神州纐纈城

神州纐纈城

戦国時代を舞台にした伝奇アクション時代劇。富士の裾野にあり、人間狩りを行ってその血を搾る纐纈(こうけつ)城と、その謎の力に導かれる人間たちの宿命を背負った戦いを描く。原作は国枝史郎が大正14年に発表した未完小説。石川賢のコミカライズにあたり、織田信長など原作に登場しないキャラクターが追加される等、独自の解釈と展開が加えられている。

正式名称
神州纐纈城
ふりがな
しんしゅうこうけつじょう
作者
ジャンル
怪談・伝奇
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概要・あらすじ

武田信玄の家臣・土屋庄三郎はある夜、甲府で布売りの男に出会う。人血のように赤い纐纈布を売る男は、庄三郎に土屋家の秘密を語り、自分は庄三郎の父・土屋庄八郎の命により、庄三郎を纐纈城へと招きに来たのだと言った。腕が幾本もある異形の姿を見せ、庄三郎を連れ去ろうとする男だったが、庄三郎の剣の前に近寄ることが出来ず、逃げ去ろうとする。

男は通りかかった鳥刺の高坂甚太郎によって切り刻まれるが、その死体は忽然と消えてしまう。信玄に事の次第を報告し、一度は屋敷に戻った庄三郎であったが、纐纈布の呼ぶ悪夢によって土屋家が宿命的に持つ狂乱の血筋に目覚め、家つきの家来を斬り殺して甲府を出奔。纐纈城へと向かった。庄三郎の国抜けを知った武田信玄は、忍のような仕事をさせている甚太郎たちを呼び出し、庄三郎を連れ戻すこと、叶わぬ時は殺すように命じる。

こうして甚太郎もまた庄三郎を追う形で纐纈城へと向かうのだった。

登場人物・キャラクター

高坂 甚太郎 (こうさか じんたろう)

武田信玄に忍として雇われている鳥刺の青年。二十歳。鳥刺としても空を飛ぶ鳥を落とすほどの腕前の持ち主で、戦闘ではそれを応用する形で、竹ざおを使って目にも止まらぬ速さで相手を切り刻む。武田家家臣の土屋庄三郎とは旧知ながら気が合わず、一方的に敵視している。何事にも物怖じしない性格。信玄の命により、纐纈城に向かった庄三郎を追う。

土屋 庄三郎 (つちや しょうざぶろう)

武田信玄に仕える家臣の青年。二十歳。甲陽二十四将の一人土屋惣蔵昌恒の甥。剣の腕前は家中でも一二を争うと評判が高い。父である土屋庄八郎は、十六年前に母お妙と叔父土屋主水昌季と共に行方不明となっている。代々惨劇が付きまとう土屋家の血を恐れつつ生きてきた。纐纈城に向かう運命を負い、国抜けをする。 光明優婆塞に助けられたことから一時富士教団に滞在するが、親切にしてくれた女性・春夜が人々に殺されたことにより人間性を失い、武公帝シンの血を引く新しい纐纈城城主として目覚める。

纐纈城城主 (こうけつじょうじょうしゅ)

纐纈城の主として暴虐の限りを尽くす男。常に月子に作らせた木製の面を被っている。正体不明の業病にかかっており、触れた者をあっという間に壊死(えし)させる力を持つ。病の悪化を防ぐため、直江蔵人のつくる薬「五臓丸」を必要としている。その正体は土屋庄三郎の父土屋庄八郎であり、十六年前に行方不明となった後、地獄界の血に目覚め、纐纈城の主となった。 しかし武公帝シンの残した鎧を身につけた瞬間、地獄の霊魔に負け、病に冒されてしまった。やがて病の悪化により次第に狂乱の度合いを増し、故郷甲府の街に現れ、人々に病を撒き散らす。

月子 (つきこ)

富士の裾野で造顔術と面打ち師を営んでいる妖しい雰囲気の女性。纐纈城城主の面を作った。月子が造顔を施した陶物師に頼まれ、幾度も面を作っている。また、陶物師の敵である伴源之丞と園女にも造顔を施す。沈んだ魔大陸の武具を代々守っていた。

