概要・あらすじ
大学院生の牧村もも(まき)は、「たぬき眼科」で働いている。昼休み、同僚の男の子が彼女から結婚を迫られているという話の流れで、同じく同僚のおばさんから「牧村さんは男っ気ないから心配」と勝手なことを言われてしまう。まきは女子高校時代に付き合っていた初恋の大西みどりのことをいまだに忘れられずにいた。みどりのほうから誘ってきたのに、卒業と同時にみどりは「どっちが先に彼氏できるか勝負しよう」と言って、まきのもとから去っていった。まきはツイッターで知り合った女子高校生の小毬に今日の出来事を電話で愚痴る。小毬は自分と同じく女の子が好きな女子で、気兼ねせずいろいろな話を相談できる相手だった。小毬から「初恋の人にはもう未練はないのか」と聞かれ、ないとつい噓をついてしまうまき。高校時代を思い出していたまきは、眼科で検査を受けにきた女性がみどりだったことに驚く。みどりは「この再会は運命かも」と無邪気に笑う。喫茶店で話した後の帰り道。みどりは懐かしいと言いながら、まきと手をつなぎ、別れ際にキスをした。まきは悔しいと思いながらも、またみどりに惹かれていく。連絡先を交換し、再び会うことになったまきは、おめかしをして出かけるものの、みどりに結婚式の招待状を渡されショックを受ける。惚(ほ)れた弱みでみどりに誘われると断れないまきは、みどりの新居におじゃまする。婚約者の外ノ池たずねはみどりをバカにし、下に見るような男だった。みどりは彼との間に子供ができて、結婚することになったと言う。みどりは結婚間近で幸せなはずなのに、まきには幸せそうには見えなかった。「おめでとうって言って。逃げ出したくなっちゃうから」と言うみどりに「じゃあ逃げようよ。かけおちしよ」とまきが真剣に言うと、みどりは大きな口を開けて笑った。
登場人物・キャラクター
牧村 もも (まきむら もも)
大学院に通う地味で大人しい女性。28歳で、メガネをかけ、黒髪にひっつめ髪。女子高校時代につきあっていた女性、大西みどりを忘れられずにいる。実家暮らしで妹がいる。同性が好きで男性には興味がない。「たぬき眼科」でアルバイトをしている。強引な人に流されやすい性格。
大西 みどり (おおにし みどり)
「インポート古着店」の女性店長。美人で明るく、いつも笑っている。寂しがり屋で人たらし。髪型は前髪のないボブカットで、八重歯がある。左目の下にホクロがあり、目尻はつり上がっている。女子高校時代、牧村もも(まき)に自分からアプローチして付き合うが、卒業と同時にあっさり別れを切り出す。付き合っていた男性、外ノ池たずねとの子を身ごもり、結婚する予定。
小毬 (こまり)
女子高校生。牧村もも(まき)がツイッターで知り合った友達。同性愛者で女の子が好き。まきの良き相談相手。
外ノ池 たずね (とのいけ たずね)
大西みどりの婚約者の男性。アクセサリーなどを扱う問屋で働いている。男尊女卑でみどりを下に見ている。若い頃は女性にバカにされたり、からかわれたことがトラウマで女性が怖かった。大学生になる直前に髪を切って垢(あか)ぬけたことで女性にモテるようになり、女性を軽視するようになった。