あらすじ
第1巻
夏乃はなびは、高校進学を機に6年前まで暮らしていた地域に戻り「橘館」という寮で生活することになった。しかしはなびが所在地へ向かうと、そこは聞いていた話とはまるで違う、古びた建物だった。実は「橘館」の近くには名前がよく似た「立花館」という寮があったため、はなびのおばはまちがえて「立花館」に入居手続きをしてしまったのである。慌ててはなびは「立花館」の管理人であり、幼なじみの藤原依子に事情を伝えて「橘館」に連絡するが、すでに部屋は満室になっていた。さらに依子曰く、すでに契約書にサインしてしまったはなびは、最低1か月は「立花館」で暮らさないと、高額な違約金を請求されてしまうのだという。こうしてはなびは仕方なく「立花館」で暮らすことにするが、そこで出会ったミステリアスな同級生の篁いおりと親しくなり、幼なじみで妹的な存在の藤原このみと再度交流を深めたり、セクシーな年上女性の月城優に困惑したりしながらも「立花館」の生活を楽しんでいた。そして予定の1か月はあっという間に過ぎ、はなびは「立花館」を去ろうとするが、いおりには自分の気持ちに素直になれと諭され、このみにも引き止められたことで、引っ越しをやめて「立花館」で暮らすと決めるのだった。
第2巻
夏乃はなびは、高校在学中は「立花館」で暮らすことを決め、さらに新しい入居者として、女子大学生の三井そのあが加わる。しかしはなびは、藤原このみに篁いおりとの関係をすっかり誤解されていた。はなびはいおりとふつうの友人として親しくしているものの、いっしょにいると服や下着が脱げたり、転んで絡み合ったりしてしまうなど、なぜかセクシーなトラブルに巻き込まれることが多い。しかもそれを、いつもこのみに目撃されてしまっているため、このみはいおりを、いつもはなびに色仕掛けしている、困った女性だと認識するようになっていたのである。そんなはなびは、ミステリアスで何を考えているのか今一つわからないいおりへの理解を少しずつ深めながら夏を過ごす。そんなある日、はなびは、いおりのたっての希望で、いっしょに七夕祭りへ行くことになる。はなびはこのみにやきもちを妬かれつつ当日を迎えるが、このみはこのみで、学校の友人と七夕祭りへ行くことを知り、なぜか寂しい気持ちになる。そんなはなびをいおりは気遣うが、いおりとの関係に自信を持てないはなびは、自分を夏祭りに誘ってくれた理由を思わず尋ねてしまう。
第3巻
夏乃はなびは、七夕祭りの最中、篁いおりが自分を大切に思ってくれていることを知り、仲を深めていく。一方その頃、藤原このみは後輩の大山奈羽とお祭りを楽しんでいたが、どうしてもはなびたちのことが気になって捜しに行った際に、二人がキスをしている場面を目撃してしまう。これはこのみの見まちがいなのだが、その直後、いおりは「立花館」の面々に、はなびに恋愛感情を抱いていることを伝える。この二件の出来事によって、このみはますますいおりをライバル視するようになる。しかしはなび自身は、いおりがどの程度本気なのかわからず、混乱していた。やがて夏休みの最終日にして、このみの誕生日でもある8月31日を迎えるが、誕生日プレゼントを用意できなかったはなびは、その代わりとして、このみといっしょに展望台へ星を見に行くことになる。そこでこのみは、はなびへの複雑な思いを打ち明け、これが恋愛感情なのかを確認するためにキスをしようとする。しかしそこに野生の猪が現れ、二人は危機に陥る。結局このみが身を挺して猪を退治したことで事なきを得るが、関係は発展せずに終わってしまうのだった。
第4巻
冬になり、クリスマスが近づいてきた。そんなある日、夏乃はなびは、二人には秘密で藤原このみ、篁いおりと、同じ日に同じ場所へ遊びに行くことになってしまう。そこではなびは、13時に先にこのみと会い、14時に待ち合わせするいおりと合流するまでに、このみに事情を説明しようと考える。しかし、このみは二人で出かけられることを非常に楽しみにしており、はなびはなかなか言い出せなくなってしまう。そのまま14時になり、ひとまずこのみは理由を付けてその場を抜け出し、いおりに会いに行く。しかし、いおりにも事情を説明することができなかった。結果的に、理由をつけて一人のもとを離れては、もう一人に会いに行くという、不誠実な態度を取ってしまうのだった。これによってはなびは、このみに自分といても楽しくないのだと誤解され、このみはその場を去ってしまう。深く反省したはなびは、いおりに本当のことを打ち明け、いっしょにこのみを捜してほしいと頼み込む。一方その頃、二人のもとに戻りづらくなっていたこのみは、偶然大山奈羽に出会い、しばらくいっしょに頭を冷やすことにするが、二人は誤ってクリスマスオブジェの裏に入り込んでしまう。さらにそこへ、何も知らないはなびといおりがやって来る。