陶物師 (すえものし)

仮面をつけたざんばら髪の男。富士の三合目で、陶器を焼く生活をしながらも、時折人のいる場所に彷徨(さまよ)い出でて人を斬殺する剣豪。元の名は北条内記といい、北条家の重臣であった。しかし妻・園女が家中の伴源之丞と恋仲になって国を出てしまい、恥をすすぐため浪人して女敵討(めがたきう)ちの旅に出る。これにあたり、世にも醜い顔ゆえ二人に逃げられてしまうと考え、月子のところへ行き造顔を施してもらい、つぎはぎはあるが美しい容姿となった。 光明優婆塞と出会い、懺悔をすれば救われるという彼の考えを一蹴するが、優婆塞への恐れから自らも殺人ができなくなってしまう。

光明優婆塞 (こうみょううばそく)

富士教団の教主を務める男。修業で日本全国をめぐり、「懺悔」「忍従」「肉身刑罰」の教えを説き、千人もの信者と共に富士の裾野に村を作った。手をかざすだけで怪我や病気を治す力を持っている。元は土屋庄三郎の叔父で、纐纈城城主となった土屋庄八郎の弟、土屋主水昌季。嫂となったお妙とは、彼女が結婚する前から思い合う仲であったが、兄との結婚が決まると身を引いた。 しかし疑心暗鬼となっていた庄八郎には常に疑われ続けていた。十六年前、甲府から行方不明となった後に霊神の力に目覚め、光明優婆塞を名乗るようになったものと思われる。

お妙 (おたえ)

土屋庄三郎の母親で、土屋庄八郎の妻。結婚前は庄八郎の弟である土屋主水昌季と思い合っていたが、庄八郎との結婚が決まってからは夫に従順に仕えていた。しかし疑心暗鬼にかられた庄八郎から虐待まがいの折檻を受ける。庄三郎を双子の一人として産んだが、双子は家を潰すという伝えがあることから、庄八郎には一人は死産であったと告げて、その子を高坂家に預けた。 高坂甚太郎と庄三郎が双子であることを知る唯一の人物。十六年前、甲府から行方不明となった後、霊神の力に目覚め、尼の姿となっている。

塚原 ト伝 義勝 (つかはら ぼくでん よしかつ)

上杉謙信に仕えた名剣士。常陸生まれ。神蔭流の極意をきわめた後、一流を編み出して「卜伝流」を開いた。同じく上杉に仕えた直江蔵人が、人間の生き肝を使った霊薬「五臓丸」を作っていることを知り、それを止めるために富士の裾野、鍵手ヶ原にある蔵人の療養園を訪れる。かめ腹(ガン)にかかっている。

直江 蔵人 (なおえ くろうど)

医師。富士の裾野にある鍵手ヶ原の療養園で、患者の治療や行き場のない者の保護を行う傍ら、人間の生き肝を使った霊薬「五臓丸」を製造している。纐纈城城主が自身の病を抑えるため五臓丸を必要としていることから、纐纈城とつながりを持つ。かつては上杉謙信に仕えており、塚原朴伝とは旧知の仲。

織田 信長 (おだ のぶなが)

尾張の戦国大名。蜂須賀小六から纐纈城の話を聞き、その超常の力を我が物にしようと纐纈城に攻め入ろうとする。しかし纐纈城の主となった土屋庄三郎から、纐纈城とは異なる場所で地獄を作り出すよう諭され、その使命に覚醒して軍を引く。実在の戦国大名織田信長をモデルとしたキャラクター。

蜂須賀 小六 (はちすか ころく)

盗賊「蜂須賀党」の党首。織田信長に仕え、間者のような仕事をしている。過去に纐纈城に捕らわれたことがあり、自身は城を脱出できたが、両親は血を絞られて殺された。その復讐のため、信長に纐纈城の存在を教え、纐纈城に攻め入る決意をさせた。実在の武将蜂須賀小六をモデルとしたキャラクター。

