あらすじ
異世界に転生したセフィリア
現代の日本でプログラマとして働いていた女性は、ブラック企業での過酷な仕事によって身体を酷使し、そのまま過労死してしまう。こうして異世界「ヴェリシオン帝国」にセフィリアという名の幼児として転生した女性は、この世界では不労生活を実現させようと意気込む。幸いにも前世の記憶をすべて持つセフィリアは、ヴェリシオン帝国では15歳になると成人とみなされることを知り、7歳までには何か功績を残さなくてはと考える。セフィリアは戦場に行った父親が所持していた魔導書を発見し、何かヒントにならないかと解析を始める。しかし、魔法を使う「魔術師」になると、戦死する可能性が高くなることを知っている兄のログナは、セフィリアと魔導書を遠ざけようとケンカになる。そして、以前からセフィリアばかりが賢いと周囲からちやほやされてきたこともあり、ログナは衝動的に家出をしてしまう。
盗賊団との戦い
ログナの失踪事件を経て、セフィリアが優れた頭脳の持ち主だということが周囲の噂(うわさ)になり、セフィリアは村人たちからは「勇者」「神童」だと特別扱いを受けるようになる。そんな中、騎士団のネルヴィアが、セフィリアたちの住む村を訪れる。ネルヴィアはこの辺りに出没する盗賊団の討伐にやって来たと話すものの、一人で訪れたことにセフィリアは違和感を覚える。実は、たとえ相手が魔族であっても命を奪うことができないネルヴィアは、騎士団の一員として失格だと見放され、左遷されてきた存在だった。セフィリアはネルヴィアを励ますと同時に、文字の読み書きができる彼女の力を借り、魔導書に書かれている単語の解読を試みる。そしてセフィリアは、魔法を発動させる呪文と前世で生業にしていたプログラムのルールが一致していることに気づく。こうしてセフィリアは魔法の練習をしつつ、マーシアをはじめとする愛情深い人たちと、穏やかな生活を送っていた。そんなある日の夜、ネルヴィアが警戒していた盗賊団が村を襲い、マーシアやログナはケガを負う。村人たちが次々と襲われる中、セフィリアは覚えたばかりの魔法で盗賊団に挑む。
魔導師に任命されるセフィリア
幼いながらも一人で盗賊団を壊滅させたセフィリアの噂は、すぐに異世界「ヴェリシオン帝国」を治めるウェルの耳に届く。ウェルは先立っての盗賊団の襲撃によってケガを負ったマーシアを都の病院に入院させる代わりに、セフィリアを自分のもとに呼び寄せる。そこでウェルはセフィリアを、国内で四人目の魔導師として任命する。こうして貴族となったセフィリアだったが、まだ幼児であることから、一部の魔術師からは不満が生じる。特に若手魔術師のボズラーはセフィリアに嫌味を言うが、反対にセフィリアから論破されてしまい、大勢の前で恥をかくことになる。ボズラーはますますセフィリアに反発心を抱き、何とかして魔導師の座から引きずり下ろしたいと画策する。そんな中、ウェルの提案によって魔術師同士の「御前試合」が催されることになる。通常であれば魔導師のセフィリアは参加しないものの、ボズラーからの強い希望により、セフィリアは民衆の前で戦うことになってしまう。御前試合で負けた者は閑職に回されると聞いたセフィリアは、わざと負けることで、夢の不労生活に近い暮らしができるのではないかと考えを巡らせる。
魔族「獣人」に挑むセフィリア
魔導師になったセフィリアは、ウェルから初めての任務を与えられる。その内容は異世界「ヴェリシオン帝国」の都に獣人(じゅうじん)という魔族の群れが向かっているため、到着する前に排除するというものだった。セフィリアは魔族の中でも理性的なはずの獣人がなぜ、危険を冒してまで都に向かっているのか目的がわからず、移動の魔法を使って獣人の様子を見に行くことにする。そしてセフィリアはネルヴィアと共に立ち寄った村で、獣人の少年であるレジィと知り合いになる。実は獣人の群れが都に向かっていたのは、村を出て行ったレジィを追いかけてのことだった。レジィと彼を追いかけてきた獣人の群れを前に、セフィリアは自身の力を示して、彼らを獣人たちが暮らす村へと追い返そうとする。しかし、獣人の中でも強い魔力と高い身体能力を持ったレジィは、セフィリアを追い詰める。
真の勇者を目指すセフィリア
