穴殺人

穴殺人

浪人中の黒須越郎は、アパートの隣室に住んでいる女性、宮市莉央が連続猟奇殺人犯であることを知ってしまう。それでも莉央に惹かれている越郎が、さまざまな事件に巻き込まれながら、莉央と関係を深めていく姿を描いた猟奇的ラブサスペンス。「マンガボックス」2014年第1号から2016年第44号にかけて連載された作品。

正式名称
穴殺人
ふりがな
あなさつじん
作者
ジャンル
ラブコメ
 
スプラッター・猟奇
レーベル
講談社コミックス(講談社)
巻数
既刊8巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

大学受験に二度失敗して浪人中の黒須越郎は、予備校を辞めて仕送りも止められ、自宅に引きこもる日々を送っていた。そんなある日、越郎は自殺をしようとして部屋の壁に穴を開けてしまう。その日から越郎は、隣室に住む宮市莉央の生活を覗き見るようになり、これだけを楽しみに暮らしていた。そして1か月ほど経ったある日、莉央が男性に襲われ、返り討ちにして殺害する場面を目撃してしまう。驚いた越郎はすぐさま莉央の部屋に向かうが、莉央は何事もなかったような様子で越郎を部屋に招く。こうして越郎は莉央と親しくなり、莉央の人柄を知るうちに、先日見た光景は幻覚だったのではないかと思うようになる。しかしその後も殺人は続き、しかも自分が覗いていることが莉央にばれてしまう。これで自分も殺されると越郎は覚悟するが、莉央は自分のような人間の存在を認めてくれるのなら、越郎と交際してもいいと言い出す。思わず承諾してしまった越郎は莉央と交際を始めるものの、ある日莉央は越郎の知人である山際悟を殺害。その光景を覗いていた越郎は慌てて莉央の部屋に向かうが、そこで気を失って悟の死体と共に謎の場所へ運び込まれる。そこは、延命寺玲奈と名乗る人物の家だった。

第2巻

宮市莉央は、死体をデザイナーである延命寺玲奈に提供していた。二人の関係を知った黒須越郎は、玲奈の作品の素材にされそうになるが、そこに莉央が現れたことで事なきを得るのだった。その直後、越郎と莉央の住むアパートに警察官のシュナイダー純が現れ、数人の男女の写真を見せて去っていく。莉央は純が、とある連続保険金殺人事件を追っているのだと推察。それからすぐに越郎は、莉央によって無理やり婚活パーティに参加させられる。混乱する越郎だったが、そこで出会った藤浦かよという女性が、先日の写真の女性と特徴がよく似ていたのだ。越郎は莉央がかよを捜し出すために、パーティに潜入させられたのである。その後、莉央は越郎と合流し、同じくかよを捜していた警察官を殺害。そして、これをあたかもかよが殺したかのように見せかけてその場を去っていく。莉央の狙いどおり、かよはこの日から警察に追われる身となり、やがて越郎を頼ってくるようになる。越郎は莉央の指示でかよをかくまい、同棲生活を始めるが次第に体調を崩していく。かよの目的は、越郎に助けてもらうことだけではなく、越郎を利用してお金を稼ぐことだったのだ。

第3巻

黒須越郎宮市莉央は、遊園地に出かけた際、山際悟の妹の山際春子に出会う。悟は生前春子に、大変なものを見たと言い残しており、春子はずっとそれが気になっていた。さらに最近悟の居場所がわからないと語るが、悟の死を知られるわけにはいかずに越郎は必死にごまかす。だが莉央は春子を危険人物とみなし、春子もまた莉央に不信感を抱くようになっていく。そんなある日、越郎は春子に呼び出され、待ち合わせ場所に向かう。そこは「講談組」というやくざの組織だった。春子は莉央から、ここに悟を捜す手がかりがあると言われてやって来たのだが、これはやくざを使って春子を殺させようとした莉央の罠だった。これによって越郎と春子は危機に陥るが、すんでのところで莉央が到着。そして莉央は越郎を守るため、すぐさまやくざを全滅させる。そして越郎の懇願により、莉央は春子を見逃すことにする。こうして事件は解決するものの、その直後に越郎は藤浦かよ、つまり杉浦富士子と同じ顔をした女性二人と出会う。二人は困惑する越郎を連れ去り、越郎が目を覚ますと榊光徳と名乗る男性と、その家族が暮らす屋敷にいた。

