紅にほふ

紅にほふ

大正時代、日露戦争後に日本の領土となった満州に渡った2人の少女と、彼女たちの母代わりの芸妓、そして芸妓の実の子供である少女が、第二次世界大戦勃発から終戦後に満州を引き揚げるまで、厳しい情勢下に置かれながらも強く生き抜く姿を描いている。舞台は時折現代に移り、思い出話として当時を振り返るという体裁をとっている。「ビッグゴールド」に連載されていた作品。

正式名称
紅にほふ
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概要・あらすじ

大正6年、咲子梅子の2人の少女は、日本の領土となった大連を含む満州へと渡った。彼女たちは満州にある奉天の置屋「湖龍」の女将に買われた孤児であった。芸事の才能を見出された咲子は芸を磨き、梅子は左腕の障害から芸妓の道を目指さず「湖龍」の下働きとなる。やがて「湖龍」の女将が亡くなり、咲子たちの憧れの芸妓である木村ツネヲ(五郎)が「湖龍」の新たな女将となった。

そして咲子は半玉(はんぎょく)「咲耶」となり、修行のため大連へと向かう。同じ頃、「五郎」の名を降ろして「湖龍」の女将となったツネヲは、ツネヲの夫と結婚し、初子を妊娠・出産。芸妓の道を進んでいく咲子、下働きから嫁ぐことが決まった梅子、そして夫と初子に加え、咲子の子供である木村秀男と暮らすことになったツネヲ。

現代の咲子、梅子、初子は、そんな当時の満州での暮らしを回想し、初子の娘の蒔子は、3人の話を興味深く聞くのだった。

登場人物・キャラクター

咲子

6歳の頃に、満州の奉天の置屋「湖龍」で芸妓の修行を積むことになった元孤児の少女。里子に出されていたところを「湖龍」の女将に買われる。梅子と一緒に、当時「五郎」と名乗っていた木村ツネヲに育てられ、14歳で半玉(はんぎょく)「咲耶」となり、舞妓として大連に修行に出る。そして旦那に水揚げされ、一本芸者「五郎」として独り立ちする。 やがて旦那との間に木村秀男をもうけるが、旦那に認知されなかったため、秀男をツネヲに預けた。梅子が勝野龍二のもとに嫁いだのと同じ頃、芸妓を引退してツネヲたちが暮らしている鞍山に移り、一緒に暮らすようになる。のちにツネヲの娘である初子の言葉がきっかけで、芸妓として復帰する。 80歳を超えた現代でも、芸妓時代の気品を感じさせる女性である。

梅子

7歳の頃に、満州の奉天の置屋「湖龍」で下働きとして暮らすことになった元孤児の少女。咲子とは別の家に里子に出されていたところを「湖龍」の女将に買われる。左腕が上がらない障害を抱えていたため、芸妓の修行はあきらめた。咲子と一緒に、当時「五郎」と名乗っていた木村ツネヲに育てられる。ツネヲが初子を出産したすぐ後に木村秀男を預かることになったため、2人の子供の世話をすることになる。 やがて、薬問屋の旦那である勝野龍二に嫁いで2人の子供をもうけるが、女遊びの激しい勝野に耐える生活を強いられる。その後、炭坑に就職した勝野を追って炭坑の町で暮らした。80歳を超えた現代では、現実を見据えて堅実に生きる女性となっている。

初子

木村ツネヲとツネヲの夫との間にできた娘で、蒔子の母親。咲子が一本芸者として独り立ちしたのと同時期に生まれた。 初子が生まれた当時はツネヲの夫はすでに年老いており、置屋「湖龍」を閉めて隠居生活に入ろうとしていた頃だった。その後「湖龍」が畳まれ、家族で田舎町の鞍山に移住した。やがて少女に成長した初子が発した何気ない一言が、咲子の芸妓復帰のきっかけとなった。 60歳を超えた現代では、娘の蒔子に「置屋の娘でノホホンと育ったお嬢」と称されている。

木村 ツネヲ

咲子と梅子の育ての母にして、初子の実の母親。満州の奉天にある置屋「湖龍」の芸妓として「五郎」を名乗っていた。子供たちの面倒見が良く、芸妓修行の少女たちからも慕われていた。「湖龍」の女将が亡くなり、遺言として「湖龍」を木村ツネヲに託す旨の言葉が遺されていたことから、「五郎」の名を降ろして「湖龍」の次期女将となる。 舞妓修行のため咲子を大連へと送り出した後、ツネヲの夫との間に初子をもうけ、「湖龍」を畳むという夫の意向を汲んで、梅子を含めた4人で田舎町の鞍山に移住する。

蒔子

初子の娘で、もうすぐ40歳になるイラストレーターの女性。8歳の時に、祖母の木村ツネヲを亡くしている。10歳年下の蒔子のボーイフレンドとは結婚するつもりがなく、現代を生きる女性の多様性を象徴するような存在でもある。母親の初子や、伯母にあたる咲子や梅子たちの思い出話を興味深く聞いている。

蒔子のボーイフレンド

蒔子と付き合っている男性。お調子者だが、咲子が蒔子の家を訪ねて来た時には駅まで車を出すなど、頼りになる一面もある。蒔子と一緒に、咲子や梅子、初子たちの思い出話を聞き、文学や歴史などの知識を交えながら当時の状況説明を補佐する役割を担う。