第5巻
年が明け、お正月に一度帰省した夏乃はなびに対し、篁いおりは宮城県の実家に戻っていない様子だった。そんないおりをはなびは心配するが、突如いっしょに実家に帰ってほしいと頼まれ、共にいおりの母親の篁恵美が女将を務める温泉旅館へ向かうことになる。いおりは将来この旅館を継ぐ予定なのだが、ずっと苦労している恵美を見てきたために乗り気になれず、悩んでいた。そこで中学3年生のある日、偶然出会った藤原依子の勧めもあり、見聞を広めるためにも一度地元を離れ、「立花館」への入居を決めたのだという。これを知ったはなびは、いおりと恵美が到着後、言葉をまったく交さないのを心配し、恵美に声を掛ける。しかし、恵美はいおりの気持ちを理解しており、結論が出るまでは見守るつもりでいることを語り、はなびは安心して旅行を終えるのだった。こうして二月に入ってバレンタインデーとなるが、どうやらいおりも藤原このみも本命チョコを用意していると知ったはなびは、自分の気持ちが定まらない以上、どちらからも受け取ってはいけないのではないかと悩んでいた。これを聞いた月城優は、今は無理に結論を出さなくてもいいのではないかと、はなびを諭す。これによってはなびは、今年は二人からチョコを受け取り、自分からも二人にチョコを贈るのだった。
第6巻
新学期が始まり、高校受験に合格した藤原このみは、無事に夏乃はなびと篁いおりの後輩となった。夏休みとなり、今年こそはなびと二人きりで七夕祭りに行きたいと意気込むこのみと、それを阻止しようとするいおりは火花を散らす。そんなある日、はなびの母親の夏乃朝陽が「立花館」に来るという報せが届く。朝陽ははなびの入寮に関しては、はなびのおば任せにしていたため、長らく「橘館」に入居しているとカンちがいしていたが、真相を知ったことから一度様子を見たいのだという。これによってはなびたちは、はなびが朝陽に引っ越しさせられてしまうのではないかと不安になる。しかし、そんな心配もよそに、朝陽ははなびの意思に任せるとのことだった。そのまま七夕祭りの件もうやむやになり、はなびたちは三人で七夕祭りに行くのだった。こうして三人の関係は変化しないままに夏が過ぎていくが、朝陽はあることに気づいていた。それはこのみが、かつてはなびにプレゼントされた、二つで一つのヘアピンを今でも大切にしていることだった。そこで朝陽は、はなびが実家に置いていったもう一つのヘアピンを、こっそりはなびの自室に置いて帰るのだった。
第7巻
篁いおりは夏のある日、一羽の蝶を保護したことで、昆虫への関心を強めるようになっていた。対する藤原このみは、ある日偶然、夏乃はなびが東京都の大学へ進学を考えていることを知ってしまう。そこでこのみは、セクシーな下着を身につけてはなびを誘惑するが、失敗に終わるものの、はなびはまだ進路を決めておらず、参考に資料を取り寄せていただけだということを知る。しかし高校卒業後に、はなびが「立花館」を出ていくかもしれないという事実は変わらず、大いに焦っていた。そこでこのみは自分たちの関係を変えるため、はなびにキスをするが、これをいおりが目撃していた。
第8巻