第4巻

榊光徳宮市莉央に偏執的な愛情を抱いており、将来夫婦になりたいと願っていた。そこで無関係の人々に整形手術を施しては、自分と莉央の家族になるように監禁していたのである。黒須越郎もまたその一人として捕われそうになるが、異変に気づいたシュナイダー純に助けられる。しかしすぐに二人は光徳に捕まってしまい、殺されそうになるが、越郎は身勝手な主張で殺人を繰り返し、今は純を襲おうとしている光徳に、激しい怒りを覚えていく。そしてとうとう我慢できなくなり、火を使って反撃を開始。そこに莉央が到着するが、莉央は初めて見る越郎の明確な殺意に感激し、興奮のあまり越郎を刺してしまう。これによって越郎は大ケガを負うが、屋敷が火事になったことで警察と消防が駆けつけ、越郎と莉央、純の三人は被害者として助けられる。それからしばらくがたったクリスマスの日、越郎は莉央にもう殺人を犯さないでほしいと懇願する。莉央は次の殺人を最後にするという条件でこれを承諾し、越郎は安堵するが、莉央は越郎と会う直前にも殺人を犯していた。越郎はこれを悟りつつも莉央をもっと知るために、彼女が殺人に目覚めるようになったきっかけについて聞くことにする。

第5巻

黒須越郎宮市莉央の壮絶な過去を受け入れ、莉央から最後に殺される人間になることを決意。その前に結婚式を挙げることにした二人は、莉央の地元へ向かう。そんな二人を、刑務所から逃げ出した榊光徳と、莉央の殺人の証拠をつかんだ山際春子シュナイダー純が追っていた。これを知った越郎と莉央は、邪魔が入る前に予定より早く莉央の母校で結婚式を挙げることにする。しかしその直後、光徳が仲間の絢耶紗耶を連れて現れる。光徳は最初に越郎を誘拐した際、その体に盗聴器を埋め込んでいたのである。そんな光徳の目的は二人を生け捕りにし、生きたまま自分好みに改造することだった。越郎と莉央は、絢耶と紗耶を倒すものの光徳に殺されかけるが、そこに純が到着して光徳を射殺。さらに純は莉央を狙い、二人の戦いとなる。しかし越郎が必死に止めたことで、莉央は純を建物から突き落とすだけにとどめる。こうして二人は結婚式の仕上げとして、越郎が莉央に殺される儀式を始める。だが、その瞬間純が再び現れ、莉央を撃って気絶させる。絶望した越郎は予定とは違うが、自分が莉央にとどめを刺すという方法で儀式を完成させるのだった。

第6巻

黒須越郎宮市莉央を殺した罪で、二年半の懲役刑となる。越郎は今後莉央のいない世界でどう生きていけばいいのかと悩むが、出所後に清掃会社の「戸沢清掃(株)」で働くことにする。戸沢清掃の社長は変わり者で、特殊な事情のある人間を優先的に採用していた。こうして越郎の新しい生活が始まるが、やがて社員の一人である桐山杏奈に気に入られ、熱烈なアプローチを受けるようになる。これにとまどう越郎ははっきりと杏奈を拒絶するが、杏奈は意に介さず、ついには自分を殺してほしいと言い出すようになる。殺人を犯せば、莉央に近づけるかもしれないと考えた越郎は、一度は承諾するものの結局実行できず、衝動的に自殺するが失敗。そして病院で目を覚ました越郎は、莉央にそっくりな女性を目撃する。驚いた越郎はすぐに入院患者の情報を調べ、やがて同姓同名の女性が入院する部屋を発見する。しかし、そこにいたのは莉央ではなく、延命寺玲奈だった。玲奈いわく、莉央はあの事件で一命を取り留めたものの、2年以上意識不明の状態にあった。しかし1年前のある日ついに目を覚まし、現在はこの病院でリハビリをしているのだという。思わぬ事実に越郎は喜ぶが、再会した莉央は記憶喪失となっており、越郎のことだけでなく、自分が殺人鬼であることさえ忘れてしまっていた。

