復活させた。新生「MAGI」は、アニメや漫画、ゲーム、映画など、あらゆるエンタメカルチャーを研究し、その価値を世に広めて啓蒙すると共に、自らもクリエイターを目指すサークルで、浅倉水貴が部長を務めることとなった。水貴自身は漫画を描いたり、脚本を書いたりすることはできないが、アニメや漫画への情熱は人一倍で行動力もあり、プロデューサー的な資質を持っている。
バステト
古代エジプトの神で、豊穣と享楽の女神。なぜか浅倉水貴がお湯を入れたカップ麺から復活し、5000年の眠りから目覚めた。褐色の肌をした美女で、美しいストレートロングヘアにケモノの耳が付いたような髪型をしている。スタイル抜群で、祁答院雅人の見立てによるスリーサイズは、B88・W60・H85。水貴の影響によってすっかりアニメや漫画の虜(とりこ)となり、それを観ることで失われた神の力も少しずつ復活している。5000年の眠りから目覚めたために世間知らずだが、人間を愛しており、1996年時点の日本のオタク文化もすんなり受け入れ、偏見のない目で物事を見ることができる。学生寮の水貴の部屋に居候し、水貴のサークル復活への活動に協力している。「豊穣」にかけて、大阪芸事大学ではエジプトからの留学生「バステト・方城」を名乗っている。新生「MAGI」サークルの部員第1号となる。
瀬戸 保奈美 (せと ほなみ)
大阪芸事大学のデザイン学科に通う1年生の女子。浅倉水貴とは幼なじみで、非常に親しい。水貴は口には出さないが、自分の唯一の理解者は瀬戸保奈美だけだと思っている。大学ではテニス部に所属している。ショートカットのかわいらしい容姿で、大学の映画研究会が制作する映画への出演を依頼される。水貴と親しくしているバステトの存在が気になっている。
影山 十郎 (かげやま じゅうろう)
大阪芸事大学のデザイン学科で助教授を務める男性。浅倉水貴があこがれるサークル「MAGI」の顧問を務めていたが、怠惰な者からアートは生まれないことを理由に去年廃部にした。漫画やアニメを否定はしていないが、アートとしてとらえている立場上、水貴からは敵として認識されている。しかし対立することも多いが、新生「MAGI」の顧問を務めることとなる。
祁答院 雅人 (けどういん まさと)
大阪芸事大学のデザイン学科に通う1年生の男子。浅倉水貴とは美術予備校時代に出会った。アイドルオタクで、女性アイドルに並々ならぬ情熱を持っており、特攻服を着ている。美形ながら女性にまったく免疫がなく、生身の女性と接すると鼻血を出してしまう。1996年当時ではまだ少ない、インターネット環境を備えたパソコンを所持しているため、水貴からは重宝がられている。クリエイティブという面では、水貴以上に真摯にデザインと向き合っている。水貴によって強引に新生「MAGI」サークルの部員第2号にされる。
久留間 信一 (くるま しんいち)
大阪芸事大学の映像学科に在籍する2年生の男子。左ほほに大きな傷のある強面で、頭にバンダナを巻いて迷彩柄のベストを着用している。映画を撮るのも観るのも大好きな映画バカ。特に怪獣映画やカンフーアクション映画、ガンアクション映画を好み、撮影時には熱くなりすぎて周囲が見えなくなって迷惑をかけることもある。また、撮影のために校舎を燃やした疑いで、映画研究会をクビになっている。怪獣映画を見下す映画研究会の部員たちを、気取った映画ばかりを持ち上げる半可通と考えている。怪獣映画の撮影に協力してくれた浅倉水貴の熱意にほだされ、新生「MAGI」サークルの部員第3号となる。
羽野 よう子 (はの ようこ)
大阪芸事大学の舞台計画学科に在籍する2年生の女子。浅倉水貴の学生寮であるアパートの近くに住んでいる。ゴミ捨て場に読み終えた漫画雑誌や自分の書いた漫画のネームを捨てた際、それを拾ったバステトと知り合った。バトル漫画などの熱い作品が好きで、去年の春「MAGI」に入部したが、口先ばかりで創作活動を行わず、他人の批判ばかりする先輩たちに嫌気がさして、すぐに退部している。現在は漫画を描くことをあきらめかけていたが、自分のネームの続きを読みたいというバステトからの純粋な思いと、バステトが神の力を使ってアニメ化させた自分の作品を見て漫画への情熱を取り戻し、新生「MAGI」サークルの部員第4号となった。声優の緒方恵美のファン。
ラーの目 (らーのめ)
体長15センチほどの「目」のようなヒエログラフの生き物。バステトのお目付け役で、バステトのことを「姫様」と呼ぶ。バステトの復活後、浅倉水貴の部屋に現れた。本名は「ヒストリュウス・マヌトヒトヌブト・イムハット・スシェットゥジェ・ウフィジェ・サントゥハウジェヒ」で、なんでも見通す「真実の目」を自称する。しかし、バステトからは父上に告げ口するだけの平面キャラと呼ばれ、水貴からは「ヨコムキ」というあだ名を付けられる。
セクメト
古代エジプトの神で、復讐と破壊の女神。5000年前は、父親である太陽神ラーの乱心から発せられた人類殲滅命令を遂行しようとし、愛する人類の殲滅を阻止しようとする姉のバステトと対立した。しかし1年前に日本で復活してからは、日本のオタク文化にハマっている。特に声優の子安武人を「現人神」と崇(あが)めている。調べものに便利だという理由で、大阪芸事大学の事務員をしており、大学では「世久米」と名乗っている。
ウジャトの目 (うじゃとのめ)
体長15センチほどの「目」のようなヒエログラフの生き物。セクメトのお目付け役で、チャラ男のような口調でしゃべり、セクメトによる世界の破壊を目論んでいる様子が見受けられる。
クレジット
- 原作
書誌情報
神サー!~僕と女神の芸大生活~ 3巻 KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉
第1巻
(2019-11-09発行、 978-4041090299)
第2巻
(2020-07-10発行、 978-4041098172)
第3巻
(2021-02-10発行、 978-4041111321)