9月になり「立花館」の面々は、少し早いハロウィンパーティをすることになった。先日、藤原このみとキスをしたばかりの夏乃はなびは、このみがパーティに乗じてせまってくるのではないかと期待するが、ふと冷静になって最近自分がこのみのことばかり考えていることを自覚する。その直後、はなびと篁いおりは修学旅行で沖縄県へ行くことになる。実行委員となったはなびは、積極的にクラスメートたちと話し合い、同じ班のいおりの面倒を見たりと多忙な時間を過ごすが、いおりはこれを寂しく思っていた。以前のはなびは周囲になじめず、いおりは好きなだけはなびといっしょにいられる状況だった。しかし修学旅行ではそうもいかず、さらに先日のはなびとこのみのキスを目撃したいおりは、内心不安になっていたのである。そんないおりは、班行動中に無理やりはなびを連れ出し、そのまま行き先もわからない船に乗ってしまう。こうしてクラスメートたちと分かれてしまった二人は、担任の香納浅子の指示で、その日は別の宿に泊まることになる。ここでもいおりの様子はおかしいままで、はなびは襲われかけるものの、やはり今はいおりとこのみのどちらかを選ぶことはできず、関係を進展させることはなく一夜を過ごすのだった。
第9巻
春を迎え、夏乃はなびと篁いおりは3年生に、藤原このみは2年生に進級した。月城優は年末年始に過去を清算するために転職を決め、三井そのあは看護短期大学を卒業して養護教諭となり、それぞれに新しい生活が始まっていた。そんなある日、昆虫関係の講演会に参加していたいおりは、教授から海外の大学への留学を勧められる。いおりはこれをすぐにはなびに報告するが、はなびは突然のことに動転し、きちんと話ができないままに終わってしまう。以来、教授に気に入られたいおりは教授の昆虫採集に付き添うようになり、さらにはしばらく「立花館」を離れて、教授と共に北海道で行われるイベントへ行ってしまう。はなびはこれを寂しく思いつつも何もできずにいたが、そんな折、このみと藤原依子の祖母である、「立花館」の持ち主が戻ってくるという報せが入る。これによって、「立花館」は祖母が戻るまでの期間限定の寮であったことを思い出した依子は、「立花館」の解散を宣言。まだいおりが戻らないにもかかわらず、すぐにほかの住まいを探してほしいとはなびたちに頼む。ショックを受けたはなびは、いおりへの思いを自覚して涙する。そして、これを見たこのみは「立花館」解散を阻止するため、翌日にはなびを連れて家出をする。
スピンオフ
漫画
本作『立花館To Lieあんぐる』のスピンオフ作品として、merryhachiの『橘館Ce Lebらいふ』がある。これは本作の主人公の夏乃はなびが本来入居するはずだった「橘館」を舞台にしており、本来「立花館」へ入居するはずだったにもかかわらず、はなびと入れ替わって橘館に入居することになった少女、冬乃つぼみの物語が描かれている。
メディアミックス
TVアニメ
2018年4月から6月にかけて、本作『立花館To Lieあんぐる』のTVアニメ版『立花館To Lieあんぐる』がTOKYO MXほかで放送された。総監督はひらさわひさよし、シリーズ構成と脚本はWORDS in STEREO、キャラクターデザインは花井柚都子が務めた。夏乃はなびを津田美波、篁いおりを仲田ありさ、藤原このみを桜木アミサが演じている。
登場人物・キャラクター
夏乃 はなび (なつの はなび)
大川高校に通う1年生の女子で、アパート「立花館」の住人。のちに、2年4組に進級する。黒の前下がりボブヘアの、小柄で細身の体型をした少女。ボーイッシュな服装を好むこともあり、その髪形も相まって、周囲には中性的な印象を与える。藤原依子からは「はなちゃん」、月城優からは「はなちん」、泉マリからは苗字の「夏」からとって「なつメロ」と呼ばれている。まじめで心優しい性格ながら、やや引っ込み思案で優柔不断な一面がある。また、なぜか周囲の女性たちとのセクシーなトラブルに巻き込まれやすく、よく裸や下着姿の女性に遭遇したり、転んで女性と絡み合ったりしている。小学3年生の頃までは「立花館」のある地域に住んでおり、依子と藤原このみとは、この頃に親しくなった。その後、東京都に引っ越してから、高校進学に至るまでは勉強づけの毎日を送ることになり、その結果、コミュニケーションが不得手で、特に同年代との交流に苦手意識を持つようになってしまう。そんな15歳の春、高校進学を機に「立花館」のある地域に戻ってきたが、おばの手違いにより、本来入居予定だった「橘館」ではなく、名前の似ている「立花館」で暮らすことになる。そして、ここで再会したこのみや、同じく大川高校に進学した住人の篁いおりに熱烈に慕われることとなり、三角関係になってしまう。しかし、二人の思いに向き合い、また「立花館」での住人たちとの共同生活を経るうち、少しずつコミュニケーション下手を克服し、前向きになっていく。誕生日は5月5日で、身長は152センチ。