第7巻

黒須越郎は、記憶喪失となった宮市莉央と、友人としてやり直すことにした。そんなある日、越郎は莉央に連れられて教会へ行き、安孫子すばるという女性と知り合う。莉央とすばるは以前入院中に知り合って親しくなり、お互いに退院してからも、こうしてすばるの自宅である教会で会う仲になっていたのだ。そんな二人の関係に嫉妬し、以前とは別人のようになってしまった莉央の姿に腹を立てた越郎は、教会に放火して自分たちの関係をあらためて莉央に話すが、すばるによって遮られてしまう。だがそこに延命寺玲奈が現れ、莉央の記憶を取り戻す方法が一つだけあると告げる。それは、以前莉央がつけていた殺人リストを彼女に見せるか、莉央の目の前で誰かを殺害することで、記憶を取り戻すきっかけをつくるというものだった。玲奈からリストを受け取った越郎は、さっそくこれを実行しようとするが、莉央は現在すばるが所属する団体「表裏一体」が経営する「笑喜愛友園(しょうきあいゆうえん)」で働いており、近づくのも困難な状況にあった。しかし、そこに死んだと思われていた榊光徳が現れ、越郎は光徳と協力して笑喜愛友園の潜入を決意する。一方その頃、シュナイダー純山際春子は莉央の消息を追っていた。

第8巻

黒須越郎は、榊光徳の薬を使って顔を変え、光徳といっしょに「笑喜愛友園(しょうきあいゆうえん)」のパーティーに参加していた。二人はこのどさくさにまぎれてまずは入居者の部屋に潜り込み、次に夜間見回りに来た宮市莉央安孫子すばるのどちらかを捕え、そしてもう片方の所へ行って、莉央の目の前ですばるを殺害することで、莉央に記憶を取り戻させようとしたのである。そんな中、越郎は光徳から光徳、莉央、すばるの意外な関係を知らされる。光徳とすばるは同じ養護施設の出身で、兄妹同然に親しかったのだ。しかしある日、突然すばるの本当の両親が現れ、離れ離れになってしまった。その後すばるは両親の経営するボランティア団体で暮らすようになるが、すばるはどうしてもここの生活になじめず、やがて両親を殺したいと願うようになる。光徳はそれに協力するが、殺害計画がばれたすばるは両親の手によって牢屋に入れられ、団体の男たちの慰み者にされそうになる。そんなすばるを助け、すばるの両親を殺害したのが、莉央だったのである。以来、光徳とすばるは莉央に異常な執着心を抱くようになり、すばるは最終的に自分が莉央そのものになろうとしていたのだ。そんなすばるの恐ろしい目的を知った越郎は、なんとしてでも莉央を助けたいと考えるが、シュナイダー純山際春子も笑喜愛友園にやって来たことで、事態はさらに混乱していく。

メディアミックス

実写映画

2019年11月、本作『穴殺人』の実写映画版『羊とオオカミの恋と殺人』が公開された。監督は朝倉加葉子が担当し、黒須越郎役を杉野遥亮、宮市莉央役を福原遥、延命寺玲奈役を江口のりこがそれぞれ演じた。

登場人物・キャラクター

黒須 越郎 (くろす えつろう)