獣人と友好的な関係になったセフィリアは、人間たちが住む場所に彼らを招き入れる。彼らの人並外れた体力や、約束を必ず守る誠実な性格を知り、ほとんどの人間たちは好感を抱く。しかし、人間たちの暮らす場所に魔族を招き入れたうえに、幼児ながらも魔導師に任命されているセフィリアに対して、恐怖心を抱く者たちも現れる。ある日、セフィリアは街を歩いていると子供から暴言を吐かれ、泥団子を投げつけられてしまう。ショックから思わず涙してしまったセフィリアは、修道会のシスターであるクルセア・リリーダ・ズスタックに保護される。セフィリアはクルセアの話から、セフィリアを悪の化身とすることで、自分たちの権力を強めようとしている派閥があると知る。そしてクルセアはセフィリアに対して、修道会の繁栄のために、自分たちが信仰する宗派の真の勇者になってくれないかと頼み込む。こうしてセフィリアは勇者になることで、将来的には不労生活が実現できるのではないかと考え、まずは民衆の支持を集めるべく奮闘する。そんな中、セフィリアはクルセアとライバル関係にある宗派の司教、カルキザールから、呼び出しを受ける。
関連作品
小説
本作『神童セフィリアの下剋上プログラム』は、足高たかみの小説『神童セフィリアの下剋上プログラム』を原作としている。原作小説版は、足高たかみが「小説家になろう」に投稿していたもので、TOブックスから刊行されている。イラストは椋本夏夜が担当している。
登場人物・キャラクター
セフィリア
異世界「ヴェリシオン帝国」に転生した幼児。性別は女性。「ヴェリシオン帝国」に転生する前は、現代日本のブラック企業に属する、凄腕プログラマの「生樹千草」という名の女性だった。しかし、激務が続いて過労死したところ、気づくと生後数か月のセフィリアに転生していた。前世の記憶もすべて残っているため、自らの経験の知識を活かして神童となり、将来的には夢の不労生活を営もうと決意し、行動に移していく。魔法とプログラムが同じ法則で成り立っていることに気づき、幼くして魔法を使えるようになったことから、周囲からは神童扱いされるようになる。母親のマーシアをはじめ、親しい者からは「セフィ」と呼ばれている。
ネルヴィア
異世界「ヴェリシオン帝国」の騎士団に属している若い女性。セフィリアたちが住む村の近辺に盗賊団が出没すると聞き、治安を守るために一人で派遣されたことで、セフィリアと知り合いになる。名門騎士の一族に生まれたが、モンスターはもちろん食料となる家畜の命を奪うこともできず、事実上の左遷を受け、単身盗賊団の討伐を行うことになる。ネルヴィア自身が置かれている立場に絶望していたものの、セフィリアとの交流を経て、自信を取り戻す。また、セフィリアが魔導師になり都に滞在するようになってからは、彼女のお世話係に就任している。裕福な家柄に生まれ育っていることもあり、しっかりしているようで、少々世間知らずな一面を持つ。
ルルー・ロリ・レーラ・ベオラント
異世界「ヴェリシオン帝国」の魔導師として活躍している少女。セフィリアが魔導師になったことで知り合いになる。クールな雰囲気を漂わせた美少女で、感情を表に出すことはない。しかし、面倒見のいい性格をしており、世間知らずなネルヴィアに代わってセフィリアの身の回りの世話をすることも多い。優れた魔力を持っているだけでなく、掃除や料理も完璧にこなすうえ、見返りをいっさい求めない。そのことから、セフィリアからは「ダメ男製造機」と評されている。ヴェリシオン帝国ではマグカルオ・ドルスターク・ベオラント、リュミーフォート・ユジャノン・ベオラントと共に「三魔導師(さんまどうし)」と呼ばれている。
マグカルオ・ドルスターク・ベオラント
異世界「ヴェリシオン帝国」の魔導師として活躍している男性。セフィリアが魔導師になったことで知り合いになる。屈強な体型でワイルドな風貌ながら、話をすると明るく親しみやすいユーモラスな人物。セフィリアに対しては、かわいらしいと気に入っている。ヴェリシオン帝国ではルルー・ロリ・レーラ・ベオラント、リュミーフォート・ユジャノン・ベオラントと共に「三魔導師(さんまどうし)」と呼ばれている。
リュミーフォート・ユジャノン・ベオラント