篁 いおり (たかむら いおり)
大川高校に通う1年生の女子で、アパート「立花館」の住人。のちに、2年4組に進級する。宮城県出身で、県内にある温泉旅館の跡取り娘でもある。銀色の髪をショートヘアにした、色白なスタイル抜群の美少女。男性のような固い口調で話し、藤原このみからはよく夏乃はなびと絡み合っていたり、はなびに色仕掛けをしたりしているために「エロ女」と呼ばれている。藤原依子からは「いおちゃん」と呼ばれている。寡黙な性格で感情をあらわにしないため、何を考えているのかわかりづらく、一見ミステリアスな印象を与える。しかし、実際は単にマイペースなだけで、細かいことを気にしていないだけである。また、自分の下着が見えていても気づかなかったり、裸を見られてもまるで気にしなかったりと、非常に無頓着で周囲を困惑させることが多い。中学3年生までは宮城県で生活しており、母親の篁恵美の跡を継いで旅館の女将になる予定だった。しかし、恵美の気苦労を知っているために乗り気になれず、悩んでいたある日、恵美の仕事に付き添って「立花館」のある地域を訪れる。この時偶然、入居者を募集していた依子に出会い、引っ越しを決意。高校在学中は親元を離れ、見聞を広めることになった。これによって同じく入居者のはなびに出会い、すぐに彼女を気に入り、熱烈なアプローチを仕掛けるようになる。そして自然あふれる「立花館」で過ごすうち、昆虫に興味を持つようになっていく。誕生日は2月12日で、身長は154センチ。「ユリピュア」という女児向けアニメ作品が好き。温泉旅館の娘ながら、子供の頃からお風呂ではすぐにのぼせてしまう。
藤原 このみ (ふじわら このみ)
小川町立東中学校に通う、3年生の女子。「立花館」を経営する夫婦の孫であり、藤原依子の妹。女子バスケットボール部に所属し、ポジションはポイントガード。のちに、大川高校に進学する。依子からは「このちゃん」と呼ばれている。桃色のロングヘアをおさげにした、元気いっぱいの明るい性格の持ち主。やや怒りっぽいところもあるが、素直で一生懸命な人柄から、周囲にかわいがられ、後輩の大山奈羽にも慕われている。生まれた時からずっと「立花館」のある地域で育ち、特に1歳年上の幼なじみである夏乃はなびのことが大好きで、実の姉妹のように懐いていた。そのため、小学2年生の頃にはなびが引っ越してしまった際には、非常にショックを受けて落ち込んでいた。しかし、はなびが高校進学を機に戻ってくることを知り、さらに「立花館」に入居するとのことで、再会を心待ちにしていた。しかし、戻ってきたはなびが自分のことを思い出してくれないうえに、入居は手違いであったことが判明し、複雑な感情を抱くようになる。これによって再会当初は素直になれずにいたが、すぐにはなびと仲直りした。しかし、はなびを気に入っている女性の篁いおりの登場により、はなびを巡っていおりと争うようになる。また、その過程で、はなびへの恋愛感情を自覚していく。誕生日は8月31日で、身長は150センチ。特技は料理で、料理が苦手な依子の代わりに食事を作っている。
藤原 依子 (ふじわら よりこ)
アパート「立花館」の管理人を務める女性で、年齢は22歳。「立花館」を経営する夫婦の孫であり、藤原このみの姉。このみの実の姉だが「お姉ちゃん」とは呼んでもらえず、「依ちゃん」と呼ばれていることを内心寂しく思っている。桃色の巻き髪セミロングヘアで、非常に胸が大きい、スタイル抜群のおっとりした雰囲気を漂わせている。やや強引に物事を進めたり、人の話を聞いていなかったりと、マイペースなところがある。しかし基本的には包容力があり、困った人を放っておけない優しさと他者を包み込むような温かい人柄から、住人たちや妹からは母親的な存在になっている。かつては不愛想で、6年前、夏乃はなびが地元にいた頃も特に親しいというわけではなく、はなびとの別れに傷つくこのみに対しても無関心だった。だが、はなびの引っ越しを機にこれを反省し、現在の性格に至る。