浪人生の若い男性で、宮市莉央と同じアパートの102号室に住んでいる。大学受験に二度失敗したあと予備校をやめ、その後一年ほど自宅に引きこもっていた。しかし莉央と交際を始めてからは、コンビニエンスストアでアルバイトを始める。前髪を目の上で切った茶色の短髪にしている。容姿や雰囲気が宮市毅と非常によく似ている。まじめな性格故に、思い詰めやすいところがある。子供の頃からつねに採点されていたことから、やがて自分の行動のすべてに対して自己採点する習慣がついている。人間関係においても同様で、いつも人の顔色をうかがっていた。そのため自己採点の結果がいいときは順調で、実際に高校まではつねに成績優秀で上位グループに入っていた。しかし、大学受験に失敗してからは精神のバランスを崩し、やがて自分は平均点以下の存在だと思うようになる。ある日、自分自身に強い殺意を感じ、自殺を決意するが失敗。そこで部屋の壁に穴を開けてしまったことで莉央の存在を知る。それからは莉央の覗き見を生きる喜びとするが、覗きを始めて1か月ほどが経った頃、莉央が男性に襲われ、返り討ちで殺害する場面を目撃してしまう。これによって運命が大きく動き出す。今も精神的に追い詰められると、部屋に引きこもってしまう。血液型はO型。

宮市 莉央 (みやいち りお)

大学院生の若い女性で、宮市毅の妹。黒須越郎と同じアパートの101号室に住んでいる。前髪を目の上で切り、胸の上まで伸ばした黒のセミロングヘアにしている。美形で、胸が非常に大きい。瀬戸内海に浮かぶ人口2万人弱の田舎町出身で、ふだんは標準語だが興奮すると広島弁になる。大学院への編入を機に、現在の部屋に引っ越してきた。一見穏やかで落ち着いた雰囲気を漂わせているが、子供の頃から極私的な理由で殺人を繰り返している殺人鬼。小学3年生の時、知能テストで非常にいい結果を出すが、注目を浴びるのを嫌い、わざと平均点を取り続けることで、目立たないように暮らしていた。そのため、両親からも平凡な子供だと思われていた。小学5年生の夏、毅が交際中の女性を殺害する場面を目撃し、人を殺すとどんな気持ちになるのかと、強い関心を抱く。そこで毅と交換日記を始め、毅が殺人もいとわない強い男性だと思い込むようになるが、ある日毅が自殺を決行。これによって毅の本心を知り、そのまま自殺に見せかけて殺害した。その後は殺人に目覚め、悪者だと判断した人間を次々に殺害するようになる。また、この頃に安孫子すばると知り合った。そんなある日、自宅で男性を殺害したところ、それを覗き見ていた越郎と出会い、越郎に毅と近いものを感じて惹かれていく。大学院では男性に人気があるが、不愛想でほとんど誰とも会話をしない。特技は料理で多趣味。スポーツ全般が好きで、ボクササイズを習っている。

延命寺 玲奈 (えんめいじ れいな)

アーティストの若い女性。宮市莉央の知人で、莉央から作品作りの素材として、人間の死体を提供してもらっている。前髪を眉の上で切り、胸の下まである亜麻色の巻き髪ロングヘアにしている。スタイル抜群で胸が大きく、性別は女性だが、男性器を持つ。これは以前気に入った男性の死体から手に入れた性器を、榊光徳によって移植してもらったもの。外出するとき以外は基本的に服を身につけておらず、自宅では裸でいることが多い。自分の作品作りにすべてを捧げる変人で、目的のためには手段を選ばない。主に「ゴシックホラー」や「絢爛怪奇」といった言葉をキーワードにデザインを手がけ、リアリティのあるグロテスクさと、女性らしい華やかさの融合が持ち味として知られている。そのデザインはアクセサリーや衣類、家具など多岐にわたり、一部のファンから熱狂的な支持を受けている。また一部の熱狂的な顧客には、本物の生き物の体を素材にした作品を売っており、これを作るために莉央をはじめとする殺し屋たちから死体を手に入れている。臓器や血液など、作品に必要のない部分は闇市場に売り払っており、売人としても有名人である。黒須越郎とは、部下が山際悟の死体を回収しに行った際、誤って連れてきたことがきっかけで知り合った。この時、越郎を生きたまま素材にしようと襲い掛かったが、莉央に止められてからは越郎だけは素材にしないと約束した。