中谷 昭一

初子の夫で、蒔子の父親。元陸軍少尉。若い時に肺結核を患ったため、召集令状を受けたのは21歳になってからだった。陸軍中野学校二俣分校で学び、終戦後1人でフィリピンのルバング島で戦っていた実在の陸軍少尉、小野田寛郎とは同期。現代では彫刻をたしなんでいるが、近所の碁会に出かける際は道具をほったらかしにするなど、がさつな面がある。

木村 秀男

咲子と旦那の間にできた息子。旦那に認知を拒否されたため、咲子が芸妓を続ける代わりに木村ツネヲのもとに預け、初子の弟として育った。少年に成長した頃には第二次世界大戦で神風特別攻撃隊が誕生しており、軍隊に入隊することに憧れるようになる。

ツネヲの夫

木村ツネヲの夫で、咲子、梅子の育ての父にして、初子の実の父親。初子が生まれた時にはすでに年老いており、ツネヲと結婚したことで経営を引き受けていた「湖龍」を畳んで、田舎町の鞍山に隠居することを提案した。元軍人で、咲子の旦那が木村秀男を認知しないと知ると激昂するなど、頭に血が上りやすい性格。

勝野 龍二

薬問屋の旦那で、梅子が嫁いだ相手。梅子との間に子供をもうけるも、女遊びが激しくよく家を空けて、梅子の心をかき乱す原因を作っていた。不況のあおりを食って薬問屋を閉めることになり、職探しを続けてやっと遠くの炭坑で働くことになる。しかし女遊びの癖はそのままで、炭坑の町の慰安所にいる朝江のもとに通い続けていた。

咲子が料亭で会った男

咲子が半玉(はんぎょく)になってから奉天の料亭で出会った男性。その後、大連に修行に出ていた咲子と再会、さらにいったん芸妓を降りた咲子が再び芸妓に復帰した後にも三度会っている。しかしその都度名乗ることはなく、別れの挨拶もすることはなかった。「満州青年連盟」に加担していたが、満州国政府から切られ、その後は国策映画社「満映」で下働きをしていた。

女将

満州の奉天にある置屋「湖龍」の女将。孤児であり、里子に出されていた咲子と梅子を買い、満州に連れて来た。その他、別の置屋から身受けした芸妓全員の借金を肩代わりしたうえに、仕度金まで用意する面倒見のいい女将であったが、木村ツネヲに「湖龍」を継がせるという遺言を残して亡くなってしまう。

旦那

咲子を水揚げし、一本芸者として独り立ちさせた男性。咲子は旦那があまり好きではなかったが、借金を少しでも早く返すために旦那に水揚げされることを選んだ。咲子を独占しながらも、咲子との間に木村秀男ができた時には、自分の子として認知をしなかった。

麻原

咲子が旦那に水揚げされた後に出会った将校の男性で、咲子の初恋の人。軍隊に新たに配属となった歓迎会の席で咲子と出会い、「湖龍」に咲子と泊りがけで過ごしたいと申し出るが、咲子は旦那に他の男との関係を制されていたため、門前払いを食らってしまう。

大連の女将

咲子が大連で修業をしていた際の置屋の女将。咲子にすぐにいい旦那をつけると約束し、実際に金回りのいい旦那をつけることになるなど、咲子をよく世話していた。しかし咲子が旦那との子供である木村秀男を妊娠していると知った時には、咲子が一本芸者になって間もないこともあって戸惑いを隠せなかった。

松ちゃん

咲子の妹の夫。第二次世界大戦の戦況が厳しいうえ、気候の関係で不作が続く日本本国を離れ、物資が豊富で活気がある満州に渡って身を立てるべく、咲子を頼ってやって来た。咲子が芸妓に復帰して木村ツネヲが女将となる話で盛り上がった際には、時代に逆行すると難色を示す。

杉田

咲子がいったん芸妓を降りた後、再度芸妓として復帰した時に旦那(パトロン)になった男性。咲子の世話はもちろんのこと、海外出張の帰りに初子にドイツ人形、木村秀男に飛行機の模型を買い与えるなどの気遣いを見せる。のちに咲子を自らの別宅に住まわせるようになる。

朝江

勝野龍二が炭坑で働いていた際に通っていた慰安所の女性。およそ2年間にわたって勝野と夫婦同然の関係を築き、何かと世話を焼いていたが、梅子が炭坑の街にやって来たことで勝野と別れた。のちに梅子自身による訪問を受け、互いに打ち解ける。

大内 清二郎

木村ツネヲの弟。徳島に住んでおり、よく満州のツネヲから手紙を送られていた。やがて終戦を迎えた際、出兵していたため満州に戻ることができずにいた木村秀男を迎え入れた。秀男には野球のユニフォームを与えるなど、よく世話をしている。

久子

初子の又従姉にあたる女性で、金持ちの家の娘である。初子と木村ツネヲが満州から引き揚げ、徳島に降り立った時に初子と再会した。自分が勤める会社の社員の家に咲子とツネヲを住まわせる世話をしたり、初子と中谷昭一の見合いを進めたりと、世話好きな性格。

場所

湖龍

満州の奉天にある置屋。女将を筆頭に、満州に渡って来た咲子や梅子、芸妓である木村ツネヲなどを擁している。のちに女将が亡くなり、その遺言どおりにツネヲが次期女将となってツネヲの夫が湖龍の経営を任されることになるが、不況の波をかぶり店を畳むこととなる。

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