また、恋愛に対しては非常にまじめで、学生時代から異性に人気があるが誰とも交際せず、両思いの月城優に対しても、優が過去を清算し、自分自身を愛せるようになるまでは交際しないと決めている。学生時代のある日、祖父母が不便であるという理由で自宅を離れたことから、祖父母の自宅にこのみと二人で住むようになる。また、この頃に優に出会い、居場所のない優のような人間を助けるために、この家を寮にすることを決意。そして「立花館」と名づけ、管理人となった。しかしこれはその後、海外旅行に行った祖父母が再び、この家に住むようになるまでの期間限定である。住人たちを巻き込んで夜な夜な宴会をしたがるほどお酒とパーティが大好きだが、料理は苦手。また、車の運転が非常に荒い。誕生日は4月19日で、身長は166センチ。
月城 優 (つきしろ ゆう)
歯科医で働く女性で、アパート「立花館」の住人。年齢は22歳。しかし、歯科医での仕事はほとんど患者の来ない中、医院長の話し相手をする程度だったため、のちに転職する。金色の巻き髪ロングヘアに、長身でスタイル抜群、さらに派手な露出度の高い服装を好んで身につけている。高校時代まではレディースチームに所属するヤンキーだったこともあり、少し乱暴な口調で話す。明るく自由奔放で、細かいことを気にしない姉御肌タイプ。また、人との距離感が近くスキンシップが過多なため、夏乃はなびや三井そのあをはじめ、知り合ったばかりの相手を驚かせることがある。高校時代に同じレディースチームにいた友人、亜季の恋人に手を出したと濡れ衣を着せられ、亜季や、ほかの仲間から集団暴行を受けて大ケガを負う。これに深いショックを受けて衝動的に地元を飛び出し、偶然降り立った駅で倒れたところを、藤原依子に助けられた。その後、傷が癒えるまで、当時二人暮らしだった藤原姉妹の家で暮らすことになり、そのまま居ついて現在に至る。そのため「立花館」の最初の住人であるともいえる。その後地元には一度も戻っておらず、父親には失踪したと思われている。このような過去から、一見明るく振る舞っているものの自分自身を好きになれずにおり、この点を依子に心配されている。誕生日は7月25日で、身長168センチ。
三井 そのあ (みつい そのあ)
3年制の短期看護大学に通う女子で、年齢は18歳。アパート「立花館」の住人でもある。紫色のストレートロングヘアを姫カットにしており、かわいらしい雰囲気ながら大きな胸を強調した、異性受けするファッションを好む。意地っ張りでなかなか素直になれないところがあるが、非常に面倒見がよく心優しい。しかし、その優しさをうまく表現できず、また自分はコミュニケーションが苦手だと思い込んでいる。その結果、わざと他人に関心がないように振る舞ったり、意地悪な人間のふりをしたりしてしまうことがある。18歳のある日、居酒屋で悪質な客に絡まれて困っていたところを月城優に助けられ、「立花館」に泊まることになる。そして、酔った状態で入居の契約書にサインしてしまい、夏乃はなび同様に違約金の件もあって、藤原依子に押し切られる形で住むことになった。玉の輿を夢見ており、金持ちの男性と交際するための努力を惜しまない。短期看護大学に進学したのも、看護師になって医師の男性と知り合うためである。しかし、あまり成果は出ておらず、現在も交際相手はいない。それどころか、優と依子の関係を薄々理解しながら、優に惹かれていくことになる。誕生日は11月2日で、身長は160センチ。お酒に弱く、酔うと別人のように甘えん坊になり、なぜか丁寧なお嬢様口調になる。料理が壊滅的に苦手。
大山 奈羽 (おおやま なう)
小川町立東中学校に通う2年生の女子で、藤原このみの後輩にあたる。女子バスケットボール部に所属している。黒髪をストレートロングにした清楚な少女で、非常に胸が大きい。まじめで心優しい性格で、先輩であるこのみを慕っている。そのため、自分もこのみのような優秀なバスケットボール選手になりたいと願っているが、体力にも俊敏さにも欠け、スターティングメンバーにもなれず、実力は今一つ。実はこのみに思いを寄せており、このみにも思い人がいることを知りながら片思いしている。しかし、このみにとっては夏乃はなびが思い人で、篁いおりがライバルであるところを、いおりが思い人で、はなびがライバルであると、実際とは逆に解釈している。その結果、自分にとってのライバルが、はなびであることは知らずにいる。そのため、特定の人物をライバル視して競うのではなく、自分自身を磨くという方法で、少しずつこのみにアプローチしていく。