シュナイダー 純 (しゅないだー じゅん)

警察官の若い女性で、階級は巡査。アメリカ人と日本人のハーフ。前髪を右寄りの位置で分けて流し、胸の下まで伸ばした癖のあるロングヘアを、一本の三つ編みにしてまとめている。鼻の周りにそばかすがある。穏やかな性格で一見頼りない印象だが、非常にカンが鋭い。また聞き込みの際は、場の緊張をほぐすためにギャグを言う癖があるが、不発に終わることが多い。黒須越郎と宮市莉央とは、莉央の両親によって捜索願が出されたため、隣室の越郎に聞き込みに来たことがきっかけで知り合った。この時二人に杉浦富士子の事件を捜査していることを知られ、富士子が莉央の次のターゲットにされた。これによって巻き込まれた仲間が莉央に殺されたことで、莉央への怒りを募らせていく。以来莉央をターゲットと定め、さらに同じ目的の山際春子を仲間にして事件の真相にせまる。

山際 春子 (やまぎわ はるこ)

高校生の女子で、山際悟の妹。80%の的中精度を誇るサイコメトリー能力があり、この力を使って占いやカウンセリングをするスピリチュアル女子高生「HARU」として活動している。前髪を目の上で切り、あごの高さまである内巻きボブヘアに眼鏡を掛けている。おっとりした性格ながら、自分の超能力には絶対の自信を持つ。黒須越郎とは越郎と悟が高校生の時、二人の高校の文化祭で知り合った。その後は特にかかわりがなかったが、ある日悟からとんでもないものを見てしまったという連絡が入り、不審に思う。さらに、それから悟の居場所がわからなくなり、不安を感じていたところ、偶然越郎に再会。また、この時に宮市莉央とも知り合うが、莉央にはサイコメトリー能力が通じず、このことから彼女が心を閉ざした危険人物であると確信する。その直後、これを察した莉央の手によって「講談組」のやくざに殺されそうになるが、越郎によって救われる。その後は越郎と莉央にはかかわらずにいたが、シュナイダー純に協力を依頼され、いっしょに越郎と莉央を追うことになる。

山際 悟 (やまぎわ さとる)

宮市莉央と同じ大学の男子で、年齢は22歳。のちに莉央に殺害される。山際春子の兄で、黒須越郎の知人でもある。前髪を真ん中で分けた短髪で、眼鏡を掛けている。以前から猟奇的なものに関心があり、猟奇殺人鬼に関する本などを集めていた。ある日、ひそかにあこがれていた莉央が殺人を犯すところを偶然目撃し、その手口のあざやかさから初犯ではないことを確信する。そこで莉央に現場を見ていたことを打ち明け、誘われるがままに莉央の部屋に行って殺害された。その後、死体は延命寺玲奈の手に渡り、死をごまかすためにドイツ留学したことにされていた。しかし、莉央の殺人を目撃した直後に山際悟が春子に連絡していたことから、春子は莉央に不信感を抱くようになる。

杉浦 富士子 (すぎうら ふじこ)