異世界「ヴェリシオン帝国」の魔導師として活躍している少女。セフィリアが魔導師になったことで知り合いになる。クールかつボーイッシュな雰囲気の美少女で、感情を表に出すことが少ない。ミステリアスな人物でもあり、予測不能な動きはするものの、セフィリアに対しては好意的に振る舞っている。長いマントをまとっているが、中はほぼ全裸に見えるような、きわどい下着以外は身につけていない。魔導師や魔術師は基本的に武器は持たないが、リュミーフォート・ユジャノン・ベオラントだけは剣を所持しており、それを用いて魔法を発動させることも多い。ヴェリシオン帝国ではルルー・ロリ・レーラ・ベオラント、マグカルオ・ドルスターク・ベオラントと共に「三魔導師(さんまどうし)」と呼ばれている。
ボズラー
異世界「ヴェリシオン帝国」で、魔術師として活躍している青年。基本的に魔導師のことは尊敬しているものの、まだ幼児のセフィリアが自分の上の立場になることを受け入れられずにいる。さらにみんなの前でセフィリアに論破され、辱めを受けたことで彼女のことを憎み、何とかして陥れたいと考えている。魔術師の中では若手実力者として注目されており、風を使う魔法を得意としている。
バルルザーク
異世界「ヴェリシオン帝国」で、騎士団長として活躍している中年の男性。まだ幼児のセフィリアが、皇帝のウェルによって魔導師に任命されたと聞き、最初は信じられない思いだったが、セフィリアと会話をしてその聡明さに驚く。以降、自分にできることがあればと、セフィリアに対して協力的な立場を取っている。
ウェル
異世界「ヴェリシオン帝国」を統治する皇帝である青年。国内にある田舎町に、幼児ながらも盗賊団を壊滅させるほどの魔力を持った幼児がいると知り、自分のもとにセフィリアを呼び寄せたことで知り合う。セフィリアが幼児のため、今すぐ危険な戦場に出す気はないものの、年齢を重ねれば十分な戦力になると考え、魔導師と認める。「ヴェリシオン帝国」のトップでもあり、人間たちを滅ぼそうと画策する魔族を討伐するためには手段を選ばない冷酷な一面も持つ。自分が気に入った者には、相手の才能をイメージさせる二つ名を与える。
セルラード
異世界「ヴェリシオン帝国」を統治するウェルの側近を務める高齢の男性。セフィリアが、ウェルから都に呼び出された際に知り合いになる。ウェルから信頼されており、彼に代わって国内のさまざまな情報を集めている。また、ヴェリシオン帝国について何も知らないセフィリアに対して、複雑な内情を説明する役割も担っている。
レジィ
異世界「ヴェリシオン帝国」に暮らす魔族の少年。獣人(じゅうじん)と呼ばれる人間と獣の中間の容姿を持ち、人間の言葉を話すことができる。以前、リュミーフォート・ユジャノン・ベオラントの戦いぶりを間近で見たことがあり、その圧倒的な力にあこがれると同時に、勝負してみたいと望むようになる。そのために獣人たちが暮らす村をこっそり抜け出したことで、セフィリアと知り合いになる。考えるよりもまずは行動するタイプで、わかりやすい単純な性格の持ち主。攻撃力の高い魔法を使うことができ、セフィリアを吹き飛ばすほどの実力を持つ。また足が速く、獣人たちのあいだでは「疾風のレジィ」と呼ばれている。
クルセア・リリーダ・ズスタック
異世界「ヴェリシオン帝国」に住む若い女性。修道会のシスターをしている。民衆から泥団子を投げつけられて泣いてしまったセフィリアを保護したことで、親しい間柄になる。民衆の前では尊厳なシスターを演じているが、実際は明るく人懐っこい性格であり、宗教を現代風にわかりやすくアレンジして解説する術に長(た)けている。自分たちが信じる宗教の繁栄のため、勇者にならないかとセフィリアを勧誘する。カルキザールが司教を務める修道会とは、古くからライバル関係にある。
カルキザール
異世界「ヴェリシオン帝国」に住む中年の男性。修道会の司教をしている。幼いながらも魔導師に任命され、魔族である獣人たちとも親しくしているセフィリアに対して、人を導く立場ながらも恐怖心を抱いている。その心のスキを、リリルに付け込まれてしまう。クルセア・リリーダ・ズスタックがシスターを務める修道会とは、古くからライバル関係にある。
ロット
異世界「ヴェリシオン帝国」の都に住む発明家の女性。セフィリアが現代日本にあるものを基にした発明品を依頼したことで、知り合いになる。実際にセフィリアからの依頼を受け、薬莢(やっきょう)に魔法を詰めて打つ拳銃や、魔法の力を用いて布をきれいにする洗濯機のようなものを開発している。非常に優れた発明家ではあるものの、熱中するとそれしか見えなくなってしまう悪癖があることから、周囲からは変人だと距離を置かれている。