武田 信玄 (たけだ しんげん)

甲斐の戦国大名。土屋庄三郎、高坂甚太郎の主。家臣であった庄三郎が国抜けをしたことから、甚太郎、雲助、黒木豹介に命じてこれを追わせた。また甲府に現れた纐纈城城主によって病が一帯に撒き散らされ、民が犠牲になった事件を受け、山本勘助らの武将を引き連れて纐纈城に攻め入ろうとする。実在の戦国大名武田信玄をモデルとしたキャラクター。

山本 勘助 (やまもと かんすけ)

武田信玄に仕える武将。高坂甚太郎とは旧知の仲。対上杉謙信の戦に備え、「戦車(いくさぐるま)」の開発を進めていた。甲府に現れた纐纈城城主を倒すため、試作品の戦車「勘助一号」で立ち向かう。実在の武将山本勘助をモデルとしたキャラクター。

薪兵衛 (しんべえ)

北条家に仕える間者。織田信長の様子などを探って、よく富士の裾野を往来しているため、月子とは知り合い。元は蔵奉行の地位にいた。北条内記とは旧知の仲で、内記が探している伴源之丞、園女の行方を掴み、その情報を内記に売ろうとする。

伴 源之丞 (ばん げんのじょう)

北条家に仕える武士。家中一の美男子と評判だった青年。北条内記の妻・園女と惹かれあい、彼女と共に国を抜ける。内記の女敵討ちから逃れるため、ふたりで月子のところを訪れ、造顔術によって顔を変えてほしいと願う。その際の要望は「恐怖」の顔。

園女 (そのじょ)

北条内記の妻。北条家中一の美女と評判が高かった。伴源之丞と惹かれあい、彼と共に国を抜ける。内記の女敵討ちから逃れるため、ふたりで月子のところを訪れ、造顔術によって顔を変えてほしいと願う。その際の要望は「悲哀」の顔。

雲助 (くもすけ)

武田信玄に雇われ、忍のような仕事をしている男。大柄で、改造した銃を使って戦う。信玄に命じられ、高坂甚太郎、黒木豹介と共に土屋庄三郎を追って纐纈城へと向かう。

黒木 豹介 (くろき ひょうすけ)

武田信玄に雇われ、忍のような仕事をしている男。優れた腕前を持つ剣士。口ではニヒルで計算高いことを言うが、実際は弱い者を見捨てられない義侠心を持っている。信玄に命じられ、高坂甚太郎、雲助と共に土屋庄三郎を追って纐纈城へと向かう。

春夜 (はるよ)

気のいい大柄な女性。かつては京でスリ師をして生計を立てていたが、光明優婆塞によって救われ、彼の作った富士教団の村に住んでいる。優婆塞に助けられた土屋庄三郎の面倒を親身になって見るが、庄三郎を纐纈城の手先であると信じた人々から庄三郎を庇(かば)ったため、斬殺されてしまう。

武公帝シン (ぶこうていしん)

はるかな昔、沈んだ魔大陸に纐纈城を作った男。人間が地獄界から来た存在であることを思い出し、地獄界を再び復活させるため、大陸に地獄を作り出した。人間の血こそが地獄界への道しるべであるという考えから、人間の血を搾って染めた纐纈布を旗印としていた。霊神界と手を結んだ母親や叔父、弟たちの裏切りによって死ぬが、魔大陸そのものを道連れとした。

場所

纐纈城 (こうけつじょう)

富士の裾野にある巨大な城。城主の存在によって稼動し、城主は城を自分の体の一部のように操ることができる。あらゆる残酷な方法で、人間の生き血を搾り取るための拷問器具が備えられている。生き血を搾るために攫(とら)われてきた人間たちは、いい暮らしをさせられているため、纐纈城に感謝している人間も少なくない。血を搾られる人間は、毎月籤(くじ)によって決められている。 人間狩りを行う異形の兵隊の他、纐纈城のシステムを管理する兵や、纐纈城の来歴を知る城主付きの者などが内部にいる。

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