結婚詐欺師で、連続保険金殺人犯の女性。年齢は20代前半。これまでに榊光徳のもとで何度も美容整形を繰り返しており、一時期は派手な容姿だったが、現在は男性受けしそうな地味な美形に変貌している。右の鎖骨の上にほくろが横に三つ並んでいる。黒須越郎と出会った時は「藤浦かよ」と名乗り、前髪を目が隠れるほど伸ばしてばらばらの高さに切りそろえた、黒の前下がりのボブヘアにしていた。また職業は保育士と偽り、子供好きで料理が得意なおとなしい女性を演じていた。身長は150センチほどで、きき手は左手。ある日、複数の男性に結婚詐欺を働き、多額の保険金をかけたのちに殺すという手口が発覚して指名手配される。それでも気にすることなく次のターゲットを探していた際に、婚活パーティー会場で越郎と知り合う。そこで越郎に狙いを定めるが、宮市莉央に無関係な殺人事件の濡れ衣を着せられた。これによって警察の追跡はますます激しくなり、越郎を頼って彼と同棲生活を始める。越郎に毒物を盛って入院させたのち、医療ミスを装って病院から示談金を手に入れたり、越郎の子供を妊娠したとウソをついて越郎からお金を巻き上げたりしようとした。そのため莉央によって殺されかけるが、越郎が殺さないでほしいと懇願したことで警察に引き渡した。しかしその直後、整形手術時に光徳によって体に仕込まれた装置が発動したことで死亡した。

榊 光徳 (さかき こうとく)

表向きは小児科医として、裏では整形外科医として働いている男性。前髪を額が見えるほど短く切った、ピンク色の短髪にしている。まったく同じ容姿の双子の兄弟がおり、二人で入れ替わりながら感情も知識も共有し、一人分の学費でひそかに二人とも学校に通っていた。共に傲慢で身勝手な性格をしている。児童養護施設に預けられて育ち、周囲からは浮いた存在でありながらも、安孫子すばるとは三人きょうだいといえるほどに親しかった。そんなある日、実の両親に引き取られたすばるが、両親の異常性に気づいた結果、殺されそうになっていることを知る。そこですぐさま助けに行くが、自分たちの代わりにすばるを救った宮市莉央のことを知り、強く惹かれるようになっていく。やがて手先の器用さを生かして医学の道へ進み、外科医となる。特に縫合の技術は神業と評価されるが、自分たちが命を救う行為ではなく、命を扱うこと自体に喜びを感じていることに気づいてしまう。そして自分たちが神と呼ばれるほどの存在なら、血のつながった家族を手術で無理やり作り出せばいいと考えるようになった。それからは表向きは町の小児科医、裏では闇医者として活動を始め、将来莉央と血のつながった家族になるために、無関係の患者に手術を施して容姿を自分好みに変え、自分の血を輸血して家族にした。最後に莉央を家族として迎えるだけという段階で黒須越郎の存在を知り、彼を排除しようと試みる。しかしこれに失敗し、さらに越郎と莉央が恋人関係であることを知って激怒。二人で越郎と莉央を追っていたが、双子の一人がシュナイダー純によって射殺される。世間には双子であることは知られておらず、その後も越郎たちのことを狙い続ける。

紗耶 (さや)

榊光徳によって整形手術を施され、光徳の娘として扱われているドミニカ人。顔は杉浦富士子とそっくりに整形されており、体は非常に筋肉質。絢耶の双子の姉として扱われているが、本来の性別は不明。完全に自我が崩壊しており、自分と絢耶を本物の光徳の娘だと思い込んでいる。ある日、光徳の命令で絢耶と二人で黒須越郎を誘拐することになったが、この計画は失敗。その後、今度は宮市莉央の地元に光徳を加えた三人で向かい、越郎と莉央を生け捕りにしようともくろむ。

絢耶 (あや)

榊光徳によって整形手術を施され、光徳の娘として扱われているドミニカ人。顔は杉浦富士子とそっくりに整形されており、体は非常に筋肉質。紗耶の双子の妹として扱われているが、本来の性別は不明。完全に自我が崩壊しており、自分と紗耶を本物の光徳の娘だと思い込んでいる。ある日、光徳の命令で紗耶と二人で黒須越郎を誘拐することになったが、この計画は失敗。その後、今度は宮市莉央の地元に光徳を加えた三人で向かい、越郎と莉央を生け捕りにしようともくろむ。