マーシア
セフィリアとログナの母親。異世界「ヴェリシオン帝国」の外れにある田舎町に住む。セフィリアが前世の記憶を持つ子供だとは知らない。セフィリアの年齢にそぐわない知識や言語能力、身体能力に対して驚くことも多いが、神童だからと深く考えていない。2児の母親とは思えない若々しい容姿で、周囲を和ませる明るい性格の持ち主。のほほんとした人物に見えるが、夫は魔族との戦いの地に赴いているために不在であり、母子家庭の我が家を必死に守ろうとしている。
ログナ
セフィリアの兄。異世界「ヴェリシオン帝国」の外れにある田舎町に住む。年齢は5歳。母親のマーシアをはじめ、周囲が妹のセフィリアを「神童」と評してちやほやすることから、彼女に嫉妬している。ただしセフィリアに対して愛情を抱いていないわけではなく、どう距離を取っていいのかわからないだけで、かわいいとは思っている。年相応のやんちゃな少年で、少し素直になれない一面も持っている。父親が戦地に赴いて不在のため、代わってマーシアとセフィリアを守らなくてはいけないという気持ちが強い。
メリアーズ
異世界「ヴェリシオン帝国」の外れにある田舎町に住む若い女性。マーシアと親しくしており、セフィリアのこともかわいがっている。明るくポジティブな性格の持ち主で、言いたいことははっきりと主張するタイプ。家事や育児で忙しく過ごしているマーシアに代わって、ログナの面倒をみることも多い。
リリル
異世界「ヴェリシオン帝国」で暮らす魔族の少女。人間たちを滅ぼそうとしており、その過程でセフィリアと対峙(たいじ)するようになる。見た目は人間の少女と変わらないことから、魔族でありながらも、人間たちの心の隙間に入り込むことを得意としている。強力な魔力を持ち、魔導師であるセフィリアの魔力を一時的に封じることもできる。ウェルとは、因縁めいた過去を持つ。
場所
ヴェリシオン帝国 (ゔぇりしおんていこく)
セフィリアが転生した国。剣と魔法が存在する異世界にあり、人間たちを滅ぼそうと画策する魔族とのあいだで、絶えず争いが勃発している。国内では満15歳になると成人とみなされ、男性ならば兵士として戦地に赴くことになる。そのため、「帝都(ていと)」と呼ばれる「ヴェリシオン帝国」の中心となる都以外に、若い男性がいることは珍しい。国内の治安は非常に乱れており、魔族以外にも人間の盗賊団も多発している。また、魔法が存在する世界ではあるものの、実際に使える「魔導師」や「魔術師」の存在は稀。そのため、少しでも魔法が使えると判断されると、性別を問わず軍隊からの指示によって魔族との戦いの最前線に送られる。そのため、戦死する可能性が極めて高くなっている。セフィリアの見立てによると、中世から近世レベルの生活をしており、義務教育も存在しないことから、貴族以外に文字の読み書きができる人間は少ない。
その他キーワード
魔導師 (まどうし)
異世界「ヴェリシオン帝国」にある、魔法を用いて魔族と戦う部隊に所属する人物。魔術師たちのトップであり、ヴェリシオン帝国でもセフィリア、ルルー・ロリ・レーラ・ベオラント、マグカルオ・ドルスターク・ベオラント、リュミーフォート・ユジャノン・ベオラントの四名しかいない。ウェルに認められた者たちで、魔術師たちのあいだでも別格扱いされ、恐れられている。魔導師と認められた者はヴェリシオン帝国の貴族の称号が与えられ、給料も与えられる。
魔術師 (まじゅつし)
異世界「ヴェリシオン帝国」にある、魔法を用いて魔族と戦う部隊に所属する者たち。魔導師をトップにしており、魔族との最前線で戦うことも多い。ウェルに魔導師として認められるべく、日夜訓練している。基本的に魔術師は魔導師の絶大な魔力を恐れると同時に尊敬しているが、セフィリアはまだ幼児なこともあり、ボズラーのように不信感を抱いている者も多い。
クレジット
- 原作
-
足高 たかみ
- キャラクター原案
-
椋本 夏夜
- 協力
-
TOブックス
書誌情報
神童セフィリアの下剋上プログラム 全8巻 竹書房〈バンブーコミックス〉
第6巻
(2022-07-07発行、 978-4801976535)
第7巻
(2024-01-06発行、 978-4801982406)
第8巻
(2024-01-06発行、 978-4801982413)