篁 恵美 (たかむら めぐみ)
宮城県にある温泉旅館の女将を務める中年女性で、篁いおりの母親。ロングヘアをまとめ髪にした、クールで落ち着いた雰囲気を漂わせている。顔立ちはいおりと非常によく似ている。もともとは旅館の関係者ではなく、嫁ぐ形でやって来た。そのため、結婚後に女将としてさまざまな苦労を経験することとなり、これをいおりが見てきたことから、彼女が女将の仕事に前向きになれないことを理解している。そんなある日、地酒の仕入れでいおりと共に「立花館」のある町に出かけた際、いおりが藤原依子に出会い、高校時代は見聞を広めるために地元を離れたいと言い出す。これに応じ、現在はいおりの成長を離れた場所から見守っている。
夏乃 朝陽 (なつの あさひ)
夏乃はなびの母親。腰まで伸ばしたロングヘアで、男性的なファッションを好む、明るくさっぱりした性格の美女。転勤の多い夫に付き添う形で各地を転々としているが、はなびが小学校3年生になるまでは「立花館」のある地域で長く暮らしていた。そのため、はなびと藤原このみの関係についても理解している。はなびが忘れている、はなびとこのみが持っているペアのヘアピンのことも覚えている。
香納 浅子 (かのう あさこ)
大川高校で教師を務める若い女性。夏乃はなびと篁いおりが高校2年の時に大川高校に赴任してきた新任教師で、この年は2年4組の担任を務める。額を全開にしたボブヘアに眼鏡を掛けており、かわいらしい顔立ちで実年齢よりも幼く見える。特に胸が小さいことをからかわれがちで、生徒からは、苗字の「香納」と「不可能」をかけて、香納浅子自身の体形では胸でセクシーさをアピールするのは不可能という意味を込め、「不可能先生」「ふかのーちゃん」と呼ばれている。まじめな性格で何事にも一生懸命ながら、熱意が空回りしがちなうえ、周囲に振り回されることが多く、気苦労が絶えない。一方で、酔うと別人のように積極的で強引になり、その行動は誰にも止められなくなってしまう。
泉 マリ (いずみ まり)
大川高校2年4組に在籍する女子で、夏乃はなびと篁いおりのクラスメート。二人とは、2年生に進級してから知り合った。ウエーブボブヘアにしたややヤンキー気質のギャルで、左目の真下にほくろが一つある。鍋谷かなことは非常に仲がよくていつもいっしょにいるが、はなびとは高校2年生の1学期が終わってからも、ほとんど接点がなかった。しかし高校2年生の夏休み登校日、はなびから「立花館」での生活を聞き、はなびが性的なことを日常的に行っている、熟練者であると誤解する。以来、はなびに関心を持つようになり、かなこも交えて少しずつ親しくなっていく。人に変わったあだ名を付けるのが好きで、はなびのことも「なつメロ」と呼んでいる。
鍋谷 かなこ (なべや かなこ)
大川高校2年4組に在籍する女子で、夏乃はなびと篁いおりのクラスメート。二人とは、2年生に進級してから知り合った。髪をお団子にしており、いつもいっしょにいる泉マリの、つっこみ役を担っている。しかし、はなびとは高校2年生の1学期が終わってからも、ほとんど接点がなかった。だが高校2年生の夏休み登校日、はなびから「立花館」での生活を聞き、はなびが性的なことを日常的に行っている、熟練者であると誤解する。以来、はなびに関心を持つようになり、マリも交えて少しずつ親しくなっていく。
亜季 (あき)
シングルマザーの女性で、年齢は22歳。月城優の高校時代の友人で、同じレディースチームに所属していた元ヤンキー。つり目でボブヘアの狐顔で、耳にいくつもピアスをつけている。高校時代のある日、優が自分の恋人を奪ったとカンちがいし、腹を立てて仲間と共に優を集団暴行する。そのまま優が行方不明になったため、以来5年以上会わずにいた。このあいだに当時の恋人とのあいだに男児をもうけるが、恋人は亜季のもとを去り、現在は一人で子供を育てている。ちなみに愛煙家で、優がキャスターを吸っているのは亜季の影響による。