宮市 毅 (みやいち つよし)

宮市莉央の兄で、享年23歳。前髪を目の上で切った短髪で、容姿や雰囲気が黒須越郎とよく似ている。両親に期待されて育ち、東京の大学に進学した。しかし卒業後は地元に戻り、定職につかない日々を送っていた。そんなある日、交際中の女性がドラッグの過剰投与でバッドトリップし、目の前で自殺未遂。そんな彼女を見て、もはや死んだ方が幸せなのではないかと考えて殺害したが、その現場を莉央に目撃されてしまう。これによって、目的のためなら殺人もいとわない人間であると莉央に誤解され、殺人に強い関心を持つ莉央と交換日記を始めることとなった。しかし、実際は良心の呵責に悩まされており、しばらくして自殺を決行。これは失敗に終わるが、失望した莉央に現場を目撃されたことで、自殺に見せかけて殺害された。

桐山 杏奈 (きりやま あんな)

清掃会社「戸沢清掃(株)」に勤務する若い女性。前髪を真ん中で分けて外側に向かってカールさせ、肩につくほどの茶色のセミロングヘアにしている。左目尻にほくろが一つあり、両手首には何本ものリストカット痕がある。陰気で思い込みの激しい性格で、自分のことを好きになれずに何度も自殺未遂を繰り返している。安孫子すばるたちが経営するボランティア団体「表裏一体」にも所属しているが、ここもなじめずにいた。そんなある日、新入社員としてやって来た黒須越郎のことを気に入り、積極的にアプローチを繰り返すようになる。そんな中、越郎に自分を殺してほしいと頼むが、失敗に終わる。この時、越郎には心に決めた女性がいると理解して身を引くが、その後も「表裏一体」のイベントに参加した越郎に、団体に関する説明などをしていた。それからしばらくたったある日、越郎が宮市莉央を取り戻しに榊光徳と「笑喜愛友園(しょうきあいゆうえん)」に潜入した際、すばるの命令で越郎たちの命を狙う。

安孫子 すばる (あびこ すばる)

ボランティア団体「表裏一体」の中心メンバーの若い女性。「表裏一体」が経営する「笑喜愛友園(しょうきあいゆうえん)」で働いている。顎まで伸ばした癖のあるボブヘアにしている。表向きは善良で模範的な人物として振る舞っているが、精神的に欠落しており、その本性は残虐。生まれてすぐに両親によって児童養護施設に預けられ、二人の榊光徳ときょうだい同然の関係となる。そんな中、突然現れた実の両親に引き取られ、二人が経営するボランティア団体で暮らすことになる。この生活になじめず、やがて両親に殺意を抱いて光徳たちに助けを求めるが、両親が盗聴器を仕掛けていたことが発覚。殺人を企てた罰として、団体に所属する男性たちの、性的な慰み者になるように命じられる。しかしここで、すばると同じ理由で連れてこられていた宮市莉央に助けられ、莉央に偏執的な愛情を抱くようになる。両親の団体を継いで慈善活動をしながら、いつか安孫子すばる自身が莉央になることを目指すようになった。そんなある日、病院で意識不明の莉央に再会。莉央の意識が戻った頃を見計らい、同じ病院の患者のふりをして接近する。

書誌情報

穴殺人 8巻 講談社〈講談社コミックス〉

第3巻

(2015-01-09発行、 978-4063952810)

第4巻

(2015-05-08発行、 978-4063953886)

第5巻

(2015-08-07発行、 978-4063954517)

第6巻

(2016-02-09発行、 978-4063956344)

第7巻

(2016-07-08発行、 978-4063957051)

第8巻

(2016-11-09発行、 978-4063958195)

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